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月と樹と写輪眼 ─もう1人のうちは─

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第十一章 優しい嘘と決意、再会への足音

 
前書き
優しい嘘と、苦しみ。
仲間を思う気持ちがぶつかり合うなか、雪が静かに、再会の予兆を告げていた──。
 

 
大国の影たちが協力し合い、ついに”忍連合”結成が決まったその裏で、木ノ葉の若き忍たちもそれぞれの思いを胸に動き出していた。



──ナルト達の居場所を突き止めたサクラ、キバ、サイ、そしてランは彼らの元へ駆け寄る。

白い息を吐きながらその表情は皆、一様に固い。

「……お前たち、なんでここに?」

カカシに問いかけられた一瞬の沈黙の後、サクラがナルトの瞳をまっすぐに見据えた。

「ナルト…あんたに話があるの」

仲間たちの胸に重い緊張を走らせる。



──彼女の言葉は降りしきる雪に吸い込まれていった。



「え………!?」




ナルトは呆然としている。仲間たちは驚き、固まった。

「い、今サクラちゃんなんて言ったの!?……聞き間違えたかもしんねーからもう一度……」

サクラは薄く頬を染め、視線を逸らしながらもう一度言葉を紡ぐ。

「だから…ナルト、あんたのことが好きって言ったのよ!
サスケ君なんて私にとってもうなんでもないって言ったの!あんな人を好きでいた私がどうかしてたって…人が告白してんだからちゃんと聞いてよね!」


──ランは知っていた。
ナルトに向けられた言葉は、優しい嘘で塗り固められた彼女の強い決意だ。


(サクラちゃん…本当の事を伝えてナルト君を苦しませたくないんだね…)


ナルトは次第に困惑と怒りを滲ませた表情へと移り変わる。

「…こんなとこで冗談言っても面白くもなんともねーってばよ。
サクラちゃん、一体何があったんだってばよ?」

「別に何も…目が覚めただけ。犯罪者である人を好きでいる必要ないでしょ?
だからナルト、あんたとの約束はもういいの…ナルトもサスケ君を追いかけるのはもうやめにしない?」

何が裏があると気がつき始めているナルト。

ずっとサスケの事を思い続けているサクラの姿を、彼が一番よく知っていた。

すると──サクラは一歩踏み出し、ナルトを抱きしめる。

「サスケ君は私から離れていくだけ。
ナルトはいつも私のそばにいて、励ましてくれた。
今はあんたのことが心の底から…」

彼は自分からサクラの身体を引き離した。

「いいかげんにしろサクラちゃん…そんな冗談は笑えねーって言ってんだよ」

怒声に揺らぎながらも、必死に笑みを作ってみせた。

「なにキレてるの…?サスケ君からあんたに乗りかえただけのことじゃない。女心は秋の空っていうでしょ?」

「俺は自分に嘘をつくような奴はキライだ!」

言葉がぶつかり合い、空気が張り詰める。
ランは一歩後ろで胸が押しつぶされるような思いを抱いていた。

お互いを思い合う気持ち、二人のサスケを救いたいと願う苦しみがはっきりと見える。

(あなた達の思いが痛いほど伝わってくる…)

唇を引き結び、ただ静かに目の前のやり取りを見つめるしかなかった。

「…サクラちゃんとの約束がなくなっても関係ねーよ。俺は俺自身でサスケを助けたいと思ってる」

サクラは眉を寄せ、それ以上何も言わない。

ランは二人の姿に心が大きく揺さぶられる。

(サスケ…こんなにあなたを思ってくれている仲間を…
どうして見ようとしないの?
お兄様の残した思いも履き違えて、間違った道を進んでいる。そんなの、ただの独りよがりにすぎない)

怒りと悲しみが胸に渦巻いていく。
白いマントの下で強く両手を握りしめた。


(……サスケを止める)


──もう、迷わない。


しばらく険しい表情のままだったサクラは、身を翻す。

「もういい!私は帰る!いくわよ!キバ!ランさん!サイ!」


(ナルト…ごめんね)


