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偽マフティーとなってしまった。

作者:連邦士官
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外伝 ダブルオー


 西暦の最果て、この世界は何もなくても上手くいくのだろうか?軌道エレベーターのパーティーの最中に居た俺は思った。これはなんのことか知らないが、このままでは死ぬかもしれない俺は肥田慎吾ではなくなっている。スーツの中に入っていた端末を見るに、俺の今の名前はキタ・ユキオらしい。モラリア共和国のPMC兼武器会社の21代目、そして最近になって急速な事業拡大をしてきたやり手の御曹司。

 グラスに映る顔は東洋人らしい顔立ちだが、何故このパーティーに呼ばれてるかわからないな。しかし、上を見ると見覚えがある恰好、あの軍人の姿は……もしかして、ソレスタル・ビーイングに襲撃されるのか?そうだとすれば王に付いていくより他はない。それが一番生き残るのに最適なはずだ。今は俺が生き残ることに注力しないといけない。俺は死ぬのがとても嫌だ。それにこの世界は明確にハッピーエンドのはずだ。

 俺は何もする必要がないのだから、生き残ることだけを考え続ける。生き続けるには今は王の後ろを追いかけるしかない。原作通りに行く可能性はまだわからないのだ。王の後を追えば死ぬことはないだろう。俺はグラスを置いて会場を歩く。テーブルナイフとフォークは忘れずに何本か回収した。素人の俺に使えるかはわからないが敵意を感じ取っているから。

 「これが宇宙か。」
 窓に広がる蒼さがある藍色にも見える黒い世界に感動をする。しかし、地表に降りなければどうにかなってしまうだろう。それにしても、名前が天柱、発音が天誅に繋がる語感に正に皮肉だと思いフフッと笑ってしまう。地球の命を吸い出すストローにも見えるこの建物と……そろそろ襲撃が始まるかもしれない恐怖が混ざり、高揚を作り出していた。

 階段を移動しながら王を探す。しかし、なかなか見つからない。が、程なくして見つけたのは良いが、そこで頭が広がるかのような激痛。気圧の問題かはわからないが倒れ込みそうになる。

 「クッ。」
 ラジオのチャンネルをグルングルン回してチューニングするがごとく動き回る。そして、衝撃が来る。そのまま俺は王留美の方に飛ばされた。

 「なに?」
 女性の声に合わせるかのごとく、王留美が「ガンダム。ガンダムキュリオス。」と呟いたのと同時に王留美に俺は衝突して、いきなりの背中から成人男性がぶつかったのもあったのか留美は思い切り吹き飛ばされる。頭の痛みが取れてきた。なんだったんだ?アレは?まぁ、どうせぶつかったのは王留美だし問題ないだろう。スメラギアル中オバハンとか焼け野原ひろしとかなら問題だけど王留美だし。ナラティブのミシェルとは大違いだけど最初から金持ちだから、だとしたらドロシーの方が近いのか?ドロシーの方が眉毛を除けば顔が整ってる気がする。成長したら兄貴はコードギアスのシンクー似のイケメンになるけど、王留美とフェルトは……。

 なんでスメラギおばさんが一番なんかいい感じに成長してるのだろうか?一番はソーマ・ピーリスかマリナ・イスマイールかもしれないが。まぁ留美はタイム・アウトするし、俺には関係ないし、多少失礼でも大丈夫だろ。吹き飛ばした形だけど悪いのはアレルヤだし、ガンダムマイスターが悪いよガンダムマイスターが。俺は悪くない。

 「すみません、王留美さん。私はキタ・ユキオと言いまして、迷惑をおかけしました。医務室にエスコートさせていただきたい。」
 王留美が無事なのはたまたま居た恰幅が良い男性の下腹部のデリケートなゾーンに除夜の鐘つきみたいに頭をぶつけた事で衝撃が吸収されたからだろう。なんであんなに吹き飛んだんだろうか?

