芸能人は謙虚に

　　　　　　　　　　　　　　　　芸能人は謙虚に
　元プロ野球選手で今はタレント活動模している制波羅和博。面長の顔でサンランプで焼いた肌に丸坊主で大柄な太った彼を観てだ、デビューしたばかりの俳優仁藤ウィンは思った。
「噂以上ですね」
「そうでしょ」
「酷いですね」
　穏やかで端正と言っていい顔で言った、背は一八〇近くありモデルの様にすらりとしたスタイルである。黒髪に少し茶色を入れてセットしている。
「聞いていた以上に」
「もうあれだよね」
「ヤクザ屋さんですね」
　こうマネージャーに話した。
「あそこまでいくと」
「うん、だからね」
　眼鏡をかけた真面目そうな外見のマネージャーは話した。
「あの人の傍にはね」
「近寄らないことですね」
「この世界も真面目が一番だよ」
「そして謙虚ですね」
「そうだよ」　
　まさにというのだ。
「そうしたものが大事でね」
「あの人みたいにはですね」
「絶対にね」
　それこそというのだ。
「なったら駄目だよ」
「そうですよね」
「ああして横柄で暴力的でね」
　見れば番組のスタッフにすごんでいた。
「態度が悪いとね」
「すぐに消えますね」
「それこそどれだけ売れても」
　そうなってもというのだ。
「すぐにだよ」
「消えますね」
「あの人評判いい様に見えるかな」
「いえ」
　仁藤は正直に答えた。
「もうです」
「全く見えないね」
「最悪ですよね」　
　その評判はというのだ。
「もう」
「そうだよ」　
　その通りだとだ、マネージャーも答えた。
「殴られたりものぶつけられた人もね」
「いるんですね」
「それも結構ね」
「プロ野球選手として実績あって」
「一部には人気あるけれどね」
「それでもああだと」
「すぐにだよ」
　それこそというのだ。
「消えるよ」
「消えます？」
「消えるよ」
　マネージャーは強い声で言った。
「あの人は」
「一部で人気ありますが」
「わかるよ、一部だからね」
「人気は」
「スタッフにああで」
　観れば今は若いスタッフを蹴飛ばしていた。
「オンエアでも出ているよね」
「ああしたのが」
「本当にヤクザ屋さんとね」
　そう言っていい者達と、というのだ。
「変わらないから」
「それじゃあですか」
「消えるよ、それで仁藤ちゃんはね」
「ああした人にはですね」
「絶対に何があってもね」
　それこそというのだ。