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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
  【第9節】キャラ設定2: リンディ・ハラオウン。

 
前書き
 皆様もよく御存知のはずのキャラクターですが、この作品では彼女に相当な量の「独自設定」を付け加えましたので、それらをまとめて、ここで紹介しておきます。
 まず、公式の設定には「リンディの年齢」に関する記述が特に見当たらないのですが、A’sの設定資料集には、クライドは新暦54年に死去した時点で25歳だった、という記述があるので、本来ならば『彼女も夫と同じく、新暦29年の生まれである』と考えておくべきなのでしょう。
 しかしながら、諸般の事情により、この作品では、彼女は「新暦27年の生まれ」ということにしておきます。つまり、彼女は『24歳でクロノを産み、新暦65年の時点で38歳だった』という設定です。
(ちなみに、当時、士郎は37歳、桃子は33歳でした。また、これに合わせて、クライドも「新暦26年の生まれ。享年28歳」という設定に変更させていただきます。)
 

 


 元々、リンディの実家キャネリア家は「ファストラウムの中央大陸」にある首都カルナログから東へ何十キロメートルか離れたところにある「衛星都市ハリスヴァル」の郊外で代々「都市近郊型の小規模農場」を経営していました。
 リンディの曽祖父グリマスの代までは随分と羽振りも良く、グリマスはミッドで言う旧暦533年(新暦で言うと、前7年)の秋に、一人息子パルドゥス(リンディの母方祖父)の結婚を機に、『そのまま百年は()つ』と言われるほどにしっかりした造りの、小振りな木造校舎のような大きさの「総二階建てのお屋敷」を新築したほどです。
(この世界には昔から職人が多く、極めて高度な「木造建築」や「木工」の技術が、新暦30年頃までは、それぞれの土地で当たり前のように継承されていました。)

【そもそも、「ファストラウム」という単語は、現地の古い言葉で「森の国」を意味しています。
 その言葉も、元々は「中央大陸の西側に拡がる大森林地帯」を指す用語だったのですが、後に、その単語が「中央大陸全体」を指す地名と化し、さらに後の時代に「その世界(惑星)、全体」を意味する名称と化したのです。
(実のところ、その(あた)りの事情は「ミッドチルダ」と全く同様なのですが、その件については、次節の「背景設定2」を御参照ください。)】

 しかし、新暦の時代になって交通網が発達し、遠方の大規模農場から首都圏へ、大量の農産物が安価に流入するようになると、小規模農場の経営は次第に悪化し、周辺の同業者たちも次々に廃業していきました。
 そんな中、キャネリア農場もまた、経営手腕に()けたグリマスとその妻トゥアラが新暦18年に70代で揃って他界すると、経営は急速に悪化していきました。
 残念ながら、パルドゥスには両親ほどの経営手腕は無かったのです。

 しかも、同18年には、管理局と〈カラバス連合〉との三年戦争が始まり、ファストラウムでも治安は急速に悪くなって行きました。
 ファストラウムは(ヴァイゼンなどとは異なり)直接の戦禍(せんか)(さら)されることはありませんでしたが、終戦後、キャネリア農場は「地上げ屋」に目を付けられてしまったらしく、しばしば「ならず者たち」が農場の使用人を狙って訳の解らない言いがかりをつけて来るようになります。
 そして、新暦22年の夏には、パルドゥスの一人娘ディサ(20歳)までもが、「戦争帰り」と自称するチンピラたち(実際には、地上げ屋の手先ども)に(から)まれるようになってしまいました。
 しかし、そこへ颯爽(さっそう)と現れたのが、ヴァイゼンから流れて来た「ヴェラルド・マグナス」という名前の美男子(24歳)です。
 彼は持ち前の魔法でチンピラどもを難なく追い払いましたが、訊けば『元より天涯孤独の身の上だったが、三年戦争でヴァイゼンの家も焼かれ、もう帰る場所も無いのだ』と言います。パルドゥスとその妻ファムニスタは『行く当てが無いのなら、しばらくここに留まってはくれないか』と、彼をキャネリア家に引き止めました。

