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プロボクサーの本職

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第二章

「タッチは」
「それで肖像画描いたりな」
「シュールリアリズムの絵も多いわね」
「こうした絵か」
「はじめて知ったわ」
「俺達娘の彼氏でも」
 夫はそれでもと話した。
「あまりな」
「知らなかったわね」
「そうだな」
「どうもね」
「あっ、来てくれたんですね」
 ここで黒髪を短くした一七五位の背で痩せて引き締まった身体で黒髪を短くしている細面で涼し気な目の彼が来て言ってきた、今は清潔な感じのスーツ姿である。
「綾香ちゃんも」
「うん、お母さんに大吾君のお仕事のこと言ってね」
 綾香は笑顔で応えた、ラフな外出着でズボンが似合っている。
「それでなの」
「ご両親もなんだ」
「一緒になの」
「そうなんだね」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「大吾君の絵を観てもらってるけれど」
「そうなんだ、じっくり観てね。それでよかったら今度の」
「試合もよね」
「観に来てね」
「そうするね」
 二人でこんな話をした、そしてだった。
 彼が呼ばれてそちらに行った後でだ、満里奈は娘に言った。
「ボクサーとはね」
「思えない?」
「美術の先生で絵を描くなんて」
「だから芸術に励んで」 
 教鞭も取ってというのだ。
「それと共にね」
「スポーツもなのね」
「していて」
 ボクシングをというのだ。
「それがね」
「今度日本チャンピオンにチャレンジするのね」
「今のチャンピオンは他鹿目幸喜だけれど」
「あの天下茶屋の恥か」
 父はその名前を聞いて瞬時に嫌そうに応えた。
「品性も知性も人格もスポーツマンシップもない」
「教養もなくて」
 母も嫌そうに言った。
「どんな生き方したかわからない」
「あいつだけれどね」
「あんなのはさっさとノックアウトして欲しいわ」
「全くだ、テレビ局は贔屓してるけれどな」
 父はこうも言った。
「さっさとな」
「やっつけて欲しいわね」
「本当にな」
「そうね、美術の先生をして絵を描いて」 
 綾香はそのうえでと両親に応えた。
「チャンピオンになって欲しいわ」
「そうね、そして世界にもね」
「行って欲しいな」
 母も父も娘に応えた、そうして大吾の絵を観ていった。
 後日一家で彼の試合も観た、試合は何とテレビの会見で切腹だの言ったチャンピオンが調子に乗って大吾に尻を振った直後ゴングが鳴って一分も経っていないうちに大吾が繰り出したストレートがチャンピオンの顎を完全に粉砕し。
 彼は新たなチャンピオンになった、一家は無様に失神し大の方まで失禁した醜態をテレビでもネットでも実況されたうえで担架で嘲笑とブーイングを浴びながら去る前チャンピオンには目もくれず彼に拍手を贈った。そしてそれから一年後二人は結婚し幸せな生活に入ったのだった。


プロボクサーの本職   完


                2024・3・24 
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