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ポケットモンスター対RPG

作者:モッチー7
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第0話:戦う者……

物語は、ポケモンとそれ以外のモンスターが同一視されていたポケモン冷遇時代。
魔王がモンスター群に世界侵略を催促した事が発端となり、ポケモンや召喚獣すら極悪害獣として扱われ、人間に虐げられていた……
ポケモン以外のモンスターを従えて人間社会を侵略する魔王と推奨レベル到達の為なら蹂躙すら厭わない利己的で乱暴な勇者一行の対立により、ポケモン達は更に窮地に立たされていた……

そんな中、1人の10歳児がある目的を果たすべく旅をしていた。

「んっな!?」
男性は男子トイレから少女が出て来たので驚いた。
「ちょっとちょっとちょっと!」
「どうかしましたか?」
一方の少女は声を掛けられる理由が解らず困惑する。
だが、男性の方は先程の光景が余程凄まじかったのか、どうしても声を掛けずにはいられなかった。
「本当にそっちで良いの?」
「何がですか?」
この違和感に全く気付いていない事に驚く男性。
「何がって……そっちは男性用だよ」
少女は男性が何で慌てているのかが漸く理解し、小さくガッツポーズをした。
「よし!」
一方の男性はガッツポーズの意味が解らず少し混乱する。
「良しって、本当に良いの?」
「何がって、容姿(これ)の事ですよね?」
少女の言ってる言葉の意味を全く理解出来ない男性。
「これって……どれ?」
少女はここでネタバラシをする。
容姿(これ)、実は趣味なんです」
男性は、しばらく沈黙したのち、大袈裟に驚いた。
「……女装(じょそお)ぉーーーーー!?」
「はい。頑張って女の子ぽい容姿にしたんです」
あっけらかんと答える少女風少年の言葉に困惑する男性。
「あ……そうなの……」
困惑する男性は、ふと少女風少年の胸が気になった。
「で、胸の所に丸い物を2つ入れてる訳ね?」
しかし、この男性が驚くのはまだ早かった。
「いいえ」
「……いいえぇーーーーー!?」
「これは、女性化乳房と言う病気だそうです」
男性の混乱はピークに達しているが、少女風少年のネタバラシはまだまだ続く。
「ただ、僕の場合は転送魔法で皮下脂肪を胸に集めながら治療魔法で乳腺の発達を促進したんです。いわゆる、人工混合性女性化乳房です」
男性はこの少女風少年に話しかけた事を後悔した。
「そんな事……出来るの?」
「出来ますよ。僕はプリーストなんで」
「この歳でもう中級兵種なんだ。君凄いね……って!そうじゃなくて!」
そんな男性の混乱に対し、少女風少年は急に話題を変えた。
「それより、この辺の悪さをしているモンスターはいませんか?」
「?……」

