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金木犀の許嫁

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第三話 お見合いその九

「忍者には大事で」
「私もなのね」
「特にわかりやすいかな」
「そうなの」
「素直なんだね」
 表情を変えずに答えた。
「とても」
「そうかしら」
「そう思うよ」
 まさにというのだ。
「俺は」
「そうなのね」
「それで嘘は言っていないって」
 その様にというのだ。
「わかったよ」
「そうなのね」
「嬉しいよ」
 佐京は微笑んで言葉を返した。
「本当に」
「お茶のことで」
「それ以上に嘘を言わないことが」
「好きなの」
「実際に嘘は吐かないよね」
「いや、吐くわよ」
 お茶を飲みながらそれは否定した。
「私だって」
「正直に言ったね」
「それは私だってね」
 それこそというのだ。
「嘘を吐くから」
「正直に言ったね、今も」
「いや、嘘吐かない人っているかしら」
「いないと思うよ」
 佐京は茶碗を手にして答えた。
「俺も」
「そうでしょ、だからね」
「ええと。何て呼ぼうか」
 ここで佐京は戸惑いを見せた、無表情なのはそのままだったがそれでも雰囲気にそれを見せて言うのだった。
「一体」
「私のこと?」
「うん、何てね」
「夜空でいいわよ」 
 佐京ににこりと笑って返した。
「それでね」
「じゃあ夜空さん」
「それでね。私も何て呼べばいいかしら」
 今度は夜空が尋ねた。
「それで」
「佐京でいいから」
「じゃあ佐京君ね」
「宜しく、それで夜空さんは嘘を吐かないことは」
 それはというのだ。
「その嘘を吐かないっていうこともね」
「わかるの」
「うん」
 そうだというのだ。
「それでね」
「そうなのね」
「嘘を吐くって普通に言う人も」 
 それもというのだ。
「素直だからね」
「言うのね」
「嘘を吐く人は平気でね」
 それでというのだ。
「自分は嘘を吐かないとか言うよ」
「そうするのね」
「嘘を言うからこそ」 
 それ故にというのだ。
「嘘をね」
「吐くのね」
「そうだよ、夜空さんが嘘を吐かないことがわかったから」
 そうした人間ということがというのだ。 
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