 ヴェラルド自身も、最初は「ただの用心棒」のつもりでいたようですが、実のところ、ディサと「男女の仲」になるまで、さほどの時間はかかりませんでした。
 しかし、パルドゥスとファムニスタにとっては、それも『計画どおり!』といったところだったのでしょう。
 夫妻は喜んで、彼をキャネリア家に婿として迎え入れました。ヴェラルドにとっては、『ヴァイゼンの市民権を放棄して、戸籍をファストラウムに移した』という形です。
 その後、新暦27年になって、二人の間にようやくリンディが生まれると、周辺の地価のバブル的な上昇を踏まえ、キャネリア夫妻はついに「不動産業者」の勧めに従って先祖伝来の農地を売却しました。使用人たちもすべて解雇したため、その日からいきなり「大きな屋敷で家族五人だけ」の生活となります。
 土地の売却益が「相場をはるかに超える額」だったため、当面の生活には全く困りませんでしたが、それでも、今までの(にぎ)やかな毎日を思うと、それはいささか寂しい生活でした。

 その後も、キャネリア家にはさらなる不幸が続きました。
 翌28年には、まだ50代のパルドゥスとファムニスタが唐突に交通事故で死亡してしまいます。
 完全に相手側の過失による事故だったので、またもや「相場をはるかに超える額」の賠償金が支払われましたが、一人娘のディサにとっては、そんなものは嬉しくも何ともありません。
 夫ヴェラルドも、最初の頃はあんなに優しかったのに、年を追うごとにどんどん気難しくなってゆき、新暦30年以降は、もう働きもせず、ほとんど二階の書斎に閉じこもってばかりいます。
 いつしか、幼い一人娘のリンディだけが、ディサの心の支えになっていきました。

 そして、新暦32年の暮れ、ある寒い朝に、ヴェラルドは「緊張性気胸」で急死しました。起き上がって、こわばった体を伸ばしながら大きく深呼吸をした瞬間、全く唐突に左右の肺がそろって破れてしまったのです。
「以前から『生まれつき肺が弱い』みたいな話は聞いていたけれど、まさかこんなことになるなんて……」
 ディサは夫の葬儀を終えてからも、しばらくは泣き暮らしていましたが、やがて年が明けると、娘のために立ち上がりました。
【この作品では、『リンディの「ファストラウムにおける小児(こども)時代」も、決して「あからさまに不幸だった」という訳ではないのだが、父親はいささか気難しい性格だった上に、彼女が5歳の時には早々と亡くなってしまったため、それなりに(つら)い思いも数多く味わって来た。だから、養女のフェイトには、もうなるべく辛い思いはさせたくなかったのだ』という設定で行きます。】

 また、新暦33年の春、「6歳児の集団検診」で、リンディが(父親譲りの)相当な魔力の持ち主だと解ると、ディサは娘への「より良い教育」のために(?)ミッドへの移住を決意します。
 まず、広大な敷地とそこに建つ大きな「お屋敷」を、さまざまな調度品なども全部つけたまま、当時50代のヴァディスカム夫妻に売却しました。
 この夫妻には3男2女があり、その長男にはすでに妻と1男1女がいました。夫妻の次男もすでに適齢期です。そのため、夫妻は『三世代で10人以上の大家族が仲良く同居する』ために、しばらく前から大きな家を探していたのでした。
 当時、ヴァディスカム夫妻の初孫(ういまご)であるアラムドゥ君はまだ5歳。
 リンディは今でも、親同士が難しい話をしている間に、「一歳(ひとつ)年下の」アラムドゥ君と一緒に庭で遊んでいた時のことをよく(おぼ)えています。

 その後、6月になると、ディサは衣服や最小限の身の回り(ひん)だけを持って、リンディと二人きりでミッドに移民し、首都の郊外で質素な母子家庭を営み始めました。
 翌34年の春には、リンディも魔法学校の初等科に入学し、ディサも預貯金(親の遺産や土地家屋の売却益など)をなるべく減らさないようにと、元々あまり体の強い方ではなかったのですが、それでも、娘のために懸命に働きます。
 そして、リンディ・キャネリアは8年間の義務教育課程を無事に修了すると、新暦42年の春には15歳で管理局の士官学校に入学しました。空士専門コースや陸士専門コースならば二年で卒業できますが、リンディは三年制の総合コースに進みます。

