ケイン神王国召喚
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昭和十九年、中ノ鳥島
昭和十九年十月、「轟撃沈 航空母艦11隻 戦艦2隻 巡洋艦3隻 巡洋艦若は駆逐艦1隻…」というラジオの声が嫌に響く山を穿った巨大な坑道の中で、数十人の兵士達が青白く光るリンク状の装置を取り囲んでいた。坑道内の発動機から電気を受け取ったリングが回転を始めると共に兵士の一人でありながらもとっくに停限年齢に達しているであろう顔に深い皺が刻まれた白髪の老人が口を開く。
「畝傍艦の神隠し説発案以降、三半世紀に渡ってこの海軍技術研究所中ノ鳥島分室で行われてきた太陽神の使い計画が漸く身を結ぶ。大東亜戦争の戦局悪化によって目的は新天地への到達から異世界における皇国の建国と将来的な米国打倒となったが人類が地球という檻から出る初めての機会である事に変わりはない。瀕死の危機にある皇国の再興は我々の手に有る。しかしもしこの島の転移する先が我々の住めない環境であった場合、我々は何も果たせず窒息死するかもしれない。そんな計画に最後まで付き合う事を決めてくれた君達に感謝する。」
その言葉と共に目の前が真っ黒な光で埋め尽くされ吐き気や眩暈、睡魔といった症状に襲われ、知覚が消えていく。
温泉卵のような匂いを感じながら目を覚ますと青白く光っていたリング状の装置は輝きを失っていた。異世界への移動にしたのかとも思ったがしかし先に目を覚ました他の兵士達の表情は暗い。
「移動は失敗したのか…?」
兵士にそう投げかけると
「成功はしました…しかし大気中に地球の300倍以上の気相過酸化水素が含まれています。つまり、我々の生きていける環境ではありません。」
「そうか…ここで分室を解散する。」
各兵は自ら活路を見出して活動するように、と言おうとした所で近くの兵士に止められる。
「我々はこうなる事も覚悟してましたよ。今まで研究者として働いてきたんですから最後ぐらい軍人らしい事をさせてくださいな。」
その言葉と共に坑道内にいた兵士達が輪になり肩を組み始め、最近有名になった「同期の桜」を歌い始める。
歳の差による隔たりが消えて仲間となった事が感じれる心地よい感覚を感じながら兵達は一人一人倒れていった。
地球から消えた中ノ鳥島はユグド歴1900年にグラ・バルカス第七帝国の通報艦によって発見されるまで再び姿を消す事になる。
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