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蒼と紅の雷霆

作者:setuna
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雷鎖:第七話 弐陸府寺院

 
前書き
ガンヴォルトシリーズではかなり厄介な部類に入る雑魚、忍者。 

 
きりんは渋面を浮かべながら目の前の湯気を立てている熱々のハンバーグを食べていた。

切り分けると肉汁が溢れだし、食感もふわふわでソースの味もよし、ハンバーグの上に乗っているトロトロのチーズがよりこのハンバーグを新たな段階(ネクストフェーズ)へと押し上げ、自称美食家のきりんを唸らせる味だ。

これを目の前のソウが用意したのだ。

犬の姿でどうやってと思ったが、パンテーラに特殊装備を用意してもらい、前足に特殊な手袋ならぬ足袋と毛の問題がないように完全防備でやっていたとのこと。

犬の姿なのに玉葱は大丈夫なのかと、前足でどうやって包丁やらフライパン、フォークとナイフを使ってるのかと色々と言いたいことは山程あるが、美味い。

シロンもBBもレクサスも美味しそうに食べている。

「兄さんの作ったこのチーズハンバーグ、アリスとサクラも好きだったねテーラ」

「はい、あの子達が頑張った時、ご褒美に作ってあげていましたね」

特に幼少期のアリスは第七波動の影響で燃費が悪く、お代わりまでした程だ。

「くっ…!何か…負けた気分…!」

「あなたは料理は出来ないのですか?」

パンテーラが猫の姿で器用にナイフとフォークを使って切り分けながら上品にハンバーグを食べながら尋ねる。

「作れないわけじゃないけど…って、あんたも前足でナイフとフォーク持てるんだねパンテーラ」

「え?当然じゃないですか」

「普通の犬と猫はね。前足で道具は持てないから」

「お前の料理など冷凍食品か、カップ麺に湯を注いで終わりだろう」

ソウからすれば雑な人間に分類されるきりんが自炊するのが想像出来ないので有り得そうなことを口にする。

「失礼な!ちゃんと料理くらい出来るっての!」

「「何?」」

「へ?」

「「「え?」」」

きりんが自炊するのを想像出来なかったソウもレクサスもBBもGVもシロンもパンテーラも信じられないと言いたげな表情を浮かべていた。

「失礼過ぎでしょあんたら!今度ご馳走してあげるから!」

ここまで馬鹿にされてはきりんも我慢ならないのか、腕を振るうことにしたのだが、ソウが不安そうに口を開く。

「食中毒者が出なければ良いが…」

『わー、美味しそうー。良いなー、私も食べたい…と、GV。保安部隊からの報告よ』

イマージュパルス…幻であるために料理を食べられないモルフォから端末を渡されたので報告を聞くとやはり暴龍が現れたらしい。

「古都の寺院を暴龍が占拠した…か。何でまたそんな場所を」

「暴龍化した能力者がたまたまそこに居たんだろうね。寺院って言っても、中の警備システムは機械化されてるみたい」

「龍放射の影響で暴走してるとしたら…骨が折れそうだね」

「そう言えば小娘、前に新たなイマージュパルスを作り出した時に妙な顔をしていたが、あれはどういうことだ?」

「ああ、うん。それはね」

きりんがイマージュパルスの説明をするとパッシブ型のイマージュパルスでソウの力を制御する効果がある“破壊暴龍”ソウ。

これを装備すればソウにより特殊な制限をかけて最初から最後まで使えると言うきりん曰く“ぶっ壊れ”イマージュパルス。

言ってみればGV以上のチートキャラを普段より厳しい制限付きとは言え最初から使えるようなものである。

制限はロックオン放電の威力低下と、コンセントレーションによる鎖環のエネルギーの消耗を抑えられず、カゲロウの消耗増大、SPスキルがギガヴォルトセイバーのみになってしまう。

