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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第6章】なのはとフェイト、結婚後の一連の流れ。
   【第6節】キャラ設定6: ブラウロニアとミカゲ。

 
前書き
 この二人は、互いに「直接の接点」には乏しいのですが、ともに「八神家の新戦力」となるオリジナルのキャラクターなので、ここでまとめて紹介しておきます。 

 


 ブラウロニア・エレクテイオンは、〈外9コリンティア〉出身の魔導師で、新暦84年の春には、18歳で早くも「空戦Sランク」に認定されました。
 今では「ユニゾン抜きのシグナム」とならば「いい勝負」ができるほどの実力です。

 外見は、やや長身で筋肉質。鋭い目つきにすらりと伸びた黒髪。
 性格は、知的で冷徹な反面、責任感が強く、何かと自己犠牲的。
 もちろん、攻撃力も相当な高レベルなのですが、防御力と機動力がそれをもさらに上回っているため、「相対的に」攻撃力がやや見劣りしています。
 両の籠手(こて)から繰り出される砲撃魔法も相当な威力ですが、実戦においては大半の場合、それはただの牽制(けんせい)で、実は、〈双剣ディオスクーロイ〉による斬撃の方が主な攻撃となります。巧みに幻術魔法を織り()ぜた彼女の攻撃は、並みの魔導師にはもう()けることすらできません。
(決め技は「轟刃(ごうじん)千裂斬」や「閃影(せんえい)十字斬」など。)
 また、彼女は「秘技・曳光(えいこう)縛鎖(ばくさ)」(とてつもなく強固で長大なストラグルバインド)の使い手でもあり、12歳の時には、早くも『飛行中の飛竜を空中で縛り上げて、そのまま竜騎士ごと一気に斬り伏せた』という実績があります。

 コリンティアは古代ベルカの流れを()む「歴史の古い世界」ですが、悪く言えば「古臭い封建制社会が今もそのままに生き残っている世界」です。
 ミッドチルダからそれほど遠くもなく、昔から文化的には一定の交流もあるのですが、以前からずっと多数の国家に分裂したままで、中央政府がまだ存在していないため、今なお管理世界の一員にはなっていません。
(諸王の上に君臨する「上王」という存在もいるにはいるのですが、これはあくまでも宗教的な権威であって、政治的な実権はほとんど無いようです。)

 彼女の父親は優秀な「陸の騎士」として「とある国王」に仕えていましたが、彼女もまた12歳にして「空の騎士」に叙任され、その老王に忠誠を誓いました。
 しかし、父娘(おやこ)の名声が高まるにつれて、新参のエレクテイオン家は次第にその国の古参の重臣たちから(ねた)みを買うようになり……やがて英明なる老王が(やまい)に倒れると、成り行きのままに実権を掌握した凡庸(ぼんよう)な第一王子は、重臣たちの讒言(ざんげん)()に受けて、ついには近衛隊に「エレクテイオン一族の殲滅(せんめつ)」を命じてしまいます。
 居館(やかた)への襲撃に気づいた時には、すでに手遅れでした。今からどう戦っても、全く勝ち目が無いほどの戦力差です。
 エレクテイオン夫妻にできたのは、ただ自分たちが敵の目を引き付けている間に、火を放たれた居館(やかた)から「秘密の地下道」を使って「自慢の娘と愛する息子」を無事に逃がしてやることだけでした。

 地下道を抜けたブラウロニア(16歳)は、暮れなずむ空の下、追手(おって)が全く来ていないことを確認した後、(とし)の離れた弟アルカイオス(6歳)と何十人かの忠実な従者たちを(かか)え込んだまま、「森の入り口」でしばらく途方に暮れていました。居館(やかた)から持ち出すことができたモノはあまりにも少なく、このままではまともな夜営すらままなりません。
 いや。それ以前に『これから先、一体どこへ向かえば良いのか。それさえも解らない』といった状況です。
 しかも、その時、居館(やかた)への襲撃とは全く別の案件として、「もうひとつの危機」がブラウロニアたちに迫っていました。
 一行は、燃え盛る居館(やかた)の方にばかり気を取られていたため、森の奥に潜む「不穏な気配」に気づくのが遅れたのですが、実は、小型の質量兵器(実弾の銃器)を手にした一団が、(ひそ)かにブラウロニアたち一行を遠巻きにして「試し撃ち」の機会を(うかが)っていたのです。
 いわゆる「落ち武者(むしゃ)狩り」であれば、現地の正規軍を不用意に敵に回す心配も無いので、他の世界から違法に銃器を購入した犯罪者たちにとって、この状況はまさに「渡りに(ふね)」といったところでした。

