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リリカルってなんですか?

作者:SSA
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本編前
  第六話




 年を取ると月日の流れが早くなるという。

 これには、諸説があり、どれが本当か分からない。

 僕が知っている諸説の中の一つには、年を取るを覚えられる時間が少ないから短く感じられるというものだった。これが、もしも正しいとするなら、僕たち小学生は同じ月日だとしても大人と比べて相当長く感じるということになる。

 だが、実際に小学生をやらせてもらっている僕からすれば、この諸説は間違いだと断じられる。

 なぜなら、季節があっという間に過ぎてしまったからだ。

 夏には、プールにキャンプに花火大会、縁日。
 秋には、運動会に写生大会。
 冬には、クリスマスにお正月に雪合戦。

 実に息のつく間がないくらいに目白押しなイベントの数々。

 気を抜けば日常に押しつぶされてしまいそうな勢い。

 もしも、大学生の頃の僕なら確実にどこかでへばっていただろう。

 だが、そこは底なしの元気を持つ小学生というべきか。僕はすべてのイベントをこなし、さらには合間にサッカーや野球などに汗を流すという快挙までやってのけた。

 もっとも、一番大きかったイベントは、僕の弟が生まれたことだろう。秋に生まれた僕の弟は、『秋人(あきひと)』とある意味なんの変哲もない名前を名づけられ―――今、流行のDQNネームとかよりよっぽどよかろうが―――我が家の人気者になっている。

 普通の子供なら、親から愛情が弟に向かってしまったことにすねてしまうこともあるだろうが、生憎、僕は普通ではないのでそんなことはなかった。むしろ、一緒に弟を可愛がっているぐらいだ。ただし、僕に世話を焼けなかった反動か、可愛がりすぎとも思えるが。将来が少しだけ心配である。

 そして、久しぶりにほっ、と息をつけば春。桜が満開の頃、僕は下に新しい一年生を迎えて、二年生へと進級していた。

 去年を懐かしむ間もなく次々にまたイベントが舞い込むのだろうな、と思っていた矢先、早速、舞い込んできた。しかも、それはイベントではなく、厄介ごとに分類されることだった。



  ◇  ◇  ◇



 進学してから一月ほど経とうとしたゴールデンウィークに入るちょっと前、ようやくクラス替え―――約半分が入れ替わった―――後のクラスメイトとも慣れてきた頃に僕は、放課後、先生から呼び出された。

 ちなみに、僕のクラスの担任は一年生の頃から変わっていない。

「おっ、来てくれたか、蔵元」

「呼ばれれば来ないわけにはいかないでしょう。さて、何用ですか? 先生」

 また、雑用ですか? と暗に聞いてみる。

 この先生、僕が精神年齢が高いことを知っていながら、奇妙に思うわけでもなく、むしろ、僕が特Aランクの特待生であることを利用して、僕のことを半ば雑用係として使うことが多い。

 小テストの採点なんてざらだ。特に小学生の低学年は、三つ以上の手順を踏む作業は無理だと思っていい。例外は、僕やアリサちゃん、すずかちゃんなどのごく一部だけだ。その中でも、僕は男ということもあって使いやすいのだろう。

 そして、今日もその類だろうと思っていた。しかし、その予想は意外な方向に外れていた。

「蔵元、突然だが、私は昨日、生まれて初めて死を覚悟したぞ」

「……何を言ってるんですか? 突然」

 突然と前置きされていながら、そう聞かざるを得ない状況。
 この平和な、平和ボケしすぎたといっても過言ではないこの日本でいつ死を覚悟するような場面があるというのだろうか。

「まあ、そう言うだろうと思っていたが、とりあえず聞いてくれ」

 そういわれたら聞かざるをない。なにより、僕自身、先生が死ぬ覚悟をするような羽目になった顛末を聞きたいと思っていたから渡りに船だ。

 そして、先生は僕に傍にあった丸椅子に座るように勧めてぽつぽつと昨日の出来事を語り始めた。

「出来事は昨日の放課後になる。昨日の放課後は、親御さんとアポが取れててな、会うことになってたんだよ。ほら、覚えてるか? 高町なのはって子。去年はお前と同じクラスだったんだが」

