漁師は怖い
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第一章
漁師は怖い
八条水産広島支社の若い社員である堀川一共微笑んだ感じの顔で優しい目に黒髪を真ん中で分けた一七六の背の痩せた彼は社内でこんなことを言った。
「漁師さんや養殖している人達の魚介類がないと」
「うちはやっていけないわよ」
先輩のOL中川天奇麗な黒髪をロングにしはっきりした大きな二重の目と奇麗な赤い唇と形のいい顎と鼻を持つ色白で一五八位の背でスタイルのいい彼女は言った。膝までのタイトスカートの政府kがよく似合っている。
「水産会社はね」
「本当にそうですね、頭が下がります」
堀川は中川に話した。
「あの人達あってこそのうちです」
「水産業よ」
「全くですね、猟師さんっていうと」
ここで彼はこんなことを言った。
「海でお仕事をする穏やかな人達ですね」
「何で穏やかって言うの?」
「いや、うち農家で」
実家の話をした。
「両親も祖父ちゃん祖母ちゃんも跡継ぐ兄ちゃんも兄嫁さんも」
「皆穏やかなの」
「一次産業の人は」
「農家も大変でしょ、ただね」
「ただ?」
「漁師の人達はよく見てね」
「よくですか」
「そう、よくね」
こう言うのだった。
「実際にお会いして」
「どういうことですか?」
「そうした機会もあるし聞くしね」
「漁師さんについて」
「このお仕事してるとね」
「そうなんですね、悪い人達じゃないですよね」
特に考えずにだ、堀川はこう考えていた。だが。
後日仕事で愛媛の方の漁港に行くとだ、昼なのに彼等は楽しく飲んでいた。
「もう飲んでますね」
「漁はまだ夜っていい時間に行われるでしょ」
隣にいる中川が応えた。
「だから朝のうちに戻って」
「そこで水揚げして」
「もうお昼はね」
「飲んでますか」
「そうなのよ」
漁港で酒盛りしている彼等を見つつ話した。
「そうした世界なのよ」
「そうなんですね」
堀川は中川の言葉に頷いた、だが。
見れば喧嘩が起こった、すると七十過ぎの年老いた漁師が同年代の仲間の頭を酒瓶で殴った、これには堀川は仰天した。
「えっ、酒瓶で頭殴りましたよ」
「自然相手の肉体労働よ」
中川は平然として答えた。
「海のね」
「荒れやすい海ですか」
「そこでお仕事してるから」
だからだというのだ。
「荒くれ者の世界なのよ」
「そうなんですか」
「ヤクザ屋さんが利権手に入れようとしてね」
「漁港の」
「漁師さんの方に行っていなくなったってお話もあるし」
「わかりやすいですね」
いなくなったという言葉でだ、堀川は真顔で応えた。
「それはまた」
「そうでしょ」
「はい、そういうことですか」
「海上自衛隊の人達は本気で怖がってるし」
「えっ、海自さんがですか」
「若し船や漁網に護衛艦ぶつけたら」
そうなればというのだ。
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