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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
   【第1節】新暦79年、9月までの出来事。

 
前書き
 さて、Vividの終盤の展開に関しては、「はじめに」で述べたとおり、少々改変させていただくことになる訳ですが、前半の展開に関しても、若干の「仕込み」を付け加えます。
 具体的には、『79年のIMCS第27回大会には、U‐15大会を卒業した16歳の有名選手が二人、初参加していた』という設定で行きます。
 一人は、プロ格闘界で「格闘王」の異名を取るグラン・テミストスの娘、「剛腕の」テラニス・テミストス選手。もう一人は、ミッド地上・某陸士隊の部隊長ゼグル・ドーラス二佐の一人娘、「毒舌の」カマルザ・ドーラス選手です。
 また、全く無名で無所属の選手ではありますが、もう一人、「諸手(もろて)流、短杖(たんじょう)二杖術(にじょうじゅつ)」のクヴァルゼ・ムルダン選手(12歳)も、この年が初出場でした。
 

 


 明けて、新暦79年。
 まず、1月には、アインハルトの「育ての親」である祖父母が相次いで死亡しました。
 祖父エーリクも祖母イルメラもまだ67歳で、ミッドチルダの感覚では、明らかに「早死に」の部類です。
 アインハルト(12歳)は、祖父母の遺言(ゆいごん)に従って教会から司祭を呼び、二人の葬儀と「8年前に8歳で死んだ兄ゲオルグ」の祀り上げを()(おこ)ないました。
(エーリクの妹たちと娘たちも「一応は」顔を出してくれました。)
 なお、アインハルトは法的に未成年だったため、死亡したエーリクの下の妹ドーリス(57歳)が法律上の「保護責任者」になりましたが、その後、彼女は「親代わり」のようなことは何もせず、アインハルトが「両親と祖父母の遺産」によって経済的には何の不都合も無い状況にあるのを良いことに、アインハルトのことを完全に放置しました。
 そして、アインハルトは、St.ヒルデ魔法学院中等科「首都圏キャンパス」への入学手続きを終えると、祖父母という「(たが)」が(はず)れてしまったためでしょうか。3月からはついに「通り魔」のようなことを始めてしまったのでした。
 今にして思えば、全く『正常な判断力を失っていた』としか言いようがありません。

 また、2月には、マルーダ・クロゼルグ(65歳)も突発性の病気で死亡しました。
 孫娘のファビア(13歳)は、昨年のうちに通信教育で義務教育課程を修了していましたが、祖母の急死によって、全く心の準備なしに「魔女クロゼルグ」の記憶を継承してしまい、やがて、彼女の意識は「11歳当時のクロゼルグの感情」に飲み込まれてゆきます。
(継承される記憶の側を人格化して言うならば、ファビアは『祖母を失った悲しみのために、その心の弱さに付け込まれてしまった』ような形です。)
 法律上の「保護責任者」がつくと、行動が制限されてしまうと考えて、ファビアは当分の間、祖母の死を隠すことにしました。
 その間に、彼女は「違法な情報取得技術」によって『今も「あの三人」の子孫がミッドにいるのかどうか』を調べ上げ、アインハルトとヴィヴィオとジークリンデの存在を知ります。
 さらに、5月になって、今年はその三人がそろってIMCSに出場することを知ると、ファビアは自分も「発作的に」それにエントリーしてしまったのでした。
 これもまた、『正常な判断力を失っていた』としか言いようがありません。


 なお、2月には、はやては昨年にルーテシアと約束したとおり、カルナージで初の「合同訓練」を実施しました。
 参加者は、八神家の七人全員(はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン、アギト)の他に、なのは、フェイト、ギンガ、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。さらには、ノーヴェとヴィヴィオとコロナに、現地のルーテシアまで含めて、総勢18名です。
【Vividのコミックス第2巻の後半で、コロナが『前回も凄かったんだよ』と言っていますが、これがその「前回」です。続けて、ヴィヴィオが『今回はちょっと人数(にんずう)少ないから』と言っていますが、その「今回」は総勢12名なので、この作品では、ギンガまで引っ張って来て「前回」の総勢を18名に設定してみました。】


 一方、3月には、管理局で「執務官の補佐官制度」の改革が実施されました。
【その具体的な内容については、前章の「背景設定3」を御参照ください。】

 そして、それと同じ頃、ルーテシアは現地で(ホテル・アルピーノのすぐ(そば)の土地で)温泉を掘り当てました。
【コミックスの第2巻では、本人はノリで『掘ったら出て来た天然温泉』などと言っていますが、もちろん、実際には、『テキトーに掘ったら、偶然に出て来た』という訳ではなく、『この辺りをこれぐらい掘れば、必ず出て来るはずだ』という「高度な推定」に基づいた行為でした。】


