『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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不招客(未来横島編)
前書き
美神視点に戻ります。
「……いいわ。通して頂戴」
私は数秒思案した後、短く人口幽霊に告げる。
“畏まりました”
雪之丞の奴……一体、何のつもり?
それに、人口幽霊が「もう1人」って言ったのも気になる。さっきは、一瞬あいつの事かと思ったけど、それなら始めからそうに言う筈。一体何者?
「先生♪先生♪」
「し、シロちゃん……」
…………だから、まだ誰か解らないでしょ。尻尾なんかブルンブルンしちゃって単純でいいわね。
そんな事を考えてる内に雪之丞達が、フロアまで上がって来る。
久しぶりに見る雪之丞は、相変わらすチビであの目付きの悪い三白眼を含めて見た目は殆ど変わらないけど……この前の海の一件があるからかしら?心なしか、存在感が増して見えるわ。
そして、肝心の “もう1人” の方は……… “あいつ” じゃなくて、全く知らない男だった。
30手前くらいかしら?中肉中背で、ダークグレーのスーツに身を包んだその男は、サラリーマンにも見えるけど……同業者ね。
しかも、それなりに腕の立つ。
発する気から、それくらいの事は解る。歳の割にヘラヘラして軽そうに見える顔だけど、油断は出来ないわ。
だけど……
「よ、よぉ……久しぶりだな、姐さん」
「………鰻食べて来たの?」
顔を若干顰めながら、気になる事を口にした。
普通は挨拶で返すんだけど、それを忘れるくらい2人から香ばしいタレの香りが漂ってる………と言うか、息が詰まりそう。シロなんか、2人がフロアに入って来た瞬間に鼻を押さえて隅の方まで下がっちゃってる。
「あ、ああ。昨日の昼と夜は鰻重だったんだ」
「何で2回も食べるのよ……?」
よく食べれるわね。いや、それじゃあ昨日の服と同じってこと!?こいつら最悪!!
「いやぁ鰻なんて、久方振りだったもんでよ♪味忘れねぇように、皆で必死になっちまったんだ」
こいつ、相変わらずね。西条さんからは、安い依頼しか受けれないって話だけど今も食べる物に苦労してるのかしら?
でも、今はそんなことより……
「何しに来たの?」
ここで、漸く本題に入る。こいつらの私生活をいちいち突っ込んでたら、キリが無いわ。
「じ、実はよぉ__」
「ちょっと、それ以上近寄らないで!臭いが伝染るから」
デスクに一歩踏み出そうとした雪之丞を、私は鼻を摘みながら慌てて制す。シロじゃないけど、私も近寄られるのは無理。
「おおぅ……実は、昨日知り合いに偶然街で会ってな。この男もGSなんだけど、姐さんの事を話したら是非とも会ってみたいって」
そう言って、雪之丞は隣の男を指し示した。
「ど、どうも『立山忠則』と言います。伊達君とは、香港で一緒に仕事をした縁があるんですよ………」
男……立山と言うらしいそいつは、そこで言葉を切って、まじまじと私を見つめ始める。
な、なんなの……一体………?
「わ、若い……!!可愛いっ………!!こーして見ると、やっぱり今とは随分ちがうなあっ……!!」
な、何?泣きそうになってる!?こいつも鰻臭いし、意味わかんないだけど。
「な、何、このおっさん!?」
「れっ……令ぐぉ……!!」
「何してんだテメェは……!?」
男の鳩尾に、雪之丞の肘がめり込んでる……本当、何なのこいつら!?
…………でも、何かしら?この感じ、何か懐かしい……
「……で、姐さん。この立山、出来る事なら姐さんの仕事も見学させて欲しいってんだ」
「仕事も……?」
いきなり会いに来ただけじゃなくて、仕事まで?ちょっとそれって図々しくない?
※ブーメラン投擲中
自然と私の顔も不快な方向に歪むけど、それにいち早く察したのか立山が捲し立てるように口を開く。
「決してご迷惑は、おかけしません!私もGSをしていて、腕はそれなりに立つつもりです。是非とも、SランクGSとして名高い、美神令子さんの仕事振りを拝見させて貰えないでしょうか?」
私は目の前で揉み手しながら頭を下げる、立山と言う男を見つめながら考える。
どうしようかしら?
確かに腕の立ちそうな男だから、足手まといにはならなそうだけど……
「姐さん、立山だけで不安なら俺も行くよ。それなら、心配ねぇだろ」
「あんた、随分と優しいのねぇ。自分の仕事でもないのに……」
「えっ…!?」
怪しい……怪しすぎる。雪之丞の焦ったようなリアクションを見て、私は直感的にそう思った。
大体何で、このタイミングで来たの?小間波海岸では、一言も挨拶に来なかった(もっと言えば、1年以上顔を見せなかった)癖に、今日になってこの(雪之丞にしては)殊勝な態度……絶対何かあるわ!