「ええ、覚えてますよ」

 クラスメイトぐらいはいくらなんでも全員覚えている。しかも、まだクラス替えしてからすぐの時期だ。忘れられるはずもない。もっとも、高町さんとはあまり僕と関わることはなかったが。

 その高町さんだが、今年はクラス替えで別々のクラスになった。確か、隣のクラスだっただろうか。

「あれ? でも、隣のクラスなら先生は担任じゃないから会わなくてもいいんじゃ?」

「まあ、そうなんだが。私は一年生の担任の中でリーダーみたいなやつをやらされてるんだよ。お前のせいで」

「なんか、今、ごく自然に僕のせいで責任を押し付けられたみたいな発言があったんですけど」

「ああ、事実だからな。お前がクラスをまとめてくれるから私の仕事が少ない。よって、私がなるべきである。以上」

「僕がまとめている事実はないんですが」

 確かに二年連続で学級委員長だし、色々世話も焼いているけど、まとめているなんて自覚はない。

「はっ、それはお前が他のクラスの状況知らないからいえるんだよ。私のクラスはおそらく、お前が仕切れば、唯々諾々と従うだろうよ。もう、去年の段階で上下関係は出来てるんだ。新しく入った連中も時間の問題だろう。お前がいるだけで、そうそう不都合は起きないだろうさ」

 そういえば、一年生の後半ぐらいから、厄介ごとが起きたら、まず僕に持ってくることが多かったような気がする。裁判長じゃないけど、お互いに事情を話して僕が裁断するなんてことはしょっちゅうだったような。

「というわけで、私も参加しなくちゃいけないわけだ。今となって思えば、担任だけにすればよかった、と後悔してるよ」

 どうやら、これはまだまだ本題ではなかったようだ。とりあえず、僕はコクリと頷いて先を促した。

「で、まあ、高町の親御さんと客室で出会ったわけだが……やけに親御さん両方ともぴりぴりしててな。こりゃ、何かあったのか? と思って隣の担任に聞いてみたら、どうやら高町のやつ不登校になってるらしい」

「不登校ですか……」

 僕は、先生の口から出てきたあまり聞き覚えのない言葉を思わず繰り返してしまった。

 不登校という言葉は僕にとって、あまり馴染みのない言葉だ。幸いなことに僕の周りには、前世も含めてそういう類のことはなかったからだ。

「ああ、もっとも、定義から言うと不登校は30日以上だからまだ10日ぐらいしか休んでいない高町に使うのは適当じゃないんだが……まあ、似たようなもんだ。それで、その親御さんは、高町が不登校になった原因を探りにきたってわけさ」

「風邪とか病気じゃないんですね?」

 小学生というのは抵抗力が低い。だから、特に弱い子は一週間とか普通に休んだりする。僕も小学生の頃は、何度かそういう子のお見舞いに行ったことがある。高町さんは、お見舞いに行ったことないから、去年は一度も休まなかったはずだ。それが、今年になって病気になってたまたま長引いてる、というオチを期待したのだが、先生はあっさりと首を左右に振ることで僕の希望を否定してくれた。

「それなら、何の問題もないだろうよ。だけど、来た以上は問題があったってことさ。なんでも、高町が学校を休む理由は『学校に行きたくない』んだと。その行きたくない原因は分からないらしいが。それで、学校に来たって訳さ」

「いじめがないか? って探りに来たってところですか」

「その通り」

 確かに学校に行きたくない、なんて言葉が娘の口から出たら、親としてはまず第一にそれを疑うだろう。
 しかし、である。僕が学んだ限りでは小学校低学年におけるいじめというのはそうそうない。

