『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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舞台裏(GS試験編)
ガチャ……!
「「「「…………………………!?」」」」
ドアを開けて更衣室に入ると、他の受験者達から一様に奇異の目で見られた。
そりゃ、そうか。今まで居なかった奴が、いきなり入って来たんだから当然だよな。
神父は、他の受験者に事前に告知するって言ってたけど、まだ伝わってないのか?いや、伝わってたとしても奇異に見られるか。
“なんで、こいつだけ特別なんだ?” ってな……
まぁ、いい………とっとと、着替えて出ていこう。
◇◇◇
「どういうことだよ……!?」
「何が?」
乱暴な物言いに合わせるように、俺も乱暴に返す。
物には聞き方ってもんがあんだろうに……威嚇でもしたいのか?試合前で気が立ってるんだろうが、それは俺だって一緒だ。
「何で俺の相手が、お前なんだって聞いたんだよ!!」
「ダイス(ラプラス)が選んだからに、決まってんだろ」
「お前、昨日居なかったじゃねぇか!!?」
「さっき、来たからなぁ……」
俺は、怒鳴り散らすそいつの方には向かずに答え続ける。礼を弁えない奴なんか、まともに相手をする気にもならない。
「はぁ?何で途中から出れんだよ!?聞いてねぇぞ!!」
「知らねぇよ。お前が、聞き逃しただけなんじゃないか?」
事の始まりは着替えた後に抽選を終え、新たに控え室で試合時間を待ってる最中のことだった。
ベンチに座ってる俺に対して、目の前の緑色の道着を着た野郎が、いきなりドスの効いた声で突っかかって来やがった。
手には、俺と同じ番号の紙。こいつが俺の対戦相手ってわけだ……資格を得るには、こいつを倒すのが絶対条件に成るわけだが…………
「んだと!?こらっ!!」
わっかりやすい単細胞だなぁ……去年、無骸(?)に絡まれたのを思い出す。
こいつの年格好と言い、チンピラ染みた言動と言い良く似てるぜ。奴との違いは、綺麗に反り上がったスキンヘッドくらいだな。ついでに言うと、眉毛もない。傷痕はなくとも、十分にパンチの効いた見た目だよ。
別にこいつの言い分が、全く解らないわけじゃない。自分の対戦相手が、今日いきなり来た人間じゃ戸惑いもするだろう。だが、それで因縁を付けられる謂れは無い。普通に聞けば、いくらでも答えたのに……
「ここで、やれば資格剥奪だぞ。折角、取ったのにな」
「っ…………」
今にも掴み掛からんとする馬鹿に言ってやると、すんでの所で踏み止まる。そのまま来たら霊手で拘束でもしてやる積もりだったが、そのくらいの自制心は在るようだ。
それと、周りの目も気になったのもあるか。ここには、俺達2人だけって訳じゃない。他の参加者だっている。変な真似をして、騒ぎになるのを嫌がったんだろう。
「テメェ、殺しやるよ……!!」
怒りを込めた捨て台詞を残すと、その緑は俺の元から去っていった。周りの人間は、そんな俺達をただ遠巻きに眺めている。
まぁ、関わりたくはないよな……
「あんな奴でもGSかよ……」
再び1人になると、俺は嘆息するように呟いた。
いくらGS業界が実力至上主義ったって、あんなチンピラ染みた奴に資格なんか与えて大丈夫なのか?トラブルの元にしかならねぇだろうに……
確かに、俺の知ってるGSにも癖者が揃ってる。美神令子然り、小笠原エミ然り、六道冥子………然り?
どれも能力は一級品だが、性格に難のある連中ばかりだ。それでも彼女達は周りのことを良く見てるし、時と場合によって外面良く振る舞うことも出来る。
ただ、俺に絡んだあいつはどうだ?
どんな時でも同じような態度で、気に入らなきゃさっきの様に喚き散らす(もしかしたら、自分より偉かったり、強い奴にはヘコヘコするのか?)。役に立たないとは言わないが、重要な案件なんてとても任せられないだろうに……
今回俺が特別措置を受けることになったのは、32個しかない合格枠を減らさない為だ。一度は納得した事だが、わざわざ空けた合格枠に入るのが “あんな奴” じゃ、協会の在り方を疑いたくなってくる……
「君、ちょっといいかな?」
そんな暗澹たる気分に陥り掛けている時、周りで見ていた1人が遠慮勝ちに話し掛けて来た。礼拝服を着た20代中盤くらいの男……多分、唐巣神父と似たような系統の人だ。
「……何か?」
「さっき、君は「今日来た」って言っていたけど……あれは、どういうことなんだい?」
ふと見ると、周りの連中も聞き耳を立てているのが解る。何か変だな……
「そのままの意味ですよ。協会から、何も聞いてないんですか?」
「何も聞いてないよ。だから……多分、皆驚いてる」
…………どういうこった?
神父は事前に告知するって、言ってたのに……だけど、黙ってても仕方ないんで礼拝服の男に答える。
「今回は、協会から特別措置と言われて3回戦からの参加になるんです。皆さんは合格確定でしょうが、私は次の試合に勝たないと資格が貰えないんですよ」
「はぁ!?どうして、そんなことに……?」
この人は丁寧で実直そうな人のようだが、リアクションはさっきの緑と同じだな………
「それは………勘弁して下さい。こちらにも事情がある」
「そ、そうかい……」
文珠の事を話そうと思ったが、数瞬考えた末に自重した。協会が告知すると言った以上いずれバレちまう話だが、それでも、文珠について喧伝したくなかったからだ。
◇◇◇
『これより3回戦を開始するわけですが、その前に選手及び観客の皆様に、お伝えすることがあります』
『3回戦より【鴉武霊域】の鴉選手が特別枠として参加いたします。よって、3回戦はここまで勝ち抜いた32名に、鴉選手を加えた33名の変則トーナメントとなります』
『なお、資格取得が確定している32名と違い、鴉選手は3回戦を勝ち抜くことが資格取得の条件となります』
“なんだ?途中参加なんて、聞いたことないぞ”
“すげぇ格好だな。それに何なんだ?あのマスク……”
“『鴉武霊域』…………全然聞いたことねぇ。それに『鴉』って登録名か?”
おいおいおい………これじゃ、晒しもんだろうが……!!
試合場へ出たと同時くらいに流れた、この館内放送の所為で周りはやたらざわついてやがる………頭ん中がパニくりそうで、リアクションすら取れねぇよ。
一体、何なんだ?
神父………何が「事前に伝える」だ。思いっ切り “直前” じゃねぇか………!!!
………………今更だが、ザンステロ以降俺達は協会に登録する名前を変えた。俺は『鴉』雪之丞は『武威』
そして、雪之丞が「折角、名前変えたのに『伊達除霊事務所』じゃ萎える」とか言い出して、事務所名も変えた。
今の俺達の事務所は『鴉武霊域』…………読んで字のごとく鴉と武威。そして、霊障の存在する所を活動領域とする意味だが、厨二臭くて普通に恥ずかしい。
……ちなみに奴は、自分の名前を先に持って来たかったらしいが、それだと武鴉になって変だからこれに妥協した。
それこそ、どうでもいいな………
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