 「助かるよ君。私はユルゲン・リーンハルト・リュッゲベルク。AEUから招待された男さ。」
 何故かボケっと放心状態の留美ではなく、体型がゴップで髪型がイオリアで、顔だけはデルマイユ侯のような……それってほとんど太ったウェリッジ侯爵じゃないのか?似たようなヒゲと髪型してるこの白髪の男性が返事をしてきた。

 「はい、なるほど…。」
 あまり動かない王留美にユルゲンも気付くと肩のあたりに手を置いて留美の骨を思い切り鳴らした。ゴキッと音がなると目を見開いた留美がこちらを見てきて俺に詰め寄る。

 「あなたレディーに対して体当たりなんて!待って、私感情で言葉を今、発した?」
 何言ってんだコイツ、メンヘラ進みすぎてるじゃん。巨神兵ぐらい手遅れだよ。あっちは早すぎたけどこっちは遅すぎたのかもしれないけど。

 「レディー、気にすることはない。私はユルゲン・リーンハルト・リュッゲベルク。AEUで再生医療を研究しているものだ。医師資格も工学博士も医学博士も持っている。レディーに怪我はない。」
 毛がないおじさんのせいでこうなってるからな。ユルゲンじゃなく、宇宙に隠れたイオリアのせいだ。全部ヴェーダとイオリアが悪いんだ。

 「この問題は私と彼の問題です。キタ・ユキオ!!私にこんな感情を出させた責任を感じているなら私についてきなさい!」
 なんだよ、ルイズか三千院ナギぐらい強引だよお前。どっちかというとそれはネーナの役割だろ。お前は力も実力もないけど金だけはある愉悦神父みたいなものだろうに。

 「責任はテロリストに、ソレスタル・ビーイングにあるよ。レディー、ぶつかったのはすまないが責任はソレスタル・ビーイングとテロリストだ。俺は謝ることしか出来ない。」
 お前の兄貴、懐に手を入れてるがなんか持ってるんじゃないだろうな?俺はナイフとフォークしか持ってないぞ?出来るのはテーブルマナーぐらいだ。胸に突っ込んだならそりゃあいっぱい謝るけども、テロリストの攻撃の衝撃の揺れで腰にぶつかっただけだし、不可抗力でしょ。

 「じゃあ、数回私に付き合いなさい。」
 おっさんの下腹部にダイブした女には見えないほど強気だな。とりあえず頷いておく。面倒事になったが、人革連の兵士たちが来て「安全になったので地上に降りてください。」と誘導されて、人革連の護衛付きでAEUに向かう飛行機に乗った。何故か王留美とユルゲンも付いて来ている。ユルゲンはともかく、何故留美にストーキングされてるんだ?

 「すみません。なんでお隣に王留美さんがいらっしゃるんですか?」
 それを聞いてみたが黙って隣に座っている…コイツなんだよ。このままなら髪型がキングダムや三國志に出てくるような兜みたいな形になるくせに。縛ってポニーテールにしたら篠ノ之箒みたいな髪型だろ。何故無視するくせにずっと隣に居るんだ?報復のためか?時間がちょっと経ってから王留美が話しかけてきた。

 「あなたも協力者ですか?」
 違うけど違うと言ったら殺されそうな雰囲気を感じるので黙って頷いてみる。向こうは言い当ててやったぞとばかりに笑顔を浮かべている。お前の勘違いだけどな。深読みしすぎなんだよ。

 「やはりね。ソレスタル・ビーイングの名前を出した時に合図を送ったんでしょ?ガンダムと私が呟いたから私を吹き飛ばして騒ぎを起こして、協力者を隠そうとした。それにしてはレディーに失礼な事をするわね。調べさせてもらったけど、あのモラリアで急拡大するなんてどんな指示を一族が受けたのかしら。お聞かせ願いますか?」
 好奇心に満ちた目でこちらを見るがそんなものはない。適当に言って誤魔化すのも良いだろう。機内でニュースが流れるイオリア・シュヘンベルグの映像を指さして告げる。

 「イオリア・シュヘンベルグには友人が居た。一人の友人がな。その友人はイオリア・シュヘンベルグが間違った道のりを行くならば止める力が必要だと、ある一族に命令を出した。その一族は国を転々として、いつしかどこの国にでも入れるパスポートが発行されている紛争と戦争に最も近い国に住み着いた。それが我々の一族だ。君達とは別プランの存在だよ。だからこそ、君達が知らないイオリア・シュヘンベルグを知っているかもな。」
 そんな事を話していると飛行機は着陸態勢に入るとアナウンスが流れて、王留美の質問を許さずに空港へと空を沈んでいく。どうせ金を出せばモラリアでは名前を変えられるだろうし問題ない。戸籍なんかいくらでも作れるし買えるだろ、アリー・アル・サーシェスの国だぞ。

 着陸後に俺を待っていたらしいスタッフに捕まり、直ぐ様王留美から離れると俺は生存策を考える。一番はエイフマンの確保による強い兵器の開発でイノベイトから逃げることと、後は表向きはPMCからの撤退。この2つが急務だろう。そして俺は地中の要塞を作って、ELSに備える。


 

