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傍にあった日本の暮らし

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第二章

 ジュリアーノは畳の居間でだ、座布団に座って卓で裕子達と日本のお茶を飲みお菓子を食べながらゼミのことを話す中で言った。
「こんな生活夢みたいだよ」
「だから大袈裟でしょ」
「だって僕寮ではだよ」
 大学のそこではというのだ。
「ベッドで寝てテーブルに座って」
「そうしていて」
「コーヒーを飲んでるんだよ」
「イタリアにいた時みたいに」
「ミラノにいた時みたいにね」
 生まれ故郷のというのだ。
「そうしているんだよ」
「だから言うのね」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「日本ならではのお家の中にいられるなんて」
「嘘みたいなのね」
「奈良にいても」 
 日本の古都にというのだ。
「そんな生活出来ないんじゃないかってね。座布団とか畳も」
「そうしたものもなの」
「周りのこの壁や障子、襖だって」
 こうしたものもというのだ。
「ないからね」
「驚いているのね」
「廊下だって」
 家のそれもというのだ。
「和風だしね、古都でも日本はないのかって思っていたら」
「それが違っていたっていうの」
「こんなに身近にあるんだよ」
 驚きと喜びを隠せない顔での言葉だった。
「留学するだけあって僕は日本がね」
「好きなのね」
「そうだよ、そして奈良県というね」 
 今自分達がいるこの場所はというのだ。
「まさにだよ」
「古都で」
「日本があると思ったら。確かに一杯あるよ」
 このことは事実だというのだ。
「大仏さんや春日大社に阿修羅像に正倉院に」
「全部奈良時代よね」
「唐招提寺だってね、ちょっと行けば大和郡山城に天理教の神殿もあって」 
 こうしたものの話もした。
「日本はあるよ、ただ暮らす場所は」
「現代風で」
「そう、西洋風になっていて」
 それでというのだ。
「畳も障子もね」
「なかったっていうのね」
「それがだよ」
 彼が知る日本の暮らしはというのだ。 
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