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山姥退治

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第一章

                山姥退治
 敦賀の港から都に行く途中の山で山姥が出るという噂があった、何でもその山姥の食欲は底なしで。
「都まで運んで売る魚を全部食ってか」
「そして魚を運んでいる牛まで食って」
「遂には人まで食うか」
「そんなとんでもない山姥か」
 敦賀でも都でもその話を聞いて顔を顰めさせた。
「底なしではないか」
「魚も牛も人も全部食うとは」
「そんな妖怪たまったものではない」
「その山姥が出る山を避けねばな」
「剣呑なことだ」
 敦賀から都まで魚を運ぶ商人達は特にこう言ってだった。
 その山を避ける様になった、だがその話を聞いた小坊主の一休は笑って言った。
「そんな山姥簡単に退治出来ますよ」
「どうして退治するのじゃ」
 彼がいる寺の住職が尋ねた。
「一体」
「はい、山姥は全部食べますね」
「その様じゃな」
 住職、彼の師である老僧もこう答えた。
「魚も牛も人もな」
「そうでしたら簡単な方法がありますよ」
「まさか魚に毒を入れるのか」
 住職は一休に怪訝な顔で問うた。
「そうするのか」
「それ位相手もわかります」
 一休は笑って返した。
「山姥も」
「そうであるな」
「ですから魚に毒があればです」
「食わぬな」
「はい、そして魚を食べずに」
 そうしてというのだ。
「牛や人をです」
「食ってしまうな」
「そして魚も毒を入れていないものをです」
「食ってしまうな」
「そうなってしまいます、若し食べて毒がある魚を入れても」
「河豚等か」
「同じです、食べて毒がある魚は山姥も見抜いて食べません」 
 そうだというのだ。
「ですから違います、また腐った魚もです」
「食べてあたる様なか」
「そうしたものも食べません」
「ではどうして山姥を退治するのじゃ」
「山姥のいる山の麓に生の川魚を沢山入れた桶を幾つも置けばいいです」
 一休は笑って話した。
「そうすればいいです」
「そうすればいいのか」
「はい、塩漬けになぞせず」
 そうしてというのだ。
「完全に生のです」
「川魚をか」
「鯉でも鮒でも鯰でも」
「どんな魚でもよいか」
「ふんだんに。それでいいです」
「ではそれをか」
「将軍様にもお話しましょう」
 一休はこう言ってだった、将軍である足利義満にも話した。すると義満は公家そのままの顔を怪訝なものにさせて言った。
「世は強者を何人も送ってじゃ」
「成敗するつもりでしたか」
「そう考えておったが」
「それでもいいでしょうが」
 一休は義満の考えも否定せずに答えた。 
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