 「どうして!?」
 あれから名前や会社の業態を次々に変えて、再生医療より安価なサイボーグ義肢など様々な事業拡大とエイフマンと文通友達になっただけなのに、王留美に嗅ぎつけられて、大使がやって来てトリニティとは接触する上に、ソレスタルなんたら芸人まで接触するわ、日本に移動をしたら沙慈と会ってしまい、ルイスとも会ったから適当に沙慈と親戚だと誤魔化したりした。数ヶ月で色々ありすぎだろ。

 そして極めつけは今、目の前に黄金コンプレックス大使と共にいる大物新人声優の頭黄緑色クソダサ服イノベイトだ。

 「どうしてとは?僕は僕の意思で会いに来た。ヴェーダとは接続は切ってある。君はイオリア・シュヘンベルグを知ってるんだろ?」
 わかったよ!じゃあ、連れて行ってやるよ!連れてきゃ良いんだろ!直接イオリア・シュヘンベルグを叩き起こして、大使共々会わせて謝罪させてやるよ。じゃないとお前殺す気だろ?

 「わかった、月面に向かうぞ。イオリア・シュヘンベルグはまだ生きている。あいつを叩き起こすから直接聞くと良い。全てはイオリア・シュヘンベルグが始めたのなら、イオリア・シュヘンベルグが終わらすべきだ。祝福が呪いとなり、人々を縛り付ける呪詛の鎖に成り果てたのは、彼がヒトを理解せずに人間とイノベイトを分けたせいだ。その話をしてもらう。」
 明らかにリボンズの目に動揺が走る。そんな目をされても知らんがな、お前がイオリア・シュヘンベルグと対話するんだよ。

 「我が一族のようにこのような縛りを受けて意味を説明されず、数百年縛られたのはその通り。イオリアからの謝罪を受けなければ怒りが収まらん。」
 大使も乗り気だな。というかなんだコイツ、初めてあった時と違って目がまだ澄んでいるような?気の所為か?

 「確かにイオリア・シュヘンベルグから謝罪を引き出せるのならば、僕もやぶさかでは無いけどね。」
 まぁ、人間に興味がなくて、結局のところイオリアとヴェーダに執着してるんだからそうなるよな。

 「しかし、少々手荒なことが必要だからトリニティと王留美を連れて行こう。彼等も知りたいだろ?イオリア・シュヘンベルグの真意とやらをさ。」
 トリニティと留美を連れて行くことでルイスの家族は大丈夫になるだろうし、月面で何かあってもトリニティと留美を囮に逃げればいい。アイツらはなぜか知らんがイノベイトよりこっちよりだからな。

 「軌道エレベーターに隠した機体から君たちの母艦に向かい、月面に降り立つ。それでいいだろ?」
 トリニティたちと仲良くなるにつれてアイツらはパーツとかを集ってきたからな。こっちは宇宙開発プロジェクトとか言って軌道エレベーターの上に居住地実験と言いながらずっとEカーボンを作っていたから、それに目をつけたのだろう。GN粒子とミノフスキー粒子の比較もしてきた。俺しかできないけど。

 圧倒的な硬さと加速力と持続力を持ったMSを作り上げた。ティエレン、イナクト、フラッグの最新作に触れ合う機会もパーツを集める機会もあり、そして、エイフマンの助言とトリニティたちのこうした方がいいという助言の様な話を聞いて完成したあの機体。王留美に見られたので既に報告されていると思ったが、二人の対応を見るにあいつはまだ二人に口を割ってないらしい。あいつが何を考えているかは知らない。

 機体名を聞かれた時に単純に話しかけられたと思って、王留美?と俺が聞き返してしまって、「わたしの名前をつけるなんて、最近はマリナ・イスマイールにお熱だったんじゃないの?」とか意味不明になったからな。最新作のMSを見ました、名前は王留美ですとか報告したら頭沸いてると思われるもんな。何故かこっちのMS開発事業とかに多額の投資をしてくれたが。

 それにマリナ・イスマイールというよりはアザディスタンが情勢不安過ぎて都合が良かっただけなのと、貧困国援助の名目で秘密工場などを建てるのに適していただけだし。会うたびに大型援助を申し出ると驚くあの貧乏王女の顔が面白かったのもあるが。

 そんなことはどうでもいいかな。月面旅行に洒落込まないといけない羽目になった。全部、イオリア・シュヘンベルグのガバチャートのせいだ。計画のプラン分岐をさせすぎてガバったハゲのせいだ。ガバハゲだ。デバガメみたいだな。

 


