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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
   【第1節】新暦90年の出来事。(前編)

 
前書き
 この章の主な内容は、「新世代キャラ」や「新たな三人の執務官補佐」の紹介と、なのはたちの「友だち結成25周年」の様子と、ユーノの両親についての中間報告、および、「本編」直前の数年間の「大まかな流れ」の説明となります。
 正直なところ、当初は「オリジナルのキャラクター」がこんなにも増えてしまうなどとは、全く予想しておりませんでした。(汗)
 

 


 さて、話はだいぶ(さかのぼ)りますが……。
 カナタとツバサは、新暦83年の4月にミッドチルダで生まれた後、『両親の知り合いや姉の友人たちが、毎日のように入れ替わり立ち替わり遊びに来る』という特異な環境で育ったためでしょうか、すっかり「人見知りをしない赤子」に育ちました。
 そのせいで、実の(おや)への「心理的な依存度」が、他の乳幼児に比べると相対的に低くなっていたのかも知れません。
 新暦85年の4月に満2歳で地球の祖父母の許に預けられた際にも、この二人は『母親がいないことに気づいて泣きじゃくる』などといったことは全くありませんでした。
 祖父母の側からすれば、『相当に育てやすい孫だった』と言って良いでしょう。

 新暦85年当時、祖父の士郎は57歳、祖母の桃子は53歳、伯母の美由希は37歳、義理の伯父のロベールは35歳、従姉兄(いとこ)の美琴と奏太は8歳と5歳でした。
 そして、もう一方の祖母であるリンディは58歳です。世間的には「年齢不詳」ということになっているアルフも、実際にはこの時点でもう22歳でした。
(アルフはもう随分と前から、家の外に出る時には必ず「大人の姿」に変身してから外出するようになっています。)
 こうした人々に囲まれ、愛されて、カナタとツバサは心身ともに驚くほど何の問題も無く、健全に育っていきました。
【高町家では、どちらかと言えば、カナタは祖母(桃子)の方によく(なつ)き、ツバサは祖父(士郎)の方によく懐いていたようです。】

 また、85年当時、伯父の恭也は39歳、義理の伯母の忍は38歳、従兄姉(いとこ)雪人(ゆきと)(しずく)霧香(きりか)は13歳と9歳と5歳でした。こちらの「親子五人」も、事あるごとに高町家へ遊びに来ます。
 さらには、母親の親友であるアリサやすずかも(リンダやとよねを連れて)しばしば二人の様子を見に来てくれました。そうした環境で何ひとつ不自由の無い幼児期を過ごしているうちに、カナタとツバサはいつの間にか「妙に大人びたところのある、心理的にやや早熟な幼児」になっていきました。
 そのために、幼稚園では二人そろって周囲から随分と浮いてしまっていたようですが、結果としては、それで良かったのかも知れません。
 新暦89年(地球では、令和7年・西暦2025年)の8月、夏休みのうちに「生まれ故郷」のミッドチルダに帰ることが決まった時にも、カナタとツバサは、親しい友人など特にいなかったので、あまり多くの「(つら)い別れ」は味わわずに済みました。

 そうしてミッドに帰って来ると、カナタとツバサはまず「アインハルト兄様(にいさま)」に(あこが)れて『自分たちも早く一人前の魔導師になりたい』と思うようになり、その気持ちをそのまま隠すことなく母親たちに伝えました。
 そして、二人はわずか数か月の家庭教育で「ミッド人の小児(こども)としての、最低限の知識や常識」を身に付けていきます。
 一方、なのはとフェイトには、もちろん、『娘たちを説得して、普通に「魔法学校の初等科」へ(かよ)わせる』という選択肢もありました。また、逆に、『最初から学校になど行かせず、通信教育を受けさせながら、自分たちの手で特別な英才教育を(ほどこ)す』という選択肢もありました。
 二人はさんざん悩みましたが、結局は、(あいだ)を取って(?)翌春からカナタとツバサを「全寮制の魔法一貫校」へ(ほう)り込むことにしました。
 自分の娘たちの希望を丸ごと否定することも、自分の娘たちをあからさまに特別あつかいすることも、できればしたくはなかったからです。
【ちなみに、ヴィータも84年の8月以降は、常に「大人の姿」で生活をするようになっていたので、カナタとツバサは、最初から彼女のことを「母親たちと同世代の人物」として認識しています。】


