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月と樹と写輪眼 ─もう1人のうちは─

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第十二.五章 寄り添う手に芽吹く思い

 
前書き
サスケにとって、ミズノってどんな存在か?の短編です!

十二章で衝動的にミズノを庇ったサスケの思いを深掘りしたくて書いてみました。

幼いふたりの距離感や関係性を楽しんでもらえたら嬉しいです! 

 
時は遡り、10年前のうちは居住区。

木ノ葉の外れ、夕陽の差し込む水辺。

「火遁・豪火球の術!」

幼い声が必死さをまといながら、両手で印を結ぶ。

サスケの口元からぽっと小さな火が吐き出された。

しかしそれは形を保てず、すぐに消えてしまう。

「くそっ……」

悔しげに眉を寄せ、唇を噛みしめる。
頬には小さな焦げ跡、手には小さな火傷と擦り傷。
それは、必死に練習した証だった。

後ろからその様子を見ていた父・フガクは、無言のまま背を向ける。

「……やはり、イタチのようにはいかんか…」

その言葉を残して、足音だけが遠ざかっていった。



──比べられることには慣れていた。

けれど、悲しくないわけじゃない。
悔しくないわけでもない。

なぜ父はいつも兄ばかりに目をかけ、自分を見てくれないのか。

うつむき、拳を握りしめる。
僅かに瞳が揺れたその時──背後から聞き慣れた声が響いた。

「…サスケ」


顔を上げて振り向くと、優しい眼差しの少女が佇んでいる。


「ミズノ…」


彼女はそっと微笑み、サスケの手を握った。


「こっちにきて」


彼は手を引かれ、近くの木陰に腰を下ろした。
ミズノはポケットからタオルを取りだし、サスケの頬の焦げ跡を丁寧に拭く。
そしてサスケの手を両手で包み込んだ。

「いい…こんなの、すぐ治る」

彼は顔を背け、ミズノから手を離す。

「小さい傷でも痛いでしょ?
それにばい菌が入ったら大変だよ!」

怒りと心配が入り混じった瞳に見つめられ、サスケは戸惑い目を伏せる。

渋々、両手を差し出した。

ミズノがその手をもう一度包み込むと、あたたかいチャクラが流れ込み、傷が癒えていく。

「もう痛くない?」

サスケは視線を落としたまま、こくんと頷いた。

「……術をフガク様に見てもらってたの?」

彼の瞳が曇る。

「兄さんは…一回で出来たんだ。だけど俺は…」

サスケの声は悔しさに震えていた。

燃えては消える炎のように、彼の努力はまだ形を保てない。

そんなサスケを前に、ミズノは首を横にふる。

「イタチお兄様と比べる必要なんてないよ。
サスケはサスケなんだから」

彼女の声はふんわりとあたたかく、こもれびのように穏やかだった。
その大きな瞳は静かで揺るがない。

「出来るか出来ないかじゃなくて…諦めないで頑張ってることの方が、ずっとすごい」

ミズノの言葉は、サスケの胸の中の悔しさと悲しみをゆっくりと溶かしていった。

「アカデミーでいつも一番なの、私知ってるよ。
それに毎日修行してることも。
だからね、サスケはもっと強くなる。
術も次は絶対に成功する!“姉さん”が保証するよ!」

自信たっぷりな笑みで言い切るミズノは、少しお姉さんぶっていたけれど、彼を信じる気持ちがまっすぐに伝わってくる。

サスケの胸の中に、知らない感情が広がった。

嬉しくて、苦しくてどうしていいかわからない。

思わず声を荒げた。

「……あ、当たり前だろ!俺は強いからな!
お前に言われなくたって、次は絶対成功させてやる!」

顔を赤らめて、視線を逸らす。

強がる口調のサスケを、ミズノは少し大人びた表情で見つめる。

優しく目を細め、安心したようにそっと彼の手を離した。



──それから一週間、サスケは毎日欠かさず術の修行に励んだ。

合間にふと現れるミズノ。

「頑張ってるね。サスケ、お腹空いてない?
おにぎり作ってきたの!一緒に食べよう!」


「……別に減ってないけど、作ってきたなら食べる」


「素直じゃないなぁ…はい、おかかのおにぎりだよ!」


彼女が差し出したおにぎりを、サスケは照れくさそうに受け取り、一口頬張った。
ほんのりしょっぱくて、香ばしい。
あっという間に1つ食べ終え、2つ目に手を伸ばす。


「やっぱりお腹空いてたんじゃない。
“姉さん”はなんでもお見通しなんだから。
あと、お団子も作ってきたんだ!
サスケのお団子は、いつも通り甘さ控えめにしてあるよ!」

「…二歳しか違わないだろ…姉さんでもないし」

サスケの声が聞こえてるのかいないのか、ミズノはニコニコしながら包みを広げた。
串に刺さった少し不恰好な三色団子が、四つ並んでいた。

「……いつも通り、変な形の団子だな」

「!!ま、まだ練習中なの!細かいこと気にしないで黙って食べなさい!」

耳まで真っ赤にし、眉を吊り上げるミズノ。

(甘いものは好きじゃないけど、こいつが作ったのは…食べられるんだよな)

そんなことを思いながらも口には出さず、サスケはおにぎりを黙々と食べ進めるのだった。



──早朝、サスケは再び父の前に立っていた。

深く息を吸い、印を結ぶ。

「火遁・豪火球の術!」

轟音とともに生まれた炎は大きく、力強く、真っすぐに吹き出した。

フガクは、ほんの僅かに眉をあげた。
しかしすぐに表情を戻し、一言だけ発した。

「……さすが、俺の息子だ」

そしてそのまま背を向け、歩き去っていく。

サスケは誇らしげに笑みを浮かべ、父の背中を見つめていた。


ふと、彼女の顔が浮かぶ。

「見たら…喜ぶかな…」

口元を緩めながら思わず溢れた言葉にハッとし、なぜか耳元まで熱くなった。

(なんであいつに……!?)

慌てて頭を振る。

(俺は、兄さんに追いつく為に…強くなる!)

目標を掲げ、力強く拳を握りしめた。

──必死に強がるその胸の奥で、名も知らない感情が小さく芽吹いていたのだった。
 
 

 
後書き
第十二章、最後までお読みいただきありがとうございます!
隠してきた正体を明かすこと、それを仲間たちがどう受け止めるのか。サスケとの関係性や、ミズノの変化をここから書いていけたらと思ってます!まだまだ続きます!
 
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