強気の態度とは裏腹に、目元にはうっすらと涙が滲んでいた。

三人は足早に後を追っていく。
ナルトから距離をとると、サクラは立ち止まる。


「キバ!お願いがあるの。これからすぐにサスケ君を探す!協力して!」


その瞳には覚悟が刻まれていた。



──サイは皆に気づかれないよう、ナルトの前に分身で現れる。

そして、彼に話せなかった真実を伝えた。


“サスケを木ノ葉の手で処理する”


風の流れが止まる。ナルトの絶望は計り知れない。
サイはサクラの気持ち全てを代弁する。

彼女は約束の”重荷”を解いた。
そして、一人でサスケを始末するつもりだと。
サスケが大好きだからこそ覚悟を決めた。たとえナルトに恨まれようとも──


「サクラは君に頼りすぎた…。だから今度は自分一人ですべてをやろうとしてる。
…そうサクラを仕向けてしまったのはボクのせいでもあるから…だから話した。サクラを放っては置けないし、ボクは第七班の一人だから…」

「そうか…」

ナルトの心はかき乱されていた。
あの頃の第七班の姿がまるで割れたガラスのように崩れさっていく。

──しかし残酷にも、風影一行がさらに彼の気持ちを揺るがす”一報”を伝えにきた。

五影会談、戦争、サスケの襲撃──全てを聞き終えたカカシは、ヤマトへナルトを連れて里へ帰るよう指示し、自分はサクラを連れ戻すために動き出そうとした。


──ドサッ


「ナルト!」


思考を張り巡らせていた彼の精神は限界を迎え、過呼吸で倒れてしまうのだった。



──会談場近く、峡谷

切り裂くような風が吹き荒ぶ中、二つの影が対峙していた。

無数の写輪眼を腕に宿した老忍、志村ダンゾウ。
狂気に呑まれゆく若き忍、うちはサスケ。


「ちょうどいい。お前達の写輪眼も戴くとしよう」

右腕の包帯をほどくと、ギョロギョロと動く写輪眼がいくつも埋まっていた。

「……その右腕の目はどうした」

サスケの声が低く響く。

ダンゾウは無表情だ。

「色々あってな…話すと長い」

「…もういい、お前は殺すと決めている。その前に聞いておきたいことが一つある。
お前を含む木ノ葉の上層部の命令で、うちはイタチに俺の一族を抹殺させたのは本当か?」

ダンゾウが印を組み始めるのを見ると、須佐能乎(スサノオ)の気配が膨れ上がり、彼を掴み上げると身体を軋ませた。

「うぐっ!……あいつはそんな男ではないと思っていたが…イタチめ…死に際に全て喋りおったか…やはり、お前だけは特別だったようだな…」



──兄は何も語ってなどいない。里を思い、弟を思い、己を犠牲にして任務を全うしたのだ。



「本当…だったってことか」

サスケの万華鏡写輪眼がさらに冷たい憎悪の炎で燃え上がる。


「ひいっ…!」

香燐は震えながら頭を抱え、後ずさった。

今までと違うサスケの冷たいチャクラに背筋が凍りつき、冷や汗が止まらない。

(このチャクラ…サスケ……!)


