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月と樹と写輪眼 ─もう1人のうちは─

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第十章 迷いと決断の狭間で

 
前書き
里を揺るがす新たな火影の決定。
忍たちの迷いと決断が交錯する中、それぞれの道が動き出す。 

 
里を揺るがす新たな火影──

憎悪に呑まれた者と、絆を守ろうとする者。
光と影が交錯する時、忍界の歯車は大きく動き出す。



──大名殿

火の国の大名たちとの会合に、里の上層部たちは出席していた。そこにはあの“志村ダンゾウ”もいる。

五代目・綱手がペイン襲来時にチャクラを使い果たし、未だ昏睡状態。
里は不安に揺れ、忍たちも指揮を失った群れのように漂っていた。

はたけカカシが六代目火影に推薦されたものの、志村ダンゾウ本人が火影を務めると発言した。

彼の片腕は包帯に覆われ、右目も布で隠されている。放つ圧は刺すように鋭い。

その圧に押されるようにして、大名たちはダンゾウを火影に任命した。



──遠くから足音が近づいて来る。


里の復興任務についていた三班のもとに、動揺した表情で赤丸に乗ったキバが現れた。

「おい!綱手様が火影を解任されたぞ!!」

「なに!」 「えっ!?」

ネジ、リー、”やかぜラン”達は驚き、手を止めた。

「俺はよく知らねーんだけど、六代目火影には里の裏の人間…ダンゾウって人に決まったらしい!」

ランの肩がわずかに跳ねる。

(ダンゾウが火影に…?)

ダンゾウは、うちは一族、イタチやサスケ、姉と自分の運命に深く関わった人物。

感情が揺さぶられないわけがなかった。

「しかも…それだけじゃねぇ!
そのダンゾウは、抜け忍としてサスケを始末する許可を出したらしい!」


「!!!」

(サスケを…始末…)

頭が真っ白になる──

鼓動が早まり、呼吸が浅く乱れる。

「確かに…抜け忍は普通、抹殺される。
今までは綱手様が大目に見ていただけだ」

ネジが腕を組みながら冷静に語った。

「そんなこと…ナルト君やサクラさんが黙っているはずがありません!」

リーは眉を寄せる。

「俺はとにかく、この事をナルト達に伝えに行ってくる!!」

そう言ってキバは赤丸と共に走り去っていった。

「一体ダンゾウとは…どんな人なんでしょうか?」


「ダンゾウは…”根”の創設者」



ランの声にネジとリーが視線をむける。

「木ノ葉の里を下から守り、部下達に…裏の汚い仕事をさせている」

「そんな奴が火影に?一体なぜ…」

ネジは怪訝な表情を浮かべた。

ランの頭の中に、あの血にぬれた夜がよぎる。

(ダンゾウ…あいつのせいで、私たちの全てが狂った…!)

奥歯を噛み締め、抑えていた感情が膨れ上がる。

「ランさん!!どこへ行くんですか!?」

リーの声も聞かず、矢の如く駆け出していった。

(火影になるなんて許さない。サスケを始末することも!)


──その頃、ナルト、サクラもキバから話を聞き、ダンゾウの情報を聞き出そうとサイと話をしていた。

(ナルト君達…!サイ君もいる)

ダンゾウの元へ向かう途中、彼らを見つけたランは足を止め、木陰に身を潜めて様子をうかがう。

そこへ、雲隠れの忍二人が現れた。サスケが雲隠れの里を襲い、八尾の人柱力•雷影の(キラービー)を連れ去ったと告げる。サスケは”暁”の一員だと声を荒げ、サスケについて教えろとナルト達に攻撃を仕掛ける。

(サスケが暁に?雷影の弟を連れ去った…?)

冷たい汗が背筋をつたった。とても冷静ではいられない。 

サクラやナルトも同じだった。

戦いの末、ナルトは

「俺に任せてくれ」

とサクラとサイに言い残し、雲隠れの忍たちとその場から離れていった。

彼らを見送ったサイが、遅れてその後を追っていく。

(なにをするつもり…)


彼は無表情。だがその瞳にはどこか影が漂う。
“根”の一員としてダンゾウの命令に従い、仲間を持たず、感情を押し殺し、ただ命令を遂行するだけの存在──のはずだった。

ランはサイを追い、その視線をたどる。

──ナルトはサスケへの憎悪を全て受け止める為、一方的に殴られていた。

するとサイが動く。ナルトを攻撃から守る為に。

「ナルト、君がサスケなんかの為に殴られてやる事はない、サスケは君を傷つけるばかりじゃないか…。ボクなら…」

(サイ君…あなたやっぱり…)

ランは綱手から“サイの監視”を命じられている。
しかし、ペイン襲来を共に生き延び、ナルトやサクラと行動を共にするうちにサイの中に生まれた変化を感じていた。

やがて、サムイ隊長と呼ばれる忍が現れる。ナルトは雷影に会わせて欲しいと頼むも断られ、サイと二人、その場に取り残された。

(ナルト君、サスケのために……)