 さて、ミッドチルダにおける魔法教育は、昔から、一般的な理論や実践の基礎を教える教科中心の「魔法学校」と、新人の局員たちにもっぱら実技を叩きこむ「訓練校」の二本立てでした。
(スバルのように『魔法学校を経由することなく、普通校からいきなり訓練校に入る』というのは、相当に稀な事例です。)
【この件に関しては、StrikerSのコミックス第1巻を御参照ください。】

 しかし、新暦80年代になると、ミッドチルダでは「両者の統合」が重要な課題として議論されるようになり、新暦87年度には、ついに両者を統合した三年制の「魔法一貫校」が(実験的に)まずは四大都市圏に設立されました。
 その内容は、おおむね「教科課程」と「訓練課程」に分かれているのですが、実際には両者を並行して進めていくことが推奨されています。
【現実に、カナタとツバサは一年目の後半からは早くも訓練課程を始め、三年目の半ばには早々と教科課程を切り上げました。
 普通校であれば5年はかかる「初等科の教科課程」を、「ごく大雑把な形で」ではありますが、わずか2年半で「あらかた修了」してしまったというのですから、実のところ、この双子は魔法を抜きにしても「相当に優秀な少女たち」なのです。】

 こうした一貫校は、基本的には『初等科を卒業した12歳児たちが入学して、今までは「魔法学校の中等科」と「陸士訓練校」で合わせて四年かかっていた課程を、一年早く修了するためのものである』と考えられていました。
 そのため、首都「第二」一貫校でも7歳児の新入生は本当にカナタとツバサの二人しかいませんでした。7歳からの入学はルールとしては可能でしたが、当時は「一貫校制度」が始まってからまだほんの四年目であり、本気で「そんなこと」をやらかす親など、現実には今まで一人もいなかったのです。
「教科課程」では、他の新入生らが全員、「中等科の教科課程」を学んでいる中で、カナタとツバサだけは「初等科の教科課程」から学ばなければなりませんでした。
(その一貫校には当初、初等科の教師が務まる人材などいなかったので、学校側はやむなく、この双子のためだけに、他の初等科学校から熟練の教師を引き抜いて来ました。)

 カナタとツバサは、最初のうちこそ「同級生」たち(主に、女子生徒)からマスコットのように可愛がられたり、『7歳のうちから寮生活なんて大変だね~』と同情的な目で見られたりしていましたが、やがて「訓練課程」が始まり、この双子が魔法実技に関しては自分たちよりもずっと優秀なのだと解ると、12歳児たちはみな(てのひら)を返すように態度を変え、カナタとツバサを遠ざけるようになりました。
 ただそれだけでも、7歳児にとっては、相当にキツい状況だったことでしょう。
 その上、この双子の母親が「あの、高町なのは」だと知れると、12歳児たちはもう「この双子への陰口(かげぐち)」を隠そうともしなくなりました。
 カナタもツバサも、もしも一人きりだったら、きっと耐えられなかったでしょう。最初から二人でいたからこそ、耐えられたのです。
 二人とも、一貫校では友人など一人もできなかったのは、ごく当たり前のことでした。


 一方、リミエッタ家のゼメクとベルネも、同じ90年の4月には、地元のソルダミス地方にある魔法学校の初等科に入学していました。
(ゼメクの方が30分ほど先に生まれて来たので、「お兄ちゃん」という扱いです。)
 しかし、誰かに『双子なの? 似てないねえ』とでも言われたのでしょうか。ベルネは入学式の帰り道で、兄と手をつないだまま、ふと不満げな声を漏らしました。
「どうして、家族で、あたしだけ、髪が真っ黒なんだろう?」
 もちろん、実の父であるクロノからの遺伝なのですが、ベルネ自身はまだそれを知りません。
「いいじゃん。黒い方がカッコいいよ。『闇の力』とか宿ってるみたいで」
 ゼメクは7歳にして、早くも「中二病」のようなことを言っています。(笑)
「はあ。何、それ? 意味、わかんないんだけど」
 ベルネはごく普通の人間として、ごく当たり前の反応を返しました。

