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俺のヴィジランテ合衆国

作者:連邦士官
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 真夏の炎天下の中、俺は豚に成り下がってしまった哀れなアメリカのカケラ達にアメリカの意志を告げている。あの少女は氷結系の個性持ちだったようでよく働いてくれている。氷結系の個性により、会場は涼やかではあるが俺の周りにはそんなものは必要ない。肌が日で焼けようとも俺は少しの悲しみと大部分の怒りを持って演説を再開していた。州議会選挙活動だからだ。大まかな見立てだと俺は圧倒的な不利ではあるが、熱狂的な南部と北部の肉体労働者、低賃金層、移民層、有色人種からの支持のもと、何かがあれば勝てると見ている。

 「何を言われようとも我々アメリカには夢がある!ドリーム・アメリカ!アメリカン・ドリーム!再び、世界の治安が壊れようとしている!しかし、君たちには自由の民兵がいる!間違った政府を打倒するのは正しいアメリカの選択だ!国家による暴力の独占ではない!なぜならアメリカにはアメリカ合衆国憲法修正第2条がある!この条文によって正しい自由意志において個性の使用は認められている!!アメリカには正しい民兵が必要だ!アメリカには正しいアメリカ(国民)が必要だ!世界が紛争やテロに溢れてる!俺はそれらを殴り飛ばす!何故ならヴィランを殴り飛ばすのは気持ちがいい!ヴィランとは君たち正しいアメリカ(家族)を正しいアメリカ(国民)を!正しいアメリカ(移民)をセコく儲けた金と金による権力でねじ伏せようとする!今の政府は正しいアメリカ(国家)か?知能系個性は使用を禁止されずに自由使用されて、彼らインテレクチュアルと名乗る集団は愛国者(パトリオット)と呼ばれるが富の99.99%を握るわずか0.1%程度の集団だ!知能系個性が使用を制限されないのに、他の個性は制限されている!これは政府による規制だ!アメリカは自由だ!政府が国家を作るのではない!アメリカはアメリカンがいて、アメリカの信念を持つ時にそこに作られる!何が今、必要だ!」
 俺が叫ぶと聴衆は口々に絶叫する。

 「「「「「「「アメリカには変革が必要だ!!」」」」」」」 
 そして、個性規制緩和や不法移民が下げている低賃金、企業努力としての低賃金を補うためのチップ制度廃止などプラカードが上がる。

 「そうだ!今の世界には変革が必要だ!若者が大学に行くには軍や警察で働いてから行くことが多くなっている!政府が軍や警察をヴィラン退治で出動させ何人殺した!若者が死に、セコく儲けるやつらが生き残り、安い賃金を不法移民で成立させ、不当な競争によりアメリカ国民が被害を受ける!アメリカ政府がアメリカ企業に奴隷を作らせるサイクルを導入している!俺はそれをぶっ壊す!この国をぶっ壊す!そして、またアメリカを作る!アメリカは何度でも蘇る!能力がある若者が再び街を歩けるようにする!まず、海外に移転された生産拠点も戻し、運輸の給料も上げる!再びアメリカは蘇る!アメリカは蘇り続ける!第一次産業、第二次産業、第三次産業をアメリカに取り戻す!この国の国民にアメリカを取り戻す!金融などには課税だ!アメリカを使い儲けてきた奴らにも課税だ!99.99%の富を握る奴らから、アメリカ人に富を取り戻す!アメリカは再びアメリカになる!わかったか!」
 アメリカの合唱が木霊する。アメリカだと実感する。

 「I Have a Dream!!(俺には夢がある!)今日の俺は、偉大なる自由を抱える米国史の中で、こんなにも自由を求める最も偉大な独立戦争以来の最も自由を求めたアメリカ人達が集まった日として、再びアメリカ人に自由が戻り歴史に残ることになるこの集会に、理想を共にする真の自由を愛する愛国者(パトリオット)と共に参加していることを誇りに思う!数にすればたったの2万8000人しかし、一歩目としては十二分だ。すべての道はアメリカに繋がっている時代を取り戻し、自由を掴む!!」
 俺の演説に歓声が上がる。個性を空にぶっ放すやつもいる。これがアメリカのあるべき姿だ。階級や富なんかはそんなものは大事じゃねぇ!努力した分だけアメリカンはデカくなれる!国土と同じだ!俺が大統領になれば世界はアメリカになり、アメリカは世界になる。くだらねぇ訴訟をするような弁護士や楽して儲けようとする生っちょろい奴らは全部、思い知るのだ星条旗とは何かを!アメリカはアメリカだ!


