自分の荷物
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第三章
「何と、これは」
「どうしたんだ?」
「いや、これ俺の荷物ですよ」
こう言うのだった、驚いた貌で。
「これは」
「待て、じゃあその溺れ死んだ商人は」
「俺です、俺そういうことになってたんですね」
「ああ、海でぷかぷか浮かんでいた荷物だったが」
「この近くで」
「そうだよ、じゃああんた元々は」
「商人です」
実際にと答えた。
「あちこち旅をして」
「商売をやってるのか」
「はい、冒険をして」
「そうなんだな」
「この国に流れ着いたんですが」
「遭難してか」
「いや、荷物はもう何処かに行って」
海に流されてというのだ。
「ないと思っていましたが」
「それがかい」
「ここで見付かるなんて」
「運がいいな」
「全くですよ、やっぱり俺は運がいいです」
ここでもこう言うのだった。
「アッラーのご加護があります」
「それもかなりみたいだな」
「いや、俺の荷物が見付かったなら」
シンドバットはさらに言った。
「もうです」
「どうするんだい?」
「国に帰ってもいいですね」
自分のというのだ。
「そうしても」
「ああ、生きてるからな」
船長も答えた。
「荷物も見付かったし」
「それじゃあ」
シンドバットは故郷に帰る船が来たらそれに乗ることにした、それまでは人夫として働き船が来てその船に乗ることになったが。
幸い名馬を孕んでいる母馬も連れて帰ることが出来た、それで船に乗る時に見送りに来た漁師に笑顔で話した。
「荷物が見付かってそれが縁で帰ることが出来て」
「しかも馬も連れて帰られるからか」
「俺は運がいい」
満面の笑顔で言うのだった。
「アッラーのご加護を感じる」
「そうだな、確かにお前さん運がいいよ」
漁師も遂に認めた。
「かなりな」
「そうだろ」
「ああ、三千世界で一番かもな」
「俺自身が言ってる通りな」
「そうかもな、じゃあこれからだな」
「ああ、帰るな。若し運がまた向いたら」
シンドバットは両親に話した。
「その時はな」
「会おうな」
「そうしような、俺は運がいいからな」
「また会えるな」
「絶対にな」
笑顔で話してだった。
シンドバットは馬と共に船に乗って故郷に帰った、そして後日仕事でこの国にまた来た。そしてそこでも俺は運がいいと再会した漁師に言ったのだった。
自分の荷物 完
2023・10・13
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