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『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
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本領(天狗編)

 ビュオーーーーーッッ!!


 風は、遠巻きに眺める俺達の所もかなり強まっていた。


「ははははははっ……浮いてるぞ」
「………………」


 そして、初めて見た光景に思わず笑いだしちまった。


 そう……俺の遠目に映る天狗は、中を浮いている。風の力によって………

 別に浮かぶ事くらいで、驚いてるわけじゃない。自分の力(文珠)でだって出来るし、神魔なら普通に飛べる。だが、単純な風の力だけで浮かび上がっているのは初めてだ。


 天狗が、妖薬作りの名人として有名なのは前にも言った。ただ、それは後から(・・・)の話………それより、ずっと昔から天狗は『風使い』として有名だった。


 天狗と言えば風……風と言えば天狗………そんな具合に……


 絵本なんかでは、天狗が息を吹くだけで嵐が起こるなんて話も出てるくらいだ。それは、流石にないだろうが、それに準ずる(・・・)事くらいなら出来るんじゃないか?

 肌に感じる風……いや、その奥に宿る妖気にはそう思わせるだけの何かがあった。





    ◇◇◇


「クハハハハ!!すげぇ!あんた、やっぱ凄ぇよっ!!」
「フフフフフフ…………!これを見ても、全く臆さんのは褒めてやる。だが、いつまで保つか__」


 言いながら、刀を持たない左腕を振り被る。


「__なあっ!!」


 そして、突く……雪之丞へ向かって。

 天狗と雪之丞は、10メートルくらい離れている。その場で突いたくらいで届く訳はない。ただ、突き出たのは拳だけじゃなかった………



 ブオオォォッッ!!



「うおっ!?」


 拳……いや、腕全体から発せられたと思われる突風が奴を襲う。ボロい納屋なら、一発で吹き飛んじまいそうな威力だ。

 それをマトモに受けた雪之丞だが、流石に魔装鎧に守られた奴がフッ飛ばされる事は無かった。腕を交差させて踏ん張る事で数十センチ後退しながらも、その場で踏ん張った。

 それでも、天狗には十分な隙だったが………

 
「死ねぇ!小僧っ!!」


 突風に乗るように………実際に乗ってる!?

 浮いた状態から、一瞬だけ地面に片脚を着いたと思った途端に刀を振り被った天狗が、慣性を無視する様に加速して雪之丞へ襲い掛かる。

 そして………


「『烈風斬』!!!」




 ザッシャャャーーーーーーーーッッッ!!




 ギリギリで反応して横に跳んだ雪之丞だが、そのさっきまで居た空間に天狗の斬撃が走る。


「鎌鼬……か?」
「………………」


 ただ、刀を振り下ろしたんじゃない。振り切った瞬間に刀から飛び出た空気の波が地面を……落ちている枝葉を……更に後ろに生える大木数本をまるで豆腐でも両断するかのように走り抜けて行った。


「いや、違うな…… “切り裂く” と言うより強引に “ぶった斬る” 感じだ。圧縮した空気を刀で放ったんだな」
「………………」


  “斬” には違いねぇが、殆ど圧し潰してやがる……

 それにしても、なんつぅ〜豪快な剣(あれを剣と呼んでいいのか?)だ……さっきまでの巧みな剣技から、もっと鋭い奴を想像してたんたが真逆だぞ。


 俺達がそんな事を話してる間にも、当の天狗は大胆な一撃を放った後、その振った刀の反動を利用するように上に飛び上がる。その挙動は、直前の突進と全く一緒だ。


「あれも風の力か……飛んでるというより、風を受けて滑空してる」
「………………」


 そうして地上から20メートル付近まで上昇すると、水中を泳ぐ魚のように旋回して再び下へ……


「うおぉぉぉぉーーーーーーーっっ!!」


 急降下しながら、今度は横に薙いだ。



 ザシューーーーッッ!!


 放たれる一閃で、再び斬り裂かれる地面。

 雪之丞は辛くも逃げたようだが、天狗は意に返す様子もなく、その反動で同じ様に上昇。上がり切ると、そこから再び急降下して斬撃。その繰り返し………



「どうしたぁーーっ!?小僧っ!今までの威勢はぁ!?」
「糞っ垂れがあぁっっ!!」


 ジャシューーーーッッ!!



「………………凄まじい鬼ごっこだな……」
「………………」


 始まりから、完全に攻守が逆転してやがる。

 空から刀を持って襲い掛かる天狗に、木々を掻き分けながら必死に逃げる回るチビ………

 言葉にすりゃコミカルだが、あれをマトモに受けたら両断程度じゃ済まねぇぞ。鎧を分厚くした所で殆ど意味はねぇ。

 なら、反撃と行きたい所だが、あの一撃離脱戦法を止めるのもかなり難しい気がする。何より、斬撃の余波がすげぇ。刃の両端から発する突風だけで、体勢の維持はもとより下手すりゃフッ飛ばされるぞ……


 いっそ、天狗の妖気切れを待つか?

 あの圧縮波……威力は凄まじいが、媒体となる奴だってかなりの妖気を消耗する筈だ。このペースで連発してりゃ、底を着くのも早い気が………



「ほらぁ、ほらぁ!逃げんと真っ二つじゃぞぉ!!」


 ジャッシャーーーーーーンッッ!!


