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日本シリーズ

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第一章

                日本シリーズ
 昭和五十七年西武ライオンズはパリーグ後期ペナントを制覇し日本ハムファイターズとのプレーオフにも勝った。
 こうして西鉄時代の昭和三十八年以来の日本シリーズ出場となったが。
 入団して二年目の石毛宏典は周りを見て驚いた。
「あれっ、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないだろ」
 チームの看板とも言える主砲の田淵幸一が応えてきた。
「はじめて出たんだぞ、シリーズに」
「そういえば田淵さんは」
「阪神にいた頃からな」
 その頃を思い出しつつだ、田淵は石毛に答えた。
「一度もだったからな」
「そういえばそうでしたね」
「それでだぞ」
 田淵は石毛に感極まっている顔で言った。
「もうな」
「嬉しいんですね」
「夢みたいだよ」
 こうまで言うのだった。
「本当にな」
「全くだよ」
 今度はエースの東尾修が言ってきた。
「はじめて出るんだぞ、ずっとやってきてな」
「そういえば東尾さんも」
「ああ、西鉄の頃に入団してな」
 そうしてとだ、東尾は石毛に話した。彼も田淵と同じ顔になっている。
「ずっとな」
「シリーズにはでしたね」
「無縁だったからな」
「そうだったからですか」
「嬉しいさ」
 こう言うのだった。
「本当にな」
「俺もな」
 今度は裕之が言ってきた。
「ロッテにいた頃に二回出てたけれどな」
「そうでしたね」
「まさかまただよ」
 もう一度というのだ。
「出られるなんてな」
「思っていませんでしたか」
「うちちょっと前まで弱かったからな」
 だからだというのだ。
「本当にな」
「またシリーズに出られるなんてですか」
「思わなかったよ、本当にな」
 まさにというのだ。
「シリーズに出られるのがな」
「夢みたいですか」
「ここにいる奴の殆どはな」
「お前は去年入団だからな」
 田淵は石毛に笑って言った。
「だからな」
「それで、ですか」
「そうした実感湧かないだろ」
 こう石毛に言うのだった。
「やっぱりな」
「それは確かに」
 石毛も否定せずに答えた。
「そうですね」
「そうだろ、けれどな」
「他の人は違いますか」
「ああ、はじめてか久し振りか。兎に角な」
「また出られるとは思っていなかったので」
「嘘みたいだよ」
 こう言うのだった。
「本当にな」
「そうですか」
「だから嬉しいんだよ」
 こう言ってだった。
 田淵も東尾も山崎も他の選手達も練習に入った、それは石毛もだったが。
 その石毛にだ、監督の広岡達郎が声をかけてきた。
「嬉しいな、石毛」
「監督もですか」
「ああ、シリーズに出られてな」
 いつもの敢えて出さない無表情で言うのだった。
「嬉しいな」
「監督もヤクルトの頃から」
「ああ、あの時から五年だな」 
 広岡は石毛に言われヤクルトの監督として日本一になった時のことを言った。 
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