だから私は、2人の前に人差し指を立てる。
「1000万!」
「……な、何が?」
戸惑う雪之丞へ続ける。
「見学料に決まってるでしょ!丁度これから仕事があるけど…まさか、私の仕事をタダで見ようなんて、考えてたんじゃないでしょうね?」
「い、1000万か……」
雪之丞は、チラリと立山の方を見ると……
「解りました。1000万ですね!」
すると、即座に反応して持って来た鞄……何かやたら膨らんでるわね。そこから、札束を10ヶ出すと私の目の前へ置く。
「ご確認下さい」
………鰻臭い。お金にまで移ってないわよね。そんな事を考えながら、1つ1つ確認してみる。
「……本物みたいね。いいわ、でも見学だけじゃ退屈でしょ?あんた達にも除霊を手伝って貰うけど、それでいいわね?」
「はぁ!?金とった上に手伝わせんのかよ?」
「嫌なら、結構!お金も返すわ」
「いえいえ!手伝わせて貰えるなんて、光栄です!是非ともお供させて下さい」
間違いないわね。こんな条件でもついて来たいだなんて、こいつら絶対何か企んでる。
雪之丞と私の間に急に割り込んで来る、立山と言う男を見ながら私はそう思った。
………と言うか、やっぱり鰻臭い。早く離れてくれないかしら……
◇◇◇
約1時間後、私達は今回の依頼現場に到着した。私とお絹ちゃんとシロは、私のコブラ。あの2人は、雪之丞の古い4WDで。
「今回の依頼は、この高層ビル群周辺に出没する妖怪『鎌鼬』三匹一組の風の妖怪よ。ビル風に紛れて通行人に被害を出し続けてるの。かなり危険な妖怪だけど、引き返すなら今の内よ!」
「へっ、姐さんそりゃ舐め過ぎだぜ!この前の俺の動きを見たろ?」
…………本っ当にこいつは…!!……まぁ、いいわ。
「あなたは、どうするの立山さん?」
雪之丞の隣に佇む彼にも問い掛ける。意味不明のやる気を出してる雪之丞と違って、こっちは少し難しそうな顔をしてるわね。何を考えてるのかしら?
「大丈夫です。『鎌鼬』の除霊なら経験がありますから」
◇◇◇
………数時間後。
依頼は、問題なく終わった。捕まえて無力化した鎌鼬を破魔札で消滅させたんだけど、安全に終わり過ぎて拍子抜けするくらいだったわ。
その要因は、勿論あの彼……言うだけあって手慣れた物だった。鎌鼬に付いては、その危険性も含めて良く理解してたし、道具の使い方も全く問題無かった。
あの2人には、シロと一緒に誘導地点まで追い詰めた鎌鼬を結界ネットで捕縛して貰ったんだけど、経験のある彼の扱いが一番上手くて、逆に道具に不慣れなシロがフォローされてるくらいだったわ。
そして2人共、ここに居る時は全く怪しい動きなんて見せなかった。
だけど、そんな事実を目の当たりにしても、私が事務所から感じてるモヤモヤ感が消える事は無かった。
もぅ!一体なんなのよ……!!
「ねぇ、お絹ちゃん」
「はい?」
「あの2人、どう思う……?」
「どうと言われても……一生懸命お手伝いしていたようにしか見えませんでしたけど………」
私は、帰る支度をしてる彼女に聞いてみたけど、小鳥のように小首を傾げるお絹ちゃんの答えは芳しくない。まぁ、私も見た感じとしては、全く同じなんだけどね……
「でも………」
「ん…?」
そう言って、一瞬思案するような顔をした後、お絹ちゃんは “おずおず” と語り出した。
「怒らないで聞いて欲しいんですけど……あの立山さんって人…横島さんに似てるなって思いました」
「……………」
「ご、ごめんなさい!やっぱり、気の所為かな……」
「い、いいのよ……」
い、いきなり何言い出す訳!!?
い、いや違う…………いけない……顔引き攣ってたかしら?しっかりしなさい、私。こんなことで、イチイチ目鯨立ててちゃ駄目でしょ。
「ど…どうして、そうに思ったのかしら」
私は、なるべく穏やかな口調を意識して聞き返す。すると彼女は、上を向きいて形のいい人差し指を顎に当てながら口を開く。
「そ、そうですねぇ〜……始めに事務所に入って来た時に何となく………あと、道具の使い方をシロちゃんに教えて上げてる時なんか、あの人に似てるかなぁ、なんて」
「ふ〜ん……」
彼女には、気の無い素振りを見せながら考える。
正直な所、除霊中やその準備の時は別の事に気が行って全くそんな風には感じなかった。でも、彼女言うように連中が来て自己紹介をしてた時………
…………私もそんな風に感じた。まるであいつが居た以前に戻った時みたいに。
でも、なん___
「姐さん。俺達は、ここで上がらせて貰うぜ」
「いやー、今日は大変参考になりました。本当にありがとうございますぅ!」
お絹ちゃんの一言で思考の海に没入仕掛けた私だけど、その直前で例の2人に現実へ呼び戻されてしまう。
雪之丞は相変わらず、ぶっきらぼう。問題の彼は、やたら愛想良く、もっと言えばヘコヘコするように………確かに、この感じ似てるかも!
「あっ……そう。き、今日は助かったわ」
「じゃあ、俺等はこれで!」
「失礼します」
だけど、私の考えが纏まる前に連中は、とっとと退散してしまった。
「やっぱり、怪しい……」
自分達の車に乗り込んで、直ぐ様走り去る様を睨み付けながら私は独りごちた。
「どうしてですか?別に何もしてないじゃないですか?」
「何もしてないからよ。1000万よ、1000万!それを払ってまでついて来たのに、やったことは本当に除霊の手伝いだけ。普通に考えてあり得ないわ!」
「じゃあ、2人は何の為に?」
「それが、全く解らないのよ!」
本当に意味が解らない。そんな事して、一体何の得があんのよ!?
「ネット持って来たでござる〜♪」
「シロちゃん」
「くっ……」
……とにかく、これ以上ここに居ても仕方ないわ。
能天気にネットを担いで来たシロを見て、そう切り替えた……切り替えざる得なかった私は、ネットを入れる為にコブラのトランクを開く。
「シロ、じゃあここに閉まって頂戴」
「了解でござる♪」
そして、今日使った結界ネットをトランクに__
パラッ……
「何か落ちたでござるなー」
トランクに入れる瞬間、何かの紙切れのような物がネットからこぼれ落ちる。これは、写真……?
何気なく拾い上げて、中身を見る…………
「…………なっ!!!!?」
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