──ブシャッ


サスケの須佐能乎がダンゾウを握りつぶす。

「それ以上イタチを語るな」

「そうだな…次は目で語る戦いにしよう」

致命傷を与えたはずの姿は次の瞬間、背後に現れていた。


戦いの中、彼は何度でも蘇る。


だが、その腕に刻まれた写輪眼は確実に一つずつ閉じていく。
香燐とサスケはそれに気づき始めていた。


戦いの中で呪印を仕掛けられ、動きを止められれるサスケ。
憎しみを増幅させて呪印を解くと、さらに須佐能乎を成長させた。

うちはマダラは遠くから戦況を眺めている。

「ダンゾウは…初代の細胞を埋め込み、身体能力を向上。
うちはの力と柱間の力、九尾をコントロールするつもりでいるようだな」

彼の腕の上で閉じていく写輪眼を見つめ、仮面の奥で目を細めた。

「間違いない…あいつはうちはの中でも禁術にされていた瞳術…イザナギを使っている…」

──イザナギ、ほんの僅かな時間だけ不利なものを夢に書き換え、有利となるものを現実にできる。
そして使用した瞳は光を失う。

ダンゾウの視線が自らの腕に落ちる。
一つ、まだ眼が開いている。

次の瞬間──サスケの腹をクナイで貫き、雷の刃がダンゾウを貫いた。


「どういうことだ……?」


ダンゾウの眼が驚愕に見開かれ、血を吐き倒れる。

「これが眼で語る戦いだ。うちはを……なめるな」

サスケは一瞬のうちに、幻術をかけていたのだった。

しかし、自身も傷を負い膝をつく。

「サスケ…!!ほら!!さっさと噛め!」

香燐はサスケを回復させるため飛び出した。
サスケは彼女の腕に噛みつき、身体を回復していく。


「まだだ…ここからが瞳で…語る戦いだ…」


老忍は、なおも往生際悪く、その場にいた香燐を人質にとり盾にする。


「サスケ……助けて」


「動くな…香燐」


瞳は冷たい紅蓮に染まっていた。


──次の瞬間、香燐の身体もろとも雷遁の刃で急所を貫く。


「サスケ、あんたにとってウチは……」


口から血が流れ落ち、香燐が倒れ込む。

戦局を見極めたマダラが現れ、瀕死のダンゾウに近づいた。

「シスイの目はいただくぞ」

「…忍の世のため、木ノ葉のため、お前らは決して生かしておかぬ!」


ダンゾウの身体に紋様が浮かび上がる。


「これは…裏四象封印術(うらししょうふういんじゅつ)
自分と一緒に俺たちを封印するつもりだ!!サスケ!ダンゾウから離れろ!」


サスケはその声に、素早く後ろに飛び退いた。


──ドシュッ


峡谷に残ったのは、光を浴びず闇の中に根付いていた老忍の血の匂いと、更なる復讐の気配だった。




── 峡谷付近の森


雪の匂いを含んだ風が四人の頬を撫でている。

キバの声が鋭く響いた。
「サスケを見つけたぜ!となりにゃあのトビってのもいる!」

赤丸も吠え、先を急ごうと地を蹴る。
その勢いに合わせるようにサイも無言で足を早め、ランも息を呑んで走り出そうとした。

「みんな一度止まって!!」

サクラの声が必死さを帯びて響き、三人は足を止めて振り返った。


「どうした、なんで止まる?フォーメーションは確認済みだろ!」


雪が積もり、凍てつくような空気の中、サクラはマントの影で左手を動かす。

その仕草をサイとランは見逃さなかった。

サクラはキバにサスケの居場所の正確な位置を尋ねると、すぐさま眠り玉を忍ばせた左手を振り上げる。


(みんな…ごめん!!)


しかし、その手はサイによって防がれた。

「やっぱり…これでみんなを眠らせるつもりだったんですね」

ランは悲しみを含んだ瞳でサクラを見つめる。

「サクラちゃん…一人で行くつもりだった…?」

「は?…なんで一人でやろうとした?俺たちみんなでやる約束だろ!」

キバが驚きと怒りで目を見開く。サクラは唇を噛み、視線を落とした。


「…ここから先は誰も行かせない。僕たちだけじゃサスケにもそのトビってやつにも勝てやしない。カカシ先生と約束した。先生が来るまでここで待機してもらう」

サイの声が静かに響く。

再び顔を上げた時、彼女の表情は固い決意に塗り替えられていた。
手袋を付け直し、真っすぐに言い放つ。

「サイ、一度しか言わない…そこをどいて!」

しかし、彼は表情を変えることなく一歩も動かなかった。


「忍法、超獣戯画!」


巻物が翻る。墨の蛇が地より這い出て、行く手を阻んだ。

「カカシ先生の言うこともわかるが、そう何度もサスケを野放しにできるかよ!俺がケリをつけてやるぜ!」
 
怒声とともにキバは突っ込む。

墨の蛇と通牙(つうが)がぶつかり合った。
墨が飛び散り、雪の白を黒く汚す。


「二人ともやめて!!」


ランが叫んだ。
素早く印を結び、両手を地面にかざす。

「土遁、土流壁!」

地面が震える。雪を巻き上げながら、土の壁が二人の間に立ちはだかった。

「こんな時に仲間同士で争ってどうするの!冷静になって!」

彼女の制止に、二人の動きが止まる。


その刹那──


「…ごめんね」

小さな声が聞こえた。

ランが振り返るより早く、彼女の手から素早く三つの眠り玉が投げ放たれる。
壁の陰を縫うように飛んだそれは、白煙を弾けさせた。

(しまった!二人に気を取られて…) 

キバが目をこすり、赤丸も鼻を鳴らしてふらつく。
サイの蛇が霧散し、ラン自身も膝をつく。

(サクラ…ちゃん…!)