被弾をし続ければすぐにきりんかGVに強制交代をしてしまうので下手したら出オチもしかねない。

ただし、装備で欠点をある程度補うことが可能で“幻影暴龍”パンテーラでランダムの確率でカゲロウの消費量0、“犬形態”ソウでの鎖環の力の強化だ。

正直、前の蹂躙劇を考えると記憶の奥深くに封印してしまいたい気分だが、ソウに装備するように言われてしまい、渋々と破壊暴龍を初っ端から解き放ってしまった。

寺院に辿り着くと皇神の暴走している部隊とメカが暴れ回っている。

「寺院はあれか…雑魚共が湧いているが問題ない。行くぞ」

人型の姿で石垣の上にある寺院を見上げるソウ。

『ああ、寺院の人達に死人が出ないか心配…』

『大丈夫だよ、普段の雷霆解放よりも兄さんの力に制限がかけられているようだし…どう、兄さん?』

「問題ない。力がより抑えられている感覚はするが戦闘行為には何の問題もない…急ぐぞ、こうして話している間にも鎖環の力が減っている…丁度、餌も大量に転がっているようだ」

“餌”と称された哀れな暴走者とメカ。

“破壊暴龍”のイマージュパルスは敵を倒すことで鎖環の封印の安定度を上げることが出来る。

つまり大量の敵は鎖環の封印を強固にし、ソウの活動を延長させる餌でしかない。

きりんとGVは錫杖と光球の中で手を合わせた。

パンテーラとモルフォはワクワクしているが。

ソウのロックオンは雷撃鱗の範囲を広げて雷撃鱗に触れた相手をロックオンするオールレンジロックオン。

そのため、複数同時撃破はお手の物だ。

ロックオンされた瞬間、ソウのライトニングスラッシュ…雷撃刃での瞬間移動攻撃を受けて密集していた敵を撃破するとソウの鎖環の封印が強固になる。

「鎖環の封印が強固になっていくのを感じますね」

『よーし!バッタバッタと薙ぎ倒しちゃってソウ!』

パンテーラとモルフォの言葉を聞きながらソウはこのまま敵をライトニングスラッシュで撃破しながら高速で前進し、通る度に吹き飛んでいく敵の皆々様に黙祷を捧げるきりん。

『それにしても、寺院って随分高い所にあるんだね』

「私達の時代でもそう言う所は高い所にありましたよGV」

パンテーラがソウのライトニングスラッシュを確定で成功させるために尻尾の先端から光を放ちながらダメージを蓄積させつつGVに昔も寺院は高い所にあったと教える。

『へえ、そうなんだ。僕は寺院に行ったことなかったし』

『何で?あんたって一応この国出身なんでしょ?』

『だって神様に祈ったってどうしようもないじゃないか…昔の僕は神様なんて信じていなかったし。それに僕はテロリストだからね、あまり外部の人と接触したくなかった。』

当時の能力者の問題を神に祈ったところで気休めにしかならない上に能力者の大半が神を信じてなどいなかったのでこれは当時の能力者大半の感情とも言える。

勿論シアンのようにお守り入手に向かったりとご利益を信じているのはごく少数だがいた。

『そう言えばシアンにお守りを何のために手に入れたのか聞いても教えて貰えなかったな…聞いたら顔を真っ赤にして逃げ出しちゃったし…まさか、好きな人が出来ていたのかな?でも昔通っていた学校でそんな話も姿も聞いたことも見たこともないし…』

『ねえ、それって…』

「聞かないで下さい。愛は何時でもハリケーンなのです」

『あ、そう…流石に死体蹴りになりそうだから止めとく…』

GVが生涯のパートナーに選んだのはシアンではなくオウカ、それだけ分かれば部外者のきりんには充分だ。

目の前の門を突破しながら突き進むが、GVは門をチラリと見ながら口を開く。

『あの門…皇神の結界技術が使われているようだね』

『完全に開け放たれてたね。暴龍のせいかな』

「恐らく、龍放射のせいでしょうね」

「無駄口を叩くな、ついてこい」

ライトニングスラッシュで高速移動しながらソウはある物を発見する。

煉鎖灯に良く似た端末だ。

『あ、ソウ!それは煉鎖鳳灯(れんさほうとう)!雷霆煉鎖系の攻撃で突っ込めば射出してもらえるはずだよ!』

「射出…ああ、皇神にも荷物運搬用のリニアカタパルトがあったがそれに似たような物か」

『皇神の反重力技術を取り入れた新型だよ、試験的に配備されてるみたいだね。アリスさんの側近に重力を操る能力者がいるんだけどあの人の力を参考にして造られたみたい』

「重力(グラビティ)の能力者か…」

大昔のエデンの騒動の時にかつて重力制御について協力者だったシャオに話したことはあったが、あの時点では眉唾物と思われていた重力制御も本当にあったのかもしれない。

『大企業の女社長さんなのに皇神の実質的支配者のアリスさんの側近だから結構皇神内でもファンがいるよ。ただ厄介ファンは秘書のヒューマノイドに対応して貰ってるみたいだけど』