「うおおぉぉぉ〜〜〜〜〜っっっ!!!」



 ……………………駄目だな。

 妖気が切れる前に、チビがバラバラになる。



「……………………なんだ?」
「………………」


 訝し気な無骸の視線に気付いて振り向くと、奴は右手でビー玉大の何かを摘むような動作を俺に見せる。


「…………ああ、文珠か。ちゃんと持ってる。だが、奴の性格なら使わないだろ?その辺は、付き合いの長いお前の方が良く解ってるんじゃないか?」
「………………」


 ………でも、俺達(俺と雪之丞)の関係も既に5年(妙神山の特殊空間込み)近くなってるから、どうなんなろうな?

 こいつ(無骸)言う程の差は、もう無い気もする……いや、今考える事じゃねぇな………


 ………………思考が脇にそれたが、とにかく文珠を使わない。使えば、厳密な一対一じゃなくなる。

 それを選択するくらいなら、あいつは死を選ぶ………まではしないだろうが、一か八かの勝負に出るだろう。そう言う奴だ。


 文珠は使わない。そして、当然降参もしない。

 そうなるとやる事は、やっぱり奴の動きを止めるしかないな。お前(雪之丞)、ただ逃げ回ってる訳じゃないんだろ?

 間断なく攻められちゃいるが、ペースは割と一定だ。そろそろ(・・・・)タイミングを掴んだんじゃないか?

 そうに思っていた矢先、遂に雪之丞が動いた……


「そこだあぁっ!!」



 ヴアアアァァァーーーッッ!!!



 唸る霊波砲。牽制とか苦し紛れの一発じゃなく、追いかけ回された雪之丞のフラストレーションを象徴したような渾身の一撃。

 その直系1メートルを悠に越す霊気の奔流が天狗を襲う………奴は空中上昇して到達点に達すると、旋回する為にどうしても一時停止(それでも、1秒あるかないかだが……)せざるを得ない。その振り向きざまにタイミングを合わせてブチ込んだわけだ。


「ぬぅん!」


 バァンッ!


 …………まぁ、残念ながら刀……正確に言うと、刀に纏う風で弾かれちまったんだがな。

 
「オラァ!オラァ!」


 そこへ雪之丞は更に霊波を連発するが、こっちの方は躱された。自分に向かって来るならともかく、高速で動き回る相手に当てるのは、やはり厳しいようだ。


 ただ、悪いことばかりでもなかった。

 圧縮波を撃つために溜めていた妖気を防御に回しちまった事で、次弾を撃つまでにタイムラグが生まれちまった。

 要は、今まで一方的に攻めてい天狗だが、その淀みない攻撃の流れに霊波砲と言う楔を撃ち込まれた事で、それを止めざる得なくなったって事だ。これはデカい……

 少なくとも、一方的に攻められる展開からは抜けれたからな。


 霊波砲から逃れた天狗は、旋回した後再度雪之丞へ突進。だけど、雪之丞も霊波砲で迎撃。天狗は、同じ様に撃ち落とすも攻撃は不発に終わる。

 撃ち落とさないでやり過ごせばいいんだが、雪之丞もそれが出来ないように振り向き様を狙ってるから、天狗も対応せざる得ない。


「これで、少し解らなくなったか……?」
「………………」


 
 …………と、希望が見えたまでは良かったが、そこから先の進展はなかった。

 その後も互いに牽制を出しつつ、せめぎ合っていたが状況は変わらない。

 天狗が攻めて、雪之丞が受ける。その図式のまま両方共攻め手を欠いて、状況が膠着しちまった感じだ。

 このまま行けば、本当に泥沼の消耗戦になりそうだが果たして………
 



    ◇◇◇


「もう、タイミング掴んだぜぇ!おっさん!」
「ぬぅ……」

「お〜いっ!いつまでも、んな所に居ねぇでとっとと降りて来いよぉ!!」
「…………本当に……儂にここまで食らいつくなんて、お前の順応性には、末恐ろしい物があるな………」

「次は、何を見してくれんだぁ!?台風でも起こすのかぁ!?」
「仕方ない……」

「黙ってねぇで、何か言えよっ!!」


※会話が成立してるようで、お互い遠すぎて聴こえてません




    ◇◇◇


「………………中々、降りてこねぇな」
「………………」


 上空に高く昇ったまま微動だにしなくなった天狗に対して違和感を抱き始めた頃、漸く奴に変化が起きた。


 あれは……刀を回してる?

 徐ろに刀を持った右腕を伸ばした。刀と腕が一直線になるように真っすぐと……そうしたかと思うと、今度はそれをクルクルと回し出す。

 例えるなら、体操選手がスティックの先に着いたリボンを回す様子に似てなくもないか……?


 巨漢で厳つい天狗が刀でそんな事をする。

 言葉だけ聞いて想像すりゃ思わず笑っちまいそうだが、実際目の当たりにしたら、とても笑ってられる光景じゃなかった。

 それは、遠目でも……日の完全に落ちた夜の帳の中でも良く解る。現に始めはゆっくりだったそれが、今は目で追えないくらい高速になっていた。


「風が…集まって行く………」
「………………」


 風が……それを操る奴の夥しい妖気全てが、あの回る刀に集約されてい行く。

 今までの比じゃねぇ。一気に決める気か……!?




    ◇◇◇


 ギュオオオオォォォォ〜〜〜〜〜ッッッ!!!


「ははははははっ!!すげぇ!!今度は、 “竜巻” かぁ!?喰らったら、ヤベェなぁっ♪♪」
「…………『烈風旋回刃』……喰らえば、一溜りもないが………これでも、退く気は無しか」


※会話が成立してるようで、お互い遠すぎて聴こえてません

 
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