 月面超特急をするための艦艇が隕石に偽装されてるそうだが、教えられた隕石に俺は出来上がった例のMSで近付く。ティエレンの装甲とユニオンフラッグの加速性とイナクトの操縦性を合わせたこの機体、今回のためにリボンズらから提供された擬似太陽炉を載せる事になり、急ピッチで作り上げたコンテナに無理やり発電機と擬似太陽炉を載せた事でMA化してしまったが問題ないだろう。
 「それにこれはまだ…。」

 切り札の切り離し機能とインコムもどき、そして切り離せるミサイルコンテナ、見た目がデンドロビウムとディープ・ストライカーを混ぜた様な形になったが問題ないだろう。実質、ガデラーザみたいなものだし、それに大きさが驚きの162mに収まった。中央に試作艦載用レールガンを乗せている。通常のMSのバッテリー12個を搭載し、擬似太陽炉を3基搭載された化け物だ。制御用の機体のバッテリーは使わないので、何かあれば全力でパージして離脱できる。要望を叶えてくれた整備班やスタッフ、ガワの開発に関わったエイフマン、擬似太陽炉の配置に関わったトリニティたち、突貫作業の工期の割には敬意を表する。

 が、まず俺が乗れるかわからない上になんでMSで馬鹿でかくなってるんだよ?しかも、勝手に受信機もついているから、地球の周りでは電力を受けれて推進剤が無くなっても電力で微弱に動けて、エレベーター周りでは半永久的に動けるとか、バッテリーを射出してプラズマリーダー的な何かが出来るとか、トップスピードを利用して四方からカーボンワイヤーで引っ掛けて殺せたり、ミサイルサイロからマイクロクラスターミサイル飛び出したりするのもわかるが、全長109mのレールガンをトップスピードで撃ち出す衝撃で敵を制圧する拠点制圧用防衛兵器って枠組みはなんなんだよ!全てが矛盾だろ、何と戦うつもりだよ!狂ってるよ。

 集団ではなく単機による突破力と一点集中、先行による収集した情報を後方の味方に届ける観測と電子戦装備も載せた万能汎用決戦兵器でもあると主張してるのも聞いた。単機による大気圏突入も出来る。離脱は出来ないが……オプションにより大気圏突破装備もつけるという話もあったが、おクスリかアリー・アル・サーシェスでもキメてるのか?なんのための装備なんだそれは?

 合わさったら拠点制圧用防衛万能汎用決戦兵器だぞ?宇宙世紀でもそんな枠組みないだろ、頭コズミック・イラかよ。というかなんだこのサブアーム収束対艦隊用プラズマソード決戦仕様って。一撃で戦闘態勢の4隻の艦の幅と同じ大きさのプラズマを発生させて切り裂くって?有効時間は2分で、サブアームが焼ききれて搭載されたバッテリー8個が空になるとか意味わからないんだけど。そこまでしてやりたかったことなのか?

 それにサブアームが19対の38本あって、メインアーム3対6本と主砲1門とフラッグのリニアガン6門が副砲、ティエレンの4連装155ミリ50口径対空速射砲4基に加え、60mm6連バルカン対空機関砲を15基搭載とかマジで意味不明だし、なんで会社の予算の9割を勝手に使ってこんなものを?そして補填を何故か王留美や大使にハレヴィ家やAEUやユニオン、人革連に請求しようとする精神性にビックリだよ!勝手に作って勝手に請求書送るとか、詐欺だろ詐欺。

 なんのために作ったんだよこれ、というかここまで来たら軍艦でいいだろ。なんで複座じゃなくて単座なんだよ!予算がなかったからじゃないだろ!そして、今まで得たGN粒子技術の転用により一時的にトランザムに近い状況を再現出来るが14Gがかかり、この状態で制御用のMS射出をすると24Gがかかるが、保護用の液体と気体をコックピットに満たす予定とか意味不明だ。だから、何と戦う予定なんだ?