 士官学校は二人一部屋の全寮制でしたが、そこでリンディと同室になったのが、名門ロウラン家の末娘レティでした。
 その後、二人はふとしたことから、一年先輩のクライド・ハラオウンや彼と同室のエルドーク・ジェスファルードとも、ごく親しい間柄になります。
 クライドはリンディと同様、母子家庭の苦労人で、一方、エルドークはレティと同様、名家の末子でした。とは言え、この二人は『出自を鼻にかけて、他人(ひと)を見下す』ようなところは全く無く、リンディやクライドともすぐに本物の友人になりました。
 実を言うと、当初はリンディをめぐって、クライドとエルドークの間に「ちょっとした軋轢(あつれき)」もあったのですが、レティから「それとなく」リンディの気持ちを聞き出したエルドークが、かなり早い段階で静かに身を引いたため、あまりドロドロとした展開にはならずに済みました。
【その後、エルドークはレティと共謀して、クライドとリンディの仲を進展させるべく、(かげ)ながら「支援」(お節介?)をするようになります。(笑)】

 しかし、翌43年の8月には、クライドの母親ルシアが40歳の若さで急死しました。
【なお、クライドの父親クレストは、管理局で次元航行部隊の艦長をしていましたが、新暦35年の6月、クライドがまだ9歳の時に〈辺境領域〉の南部で殉職しています。享年は37歳でした。】

 その墓前で、リンディは初めて、ニドルス・ラッカード艦長(33歳)と出逢いました。
 13歳で空士になり、16歳でいきなり執務官になり、士官学校を出ることもなく、24歳の若さで艦長(三等海佐)にまでなったという大人物です。
【先に「キャラ設定1」でも述べたとおり、ニドルスの妻マリッサは、亡きクレストの14歳も(とし)の離れた妹でしたが、そのマリッサも新暦33年に結婚した後、39年になってようやく一女リゼルを産むと、翌年の3月には28歳の若さで早々と死亡しました。】

 リゼル(4歳)は、もう疲れたのか、使い魔のジェルディスに()っこされたまま眠ってしまっていましたが、三つ並んだ「ルシアとクレストとマリッサの墓」の前で、ニドルスはクレストのことを「兄貴」と呼び、クライドとリンディの関係をそれとなく察しながらも、クライドにこう語りました。
「お前の性格は解っているつもりだが……この先、もし本当に困った状況(こと)になったら、他の誰かを頼る前に、まず俺を頼れよ。……俺も昔、兄貴には随分と世話になったが、借りの一つも返せねえうちに、兄貴は()っちまったからなあ」
 クライドは義理の叔父に対して、素直に感謝の言葉を述べましたが、もちろん、今はまだその時ではありません。
「その時には、きっとお世話になります」
「ああ。約束だぞ」
 しかし、その約束が果たされたのは、それから実に11年あまりも後。クライドが父クレストと同じように殉職した後のことでした。

 士官学校を卒業した後、四人は〈本局〉の次元航行部隊で順調に昇進を続け、新暦48年の春には、クライドは22才で早くも艦長(三等海佐)の地位に就きました。
 リンディはそれを待って、クライドを改めて母親に紹介し、結婚の意思を伝えます。
 ディサは大喜びで二人を祝福し、二人はすぐに式を()げて籍を入れました。お互いに「親族」がほとんどいないので、出席者も少なく、随分と簡素な式になりましたが、レティ(21歳)やエルドーク(22歳)、ニドルス(38歳)やリゼル(9歳)やジェルディスも駆けつけて、二人に心からの祝福を送りました。