急いで二人に駆け寄る。

「ナルト君!サイ君!大丈夫?」

「ラン?どうしてここに?」

「ちょうど通りかかったら声がしたから…。傷の治療をするから、そのまま座ってて」

ナルトは首を横に振った。

「今すぐ、カカシ先生とヤマト隊長のところへ連れていってくれ」

サイとランは顔を見合わせる。
しばらく沈黙が落ちるも二人は頷き合い、ナルトを支え、歩き出した。


──テントの中

「全く派手にやられたな」

カカシはランに治療されているナルトを見つめて、心配と呆れと誇らしさをまぜた声色で語りかける。

「ヘヘ…」

ナルトはランの隣のサイに目線を向けた。

「サイ…さっきはすまねぇ…ありがとだってばよ」

「……いえ…」

少し遅れて、サイは微笑む。カカシとヤマトも静かに笑う。

「はい、治療はここまで。サクラちゃんみたいに完璧にはいかないけど、目立つ傷は治したし、動けると思う」

「ありがとな、ラン」

(それは私のセリフだよ…ナルト君)

ランは心の中で呟いた。

ナルトはしばらく考え込んだ後、決意したように瞳に力を込める。

「俺ってば雷影に会ってくる!サスケを許してもらえるように説得する」

ヤマトは少し興奮気味にナルトを諭す。

「今は君の封印用の首飾りもない!
人柱力の君は里の外にでるべきじゃない!
ボクは里の復興役で…君にずっとついていられない。次はどうなるか…」

「…四代目に会ったんだ」

「!?」

全員が驚きの表情を浮かべた。

「この前の九尾化を止めてくれたのは四代目だってばよ。
そん時教えてくれたんだ、16年前の九尾事件は”暁”の面をしてる奴がやったって!
四代目も手が出ないくらい強かったって!」

ナルトは続ける。

「そいつが黒幕だって言ってた。ペインはそいつに利用されてるって。サスケが”暁”に入ったって事はサスケも利用されてるだけだってばよ」


(尾獣を操れるのは、写輪眼。まさか…)


「自来也様が危惧していた通りだ。あの事件、あいつの仕業だったとはな…里に恨みを持ち、里を抜けたうちは一族で九尾を口寄せできるのはマダラくらいだ」

カカシの言葉にランは息を呑んだ。

(マダラ…イタチお兄様が言っていたあの日の協力者。
やっぱり生きているの?)

「ナルト、四代目はお前になんて言った?
父親ってのは息子に色々言いたがるもんだろ」

「…俺を信じてるって言ってくれた!」

ナルトは、にかっと笑った。

「よし!お前は雷影のところに行け!ま、俺とヤマトはナルトの付き添いね!」

カカシが親指を立て笑った。そしてサイに視線を移す。

「この事は、里の上層部に伝える必要がある。サイ、火影にはお前が連絡してくれ」

「あ…はい…」

サイは無表情で返事をし、外へ出ていく。
ランも後を追うように立ち上がる。

「じゃあ、私も戻ります。皆さん、気をつけて…」

外に出ると、少し先でサイが立ち止まっていた。

「サイ君?」

彼は振り向く。無表情を保ちながらも、わずかに揺れる瞳。

「ランさん…。やっぱりボク、君に監視されてたんだね」

ランはサイを見据えたまま、目を細めた。

「気がついてたんだ…。でも、あなたも同じでしょ?
ナルト君を監視してた」

━━短い沈黙の後、サイが口を開く。

「今、わからないことだらけなんだ。
ボクは“根”で仲間も感情も持たないように教え込まれてきた。
でも…ナルトが殴られているのを見た時、胸の内側が焼けるみたいに熱くなって、呼吸が浅くなって…思わず身体が動いた…”命令”じゃないのに。
彼らの事もわからない…。ナルトやサクラを苦しめるサスケ君とのつながりって、そんなに大切なものなのかな。なぜ二人は苦しむのにそんなに…」

ランは目を見開く。そしてふっと優しく微笑んだ。

「わからなくて悩むのは…あなたは今、ひとりじゃないってこと。
私は…ナルト君を助けたサイ君のこと信じる。
あなたはもう、答えを見つけてる」

サイは言葉を失い、しばらくランを見つめる。
やがて小さく笑った。

「……ありがとう。ランさん」

その笑みはぎこちない。
けれど人間らしい温度を帯びていた。

(サイ君はきっと、もう大丈夫)

ランは胸の奥の重石がはずれたようだった。


──雪深い山道

鉄の国へと続く峠道を、雷影•エーの一行が進んでいた。
その足取りは重く、そして怒りを抑えきれぬ熱を帯びている。
彼の胸には、弟・キラービーを襲撃したサスケへの憤怒が燃え盛っていた。

