| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一部
  バカンス

 伊織魔殺商会。

 言わずと知れた日本のカンピオーネの一人、名護屋河鈴蘭の魔術結社である。三月にあった、鈴蘭王とサルバトーレ卿の戦闘から二ヶ月たった現在、この商会は世界の裏に生息する者たちにとって、無視出来ない程の重要性を持つまでに至っていた。

 それは、件のカンピオーネ、名護屋河鈴蘭の持つ権能のためだ。

 あの戦いのあと、すぐに鈴蘭は自身の情報を賢人議会に売りつけた。お値段は十億円。本当なら自力で調べたかった賢人議会であったが、彼らのガードは固く、どんな方法でも情報を入手することは出来なかったのだ。鈴蘭自身が直接賢人議会の本拠地に空間転移してきて、『私の権能の情報、いくらで買ってくれる?』と威圧感タップリにニヤリと笑いながら言われたら仕方がない。

 カンピオーネが直接交渉しにきているのに追い返す訳にもいかないし、かと言って、下手に安い値段を提示すれば、『私の情報ってそんなに安いんだ?ふ~ん・・・』などと脅してくるのだ。哀れにもその交渉を担当した者が、泣きながらも、提示出来るギリギリのラインである十億円で納得してもらったのである。

 ・・・だがしかし、彼女の本当の目的は、たった十億円(・・・・・・)などというはした金(・・・・)ではなかったのである!

 数日後、賢人議会が鈴蘭の権能【無限なるもの(The Infinite)】の情報を世界中に公開するのと同時に、彼女は世界各地の魔術結社に対してカタログ(・・・・)を送りつけた。

 キャッチコピーは、『ライバルに差をつけたくないですか?』

 其処に記されていたのは、オリハルコン・ホーリーミスリル・ダスマスカス鋼・ヒヒイロカネetc・・・伝説中の伝説な金属で出来た武具の数々。更には、世界樹の枝など、魔術師が血涙を流して欲しがるような物ばかりだったのだ。

 当然ながらお値段はバカ高い。一流の魔術結社なら一点。超一流の魔術結社ですら、二点買えるかどうかという値段だった。しかし、賢人議会によって発行された鈴蘭王の権能を考えれば、本物なのは確実であった為、世界中から注文が殺到したのだ。瞬く間に、伊織魔殺商会のオーダーメイド商品を持っているという事は、一種のステータスになってしまった。

 哀れ、賢人議会は伊織魔殺商会が世界に進出するためのダシにされてしまったのである。

 完全受注生産限定で、一点一点デザインも素材も違うオーダーメイド。神話に出てくるような武具たちが、自分がデザインした姿で生まれてくるのだ。世界にたった一つの一点もの。人気が出ないわけがなかった。

 材料により値段は変わってくる。ホーリーミスリルなどが最低価格で、最高価格はオリハルコンやヒヒイロカネ。正直、オリハルコンなどは、一体誰が買えるんだよ!?と突っ込みたいくらいのお値段であった。全てが一括で同じ値段になってしまうと、ライバルとどちらが良い物を持っているかの競い合いが出来なくなるため、こういう値段設定になったのだ。

 全てを権能によって創っているため、元手はタダ。輸送費すらも、鈴蘭自身が空間転移を使用して直接手渡しするため、タダ(途轍もなく高価な代物なので、盗難などを警戒している)。人件費もタダ。在庫を抱えるなどということもない。・・・これで、儲からない訳が無かった。

 五月現在、名護屋河鈴蘭は、世界の表と裏全てを含めた富豪ランキングでも、トップを独走している状態であった。

 その集めた資金を惜しみなく使って、各地に孤児院を建てたり、戦争被害者の子供を助けたりしているのは、やはり彼女も親がいない辛さというものを知っているからだろうか?




 さて、これ程の影響力を世界に与えている彼女たちは今・・・バカンス中であった。
 
 

 
後書き
説明回のため短め。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