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毒親じゃなくてよかった

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第二章

「火葬にしたらな」
「骨なくて」
「灰しかなかったんだ」
「酷い死に方だね」
「そうなるから」
 母は息子に話した。
「あんたはこれからもね」
「ヤクザ屋さんなんかと付き合わないで」
「しっかり生きていってね」
「お父さん達も間違ったことは間違っているって言うからな」
 父も言った。
「いいな」
「そうしていくよ」
 信也は両親に真顔で答えた、そして真面目に生きていったが実は親に不満がない訳ではなかった。だがその中で。
 通っている大学、八条大学においてある人の話を聞いて呆れ果てた。
「僕の大叔父さんも酷かったけれど」
「この人も酷いでしょ」
「何それって」
 同じゼミの女子の同級生に話した。
「今思ってるよ」
「このお話を聞いて」
「うん、とんでもない人だね」
「理事長さんというかこの学園経営している八条家の人達が信者さんの」
「天理教の教会の信者さんだった人だね」
「こんな人だったのよ」
「仕事しなくて」
 まずこのことがあってというのだ。
「長男だからなんだ」
「ふんぞり返っていてね」
 そうであってというのだ。
「自分はこの世で一番偉いって」
「勘違いしていたんだ」
「何でもないね」
 それこそというのだ。
「普通のもっと言えば貧乏な方の」
「大阪の住宅街の」
「そんなお家の人だったけれど」
 ごく普通のというのだ。
「天下茶屋の方のね」
「東京の人が下町って言う」
「あそこの人でね」
「全然お金持ちでも立場がある訳でもないお家の人で」
「それでもね」
「そんな風に思っていて」
「それでなのよ」
 ゼミ仲間はさらに話した。
「お仕事してない、つまりニートでね」
「奥さんにずっと食べさせてもらってて」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「奥さんに食べさせてもらっていても家事もしないで」
「ただお家にいて」
「お料理作ってもらって」
 働いている奥さんにというのだ。
「お料理に甘いとか辛いとか文句ばかり言って」
「感謝しなかったんだ」
「もう感謝の気持ちなんてね」
 それこそというのだ。
「全くなかったらしいのよ」
「ふんぞり返っているうえに」
「それで偉そうに見下してばかりいて家族として何もしないで二十年近くいて」
「二十年って」
「遂に奥さんも我慢出来なくなって」 
 そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「離婚されたんだ」
「そうなの、それでずっとお世話になっていた奥さんに」
 その人にというのだ。
「当然ね」
「感謝しなくて」
「爪切りまで持って行ったって言ったそうよ」
「爪切り!?」
 そう聞いてだ、信也は聞いた瞬間に眉を顰めさせた。 
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