 「この国の自由が奪われた時に、ある偉大なアメリカンが、この国にあった奴隷解放宣言に同意した。 今は、そのアメリカンを象徴する像がある記念館は単なる記念館になった!それは、奴隷として繋がれた身にあった、彼らの長い時間に終わりの鐘を鳴り響かせた。喜びに満ちたはずだった!夜として訪れたのだ。再び企業は自身の有利な条件で奴隷を作り出した。今ココにいる者たちだ!不当な競争と自由を求める活動はビジネスに成り果てた!」
 聴衆は怒りの声を上げる、当たり前だヤワな奴らに搾取される本来なら強者になれるかもしれなかった者が大多数だからだ。機会は平等に与えなければならない。そうじゃなければ弱者が強者になれる可能性が閉ざされた自由がない社会になる。俺の理想は真の自由だ!
 

 「時間を経た今、アメリカンは自由ではない!アメリカンは、この管理された管理社会で蜘蛛の巣のように広がった!インターネットなんかの広大な電子の海の規制がくだらねぇ社会システムを助長している!ビジネスで得た、ビジネスで同胞を売った時にだけ得られる素晴らしき愛国者(売国奴)が整えた箱庭に住んでいる。まるで路地裏の日銭欲しさに身体を売り殴られて残飯を漁るこの国ではありふれたホームレスのような生活を送来る羽目になっている!違うか!」 

 「合ってる!」と次々に賛同の声が上がる。当たり前だこの国は狂っている!「この自由は仮初だ!」「個性開放万歳!」「無個性が障害者扱いは間違ってる!」「クソみたいなインテリを潰せ!」口々に声が上がる。そのとおりだ。アメリカという大国のバランスとアメリカンドリームを失った世界は競争社会から闘争社会に変わった。個性発生時の社会は俺が求めた形かもしれないが、子どもの保護を忘れている。スパルタが子どもを厳しく教育と保護したように、それさえ出来ていて政府が残れば素晴らしい社会だった…。理由のわからん連中が、今の子供の教育に入り込んで次世代を洗脳する…ガンパウダーで洗脳されたジャックのように、だから、俺は理由のわからん連中を徹底的に、また徹底的に叩く。ジャック!お前のミームも俺のミームにいれる!これにより、ミームは加速する!

 これこそが俺の立てる真の自由、ガンズ・オブ・ザ・パトリオットだ!当たり前だ!市民団体を介して二大政党が個性というガンを支配してやがる。これはアメリカ建国の理念に反する!政府が間違っていても個性による抵抗が出来なければ善意の民兵は存在しない!つまり、西部時代より前の植民地時代だ。人種や思想なんか関係ねぇ!アメリカはアメリカのプロパティを守る国家だ!俺のアメリカは暴力を管理しねぇ!大多数の国民が善意の民兵として政府を取り囲むのなら、それはそのアメリカが間違ってる!そして、民兵から新しいアメリカが生まれるはずだ!これが俺の自由による新陳代謝だ!間違っていたならば入れ替わり続ける愛国者!これならば真のパトリオットになり、アメリカは再びアメリカとして再生する!


 「ただ生きるという小さなパンとスープを得るために、闘争や日陰でしか生きれない者たちの為に俺はここに来ている!奴隷解放や人権は、すべてのアメリカンが、人種も思想も収入も職業も乗り越えて最大限に経済をできる環境を整えたものだ!生命と自由、幸福の追求というアメリカンドリームを叶える不可侵の権利を保証され、それらを土台に働けば働くだけ金を貰えるという約束だったはずじゃねぇか!だがな!今日のアメリカが、俺が知る南部に関する限り、この契約を不履行にしてることは明らかだろうが!アメリカは神に誓った不条理だが経済的でアメリカをアメリカたらしめるこの神聖な義務と責任に対して、自称合理的経済人たちと今のアメリカ政府はそれを放棄して権利だけを主張した!今のアメリカ政府と議会はそこら辺の一山幾らの市民団体、環境団体、労働組合程度の組織に成り下がった!だからこそ、俺はアメリカをアメリカンに取り戻す!ここにいる全員の親や祖父母がしたように!それより前の世代がしたようにこの国に!正義と自由の鐘を鳴り響かせる!自由の軍靴で寝ている経済人のケツを蹴り上げて、そびえ立つクソの山を踏み鳴らし、黄金の穂波がうねるあのアメリカを!あの日のアメリカを!あの時代のアメリカを取り戻す!邪魔するやつはぶん殴る!それだけだ!」
 会場は一層盛り上がる、そうだ!ミームはこれだ!社会を変える!変わらない日々ではない、変わろうとするから変わる!ミームは引き継がれる。ミームは文化となり、土を耕し文明へと進化する。そして、土から生まれた者たちが気に入らないやつをぶん殴る!聖域なき構造改革だ!