 しかし、その年の5月の末に、ディサ・キャネリア(46歳)は不慮の事故で、あっさりと死んでしまいます。
「これから、ようやく親孝行ができると思っていたのに……」
 リンディは涙にくれましたが、愛する夫に支えられてようやく気を取り直すと、ディサの生前の言葉に従って、彼女の遺体を〈管4ファストラウム〉へ運び、父ヴェラルドの墓の隣に彼女の墓を建てました。
 これは、リンディにとっては「初めての里帰り」でした。実に、15年ぶりのことですが、今までずっと「帰るべき理由」が何も無かったのです。
 また、この年は彼女にとって「曽祖父母の死から30年、祖父母の死から20年」という「大きな区切りの年」でもあり、リンディは曽祖父母の「祀り上げ」を済ませるとともに、墓地の管理人に対しては、十年後には自分が来なくても自動的に祖父母の「祀り上げ」をしてくれるよう、俗に言う「永代供養」を頼んでおきました。
【その後、リンディの両親に関しては、「(かね)の流れ」について少々「不審な点」が見つかったのですが……その話は、また「第二部」でやります。】

 そんな訳で、リンディとクライドには、この時点ですでに親兄弟が一人もいませんでした。したがって、クロノには、最初から祖父母もオジもオバもイトコもいませんでした。両親を除けば、「クロノと血のつながった親族」は、最初から5親等のリゼルただ一人だったのです。


 さて、〈中央領域〉における「統合戦争」が終了し、(こよみ)が新暦に切り替わった後には、もっぱら犯罪結社やテロ組織などが管理局の「主敵」となりました。
 時代(とき)は大航海時代。
 犯罪者たちの多くは、より利益率の高い「中央領域での活動」を諦め、開拓途上の辺境領域へと散っていきました。彼等は「ハイリスク・ハイリターン」よりも、「ローリスク・ローリターン」を選んだのです。
 こうして、〈中央領域〉の「主要な世界」は(西方では、カラバス連合との三年戦争などもありましたが)長らく「それなりの平和」を享受しました。
 その後、新暦40年代に入ると、30年代の「南方遠征の失敗」などを踏まえて艦船の増産体制が整えられた結果、管理局の次元航行部隊が保有する艦船も相当な数に増え、状況に応じて〈辺境領域〉にも「それなりの戦力」を投入できるようになります。
 しかし、その結果、皮肉にも〈次元世界〉全体規模で「犯罪者たちの中央回帰」とでも呼ぶべき現象が起きてしまいました。
 辺境領域で「代替わり」した新世代の犯罪者たちの中には、『リスクに大差が無いのであれば、豊かな世界でハイリターンを狙った方が良い』という「ギャンブラー的な考え方」の持ち主も、決して少なくはなかったのです。

 その結果、ミッドでも新暦40年代の後半から、急速に治安が悪化し始めました。
 そして、新暦51年、リンディがクロノを産んで間もない頃に、いきなり「一連のテロ事件」が発生します。(ほか)でもない「ミッド地上」でテロが起きるなど、統合戦争の中期に「南方の四世界同盟の工作員たち」が暗躍して以来、ほとんど90年ぶりのことでした。つまり、ほとんどの人々にとって「生まれて初めて」のことです。
 社会不安から株価は暴落し、ミッド経済は「恐慌」に陥りました。
 そして、本人たちとは全く関係が無い爆破テロ事件の「とばっちり」で自宅を丸ごと焼かれてしまったハラオウン家の三人に対しては管理局から「特例措置」が認められ、それ以降、リンディは「産休」を取得した状況のまま、赤子のクロノとともに夫クライドが艦長を務める(ふね)の中で生活をするようになります。
(また、翌52年の春には、ラルゴ・キール上級大将、レオーネ・フィルス法務長官、ミゼット・クローベル参謀総長の三名が、一連のテロ事件を未然に防げなかったことに関して責任を取る形で()しまれながらもその要職を辞任・引退し、ここしばらく空席になっていた〈三元老〉の地位に就きました。)