ぽかぽか陽気の平原を歩いていた筈の旅人2人が急な吹雪に苦しんでいた。
「何だこの寒さは……このエリアは温暖と聴いていた筈だが」
「取り敢えず街に急ごう!其処で暖をとるんだ!」
しかし、それを阻む様に複数のコウモリが行く手を阻んで包囲する。
「しまった!?この吹雪は魔王軍の仕業か!?」
2人は咄嗟に剣を抜くが、どこを攻撃すれば良いのかが解らず焦る。
「このコウモリを操ってる親玉はどれだ!?」
「くそ!この吹雪で前が見えない……」
その隙に、1人の貴族風の白服の少年が男の首に噛みつき、一気に血を吸い尽くした。
「がっ!?……あ……あ……ぁー……」
ついさっきまで隣にいた同胞が目の前で死んだ事でもう1人はパニックに陥り、乱暴に剣を振り回す。
「うわぁーーーーー!来るな!来るなぁーーーーー!」
だが、一方の白服の少年は冷静に余裕を魅せながら、脅す様にゆっくりと獲物と見定めた男に近付く。
「もう遅いよ。君はもう……僕様のおやつだ」
旅人の命運は既に尽きた……と思われたその時!
「ブビィ!ひのこ攻撃だ!」
文字通りの火の粉程度の火炎放射だったが、それでも旅人達を食い殺そうとした白服の少年を怯ませるには十分だった。
「あっち!?熱熱熱熱っ!」
これを起死回生のチャンスと捉えた旅人は冷静さを取り戻し、剣を正眼に構え直す。
「これは……初歩的な火炎魔法か?だが何だ?その程度でこの慌て様は?」
旅人がキョロキョロと火炎魔法を使ったと思われる人物を探していると、そこにいたのは、先程男子トイレの前で声を掛けた男性を混乱に陥れた少女風少年で、その足元には3匹の小さなモンスターが仕えていた。
「何だ?あの子の隣にいる小さなモンス―――」
旅人が少女風少年に声を掛ける前に、火の粉程度の炎を浴びせられた白服の少年が怒鳴り散らした。
「誰だ!貴族系モンスターであるヴァンパイアの亜種である僕様に火を浴びせた無礼者は!」
対する少女風少年は気合十分で名乗りを上げた。
「僕はグートミューティヒ!優秀なポケモントレーナー目指すプリーストだ!」
それに引き換え、グートミューティヒの言ってる事が理解出来ない旅人。
「ぽけもん?何それ?」
それを聞いたグートミューティヒは簡潔に説明した。
「ポケモンは……あそこにいる粗暴で不潔な獣と違って僕達人間と仲良くなれる清いモンスターの事ですよ」
でも、旅人はやはり解らない。
「モンスターと……仲良くなる……不可能だ!」
それに対して、グートミューティヒは説教を垂れた。
「直ぐそうやって早々と諦めたら、未来は決められた道を無理矢理歩かされるだけですよ」
「……そう言う物なのか?未来は?」
「そう!そう言う物です!未来と諦めの関係は!」

半ば無視される形になった白服の少年が大激怒する。
「貴様らぁーーーーー!さっき僕様に火を浴びせると言う無礼を働いておきながら、あっさり僕様を蚊帳の外だと?無礼にも程があるぞ!?」
対するグートミューティヒは余裕で挑発する。
「さっきこの近くの街で聞いた『季節外れの吹雪に血を吸われた』と言う都市伝説がどんなものかと思えば、出て来たのは野蛮な小物かよ?」
白服の少年の怒りはMAXに達した。
「そこの小娘……貴様を即死はさせん。手始めに貴様を冷凍保存し、じっくり何十年もかけて血を少量ずつ搾り取り、ゆっくりと貧血死に追い込んでやる」
それを聞いたグートミューティヒが悪戯ぽく白状する。
「僕は男性ですけど、それでも良いんですか?」
だが、助けられた旅人は信じなかった。
「その格好で今更そんな嘘を吐いても、もう通用しないと思うぞ」
一方、白服の少年は6つの雪玉を発生させてジャグリングの様に操りながら浮遊する。
「ふふふ、その減らず口……このスノーヴァンパイアの前で何歳まで吐き続ける事が出来るか楽しみだな?」
白服の少年の名を聞いた途端、グートミューティヒは更なる挑発を加える。
「スノー?つまり君のタイプは氷って事だよね?何が苦手か判り易いから改名した方が身の為だよ」
「!?……そこの糞女……僕様の種類名まで侮辱するか?この……人間と言う名の餌風情があぁーーーーー!」
スノーヴァンパイアはジャグリングの様に操っていた6つの雪玉を次々と投げつけながら6体のコウモリを召喚し、6体のコウモリが次々とグートミューティヒに向かって飛んで行く。
だが、グートミューティヒと2匹の小さなモンスターは簡単に避けてしまった。
これには先程まで翻弄されぱなしだった旅人も感心する。
「凄い……ちゃんと敵の攻撃を冷静に対応している」
スノーヴァンパイアも少しは感心する。
「ほう?少しは動ける様だな?」
だが、これがかえってスノーヴァンパイアを冷静にしてしまった。
「で、今の攻撃を何回躱せるか楽しみだな?」
そして、スノーヴァンパイアは再び6つの雪玉を発生させてジャグリングの様に操る。
だがここで、旅人にとってもスノーヴァンパイアにとっても予想外の事が起こった。
コウモリがスノーヴァンパイアの首を噛んだのだ。
「何!?」
「コウモリがヴァンパイアに逆らった!?」
スノーヴァンパイアは怒り狂った様にその裏切りのコウモリを投げ捨てた。
そして、この裏切りがグートミューティヒのせいだと決めつけたスノーヴァンパイアはグートミューティヒを問い詰めようとするが、
「貴様、何をした!?」
既にグートミューティヒ達の姿は無かった。
「何!?どこへ消えた!?」
その時、積もった雪の中から2つの影が飛び出し、背後からスノーヴァンパイアに飛び掛かった。
そして、グートミューティヒはその2つの影と裏切りのコウモリに指令を下した。
「ピチューはでんきショック!ブビィはひのこ!フシギダネはつるのムチ!ズバットはちょうおんぱだ!」
ズバットの超音波を受けて頭を抱えるスノーヴァンパイア。
「ぐわぁー!?頭が?」
そこへ、フシギダネのつるのムチがスノーヴァンパイアを怯ませる。
「ぐうぅ……」
スノーヴァンパイアの警戒心が前方に集中しているその隙に、ピチューとブビィがスノーヴァンパイアの背中を攻撃し、スノーヴァンパイアを火達磨にする。
「があぁーーーーー!?」
「やったか!?」
そして、力尽きたスノーヴァンパイアが黒焦げになりながら落下した。
「馬鹿な……この僕様が……」
それに対し、グートミューティヒはスノーヴァンパイアの誤算を指摘する。
「馬鹿なって言うけど、アンタは事前対策が取り易かったぞ?その名前のせいでどの攻撃が通用するか解るし、アンタが煙幕代わりに発生させていた吹雪のお陰で身を隠す為の雪の確保も簡単だったし」
そんなグートミューティヒに対して悔しそうに呟きながら力尽きるスノーヴァンパイア。
「……策士……め……」
そして、スノーヴァンパイアが死んだ直後に旅人の行く手を阻んだ吹雪が止んで晴天が広がった。
「おぉー!やった!」