 なお、新年度の4月には、〈管61スプールス〉の自然保護隊に、新たな「総部隊長」が着任し、前任者の怠惰な仕事ぶりを是正し始めました。

【この作品では、スプールスも、ミッドチルダと同様に『かつては無人の世界だった』という設定で行きます。
 今から1200年あまり前に、最寄(もよ)りの世界である〈テルマース〉が滅亡し、そこから(のが)れて来た難民たちが、惑星スプールス(および、後述のダムグリース)における「最初の人々」となりました。
 彼等は彼等自身の伝統に従って、スプールスの七つの大陸に「北から順に」番号を割り振ると、自分たちの故郷と最もよく似た環境の「小さな第二大陸」に定住して、惑星全土の領有権を主張すると同時に、他の六大陸のすべてを自然保護区に指定しました。
(これは、ミッドがまだ「まるで知名度の無い世界」だった時代の出来事であり、彼等も決して『ミッドを真似た』という訳ではありませんでした。
 ただ、この時点で、彼等の総人口はせいぜい700万人たらずでしかなく、ほとんど『肩身を寄せ合って生きて行かねば、文明を維持できない』というような状況だったのです。当然に、他の大陸にまで植民する余力などありませんでした。)

 もっとも、第一大陸(北極大陸)と第七大陸(南極大陸)は、陸地の多くが氷に覆われているため、特に予算を組んで保護しなければならないほどの自然はありません。
 そのため、管理世界の一員となった現在においても、『第三から第六まで、四つの大陸それぞれに自然保護隊が駐留しており、また、それぞれに部隊長がいる』という形になっており、それらの部隊長を統括しているのが、スプールス全体の「総部隊長」なのです。
 なお、『エリオやキャロがいつもいる場所は、スプールスの「第五大陸」である』という設定で行きます。
 スプールスも一応は管理世界なので、当然と言えば当然なのですが、第二大陸には普通に都市やら農村やらが広がっており、今では「億を超える数」の人々が普通に文明的な生活を送っているのです。】


 そして、同じ頃、ヴィヴィオは初等科の4年生になり、アインハルトと出会いました。
【詳しくは、Vividのコミックス第1巻を御参照ください。】

 また、5月には、ヴィヴィオたちが一学期の前期試験を終えた後、アインハルトとともに、カルナージにおける二回目の「合同訓練」に参加しました。
【詳しくは、コミックスの第2巻・第3巻を御参照ください。なお、この時に行なわれた練習会のチームバトルは、あくまでも「陸戦試合」だったので、あからさまな空戦スキルの使用はルールで禁止されていました。フェイトがバルディッシュを文字どおり「戦斧」として振り回し、エリオと真正面から打ち合っていたのも、そのためです。】

 そして、7月下旬、ミッド中央でも、IMCS第27回大会の地区予選が始まります。
 予選1組では、実のところ、ジークリンデ対アインハルト戦の一つ前に、「無敗の」ジークリンデ対「毒舌の」カマルザ戦がありました。
 公式ルールでは、リングの上で相手選手を(あお)るような発言は禁止されているはずなのですが、カマルザは「お構い無し」に、いつもの毒舌を連発して来ます。
 ジークリンデは呆れ顔で、ひとつ大きく溜め息をつきました。
「君は少し黙ろうか」
 一言(ひとこと)そう言うなり、突然のラッシュで相手選手を一気にリングの外まで(はじ)き飛ばします。
 カマルザはあまりの激痛にカウント内にリングに戻ることができず、そのままTKO負けとなりました。
 後に、彼女は『何の見せ場も無く秒殺された』ことで、ジークリンデを怨むようになりますが、言うまでも無く、それは単なる「逆怨み」でした。

 さて、その地区予選では、ナカジマジムのメンバーは四人とも、いささか残念な結果に終わってしまいました。やはり、新人(ルーキー)が都市本戦にまで勝ち進むというのは、相当に難しいことのようです。
【ちなみに、すべての参加選手を20組に分けた時に、四人の選手がきれいにバラバラになる確率は、7割を軽く超えています。コロナとアインハルトが同じ組に入ってしまったことは、少々運の悪い出来事だったと言うべきでしょう。】

 また、8月になると、〈無限書庫〉でファビアが騒動を起こしたり、教会本部ではイクスヴェリアの体から「小さな分身」が生まれたりした後、St.ヒルデ魔法学院では前期末試験があり、IMCSでは地区予選の準決勝戦がありました。
(先に「第3章」でも述べたとおり、原作とは少し出来事の順番を変えています。)