雪の上に落ちていく仲間たちを後ろ目に、サクラは迷いなくサスケのいる方角へと走り去っていった。



──宿八
 
目を覚ましたナルトは、ヤマトの監視の目を掻い潜り、布団の中からクナイで床に穴を開けていた。

穴が完成するとそこから抜け出し、仙人モードでカカシのチャクラを感知しながら、森の中を風のように駆けていくのだった。


── 再び、峡谷

マダラは息絶えたダンゾウの身体を回収し、サスケに身体を休めるよう伝えた。
更に情報を知りすぎている香燐にとどめをさしておけとサスケに忠告して姿を消す。

「………」

彼は左手に雷鳴を纏わせ、ゆっくりと歩み寄ると冷たい瞳で香燐を見下ろした。


「…じゃあな」


恐怖と悲しみに目を瞑る香燐に、千鳥を放とうとした瞬間──


「サスケくん!!!」


鋭い声が響く。肩で息をしながらその頬は赤く、吐く白い息は揺れている。

サスケの動きが止まった。

「サクラか……」

彼は鋭い闇を瞳に宿し、睨みつける。

(昔と…まるで感じが違う。これがサスケくん…?)

深い闇を感じながらも、サスケが望むとおりに動く。
木ノ葉を抜け、彼へついていくと伝える。

サスケは自分の望みは木ノ葉を潰すことだと告げ、本当に自分の為に里を裏切ることができるのか、香燐にとどめをさして証明しろと詰め寄った。

(こんな事…やっぱり昔のサスケ君じゃない…変わってしまった)

彼の声は、氷の刃のように冷たい。
胸が強く締めつけられる。クナイを抜き、震える両手で構えた。
目の前でうずくまる香燐の姿が滲んで見える。

(今…私がサスケくんを刺せば、すべてが終わる…!)

サクラが考え込んでいると、香燐は血に濡れた唇を震わせ掠れた声で叫ぶ。

「…やめろ…サスケェ…」

「!?」


振り返ると、千鳥の鋭い音が迫っていた。絶望に瞳が見開かれる。


──その瞬間


「落ちたなサスケ…」


はたけカカシが雷鳴を受け止めた。

カカシはサクラを庇いながら、お前が重荷を背負うことはない。七班をバラバラにしてしまった、だらしない先生ですまないと詫びる。

サスケを見据えながら復讐に取り憑かれるなと呼びかけるも、彼は大声で笑った。怒りを顔に滲ませ、イタチ、父と母、一族を連れてきたらそんなものやめてやると叫ぶ。

カカシはサクラに香燐を回復するよう指示し、自分の役目だとサスケと戦う覚悟を決めた。




──「う……」

雪の中、横たわっていたランは目を覚ます。
ゆっくりと隣に目を向けると、キバとサイ、赤丸が並んで眠っていた。
頭が重い、視界が霞んでいる。それでもランは腕に力を込め、身体を起こしながら呼吸を整えた。

「カカシ先生とサクラちゃん、サスケのチャクラを…感じる。私も、行かないと…」

ふらつく足に力を込め、霞む目をこすりながら立ち上がる。木々をかき分け、もつれる足を懸命に運んでいく。

「サスケ…子供の頃から一緒だったあなたは、家族と同じ大切な存在。
だからこそ、間違った道に進んでほしくない…!」

冷たい風が吹き、舞い散る雪が地面に溶けて消える。

雪の向こうに運命の再会が待ち受けていた。

それは希望か、それともさらなる絶望か。

──まだ誰にもわからない。 
 

 
後書き
次回からはオリジナル要素が強めになっていきます。
読んでくださりありがとうございます!!次回も読んでいただけたら嬉しいです。 
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