「何ぃー!?今回の事を誰にも言うなどだとぉー!?」
グートミューティヒの懇願を聞いて彼に命を救われた旅人は驚く。
「あんなに大活躍したのに、それを誰にも言わずにか?」
「はい」
だが、グートミューティヒには切実な理由があった。
「僕の正体がバレると、この……」
スノーヴァンパイア討伐に協力してくれた小さなモンスター達をチラッと見ながら残念そうな顔をするグートミューティヒ。
「ポケモン達が可哀想な事になりますから」
旅人は理由を聞いて納得する。
「……確かに。モンスターが魔王軍と戦っていると言っても、誰も信じてはくれまい」
だが、理解は出来ても了承したくない何かが有った。
「だが!それだと君の……君達の手柄や名声はどうなる!?」
その質問に、グートミューティヒは力強く答えた。
「気長に待ちますよ。世界中のみんなが、ポケモンの事を本当に解ってくれるその日まで」
旅人は、グートミューティヒの小さな背中が巨山の様に大きく見えた。
「まるで修行僧の様な生き方だ……あんな歳で。あんな心で」
こうして、グートミューティヒはポケモンに関する陰惨な誤解に苦しみ、ポケモンから手柄や名声を横取りしたと言う罪悪感を背負い、それでも到来を待ち望む未来を切望しながら前へと進むのであった。
ポケモンとそれ以外のモンスターを同一視する世論に支配され、魔王軍の侵攻によってポケモンを含めた全てのモンスターが敵視されるこの世界を旅するポケモントレーナーのグートミューティヒの未来は……光か?闇か?