 なお、予選6組では、「小柄で童顔の」クヴァルゼ選手(12歳)が、これまでずっと新人(ルーキー)としては善戦して来たのですが、さすがに準決勝戦では、ヴィクトーリア(17歳)に「秒殺」されてしまいました。
(詳しくは、コミックス第13巻を御参照ください。)
【私は、このエピソードを読んだ時、『準決勝なのに「1R 0分49秒 KO」って、実力に相当な差があったのかなあ』と強く印象に残ったので、今回、ちょっとキャラを造ってみました。
 クヴァルゼ選手は元々小柄な体格でしたが、魔法資質の関係で「大人モード」への変身魔法などは全く使うことができません。そこで、小柄な体格を活かしたスピード重視の戦い方をしており、今回は本人の予想以上に勝ち進むことができたのですが、ヴィクトーリアとやり合うには、さすがにパワー不足だったようです。】

 そして、8月の半ばには、学校も夏休みに入り、そこで地区予選の決勝戦が(おこ)なわれました。
 予選1組ではジークリンデが、5組ではハリーが、6組ではヴィクトーリアが、10組ではルーテシアが、それぞれKO勝利で都市本戦出場を決めました。
 また、11組以降では、バオラン、ノーザ、ザミュレイらの「常連」が順当に勝ち上がり、19組ではテラニスが怒涛(どとう)の「全試合KO勝利」で本戦出場を決めます。
 一方、予選4組のミウラも、「ニーナ選手」との決勝戦が判定勝ちとなったのを除けば、それ以外はすべてKO勝ちでした。

【ちなみに、このニーナ・バルード選手(14歳)は、いわゆる「復活枠」で都市本戦にも出場しましたが、第5ブロックの1回戦でグラスロウ選手にまたもや僅差の判定負け。それを最後に早々とIMCSを引退し、翌年には、中卒で陸士訓練校へと進みました。
 後に、彼女は優秀な陸士となって、85年には20歳で(首都圏の西隣にある)フォルガネア地方の「陸士147部隊」に転属となり、そこで「産休明け」のアルト・クラエッタ・ブラッソネア陸曹(26歳)ともごく親しい間柄になりました。
 なお、元機動六課のアルト・クラエッタは、82年4月の時点で同部隊に転属しており、翌83年の夏には、同じ部隊に所属する三歳(みっつ)年上のボーレン・ブラッソネア三等陸尉(当時)と結婚して、後に2男を産んでいます。】

 ところで、地球では昨年末から今年の8月の半ばまで、リンディ(52歳)は珍しく体調を崩していました。それで、アルフも「現地駐在員の補佐官」としての仕事が相当に忙しかったようです。
【要するに、『Vividのシリーズに地球の話が全く出て来ないのは、ひとつには、「接点となるべき人物」があまり活動をしていなかったからだ』という設定です。
 なお、8月後半にミッドの学校が夏休みとなり、可愛い孫たち(カレルとリエラ)が泊まり込みで遊びに来る頃には、リンディの体調も「いつの間にか」良くなっていたようです。(苦笑)】


 また、地区予選の決勝戦の終了後(8月下旬)に、ヴィヴィオたちは皆で〈管10ルーフェン〉へ行き、いろいろと修行をしてから、またミッドチルダに帰って来ました。
【詳しくは、コミックスの第14巻から第16巻を御参照ください。】

 そもそもの発端は、〈無限書庫〉での騒動の際に、ミカヤが『リオの実家が、ルーフェンでは有名な拳法流派「春光拳」の道場で、その倉庫には秘伝書なども数多く死蔵されている』と知って激しく興味を示し、リオが彼女を実家に誘ったことでした。
 結局、リオの「夏休みの帰省」には、ミカヤの他、ナカジマジムのヴィヴィオとコロナとアインハルトとノーヴェも同行することになり、また、その場の流れで、ミウラやユミナに加えて、オットーとディードも参加することになります。
 イクスヴェリアの「小さな分身」も、後からシャンテに連れられて、ルーフェンに向かったのですが、その途中、別件でルーフェンへ行くジークリンデとエドガーに出くわし、シャンテとイクスヴェリアも一時的に、この二人と行動を共にすることになりました。
 実は、ジークリンデは前々からルーフェンの伝統武術にも興味があったのですが、それを知ったヴィクトーリアに『それなら、エドガーの妹が「華凰拳」の道場で、アイリンお嬢様の執事をしているから』と(うなが)され、エドガーの紹介でそちらにお邪魔する予定でいたのです。
 思えば、エドガーが何日間もヴィクトーリアの許を離れるのは、なかなかに珍しいことでした。もちろん、同行者が「親友」のジークリンデでなければ、ヴィクトーリアもそれを許したりはしていなかったでしょう。

