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毒親じゃなくてよかった

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第六章

「人間じゃないでしょ」
「人間以下だね」
「餓鬼とかそういった」
「質の悪い存在だね」
「それでしょ、最初に毒親がいて」
「それでどうしようもないのを作った」
「育てたんじゃなくてね」 
 教育、そんなことはしなかったというのだ。
「そうしたのよ」
「凄い話だね。うちの大叔父も酷かったけれど」
「負けてないでしょ」
「うん」 
 実際にとだ、信也は答えた。
「全くね」
「そうよね」
「色々酷いね」
「あんたの大叔父さんはヤクザ屋さんと付き合ってよね」
「酷くなったけれど」
「この人達はね」
「毒親と毒親が作った何かだね」
 信也もこう言った。
「人間の最低の底をブチ抜いた」
「人間ですらないね」
「餓鬼みたいな」
「そんな存在だったのよ」
「それで今も生きてるんだね」
「もう誰もお付き合いしてないらしいわよ」
「見捨てて」
「天理教の人達もね」
 色々助けた人達もというのだ。
「そうみたいよ」
「そうなんだね」
「本当にこうなったら」
 それこそとだ、ゼミ仲間は信也に話した。
「人間おしまいね」
「全くだね」 
 信也は心の底から頷いた、そして家で両親にこの親子のことを話した、すると両親はこう答えたのだった。
「ああ、その人な」
「お母さん達も知ってるわよ」
「お父さんもお母さんも大学八条大学だったしな」
「お父さんは八条印刷の社員さんでしょ」
「あの教会のことも聞いているからな」
 両親は信也に答えた。
「あの人のこともな」
「私達の頃はあの人教会に通っていたのよ」
「しかしそうした人でな」
「誰もが嫌っていたな」
「そうだったんだ、いや天理教の人って凄くできた人が多いって聞いてるけれど」  
 それでもとだ、信也は両親に述べた。
「そんな人達でもなんだ」
「匙投げる位だったんだ」
「誰が何をしてもどうにもならなくてね」
「それでそうなったのは」
 その原因を述べた。
「酷い母親だったからなんだ」
「今で言うと毒親か」
「そう言えるわね」
「そうだよね、そんな人が親だったら」
 信也はそれこそと言った。
「まともに育つ方が凄いよ」
「その母親さんも評判悪くてな」
「皆から嫌われていたのよ」
「何でも法事で親戚の誰も声をかけない」
「お顔も向けない位ね」
「それは凄いね、いやそう思うと僕は幸せだよ」 
 今度は心からこう言った。
「そんな人が親御さんじゃなくて」
「お父さんとお母さんがこうでか」
「よかったっていうのね」
「うん、不満があることも事実だけれど」
 信也はこのことは素直に述べた。
「けれど毒親が親じゃないってだけでね」
「いいんだな」
「そうなのね」
「うん、誰もそんな人になりたくないよ」
 今話しているろくでなしの様にはというのだ。
「自分の努力も必要だけれど」
「親がそうだとな」
「教育って大事だからね」
「それだけで僕も他の人も幸せだよ」 
 自分だけでなくというのだ。
「本当にね」
「そう言うんだな」
「あんたは」
「親が普通の人っていうのはそれだけで幸せだね」 
 一緒に夕食を食べつつ言うのだった、その夕食はしっかりと作られたもので美味しかった。そして一家団欒で話をしていくのだった。
 大学を卒業してからも信也は普通に育ち普通の社会人となった、それで彼はよかったといつも言っていた。普通の両親がいてくれてと。


毒親じゃなくてよかった   完


                   2023・12・30 
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