「それはどうでもいいな」

『大企業の社長さんでアリスの側近…あの子達の傍には凄い人がいるんだね』

「そのような多才な方が側近ならば我が娘の魅力は凄いと言うことですね」

どうやら自分達の娘のカリスマは想像の遥か上を行っているようだとパンテーラは誇らしげだ。

『…親馬鹿』

「きりん、何か言いましたか?」

『さあ、空耳じゃない?』

娘のカリスマを誇らしげにしているパンテーラにきりんは思わず呟き、パンテーラが振り返るがきりんはしらばっくれる。

「ゴザァァァル…!」

突然現れたクナイを持つ兵士が出現する。

「あれは忍…忍者ですか!!」

『兄さん、忍者がいるよ!!』

『あれって皇神の対能力者兵じゃん…!雷霆煉鎖系の攻撃にも反応されかねないよ!』

次の瞬間、忍者が吹き飛んだ。

「何か言ったか小娘?」

『ううん、何でもない』

『忍者…そう言えば皇神の前身は平安時代より続く陰陽師の一族なんだっけ…?だったら忍法を使える人がいたとしてもおかしくはないってことね』

『…ねえ、モルフォ。あんた陰陽師と忍者がごっちゃになってない?』

『え?違うの?』

『全然違うから、今度教えてあげる』

『ありがと!』

『それにしても見事に人やメカが吹き飛んでいくね…』

GVは通る度に吹き飛んでいく皇神兵やメカを他人事のように見つめていた。

「それにしても、凄い石垣ですね…まるで城です」

パンテーラは真下の敵に鏡のトゲを落としながら石垣の上にある寺院を見上げる。

『ここの石垣は客寄せの名所作りで積み上げたって話だから、本当に機能してるかは怪しいけどね…この寺院、一族の人達や裏八雲でもそんなに良い噂は無いし、お金の使い方とか。』

「そうか」

敵を撃破しつつ、煉鎖鳳灯の射出を利用してようやく寺院に到着した。

『登頂お疲れ様~♪︎ゲートモノリスよ!』

「後でここの石垣の一部を消し飛ばしておくか」

ゲートモノリスをライトニングスラッシュで破壊しながら奥へと進むソウ。

『アリスさんに頼んで側近の人に爆破して貰おうかな?あの人なら喜んで石垣を爆破してくれると思うし』

『きりん、どういうこと?』

『ああ、アリスさんの側近には元放爆魔の犯罪者がいるの。その人は表向きは人気カリスマ美容師だから外面が良くて一族の人気に一役買ってるみたい。本人もアリスさんに倒されてからは忠実みたいだし。何でも“シンプルながら美しい破壊的な芸術(アート)に魅了された”のが側近入りした理由みたい。アリスさんも爆破の芸術に理解があるみたいで結構仲良しみたい。アリスさんは時々、ヤバイ組織の巣窟にその人を放り込んでそこを花火にしてもらってるみたいだよ?』

『………』

それを聞いたGVは犯罪者が姪と娘の近くにいることと、自分自身もテロリストだったこともあり、かなり複雑な気持ちであった。

『こんなんで悩んでたら身が保たないよGV。アリスさんの側近ってテロリストだったり、マフィアの首領だったりするから…まあ、アリスさんの後継者さんとか現役アイドルの人とかまともな人もいるし、テロリストの人だって色々事情があったみたいでまともな人だよ。少なくても頭のネジが飛んでるのは爆破マニアのあの人くらい』