 いじめにも標的になる色々なタイプがある。弱いやつ、身体的特徴が目立つやつ、理由を挙げればキリがない。というよりも稀に原因がないいじめというのがあるから厄介だ。『なんとなく』でいじめの標的にされてしまうのだから。

 だが、それらを加味したとしても高町さんはいじめのターゲットにされるようなことはないはずである。彼女は、幅広くどのコミュニティーにだって顔を出していた。逆にどこか一つのコミュニティーと深く付き合うということもなかったけど。

「で、まあ、単刀直入に『いじめとかではありませんよね』と聞かれたわけだが……あのときの父親の目は、怖かったね。私も教師暦二桁になろうかって年で、いろんな親御さんに会ってきたけど、あんな目の人は初めてだ。どっかの社長さんよりも鋭い目をしてたよ。かといって、ヤのつく職業みたいな人にも見えなかったけどな」

「はあ、それはご愁傷様です」

 しかし、父親ともなれば娘は目に入れても痛くないほどに可愛がっているはずだ。しかも、仮にもこういうことに慣れていそうな先生を本気で怖がらせるんだから、溺愛ぶりが目に浮かぶようだ。そんな子が不登校になるなんて先生も本当にご愁傷様としか言いようがない。

「それで、お前に頼みたい用件なんだが」

 ああ、もうそれは言われなくても分かった。ここまで話して、僕が予想した以外の答えだったら、先生はただ愚痴りたかっただけってことになるから。この先生の性格からして、それはない。

「隣のクラスを探って来いって言うんでしょう」

 確かに先生だけでは辛いかもしれない。時々、いじめが起き、最悪の事態になった後、担任の先生のインタビューとかで、教師は事実を知らなかった、ということがある。高校生ぐらいまでのときは、それは嘘だろうと思っていた。だが、意外とそれは事実である場合が多々であることが調べてみて分かる。

 いじめの巧妙化。隠れたいじめというのは実に見つけにくい。しかも、先生も一日中、生徒を監視しているわけではない。つまり、本当に知らなかった可能性が高いのだ。知っているのは、いじめている本人といじめられた被害者、そして、近しい人間だけ。

 そして、事情を聞けるのはおそらく近しい人間だけだろう。いじめた本人もいじめられた被害者も自分からいじめられています、なんて口に出すことはないだろうから。

 だから、僕がやることは近しい人間の口を割ることだ。

「ああ、そうだ。よくわかっているじゃないか。まあ、隣のクラスの半分は元クラスメイトだから探りやすいだろう」

「そうなんですか?」

 確かに半分ぐらいは面子が変わったけど。残りの半分は全部隣のクラスになったのだろうか。まさか、そんな偶然あるはずがない。いや、でもよくよく考えてみれば、クラスの半分も同じクラスになるのがおかしいのか。五クラスあるんだから、同じクラスになる確率は五分の一。つまり、同じクラスの人間は平均で六人ぐらいじゃないとおかしい。

 だけど、僕のクラスはアリサちゃんやすずかちゃんといった十五人ぐらいは前と人間が変わらない。しかも、残り十五人は全員隣のクラスだという。そんな偶然があるはずがない。つまり、このクラス替えは意図的なものなのか?

「おや、お前は知らなかったのか? 月村やバニングスと仲がいいから知っていると思っていたが」

 だが、僕の混乱を余所に先生は知らないことが不思議というような表情を浮かべた。

「この学校のクラスは、成績順なんだ。私のクラスが一番上。次が隣ってな具合にな」

 今、明かされる衝撃の事実。確かに残った面々を思い浮かべてみると学力が高かったような気がする。

 しかし、これって実は生徒に知らせちゃいけないんじゃないかと思う。なにせ、近年、平等、平等と叫ばれる世の中だ。僕には信じられない話だが、小学校の運動会で手を繋いで徒競走とかもあるらしい。