 しかし、何という僥倖(ぎょうこう)でしょうか。そんなところに偶然(たまたま)やって来たのが、「管理外世界への違法な武器密売事件」の捜査のため、コリンティアに来ていた八神司令だったのです。
【はやてにとっては、これが、〈エクリプス事件〉終了後の(半年間の謹慎処分が終わった後の)最初の仕事だったのですが、今回は(守護騎士たちだけではなく)ルーテシアとファビアの二人をも、いろいろな経験を積ませるために連れて来ていました。】

 その時、〈ヴォルフラム〉はステルスモードで、低空を超低速飛行していました。
 地表に武器反応を確認したため、よくよく見ると、本来この世界には存在しないはずの質量兵器を持った一団が、それを持たない一行に、今しも背後から襲いかかろうとしているようです。
 現在、捜査中の「密売による武器」に間違いありません。
 八神司令は即座に三人の守護騎士とアルピーノ姉妹を地表に転送し、「過剰戦力」をもって犯罪者たちを一網打尽にしました。
(今回、ザフィーラだけは連れて来ていません。)

 ですが、不運にも、一発の流れ(だま)がアルカイオスの左胸に命中してしまいます。
 本来ならば、管理局は『管理外世界における「現地の人間」同士の争いには一切介入しない』というのが原則です。はやての立場から考えても、目的はあくまでも「違法な武器の押収と、購入者たちの一斉逮捕、および(誰から買ったのか、などの)事情聴取」であり、「被害者の救済」ではありません。
 しかし、『目の前で、罪の無い小児(こども)が死にかけている』というのであれば、また話は別です。
 はやての指示により、シャマルは手早く、弟の体を抱きしめて狼狽(うろた)えているブラウロニアに現地の言葉で事情を説明しました。そして、はやては、状況を理解したブラウロニアとその弟を、シャマルとともに転送で〈ヴォルフラム〉に収容。シャマルはそのまま少年の緊急手術を行ないます。

 技術的には決して難しい手術ではなく、アルカイオスは問題なく助かりました。
 それでも、コリンティアの医療技術では、おそらく助かってはいなかったでしょう。ブラウロニアは涙ながらに、はやてに繰り返し、くどいほどに感謝します。
 はやては半ば事情聴取のつもりで、ブラウロニアに「このような事態に到った事情」を話すよう(うなが)しました。
(逮捕した武器購入者たちの事情聴取は、ルーテシアとファビアに任せています。)

 そして、一連の事情を把握した上で、はやては彼女に「今後の身の振り方」を尋ね、ブラウロニアが何も答えられずにいると、『本当に(ほか)に行くところが無いのなら、ミッドに来てはどうか』と誘いました。
「それに答える前に、一度、実家の様子を見せていただけますか?」
 ブラウロニアにそう()われて、はやては上空からの映像を拡大し、艦橋(ブリッジ)のモニターに(おお)写しにしましたが、すでにエレクテイオン家の居館(やかた)は跡形も無く燃え落ちていました。王宮の近衛隊もすでに撤収したようです。
 生命反応は、もう全くありません。
 その説明を聞いて、ブラウロニアは両親や使用人たちの死を(いた)みながらも、ひとつ重大な決意を固めました。

『あなたの(おっしゃ)るとおり、私はミッドチルダに帰化します。つきましては、最後に、主君である老王に一言、(いとま)()いをさせてください』

 しかし、このまま〈ヴォルフラム〉で王宮に乗り付けてしまうと、たとえこちら側にその意図は無かったとしても、『管理局が、管理外世界の国家権力を武力で威圧した』という形になってしまいます。
 とは言え、王宮は今や彼女にとって「敵の根拠地」でもある訳ですから、そこへブラウロニアを単騎で乗り込ませる訳にもいきません。
 ブラウロニアは、はやてのそうした説得を受け入れ、やや不本意ながらも、(いとま)()いは書簡で済ませることにしました。

 そして、その書簡は翌日、未明のうちに、リインが密かに老王の許へと届けました。
 リインは王宮の上空で久々に「手乗りサイズ」の姿となり、警備の目をかいくぐって、小窓から老王の病室に侵入。まだ眠っていた老王をシャマル直伝(じきでん)の「回復魔法」で叩き起こし、直接に書簡を手渡して、また去って行きます。
 一方、その書簡から一連の状況を理解すると、一時的に元気になった老王は、凡庸な第一王子を廃嫡して辺境に飛ばし、エレクテイオン一族の名誉を回復するとともに、讒言(ざんげん)した重臣たちを全員あぶり出して相応の処分を(くだ)しました。
 その後、その国では一連の政争を経て、妾腹の第四王子が「全く思いがけず」老王の(あと)を継ぐことになるのですが……それはもはや、はやてやブロウロニアたちにとっては「関係の無い話」でしかありませんでした。