『……そうなんだ…』

「犯罪者まで惹き付ける私達の娘の魅力は図り知れませんね…!」

『テーラって親馬鹿?』

「何か言いましたかモルフォ?」

『ううん、なーんにも』

寺院の内部に侵入すると思っていたよりも派手な内装が視界に広がる。

「随分と派手だな」

『多分、ここが特殊なだけだよ…こんなに飾る必要なんてないのに、全く』

「建物を維持するのには金が必要だ。客が来なければ意味がない、商人が店の内装に気を遣うようにな。中身がみすぼらしければ客など来ないだろう。恐らく、ここの連中は特別な造りをして客を呼び寄せている。あの無駄に高い石垣も含めてな、良くも悪くも現実的な思考なんだろう。今の時代、能力者の人口も増えたことで神を信じる者などごく少数だ。」

ソウ自身、神など1ミリも信じていない。

本当に神がいるならこのような時代になどなっていないのだから。

少し進むと天井裏から忍者が現れるが、ロックオンからのライトニングスラッシュで瞬殺する。

「チッ、忍者とは何時の時代も鬱陶しいな」

僅かでもタイミングがズレると攻撃に反応してくるので一撃で倒せないのは少し苛立つ。

『でもついて来られても面倒だし、全員片付けるよ!』

きりんの言う通り、放置していては暴龍と挟み撃ちになってしまうので敵は粗方倒しておかねばならない。

ソウはライトニングスラッシュで蹴散らしながら進んでいると警報装置が作動し、敵が現れる。

「警報装置…面倒な」

『兄さん、警報装置(サイレン)を破壊すれば敵の出現は止まるはずだよ』

「そうだな、餌の数がこれでは得られる物などたかが知れている」

警報装置を即座に破壊して先に進むと観音像の杖からレーザーが照射された。

『なっ!?またこの罰当たりなトラップ!しかも今度は寺院の中に…!?』

「見たことがあるのか小娘?」

『あんたが封印されてた場所の道中で!ここの住職は何を考えてるのよ全く…!』

「恐らく、賊が侵入してきた時のための物だろう。寺院の中にこのような物を置くはずがないと言う人間の心理を突いた罠だ。俺は中々有効だと思うがな…まあ、今はそれが俺達の邪魔をしているわけなんだが」

戦巫女のきりんの立場からしてこのような罠は許せないのだろうが、罠として考えると中々に考えられている代物だとソウは分析する。

外に出て向こうの建物に侵入するために瓦屋根を走っているとGVは肉体の若さに引っ張られているのか意外なことを口にする。

『瓦屋根の上を走ってると、何だか忍者みたいな気分にならない?』

「…そうか?」

「忍者と言えば分身の術ですね。私も忍法を使ってみたいです」

『…パンテーラは第七波動で分身くらい出来るんじゃないの?』

実際にパンテーラは幻惑系の第七波動なので分身は出来たりするので分身の術を会得する必要性は全くない。

「忍者と言うのは口から火を吹いたり、手から風のような玉や火花を散らせ、奇声を上げながら地面や岩を殴って吹き飛ばすことも出来ると聞いたな」

『ねえ、ソウ。最初のはともかく、他のはどこの情報なのそれ?』

ソウの忍者についての認識が気になるきりんであった。

ライトニングスラッシュで引き続き移動を続けると再び道を阻むレーザー観音像。

「随分と多く設置されているな、余程この像に需要があると見える」

『確かに…仏像からレーザーなんて普通は思わないもんね』

ソウの呟きにモルフォも頷き、パンテーラはシロンに通信を繋いでレーザー観音像について調べてもらう。

「今、シロンに調べてもらいましたが、トラップとしてはかなり有効なようで、アリスも近い内にこの像を皇神の重要施設に配置しようとしているようですよ。」

『ええ…?勘弁してよぉ…アリスさあん…』

『アリスに進言してみたら?』

そんなにこのレーザー観音像が嫌ならばアリスに進言してみることを勧めるGV。

『それが出来たら苦労しないってば…あの人、優秀なら人も物も選ばないし…元・放爆魔やマフィアの首領を側近にして飼い慣らしてる時点で察してよ…裏八雲の立場からしても言いにくいし…』

