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募金

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第二章

「どうしてもな」
「人気がない」
「厳しい、怖い、腹黒いと言われてな」
「実際厳しいが清廉で悪い人じゃない」
 全くというのだ。
「あの人は」
「しかし誤解されやすい人だった」
「そう思われてな」
 怖いだの腹黒いだのというのだ。
「悪役と言うとな」
「やっぱりそうだ」
「だから人気がない」
「それで募金を募ってもな」
 黒田は大山に言った。
「集まるか」
「そう言われるとな」
 大山も難しい顔になって述べた。
「故郷の鹿児島でも人気がない」
「他の場所なら尚更だ」
「その大久保さんの為の募金を募っても」
「果たしてどれだけ集まるか」
「疑問だな」
「いや、いいんじゃないか」
 ここでこう言ったのは伊藤博文だった、顔立ちが実に明るい。
「やっても」
「いいか」
「まずはやってみるってことで」
 伊藤は明るい声で言った。
「何でも。わしが思うに大久保さんはわかる人はわかる」
「そんな人か」
「確かに厳しい人だった」
 伊藤から見てもだ。
「しかし公平で私がなかった」
「確かにな」
 黒田もそれは否定しなかった。
「本当に日本のことを考えていた」
「そんな人だったな、そんな人は」
 伊藤はさらに言った。
「やっぱりな」
「見ている人は見ていてか」
「認めるものだよ」
 そうだというのだ。
「だからな」
「それでか」
「募金もな」
「してくれる人がいるか」
「それに大久保さんの遺族の人達が暮らせないことはな」 
 伊藤はこのことについても話した。
「明らかだしな」
「本当にお金がないからな」
「そのことも心ある人は知っていてな」
「募金してくれるか」
「世の中捨てたものじゃない」
 伊藤はこうも言った。
「心ある人は大勢いるものだ」
「その人達がか」
「きっと募金してくれる、だからな」
「ここはか」
「やってみよう」
「伊藤さんがそう言うならな」
 それならとだ、大山も言った。
「やってみるか」
「ああ、ここはな」
「そうしよう」
「それならな」
 大山が頷き黒田も続いた、そしてだった。 
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