 こうして、ブラウロニアは弟アルカイオスや何十人もの従者らとともにミッドに帰化して、そのまま全員で管理局員になりました。
 時に、新暦82年の7月(ちょうど、なのはとフェイトがお互いの子供を妊娠した頃)、ブラウロニアがまだ16歳の時のことです。
【つまり、ブラウロニアは、ルーテシアやエリオやキャロやシャンテよりも一つ年下で、ファビアやトーマやコニィやジャニスと同い年で、アインハルトやミウラやユミナやクヴァルゼよりは一つ年上です。】

 彼女はいろいろな面でとても優秀な女性なのですが、根っからの「騎士」で、いささか堅苦しい性格と表情が「玉に(きず)」です。さらに言うならば、自分が相当な「美女」であるという自覚にも乏しいようです。
 当然ながら、性格的にはシグナムと「似たもの同士」で、彼女はミッドチルダに来た当初から、日常的にシグナムの「稽古(けいこ)」の相手を務めて来ました。
(最初のうちは、なかなか勝てなかったようです。)

 また、ブラウロニアははやてを「主君」と仰いでおり、その指示どおりに猛勉強をして、新暦88年の秋には22歳で早々と「艦長」の資格を取得しました。
(愛称は「ブラウ」ですが、彼女をそう呼んで良いのは、今ではもうこの世で「主君はやて」ただ一人です。)
 そして、彼女は翌89年の秋に23歳で、実際に特務艦〈グラーネ〉の艦長に(にん)ぜられてからは、主君はやての「第一の部下」を自認するようになります。

【コリンティア人の感覚では、身内を「部下」とは呼びません。そのため、ブラウロニアの意識の中では、八神家のメンバーは「はやての部下」のうちには入らないのです。
 また、彼女の中では、ルーテシアたちも「主君の、半ば身内」となっており、やはり「部下」のうちには入っていません。なのはやフェイトたちも「主君の、御友人」というカテゴリーなので、ブラウロニア自身から見ると「目上の存在」となっています。】

 なお、故郷の世界コリンティアを捨ててまで彼女に付き従って来た従者たちも全員、猛勉強の末に、今では特務艦〈グラーネ〉の優秀な乗組員となっており、立派に成長した弟アルカイオス(彼女よりも10歳年下、新暦95年の時点で19歳)もまた、今は艦長の資格取得に向けて頑張っています。
【彼は、空戦魔導師としては、せいぜいCランク程度なのですが。】


 一方、ミカゲは新暦83年の9月に、八神家に加わりました。
 彼女は、〈沈黙の(たがね)〉という識別コードからも解るとおり、ヴィータの〈グラーフアイゼン〉とは相性もピッタリです。
【なお、(たがね)とは、(はがね)で作った(のみ)のこと。(のみ)とは、細く鋭い先端部を金属や岩石の表面に押し当て、後ろから金槌(かなづち)で叩くことによって、その金属や岩石を削ったり割ったりするのに用いる道具のことです。】

 生まれは、明らかに何百年も前の古代ベルカなのですが、違法な研究所で一度、大半の記憶(メモリー)を強引に消去(デリート)されてしまっているので、ミカゲ自身は、ヴィータたちによって救出される以前のことをもう何も覚えていません。
 それどころか、今ではもう「古びた洋館」で暮らしていた頃のこともほとんど覚えていません。記憶が鮮明になるのは、「85年の11月の転居」以降のことです。

 実は、人間の意識が表層と深層に(意識と無意識に)分かれているのと同じように、高度な人格を(そな)えたユニゾンデバイスの記憶(メモリー)も、表層メモリーと深層メモリーに分かれています。
 人間でも、赤子の頃の記憶は、成長した時にはもう「意識」の上に残ってはいませんが、それは決して「跡形(あとかた)も無く」消え去った訳ではありません。それらの記憶は、意識の深層へと沈み込み、その人の「無意識」を(その人ならではの「もう死ぬまであまり変わることが無い個性」を)形成してゆくのです。
(昔の人々は、これを『三歳児(みつご)(たましい)百歳(ひゃく)まで』と表現しました。)
 それと同じように、ユニゾンデバイスも(全く何のメモリーも無い状態から始めたのであれば)最初の何年かの記憶(メモリー)は、深層メモリーへと沈み込んでしまいます。
 結果として、それらの記憶(メモリー)は、表層意識の上では思い出せなくなってしまうのですが、決して完全に消去(デリート)された訳では無く、そのユニゾンデバイスの無意識(本人にも意識化することのできない個性や行動原理)を形成する(かて)となるのです。