 「最高のモノを作りました?」
 いや、最低だろ。量産も出来ない、再現性も少ないというかやる価値なし。武装が頭おかしい、腕がアシュラガンダムを超えて、阿修羅をも凌駕する存在でしか無い。そして、なんのためにか航続距離は推進剤のみ。でも近くに来る軌道であれば単独で地球から月への到達もギリギリ可能なライン、って何したいんだ?頭がおかしくなってしまったんだろ。ワンオペでなんでも出来たら、ワンオペは問題にならないっていうのを忘れてしまった概念兵器と言わざる得ない。その上に拡張パーツも装備可能とか大気圏突破ブースターとか、正気を疑う。ガンダムよりエヴァンゲリオンのほうが近いんじゃないのか?コイツ。変なものを作りすぎだ。

 しかし、俺はこれに乗るしか無いんだから可愛そうだな。




 「わかった、謝ろう。私の責任だ、すまない。そして、人の歴史は人が作るものだ。その点においては盲信せずにこの結末を掴んだ君たちは間違いなく人だろう。感情は醜いが時に美しくもある。私はそこに絶望と希望という矛盾の環を見出した。例えば殺されても、それはそれで良かった。そうなれば別の計画が作動した。その時はイノベイドであるリボンズ、君達が自我を持って、醜い炎で裁きを下す権利があると思い込んでいる大国と同じ思想を得ていただろう。しかし、それはくだらない妄想だったわけだ。人としての感情や意志を持って、戦いや殺し合いではなく対話を選んだ。私はここで再び謝ろう。全ての関わってきたイノベイト、一族達に対し謝ろう。何故ならば、私自身が人類を信じ切っていなかったのだから。人類はそこまで捨てたものじゃない。欲すれば得るというが、私は欲していなかったのかもしれない。願っただけだ。それがきみたちと私の差だ。すまなかった。」
 起こしたイオリア・シュヘンベルグはそう言った。散々、お前が始めた物語だろ、手を取り合うのに手を差し伸べないのはナンセンス、例えば何回手を振りほどかれても手を何度でも差し伸べるのが正しいと言ったからか、イオリアは少し考えてから謝った。それに俺がイオリアの親友のアランが残した計画の一部だと思っているからだろうか?

 「またリボンズ、アレハンドロ、王留美、つまり君たちもここにいるイオリアが思い浮かべた未来の子どもたちだったわけだな。トリニティ、君達もそうさ。イオリアは全て託すつもりだったんだ。歴史をつくるのは老人ではない、常に若者なんだと。」
 いい感じに纏めたし、そろそろ終わりだよなと思っていたが……。

 「対話の輪は広まった。最後の計画である純正の太陽炉の作り出すGN粒子が世界を包むだろう。これにより、人々がイノベイター化をするだろう。」
 イオリア・シュヘンベルグの言葉を聞きながら、大事な、なんか忘れているような思いに苛まれていた。

 月の基地が映し出す蒼い水の惑星にミントグリーン色の光の粒子が広がっていく。うん?イノベイター?


 待てよ!それをしたらELSが速く来るんじゃないのか!?完全に忘れてたよ!ソレスタル・ビーイングが悪い!



 アレからたったの4年が経過した。


 「来たな、ELS達がな。行くしか無いのか!?クソ、やってやる!」
 銀色の敵をなぎ倒し、大きな個体がいる場所まで吶喊する羽目になってしまった!「どうしてこうなった!」という俺の悲痛な声は機体内に響き渡っている。激しくレバーを引くと機体と共に地球から太陽が出始めていた。 

 たまらなく、俺はやることを理解した。
 「イオリア、刻が見えるな。」
 人類の夜明けは近かった。原作より速く対話が進んだのならば、ELSとも対話が進むはずだ。人類同士の対話のほうが長い時間をかけたのだから……怨讐も嫉妬も羨望も絶望も何もかもを乗り越えて希望の、ホープの手をお互いに差し伸べ合えたのならばELSにも出来るはずだ。

 そうじゃないのならば、誰が為にその鐘は鳴るのだろうか?人間は孤島ではなく大陸なのだ。海だ、宇宙なのだ。ならば人間の大地が生み出されて対話ができた命の蒼い星が放つ煌めきが、ELSにも届かないわけがない。届けば全てに花を咲かせるだろう。だからこそ、敵対や偏見やレッテルではなく、全ては対岸の火事ではなく、当事者として完結するのでもなく、対話が必要なのだ。人間の底力がその程度であるのならば、人間はとっくに滅びていたはずだ。希望は手と共にある。誰のためでもなく、自分の為でもなく、全ては人類に帰するのだ。

 「これがまさしく愛か?」
 蒼い宇宙空間に、銀色の集団に俺のつぶやきは飲まれていった。後ろからは刹那とリボンズとグラハムが来ていた。

 アレハンドロもいた。アリー・アル・サーシェスもいた。そこにすべてがあった。イオリアも来ている。トリニティたちもいる。人類がすべて環になる。モニターやヘルメットのバイザーに映る自分の目が輝いた様に見えた。

 「あぁ、温かい光だ。金色で緑色の…。」
 



 宇宙には銀色の花びらが咲いていた。

 
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