 一方、聖王教会本部では……。
 イクスヴェリアの「小さな分身」がルーフェンに行っている間は、本体の神経活動の方も微減して「分身を出す以前の水準」に戻っていました。
 そして、その分身がルーフェンから戻って来ると、一時的にその水準は大きく跳ね上がりましたが、また何時間かすると「普通の(分身を出した後の)水準」に戻ります。
 騎士カリムから『ルーフェンにいる間も、本当に分身の挙動に変化は無かったのですか』と問い(ただ)されて、シャンテは正直に『もしあったのだとしても、それは、自分には解らないほどのわずかな変化でした』と答えました。
 それで、『あの分身は、次元移動によって本体から切り離されても、当分の間は普通に動き続けることのできる「自立型の情報端末」であり、分身を出してから本体の神経活動が微増したのも、分身からの情報入力によるものだった。だから、分身がルーフェンから戻って来た時、切り離されていた間の「数日分の情報」が一気に流れ込んで来て、本体の神経活動の水準は大きく跳ね上がったのだ』という事実が判明します。

 シャッハ「これだけの情報入力があって、何故まだ目覚めないのでしょう?(落胆)」
 オットー「入力の側ではなく、出力の側に何か問題があるのでしょうか?」
 カリム「昨年の7月に少しだけ御本人からお話を聞くことができましたが、あの時のお話からすると、『冥王陛下御自身が今、目覚めたがっていない』とは考えにくいですね」
 ディード「つまり、何らかの障害が存在している、ということですか?」
 シャッハ「あるいは、ただ単に、必要な〈休眠期間〉がまだ消化されていないだけ、ということも考えられますが……」
 セイン「分身に向かって、早く目覚めてくれと語りかけ続ける、ってのはどうですかねえ?」
 カリム「いいえ。『すでに精一杯(せいいっぱい)頑張っているのに、結果を出せずに困っている人』に向かって、『もっと頑張れ』などと言ってはいけません。本人が(うつ)にでもなったりしたら、元も子もありませんからね」
 オットー「当面は、『今、目を覚ませば、こんなにも平和で楽しい生活があなたを待っていますよ』という情報を入力し続けるしか無い、ということでしょうか?」
 シャンテ「それって、要するに、『今までどおり』って意味ですよね?(不満そう)」
 ディード「本人の意識はまだ9歳児のままなのですから、もちろん、世の中の醜い面など、あまり見せつける訳にもいきませんが……なかなかに面倒な話ですねえ」

 そんな会話の後、騎士カリムは、思わず『どうか、聖王陛下のお導きがありますように』と天に祈りを捧げました。
(もしも……もしも、聖王陛下に本当に再臨していただけるのであれば、その時は我々の前にではなく、どうか彼女の前に……。)
 しかし、そうしたカリムの祈りが本当に天に届くまでには、これからまたさらに16年ちかくもの歳月を要したのでした。

 また、それとは全くの別件として、カリムはオットーとディードに、『ヴィヴィオさんのことを「陛下」と呼ぶのは、もう()めるように』と命じました。
 再来年には、「聖王昇天360周年記念祭」があるからです。
「これ以上は、ヴィヴィオさんに迷惑がかかってしまうから、遅くとも年内には改めなさい」
 カリムに面と向かってそう言われると、オットーとディードはいささか落ち込みましたが、それでも、二人はカリムのそうした命令にも忠実に従ったのでした。


 そして、9月の末、ファビア・クロゼルグに早くも判決が()りました。
 先月の〈無限書庫〉での騒動は、八神司令の判断によって不問に()されましたが、『祖母の死体を隠匿(いんとく)した』などの罪により、やはり1年間の保護観察処分となります。
 他にも幾つか選択肢はありましたが、結局のところ、ルーテシアの時と同じように、メガーヌが保護責任者に、はやてが法的後見人になりました。また、当分の間、ファビアはルーテシアとともに聖王教会本部に滞在することとなります。
 (かり)()まいではありましたが、ファビアはいろいろな人たちからいろいろな話を聞くうちに、本来の「もの静かな人格」を急速に取り戻して行きました。
(後に、彼女の模範的な態度が評価されて、保護観察の期間は半年に短縮されます。)


 
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