その道の途中で三つの影が立ちはだかる。
ナルト、カカシ、ヤマト。

ナルトは一歩前に出ると、ためらいもなく雪の上に膝をついた。

「サスケを…うちはサスケを始末するのをやめてもらいてーんだ…!!」

声が山に響き渡る。
冷たい風が吹き抜けても、ナルトの背は震えなかった。
額を雪に押し付け、必死に訴える。

雷影の足が止まる。
鋭い眼光が、土下座するナルトを射抜いた。
空気が重く張り詰める。

それでもナルトは頭を上げなかった。
ただ必死に訴え続ける。復讐の連鎖を止めたいと。

隣でカカシは胸に去来する思いを吐露した。

「…今ここで若い忍が不器用なりに、雲と木ノ葉…互いの里、国を思い頭を下げている。雷影様…あなたは五影の一人としてこれをどう捉え、どう思われる?」

「忍が簡単に頭を下げるな!
暁は国際指名手配となる。そうなれば世界がサスケを狙う。犯罪者のために頭を下げ、慈悲を請う。
それを忍の世界では”友情”とは言わん!」

ナルトの意志を振り払うように彼は言い放ち、雷影一行はそのまま雪の大地を踏み締め、去っていく。

「ううっ……」

友を思い、流れ落ちていく涙は、雪の中へと深く沈んでいくのだった。


──鉄の国・会談場

北方に広がる雪深い大地。
氷に閉ざされた山々の中に、鉄の国は存在していた。
忍を持たず、中立を掲げる侍の国。
その中心に建つ巨大な会談場に、五大国の影たちが次々と集結していく。

土影•オオノキ、水影•メイ、風影•我愛羅、雷影•エー、そして火影•志村ダンゾウ。

五影会談が始まる。しかし憎悪に突き動かされ、鷹を率いて潜入したサスケがダンゾウを狙って襲撃。
会談場を混乱へと陥れる。
五影はそれぞれの術を駆使して応戦していた。

その頃、ナルト、カカシ、ヤマトはトビ──うちはマダラからイタチの真実、過去からの因縁の戦い、サスケの憎しみを聞かされていた。


そして木ノ葉の里では──
仲間たちが集まり、サスケについて話し合っている。
ランはその場でフードを深く被り、表情を隠していた。

(きっと…お兄様とサスケの戦いの場にいた、あの怪しい奴…マダラと繋がっていたんだ。サスケの心を煽り、利用している。サスケの万華鏡写輪眼も狙っているかもしれない)

──あの時、ただ助ける事だけを考えて、サスケを連れてきていればこの事態は避けられたのだろうか。

(ごめんね…ナルト君、サクラちゃん、みんな。
私の決断と心の弱さが、あなたたちをさらに苦しめた。
…直接会いに行く。
これ以上罪を重ねる前に、私がサスケをとめる)

一方、サイは一人サクラの元に訪れ、ナルトがサスケを庇う為に殴られ続けたこと、雷影に直談判しにいったこと、ナルトがサクラを思い、約束を背負い続け、苦しんでいるように見えると伝えた。

そこへシカマルも現れ、彼女を説得する。
サクラは自分を戒め、自分の口からナルトに話をすると決意した。

シカマルは仲間たちを集め、追跡メンバーを決める。
ランは自ら追跡班に志願し、承諾された。
サクラ、キバ、サイ、ランの四人で追跡へ。
まずはナルトの元を目指し、出発した。


──五影会談場

五影たちとサスケの争いの混乱に紛れ、ダンゾウは逃げ出す。

影たちに追い込まれるサスケ。そこに“うちはマダラ”が現れた。

仮面の奥から放たれる眼差しは底知れず、空気が一気に張り詰める。
傷ついたサスケと回復役の香燐をマダラは時空間へと吸い込んだ。

「”無限月読”で、全人類を理想の夢へ沈める …。
それが“月の眼計画”だ。十尾を復活させる為、八尾と九尾を渡せ」


──ここにいる誰ひとりとして、頷くわけがない。



「第四次忍界大戦……ここに宣戦を布告する」


その声は静かだが、会談場を揺らす。
暁と忍界を全面戦争に巻き込む、悪夢の宣告。

「今度は戦場で会おう…」

そう言い残し、マダラは消えた。

五影達は協力し合うと決め、忍連合軍の結成に動き出す。



──忍連合軍結成が結成され、戦いの歯車は音を立てて回り始める。

その渦の中で、ダンゾウを追うサスケの足音と、追いすがる仲間たちの足音が交差しようとしていた。 
 

 
後書き
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は大きく流れが動き始めた章になりました。
やかぜランもついにサスケを追う決意を固め……。
次章はサスケとダンゾウの戦いから、仲間との再会、書いていきます。 
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