 リンディは産休の間も「艦長資格」の取得に向けた努力をこつこつと続けていました。51年の暮れに産休から復帰すると、夫の(ふね)の中で育児と職務をこなしながらも、その努力にさらなる時間と情熱を()ぎ込んでいきます。
 そして、リンディは「適性検査と筆記試験と実務研修」を終えた後、新暦53年の秋には26歳で無事に艦長の資格を取得し、翌54年の春には実際に某中型艦の艦長となりました。
 しかし、その年の11月の末には、管理局にとっては五回目の直接遭遇となる〈闇の書事件〉によって、夫クライドが殉職してしまいます。
 葬儀などが一段落し、年が明けると、リンディはニドルス・ラッカード艦長に『あの時の約束を果たしていただく時が来ました』と言って、クロノを彼に預けました。
 そして、およそ十年後には、きっとまた何処(どこ)かで目覚めるであろう「闇の書」に対処できるように、その時には「自分の判断でより自由に動ける立場」になっているために、リンディは「提督」の地位を目指して、さらに懸命に働き続けたのでした。

 その結果、新暦61年の春、息子クロノ(10歳)が正式に管理局員になると同時に、リンディは34歳の若さで提督(一等海佐)となり、管理局は彼女の活躍に期待して、彼女に大型艦〈アースラ〉を任せました。
【ただし、提督とは「その御座艦(ござぶね)を旗艦とする艦隊の司令官」のことなので、〈アースラ〉ただ一隻を指揮する「艦長」は、本来ならばリンディ「提督」とは別個に、その「直属の部下」として存在しているはずです。
 そこで、この作品では、『クロノが68年に、17歳で〈アースラ〉の艦長になった』というのも、そういう意味であるものと「解釈」しておきます。】

 そして、翌62年の暮れになると、リンディ(35歳)は父ヴェラルドの「30回忌、祀り上げ」のため、また14年半ぶりに、今度は一人で「二度目の里帰り」をしたのですが、墓地の片隅にある父母の墓の前で、不意に「一歳(ひとつ)年下の」アラムドゥ(34歳)と出くわし、声をかけられました。
 聞けば、ヴァディスカム夫妻は今年の夏に(あい)次いで亡くなったのですが、アラムドゥは祖父母の墓が建てられた際に、ふと「同じ墓地のすぐ近く」にキャネリア夫妻の墓があることに気づき、それからは気になって、墓地に来る(たび)にそっと(のぞ)いていたのだそうです。
 思わず立ち話を始めてしまいましたが、実のところ、あまり長話をしている時間もありません。
 リンディは、『ところで、今はどこで何をされているんですか?』と訊かれて、『実は、私、あれから管理局に入って、今は〈本局〉で働いているんですよ』とだけ答えておきました。
『ここで「提督」などという仰々しい肩書きを持ち出すのは、いくら何でも無粋(ぶすい)だろう』と考えてのことでしたが、おそらく、アラムドゥの方は『多分、オペレーターか何かなのだろう』などと勝手に「勘違い」をしてしまったことでしょう。(←重要)

 また、クロノは新暦63年には12歳で早々と執務官になり、翌64年には正式に補佐官となったエイミィとともに、〈闇の書〉の出現に備えて「辺境領域での巡回任務」を繰り返す〈アースラ〉に同乗するようになりました。
【その後、新暦65年に〈外97地球〉で起きた二つの大事件、〈ジュエルシード事件〉と〈闇の書事件〉に関しては、おおむね「無印」と「A’s」で語られたとおりです。
 なお、前章でも述べたとおり、クロノの父方祖父クレストの「祀り上げ」はジュエルシード事件の直後に(もよお)され、また、ニドルス提督は68年の3月に妻マリッサを28回忌で『祀り上げ』にした後、翌69年の10月下旬には(クレストと同じように)辺境領域の南部で殉職してしまいました。】