 ややあって、少女はさらに不満げな声を上げます。
「大体、ゼメクはズルイよ! パパによく似てて。……あたしももっと、ママに似てれば良かったのに」
(ええ……。そんなコト、言われても……。)
 ゼメクは、やや気むずかしいところのある妹を何とかなだめようと、7歳児なりに懸命に知恵を振り絞り、やがて、母親(実際には、血がつながっていない養母)の父親が黒髪であることを思い出しました。
「それは……きっと、アレだよ。かくせーでん、ってヤツだよ」
「それを言うなら、隔世遺伝よ」
「知ってるじゃないか!」
「知識として知ってるからって、気持ちとして納得できる訳じゃないのよ!」
(……女の子は、むつかしいなあ……。)
 ゼメクはこの先も長らく、この「ちょっと気むずかしいところのある妹」に振り回され続けることになるのですが、それはまた別のお話です。(笑)


 また、この「90年4月」には、他にもさまざまな出来事がありました。
 まず、管理局全体の話としては、新たに「上級執務官制度」が始まりました。
 近年は、広域犯罪も増加し、それに(ともな)って執務官が合同捜査を行なう機会も増えて来たのですが、執務官同士は「基本的には」対等の存在なので、現場で執務官同士の足並みが揃わないことも間々(まま)ありました。
 今までは、「現場での指揮系統」の問題も「執務官同士の個人的な人間関係」に依存していたのですが、いつも「旧知の間柄(あいだがら)」ばかりが同じ現場に(つど)うとは限りません。
 そこで、管理局の〈上層部〉は将来を見越し、「一般の執務官に対して、指示や命令を(くだ)すことのできる権限を持った上級職」を新設したのでした。

 必要条件は「現場での勤続」が20年以上。特に「試験」は無く、過去の実績や「指揮スキル」などから総合的に判断して、〈上層部〉が一人一人を直接に任命します。
(つまり、必ずしも「強ければなれる」というものではありません。)
 基本的には終身制で、待遇は二佐、もしくは一佐に相当します。したがって、三佐(一般には、陸士隊の部隊長や次元航行部隊の艦長など)に対しても、「依頼」ではなく「命令」をすることができます。
 この制度が施行された翌日に、上級執務官・第1号に任命されたのは、当然ながら「炎の英雄」ラウ・ルガラート執務官(43歳、勤続27年)でした。


 また、この90年4月には、エリオとキャロ(25歳)がそれぞれにジョスカーラ姉弟と結婚し、二組の若夫婦はスプールスの第五大陸を離れて、カルナージのアルピーノ島に移住しました。
 これ以降、(表向きの話としては)二人の所属は「本局直轄・カルナージ地上本部」の「離島警邏隊・無人地帯警邏分隊」となります。
 それは、エリオとキャロとフリードだけの、とても規模の小さな分隊でしたが、二人は(表向きの「本業」としては)これ以降、『週一回、フリードに乗って海岸沿いに島全体をぐるりと一周し、「不審者が上陸していないかどうか」などを確認してゆく』という単純な仕事(すなわち、無人地帯警邏)を黙々とこなし続けたのでした。
【この時点で、姉のヴァラムディは22歳、弟のフェルガンは18歳です。詳しくは、「キャラ設定10」の後編を御参照ください。】


 なお、スバル(30歳)は、この4月にラディスリィ(17歳)を(ひと)()ちさせた後、休暇を取ってふらりと南の海へ旅行に出かけました。
 アラミィ地方の港町ヴィナーロにも立ち寄り、『ゲンヤの養女(むすめ)である』などとは誰にも告げぬまま、地球人街のナカジマ家などをチラリと覗いて来たりもしましたが、やはり、「心にポッカリと()いた穴」はなかなか埋まらなかったようです。


