吸血鬼と国境
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第三章
「それじゃあね」
「吸血鬼はいないとか言うとか」
「いる筈がないわね」
「そうよ、いるから」
ヒカリは断言した。
「歴史でも証明されてるから」
「軍隊が報告してるのよね」
「さっきお話に出たオーストリア軍でね」
「その頃は神聖ローマ帝国だったけれど」
「そのお話あるのよね」
「アルノルト=パウルってね」
ヒカリは眉を顰めさせて言った。
「いてね、その人がいた村でね」
「かなりの人が吸血鬼になって」
「それでよね」
「片っ端から退治して」
「軍隊が報告書あげたのよね」
「早過ぎた埋葬とかじゃないから」
ヒカリは言い切った。
「そうだとか言う人もいるけれど」
「違うわよね」
「それにしては人多過ぎるし」
「当時確かに多かったのよね、早過ぎた埋葬」
「それが」
「そう、あってね」
それででとだ、ヒカリはそちらの話もした。
「棺桶の中で死んだりとか無理に這い出てね」
「吸血鬼と間違えられるとか」
「あったのよね」
「昔は結構」
「ええ、けれどそれにしては」
アルノルト=パウル事件はというのだ。
「数が多過ぎるし」
「軍隊がかなりよね」
「綿密に報告書書いてるのよね」
「正確に」
「お医者さんもね」
軍医のことである。
「そうしているから」
「間違いないわね」
「アルノルト=パウルは吸血鬼で」
「吸血鬼は実在しているわね」
「そうよ、これはバルカンのお話で」
そうであってというのだ。
「お隣だから」
「確かセルビアよね」
「本当にブルガリアのお隣で」
「すぐそこよね」
「他人ごとじゃないわね」
「同じスラブだし」
民族的にというのだ。
「いや、本当にね」
「すぐそこのお話で」
「そのお話を知らない筈がなくて」
「ヒカリちゃんも言うのね」
「今こうして」
「そうよ、色々科学を出して否定しようとしても」
それでもというのだ。
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