その後、とある町に訪れていたとある冒険家一行にスノーヴァンパイアの戦死の報が伝わった。
「スノーヴァンパイアが倒されたって!」
一行の一員である女流ウォーロックが慌ててリーダー格の男性に報告するが、肝心のリーダーはどこ吹く風で聞き流した。
「だからどうした?」
「だからって、また先を越されてるんだけど」
「お前は馬鹿か?」
女流ウォーロックは何で怒られているのかが解らず困惑する。
「いや、馬鹿って」
だが、リーダーはそんな事お構いなしに説教を垂れた。
「この俺に功を焦らせる心算か?」
「でも、そのスノーヴァンパイアを斃した冒険家の方が凄いって―――」
女流ウォーロックは食い下がるがリーダーは聞く耳を持たない。
「奴の討伐推奨レベルはたったの10!そんなビギナーズラックでも倒せる奴を先越されたぐらいでビビってんじゃねぇよ!」
女流ウォーロックはもう何を言っても無駄だと判断し、取り敢えず謝った。
「……すいません」
でも、リーダーの説教は終わらない。
「そんな事より、俺達の仕事は魔王の討伐だろ!?ちゃんと経験値を稼いで、ちゃんと魔王討伐の推奨レベルである70以上になれば、この程度の遅れは直ぐに取り戻せる!功を焦ってレベルアップを怠るあわてんぼうなんかほっとけよ!」
「……解りました」
リーダーは説教を終えると、他の仲間に指示を出す。
「と言う訳だから、この先の遺跡でレベル上げするぞ。取り敢えず、牛乗りオーガの討伐推奨レベルである33を目指すぞ」
それを聞いた大男が嬉しそうに頷く。
「うむ!解りました!」
女流ウォーロックも根負けして渋々賛同する。
「解ったわ」
ただ、このメンバーの中で最年長と思われる男性だけは賛同を渋った。
「またかよ。ちょっとはこの町のかわいこちゃんと楽しませてくれよ」
「馬鹿な事を言ってんじゃねぇよフノク。おら、行くぞ」
フノクと呼ばれた男は不貞腐れながら渋々同行する。
「たく、このチームはただでさえ華が少ない上に、唯一の華がこんなに(胸が)小さいのだぞ?」
その言葉に女流ウォーロックが怒った。
「女性を胸だけで判断するんじゃないわよ!この歳でまだ中級兵種のクセに!」
「そう言うマシカルこそ、この歳で上級兵種は早過ぎた様だな?お陰でMPに胸を吸い取られている」
「何ですってぇ!?」
流石にこの展開は不味いと思ったリーダー格が慌ててとりなす。
「解った!解ったから。2人共その怒りをもう直ぐ俺達の経験値になるモンスター共にぶつけてくれ」
それを聞いた大男もリーダーの言い分に賛成する。
「そうですぞ2人共。ここは星空に選ばれた勇者であるマドノ殿の顔を立てると思って」
だが、マシカルは大男のニヤニヤ顔が気になっていた。
「その割には嬉しそうね?」
とは言え、これ以上の揉め事は不味いと思った星空の勇者マドノ率いる勇者一行は、一路経験値稼ぎを兼ねた遺跡探索に出掛けた。
それは……その遺跡やその近くに在る森に暮らすモンスターとポケモンにとっては災厄と終焉の訪れでしかなかった…… 
 

 
後書き
グートミューティヒ

年齢:10歳
性別:男性
身長:139.1cm
体重:36.6㎏
体型:B83/W55/H72
胸囲:F60
職業:ポケモントレーナー
兵種:プリースト
趣味:ポケモン飼育、女装、育乳
好物:ポケモン、騎士道
嫌物:ポケモン虐待、卑劣漢
特技:女装

ポケモントレーナーの地位向上を目的に勇者マドノ率いる勇者一行の仲間入りをしようとした新米ポケモントレーナー。だが、マドノの残忍さと冷血さを目の当たりにして早々とマドノを見限った。
普段はお人好しで義理堅いが、感情の起伏が激しく状況によって一人称がコロコロ変わる。基本的な一人称は『僕』。因みに、女の子っぽい容姿は趣味であり、治癒魔法や転送魔法などを駆使して両性女性化乳房(胸部肥満化と乳腺発達の混合)を発症させるなど、かなり徹底的である。
観察と戦術に優れている一方、生来の優しさと前述のマドノへの軽蔑からレベルアップを目的にした経験値稼ぎを疎かにする事が多い。 
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