 一方、フェイト執務官(34歳)は、新暦87年の春にアインハルトを独立させて以来、三年ぶりに「もう一人の補佐官」を迎えました。
 マルセオラ・タグロン(18歳)は、アインハルトと同様に「第一種・甲類」の試験に合格して来た、執務官志望の「現場担当補佐官」です。
(体格はやや小柄で、髪は栗色。外見的には、なのはによく似た感じの女性です。)

 また、アインハルト執務官(23歳)も最初の三年間は何もかも一人で片づけて来ましたが、ここに至って、ようやくフェイトの紹介で補佐官を迎えました。
 パルディエ・ノードリス(18歳)は、シャーリーと同じタイプの「事務担当補佐官」で、実はマルセオラの親友です。
(こちらは、マルセオラとは対照的に黒髪で大柄でポッチャリで、外見的には『栄養が胸にばかり行ってしまった』かのようにも見えますが、実は、なかなかの才女です。)

 それぞれの試験に合格した当初、マルセオラとパルディエは、ゆくゆくは『マルセオラが執務官になって、パルディエがその補佐官を務める』という形にしたいと思い、『できれば、最初から二人で「同じ執務官」の補佐に()くことはできないだろうか』などと考えていました。
 そこで、(マルセオラは9歳の時に、入院中のフェイトと面識があったので)まずは二人して、フェイト執務官に「売り込み」をかけたのですが、フェイトからは『そういうことならば、むしろ最初のうちは互いに別々の経験を積んで「裾野(すその)」を広げておいた方が良いのでは?』と(さと)されて納得し、パルディエはフェイトの紹介で、アインハルトの補佐に就いたのでした。


 ちなみに、全くの偶然ではありますが、同じ4月には、ティアナ執務官(31歳)の許にもまた、メルドゥナが独立して以来、四年ぶりに「もう一人の補佐官」が来ました。名前を、シスター・フェネイザ(18歳)と言い、シスター・シャッハの姪(長兄の末娘)に当たる人物です。

【新暦82年以降、シスター・シャッハの「厳しい(しつけ)」によって、フェネイザの素行も随分と改善はされましたが、今なお彼女の「お行儀の悪さ」には、往年のシスター・シャンテを思い起こさせるものがあります。
 それでも許されているのは、やはり、明るい人柄と多方面に(わた)る才能のためでしょう。
専門は「機械全般の整備と修理」ですが、彼女は15歳の春から時おり〈本局〉に出向き、すでに管理局での「通信士」や「操舵手・第二類」などの資格を取得しています。
 ティアナは、しばらく前から『もう一人、小型艇の操縦などができる人物を補佐官に欲しい』と人事課の方に掛け合っていたのですが、ティアナが「凶悪事件専門」の執務官であることはすでに周知の事実だったので、事務担当補佐官の研修生たちの中には、好んで彼女の補佐官をやりたがる者など、なかなか現れませんでした。
(元々、彼等の大半は、危険な現場になど出たくはないからこそ「事務担当」の補佐官を選択したのです。)
 そんな訳で、シスター・フェネイザは「特例措置」により、聖王教会側の了解を得て、ティアナの補佐官に抜擢(ばってき)されたのでした。
(外見的には、フェイトによく似た感じの金髪美人なのですが、フェイトほどには長身でも豊満でもなく、魔法戦や格闘戦も全くできないようです。実際、彼女自身は単なる「シスター」であって「修道騎士」ではありません。)】

 また、この春には、「産休明け」のメルドゥナ執務官(28歳)も、初めて補佐官を迎えました。実の弟妹、ルディエルモ(16歳)とフラウミィ(20歳)です。
 なお、メルドゥナの執務官就任は四年前の春のことですが、彼女は育休と産休で、その四年間のうち、正味20か月も休職してしまっているので、執務官として実際に働いた期間は、この時点でまだ実質「2年と4か月」にしかなっていません。
 これでは、アインハルト(勤続、正味3年)に対して先輩ぶることなど、とてもできないでしょう。
【実際、メルドゥナとアインハルトは、年齢は五歳ほど違いましたが、これからもずっと「対等の友人」として親しく交友を続けて行くことになります。】

 
 
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