 そんな中でクラスを成績で編成するなんて……

「まあ、秘密といえば秘密だが、公然の秘密ってやつだ。理事とかやってる親を持っている生徒は知ってる奴も多いからな」

 さすが、私立というべきだろうか。公立の生ぬるい小学校とは格が違ったようだ。

「はあ、分かりましたよ。僕は便利屋じゃないんですからね」

「ああ、分かってるさ。頼りになる私のクラスの学級委員長様だろう」

 先生は笑いながら言ってくれたが、改めて、先生にここまで信用される小学生って一体、と思ってしまった。



  ◇  ◇  ◇



 ああ、早くしないと、塾に遅れるな、と思いながら僕は夕焼けの紅に彩られた廊下を歩く。

 実は、去年の夏休みから僕はアリサちゃんやすずかちゃんの勧めで塾に行っている。

 その塾は特殊で、将来偏差値の高い学校を狙うための人の塾らしい。小学一年生にして、文章題が出てくるぐらいのレベルだ。学校の授業やテストでぬるい―――常に満点―――と感じている僕を見て二人が勧めてくれた。

 勉強は楽しいと感じるものではないが、せっかく前世を持っているという利点があるのだ。せいぜい、この頭を錆び付かせないように、と思って僕はその塾に通っている。

 今度から中学生レベルの問題でもやらせてもらうおうか。

 そんなことを考えながら、僕が下足場の入り口へと着くと、その場には見慣れた金髪と黒髪の少女が鞄を持って何かを話していた。僕の友人であるアリサちゃんとすずかちゃんだ。

 一体、どうしたというのだろう。彼女たちもこれから塾である以上は、早く帰るべきだとは思うのだが。

「あっ! 来た来た! ショウっ、遅いわよっ!」

「あ、アリサちゃん、ショウくんは先生に呼ばれてたんだから……」

 僕から声をかけようと思った矢先に僕を見つけて激昂するアリサちゃん。そして、それをなだめるすずかちゃん。いつものやり取りだった。

 さて、アリサちゃんの言葉から考えるに僕のことを待ってるみたいだったけど。

「ほらっ! 早く行かないと遅刻しちゃうわよ」

「え? え?」

 まだ状況把握が出来ないまま、僕はアリサちゃんに手を引かれ、下足場の自分の靴がおいてある場所まで連れてこさせられた。これは、早く履き替えろ、ということだろうか。

 なにがなんなのか、まったく分からない状況で、僕は置いてけぼりにされ、アリサちゃんとすずかちゃんは靴を履き替えている。

 ここは、大人しく靴を履き替えることにしよう。

 理解は出来ないが、自分がやるべきことを把握して、僕は靴を履き替える。僕が、靴を履き替え終わる頃には、既にアリサちゃんもすずかちゃんも履き替えて、出口の近くでやっぱり僕を待っていた。

「あのさ、僕には状況がまったく分からないんだけど」

「ショウのくせに鈍いわね。今日は塾でしょう? だから、あたしの車で一緒に行きましょうってことよ」

 なるほど、それなら、僕を待っていてくれた理由も分かる。だけど、急にどうしたんだろう?

「ふふっ、アリサちゃん、ショウ君が自転車で来てることに今まで気づいていなかったんだって」

「ああ、もしかして心配してくれたの?」

「そうよっ! あたしが勧めたのに帰りに事故にあったんじゃ、申し訳ないじゃない」

 なるほど、確かに塾が終わって帰る時間帯というのは既に日が暮れている。昼間よりも事故にあいやすいのは事実である。

 もっとも、最初は車の予定だったのだが、母さんが妊娠していたのだから仕方ない。親父が帰って来る時間には少し早いし。結果として、僕は自分の手で行くしかなく、となれば、小学生の移動手段なんて歩きか自転車ぐらいしかない。