 「気に入らないやつはぶん殴るんだな!」
 背格好から察するに女か少年がステージに上ってきた。警備員たちがこちらを向くが来なくていいと手で止める。俺はこういう拳で交わす討論、いや闘論が大好きだ。力と力のアウフヘーベンが生まれる…本当に指導者同士が最前線に行って兵士の代わりに殴り合いをし、夢を拳で語り合えば戦争は変わるだろう。戦争から人間を切り離してロジスティクスにした結果生まれたのはクソのような管理社会、つまりはファシズムだ。自由は生まれながらにあるのならば自由に殴り合い語り合えば良い。拳は嘘をつかない…たとえ弱者でも拳を振り上げて相手に伝えようとする努力をすれば夢はかならず叶う…。

 「そうだ!I Have a Dream!!(俺には夢がある!)古き良きアメリカと自由!闘争と意思の明確化!管理社会の破壊と個性を管理するファシズムのような世界をぶっ壊す!もう一度言う!アメリカをぶっ壊し!アメリカを再び創造する!個性の使用は自由だ!合衆国憲法修正第2条により保証されている!つまり、お前が俺を殴るのも自由だ!気に入らなければ拳で闘論すればいい!金があるやつがより金を持ち、金がないやつを搾取する!そんな狂った社会を終わらせる!ニューハンプシャーの広大な丘の頂点から自由の鐘を鳴らしてやる!ニューヨークの雄大な山々に伝わって自由の鐘が鳴るだろう!ペンシルベニア州の高地アレゲニー山脈までもが自由の鐘を鳴らすだろう!無論、雪を頂いたコロラド州のロッキー山脈も自由の鐘を鳴らす!狂ったリベラリズムの象徴のカリフォルニアの湾曲した海岸線からもだ!南部のジョージア州のストーンマウンテン、テネシー州のルックアウトマウンテン、ミシシッピ州のすべての丘から鳴り響くだろう!まさに、I Have a Dream!!(俺には夢がある!)I Have a Dream!!(俺には夢がある!)I Have a Dream!!(俺には夢がある!)Make America Freee Again!!(自由なアメリカ人を再び創造する!)Who will do that?!!(それは誰がやるんだ?)That's what americans do!(俺たちがアメリカ人だからやるんだよ!)Because i am American!(何故ならば俺はアメリカ人だからだ!)Let's Parley!」
 その言葉で相手が一気に何かを出す…ちらりと見えた銀色、アメリカらしいS.A.A(シングル・アクション・アーミー)それも二丁だ。アメリカの銃だ。古き良き銃だ。

 「貴様は間違っている!それでは世界に戦争を広げるだけだ!沢山の弱者が死ぬ!アメリカはそれを許容しない!」
 相手は銃を撃つが俺はステージの床を足で蹴り上げて銃弾を防ぐ、そして、そのままジグザグに前転するように近付き、タックルをキメる。

 「だが、お前も暴力で俺を変えようとした…またお前も俺の仲間だ…。アメリカは死んでいなかった…アメリカは生きていた…戦いは終わらない。アメリカ人の心の中にアメリカンスピリッツが生きている限り!俺を殺したければ着いてこい!いくらでも俺の背中を狙えるぞ。アメリカはそうやって敵すらも内に秘めてきた。お前もまたアメリカだ。気に食わねぇ俺をぶっ倒すぐらい強くなれ!それが俺の政策だ!」
 暗殺者を立ち上がらせてホコリを払うと外套で見えなかった顔があらわになる。なんだ、少女じゃないか。

 「握手と行こうぜ兄妹。俺はアメリカを変える。変革をもたらす、お前も俺を殺したいなら自己変革をしろ!それもアメリカだ。お互いのアメリカ(エゴ)のぶつかり合いの先にアメリカは開かれる…強いほうがまたより良いアメリカを作り上げる。いわば同志だよ。このアメリカを変える。」
 俺は葉巻を出して落ちた金属片と金属片を思い切り擦り合わせて火を点ける。ハバナやニカラグア、ドミニカ、キューバ色々な国の味と香りがする。だからこそアメリカに相応しい。葉巻会社もアメリカに作らねばならないと固く誓った。

 「私はそんなことを良いとはいってない!貴様が勝手に言ってるだけだろ!」
 少女が叫ぶのに背中で答える。ただそれだけだ。群衆たちは一斉にアメリカ国歌を歌っている。葉巻の余韻とアメリカ国歌の余韻はバーボンと南部のジャーキーぐらい合うものだ。

 「否定したければ俺をぶん殴れば良い。ただそれだけだ。」
 俺は会場まで乗ってきた馬に乗り、ここを後にする。時には車よりも馬が良いときもある、バイクが良いときもある…アメリカの偉大な発明の車が良いときもある…。今日は馬が良いときだ。ケンタッキー州の農場で買った馬を駆り、事務所に戻ることにする。俺はイージーゴアよりサンデーサイレンスのほうがアメリカに相応しいだろうなとふと思いながら傷だらけの英雄より血統の正しさを主張する奴らにはわからないだろうなと高笑いをした。

 スーツからスキットルを出すとバーボンを飲み干した。


 
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