【リインは新暦67年の8月に生まれましたが、やはり、最初の3年ほどの出来事は、今となってはもうほとんど覚えていません。
 アギトは違法な研究所で長らくヒドい扱いを受けていたので、ゼストとルーテシアに助け出される前から記憶ははっきりしているのですが、無意識の個性は、いささか粗暴でひねくれたものになってしまいました。
(それも、八神家で生活するうちに「ゆっくりと」矯正(きょうせい)されていったのですが。)
 ミカゲは「深層メモリー」まで何割かは消去(デリート)されてしまっていたため、やはり、最初の2年ほどの記憶(メモリー)は、深層メモリーを充分な深さにまで埋め戻すために使われてしまいました。
 結果として、ミカゲはもう『当時の事柄を具体的に思い出す』ということはできないのですが、『八神家の「家族」から充分に愛された』という記憶(メモリー)は、彼女の無意識の個性を(以前と比べれば、の話ですが)大変に穏やかなものにしました。】

 ミカゲは普通、相手のことは名前に「~さん」を付けて呼びますが、リインとアギト、シグナムとシャマル、およびザフィーラのことは名前に「~姉さん、~兄さん」を付けて呼びます。どうやら、自分を「八神家の末っ子」と認識しているようです。
 また、はやてのことは、アギトに(なら)って『マイスター』と呼び、自分の(ロード)であるヴィータのことは、My Lordの古い読み方で『ミ・ロード』と呼びます。

 普段はかなりの甘えっ子で、精神的にもやや幼く、スキンシップも相当に過剰です。
 そのため、アギトからは「抱きつき魔」などと呼ばれ、少しばかり敬遠されているのですが……よくよく考えてみると、ミカゲも、最初に八神家に保護された時点では、特に個性の無いボンヤリとした子でした。
 そんなミカゲが「抱きつき魔」に成長してしまったのは、冷静に考えると、「2年と4か月ぶりに覚醒したアギトが、ミカゲを固く抱きしめて熱烈に感謝の意を表現したこと」が、そもそもの発端でした。
 そうした行為が幾度も繰り返され、その際の記憶や感情がその度に「深層メモリー」にまで沈み込んで行ったからこそ、ミカゲは「無意識のレベルで」そうした行動原理を身に付けてしまったのです。
 つまり、ミカゲがしばしばアギトに抱きついて来るのも、元を正せば、アギトの「自業自得」なのでした。(笑)

 彼女は、一人称には『ミカゲ』を、語尾には『~デス』を多用します。
 普段は、口数も少なめで、言葉づかいも丁寧なのですが、(長らく実験体として虐待されていたためか、いささか二重人格の傾向があって)ユニゾンすると、途端に饒舌(じょうぜつ)でノリノリな性格に変貌します。
 その際には、髪型や目つきも豹変し、一人称も『オレ』もしくは『我』に変わり、言葉づかいも荒々しく、「名乗り」の時などには少し文語調になります。
(例えば、敵を前にして『ヘイ、ヘイ。ミ・ロード! こんなの、サクッと()っちまおうぜ!』だとか、名乗りの際にも『我は(たがね)! 我が前に立ちはだかる者は、すべて砕かれ、沈黙する! 故に、我が名は〈沈黙の鏨〉! 我と我が(あるじ)の敵に、死と静寂をもたらす者なり!』といった感じです。)
 もちろん、ユニゾンした際には、「大人(おとな)ヴィータ」の側も「黒ヴィータ」になります。

【TVアニメのStrikerSでは、リインとユニゾンした姿の「白ヴィータ」が登場しましたが、アレが今ひとつ好みではなかったので、私は今回、こんな設定を組んでみました。
 と言うか、個人的には、StrikerSやVividのヴィータは、性格があまりに丸くなりすぎだと思います。彼女はもう少しトガっていても良いんじゃないでしょうか?】


 なお、少し先の話になりますが、新暦89年に、フユカとハルナ(当時、5歳児相当?)が新たに八神家に加わると、ミカゲは「姉」として(?)この二人のことは名前で呼ぶようになります。
【この「危険な双子」については、「プロローグ 第9章」および「インタルード 第6章」を御参照ください。】


 
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