「だったら、早くあたしたちに言えば、送ってあげたのに」

 そうは言っても、僕も言えば送ってくれるとは思っていなかったのだから仕方ないだろう。

 というよりも、彼女たちが僕のことをここまで親しく思ってくれていることに意外感を感じている。

 確かに、僕たちが友達になったときから話す回数は増えたし、塾では三人で固まって授業を受けているようなもので、他のクラスメイトよりも親密感はあったかもしれないが。

「ほら、早く行くわよっ!」

 だが、ここでぐだぐだ悩んでも仕方ない。せっかく乗せて行ってくれると言っているのだ。しかも、すでに僕が乗ることは決定事項になっているみたいだし。それに断る理由もない。

 贅沢を言うなら、冬休みに入る前には気づいて欲しかったということぐらいだ。冬の自転車は寒かったな。

 そんなことを考えながら、僕はアリサちゃんとすずかちゃんと共に車に乗り込むのだった。



  ◇  ◇  ◇



 さて、先生に高町さんについて調べてくれ、といわれた次の日の夕方。なぜか僕は『高町家』という表札のついた門の前に一人で立っていた。理由は言わなくても分かるだろう。先生の差し金だ。

 休み時間を精一杯使って隣のクラスを調べた僕だったが、その結果を先生に報告に行くと、その結果を高町家に持っていて欲しいと頼まれたわけだ。表面上は、高町さんを心配してお見舞いに行った同級生として。結果は分かっているのだから先生が直接行けばいい、といったのだが―――

「保護者が教師の調査結果を信じるわけないだろう」

 ―――という言葉と共に一蹴された。

 確かに公式的にアンケートをとったわけでもないので、普通に先生が行っても理解されないことは間違いない。だから、僕に行けというのは何か違うような気がするのだが。

「お前以外に頼む奴がいないんだよ。頼む」

 先生からそうやって拝み倒されては行かないという選択肢はなくなる。僕は仕方なく内申点のアップと引き換えにこうやって高町さんの家へとやってきたわけだ。

 いつぞやの屋敷と違って僕の家と同じような一軒屋だ。僕は、躊躇することなく真っ白いインターフォンのボタンを押した。

 ピンポーンというありふれたチャイム音がなって少し経った後、『はい、どちら様でしょうか?』と聞いてくる女性の声。高町さんの声じゃなさそうだから、おそらくお母さんだろうか。そう思いながら僕は質問に答えた。

「僕、高町さんの同級生の蔵元翔太です。高町さんが休んでると聞いてお見舞いに来ました」

『あら、なのはのお友達?』

 同級生が来たというだけで浮かれすぎではないだろうか、と思わせるほど明るい声で答えてくれる高町さんのお母さん。その声がプツッというインターフォントの通信が切れたと思わせる音がした後、家の中から廊下をスリッパで駆けるような音がして、家のドアが開いた。

「いらっしゃい、えっと、蔵元くんだったかしら?」

 そう言いながら外に出てきたのは、若い女性。おそらく、インターフォンに出たのはこの女性だと思われる。

 もしかして、僕はとんでもない間違いをしてしまったのではないだろうか。どうみても、彼女は高町さんの母親というには若すぎるような気がする。僕が見た限りでは、二十代中盤ぐらいだろうか。

 高町さんのお母さんと口に出さなくてよかった、としみじみ思う。

「わざわざ、ありがとうね。なのはに会っていく? 中に入ってちょうだい」

 なぜか、家の中に招かれた。高町さんの状況からして、友達が来ればもしかして、という希望を持ったのかもしれない。

 はて、なんにしてもこれは好都合だ。ここで玄関先で用件だけを聞かれたとしたら、こんなところでシリアスな話を延々としなければならないのだから。高町さんのお姉さんは何か勘違いしているかもしれないが、ここはこの勘違いに乗っておこう。

「それじゃ、お邪魔します」

 高町さんのお姉さんに導かれるまま、僕は高町家の敷居を跨ぐのだった。

 
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