『………』

合理的な所は両親似か…。

『…暴龍の反応が近付いてきてる、もうすぐよ!』

煉鎖灯、煉鎖鳳灯、敵を利用しながらライトニングスラッシュで突破するとゲートモノリスを発見する。

「ゲートモノリスを発見した。破壊する」

『何だかんだ、色んな場所に配置されてるよね』

『区画の仕切りには一番効果的だからね。暴龍を止めに急ぐよ!』

ゲートモノリスを破壊して次のエリアに向かうと暴龍へと変異した能力者が佇んでいた。

確か暴龍の名は情報によるとカミオムと言うらしい。

「この圧倒的な威圧感…待っていたぞ…猛者であるあんたを」

「ほう?大量の餌を喰らった俺を見ても怯まないとは腕に覚えがあるのか…それとも実力差が分からん馬鹿なのか…」

「あんたのような、絶対的な強者との出会いを待ち望んでいた!全身の筋肉が歓喜に打ち震えているっ!俺の第七波動“喧嘩上等(タイマン)”で正々堂々の決闘だっ!!さあ、闘り合おうぜっ!!」

「ふん、能力者が弱体化傾向にある中、このような気骨のある奴と出会えるとはな。良いだろう、来い小僧。その度胸に免じて特別に相手をしてやる」

「うおおおっ!!盛り上がれ!俺の上腕二頭筋っ!!」

カミオムが距離を詰めて豪腕を振るうが、ソウは容易くそれを片手で受け止めるが体はいくらか後退する。

「良い拳だ。かなり鍛えているようだが…正拳突きとはこう言う物だ!!」

「ぐおおおおっ!?」

鈍い音と共にカミオムの腹にソウの正拳突きが入り、カミオムの巨体が吹き飛ぶ。

「攻撃速度は貴様でも捉えられる速度だろうが、無駄を削ぎ落とした攻撃の体感速度は凄まじい。技術の大切さが分かるか小僧?」

「ふ、ふふふふ…な、何て重てえ拳だ。震える…!俺の胸筋(魂)が!!修行(ビルドアップ)の総仕上げ…この筋肉、更に追い込むため、寺に来たのは正解だったようだ。あんたのような強者との出会いに、全身の筋肉が、歓喜に打ち震えているっ!これが修行の醍醐味って奴だ!」

「筋肉を鍛えるのに何故ここに来たんだ?他に良い場所があるだろう?」

例えばジムとか。

「フン!真なる漢の修行場は、寺か滝と相場が決まっている!!」

「…良く分からんが、かかってこい。敗北を知るのもまた訓練だ」

「うおおおおおおっ!!」

カミオムが再びソウに突進し、拳と蹴りの連撃をしてくる。

ソウはそれを最小限の動きで捌き、カミオムの拳を受け流しながら懐に入り、紅き雷霆で強化した掌底を胸に叩き込み、怯んだカミオムの側頭部に回し蹴りを叩き込んで地面に叩き付ける。

「どうした?もう終わりか?」

「まだまだこれからよぉっ!!」

「ん?」

カミオムから妙な引力を感じるが、恐らくこれが喧嘩上等の能力なのだろう。

「確かにこれは能力者の実力に左右される能力だな」

本体が弱くては最弱クラスの第七波動ではあるが、本体の強さが高ければかなり強力な第七波動だ。

突進をかわしながらカミオムの後頭部に蹴りを入れて地面に倒れ伏させる。

ソウは拳に雷撃を纏わせてカミオムに振り下ろすとカミオムはギリギリでそれを回避し、拳は地面に激突して巨大なクレーターを作り出す。

危険と判断して離れていたきりんはあまりの威力に引き、GVはカミオムを心配そうに、パンテーラとモルフォはソウを応援していた。

「うおりゃあああっ!!」

カミオムのアッパーをかわしながら縦回転をしながら顎を蹴り上げ、マッハダッシュでカミオムの真上に移動すると踵落としを叩き込んで地面に叩き落とし、そのまま容赦の無い拳の弾幕を浴びせる。

『ひ、ひええ…っ!し、死んだりしないよね…!?』

『大丈夫だよ…………多分』

『多分!?絶対って言ってよ!』

「良いですよソウ!頑張って下さい!!」

『行けぇー!ソウ!ラッシュよ!ラッシュ!!』

あまりの容赦の無い攻めにきりんとGVは不安を抱き、パンテーラとモルフォは応援である。

そして先程のカミオムがやったアッパーで殴り飛ばすとカミオムはフラフラになりながら立ち上がる。

「強え…っ!本当に強えなあんたはっ!だからこそ勝ちてえ!行くぜ!!喧嘩上等!威風堂々!賭ける命に咲く羅道!漢、神雄武ここに在り!!喧嘩領域展開(タイマン張らせてもらう)っ!!」

体に気合を入れてSPスキルを発動し、よりインファイトを強制させる空間を作り出す。

念のために空間の外に小石を蹴飛ばすと小石が砕け、どうやら空間の外はダメージを受けるようだ。

カミオムは基本的に肉を切らせて骨を断つ…ノーガード戦法が多いのでデメリットは無いに等しい。

しかし、ソウもカミオムの動きを見切っており、最小限の動きでカミオムの攻撃を捌きながら攻撃を入れ、そして体力を削ったことでヴォルティックバスターを発動する。

「砕け散れっ!!」

「ぐおおおおおっ!!!」

相変わらずの酷い技にきりんが引いたが、案の定謎の第七波動が出現し、カミオムを復活させる。

「うおおおっ!煌めけ!金剛の筋肉よ(ダイヤモンドマッスル)!隆々たる肉体で、眼前の木っ端を吹き飛ばせっ!!」

『…その様式は使わないで欲しい!』

「GV、世の中には言論の自由と言う物が…」

『またあの力…もうひと踏ん張りだよ!ソウ!』

「分かっている。もう一度ヴォルティックバスターを受けろっ!!」

GV以上の破壊力のヴォルティックバスターによってカミオムは再び撃沈する。

「ぐおおおおおっ!!!俺の筋肉がーーーっ!!?」

ダメージ超過によってカミオムの変異が解除され、カミオムは元の姿に戻る。

ヴォルティックバスター2連打にきりんは慌ててカミオムの脈を確認すると保護をして治療を受けさせると目を覚ましたカミオムに事のあらましを説明する。

「我を失い暴走するとは、このカミオム一生の不覚…!この筋肉に誓って、責任は取るつもりだ。俺のことは、どうか良いように使ってくれ…」

「ふむ…あの暴走はお前の責任ではないが…お前さえ良ければ力を貸してもらえないか?治龍局はお前のように暴走した能力者を鎮めるのが役目だが、レクサスはともかくBBとシロンは一般出身のために戦闘に不慣れだ。お前のように場数を踏んでいる能力者は貴重…その力を俺達に貸してくれ」

「ソウ…あんたは人間や犬の姿になったりと不思議な奴だが…良い目をしてやがる…その目…いくつもの修羅場を越えてきた真の漢の物…このカミオム。これからは骨身を砕き、あんたらの筋肉(手足)となることを誓おう」

「感謝する。その礼と言っては何だが、暇な時は相手をしてやろう」

「ほ、本当か!?あんたみてえな強者から教えを受けられるとは…!よろしく頼むぜ。ソウ、筋肉(心)の友よ!これが漢の抱擁だっ!!」

「うおっ!?」

「あっ!?カミオム!何をするのです!ソウは私の夫です!放してください!!」

夫を奪われると思ったパンテーラはカミオムの頭に飛び乗り、猫パンチをする。

「愛されてるね、ソウ!」

「…小娘、次の訓練では覚悟しておけ…」

からかった瞬間、ソウの地獄の底から響き渡るような声にきりんは自分の最期を感じそうになったのであった。

「…そ、そうそう。カミオムの攻撃方法から、新しい剣技を思い付いたよ!」

「やはり、強者とのタイマンは己を高みへと押し上げる!…して、どんな技だ?」

「飛び上がりながら敵を攻撃する対空攻撃だよ!」

「ほう、昇✕(ピー)拳か!!」

「それは言わないお約束…!」

きりんは対空技の“天昇刃”を習得した。 
 

 
後書き
多分、迫害を受けていた無印と爪時代の能力者って神様を信じているのは極少数だと思う。

少なくとも無能力者が信じている神は信じない。 
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