 また、思い起こせば、そもそも〈闇の書事件〉が終わった後に、リンディがわざわざ地球に(きょ)を構えた理由は、まず、なのは(9歳)が次のように主張したからです。
『私としても「今すぐミッドに移り住む」というのは、さすがに無理な話で……地球には友だちもいますし、うちの親たちにも一応は世間体(せけんてい)というものがありますから……。私自身は、これから先ずっと管理局で働き続けることになるのだとしても、やっぱり当分は地球の側に籍を置いて、せめて「こちらでの義務教育」ぐらいはこちらで出ておきたいんです』
 リンディは『自分がフェイトの養い親になり、彼女にも「幸福な小児(こども)時代」というモノをしっかりと体験させてあげたい』と考えていましたが、その一方で、フェイトは『とにかく、なのはと一緒にいたい』と主張しました。
 そこで、リンディはあえて「提督」の座を退き、しばらくはフェイトとともに地球で(つまり、なのはの近くで)地上勤務に就くことにしたのでした。

 そうした「本来の経緯」から考えれば、新暦72年の3月に、「なのはとフェイトが無事に地球の中学を卒業して、正式にミッドへと籍を移した時点」で、リンディもそれと一緒にミッドへ戻って提督に復職していたとしても、何もおかしくはなかったはずです。
(実際、本局は彼女のために「総務統括官」という役職まで用意して、彼女に「本格的な復帰」を促していました。)
 それなのに、リンディはまるで「現地駐在員」のように地球の海鳴市に住み続け、そればかりか、同72年の4月に「嫁」のエイミィが少し早めの産休に入ると、即座に彼女を自分の手元へと引き取りました。
 また、アルフもそれに合わせてフェイトの補佐官を正式に引退し、エイミィの「お世話役」として地球で暮らすことにします。

 こうしたエイミィとアルフの動きは、実際には(まだ昨71年に昇進したばかりの)クロノ提督からの要請によるものでした。
 彼は当時、凶悪な犯罪結社〈闇の賢者たち〉から本気で命を狙われており、下手をすれば、家族までそれに巻き込まれてしまう可能性(おそれ)があったのです。
 暗殺や拉致(らち)の可能性を考えると、エイミィを普通にミッド地上に住まわせることには、やはり問題がありました。しかし、だからと言って『本局の内部や次元航行艦の艦内に住まわせて、ガチガチに守ってしまう』というのも、(クロノ自身の幼児期体験から考えて)小児(こども)の発育にあまり良い環境とは思えません。

 その点、魔法文化の無い「接触禁止世界」ならば、そもそも「民間船の渡航」それ自体が禁止されているので、犯罪者が上陸する可能性も極めて低いものとなります。
 その上、〈外97地球〉ならば、今も管理局から「要監視世界」に指定され続けているため、惑星の周回軌道上には(現在の地球の技術レベルでは、まだその存在を「感知」することすらできないような)ステルス型のサーチャーが何基も設置されています。
 つまり、『次元航行船が、地球の上空で亜空間から降りて来れば、間違いなく補足できる』という環境が整っていました。
 来ることがあらかじめ解っているのであれば、並みの暗殺者ぐらいは、アルフとリンディだけでも充分に対処することができます。
 要するに、アルフが唐突にフェイト執務官の補佐を引退した「本当の理由」は、『エイミィとその子供たちを、周囲に「それ」とは(さと)られないように「護衛」するため』だったのでした。

 しかし、こうした「クロノからの要請」は、表向きは秘密にされていたため、中には『エイミィを自分の手元に呼び寄せたのは、単なるリンディのわがままなのでは?』と感じてしまう人もいたようです。
 エイミィの実母ロファーザ・リミエッタも、その一人でした。
(彼女は管理局員ではなかったため、その秘密を全く知らされていなかったのです。)
【彼女はこの時の不満が原因で、10年後にエイミィが「二度目の妊娠」をした時には、リンディに対して「非常に強硬な態度(笑)」を取ることになります。】

 また、翌73年には、クライドの母ルシアも30回忌で「祀り上げ」となったので、リンディはまたミッドを訪れ、クロノとともにその儀式を済ませました。


 そして、75年8月、アルフの引退から三年余の歳月を経て、犯罪結社〈闇の賢者たち〉はようやく完全に打ち滅ぼされたのですが、その後、組織の内部事情や行動計画などを精査した結果、クロノ の心配はほぼ杞憂(きゆう)だったことが明らかとなりました。
 とは言え、それは結果論です。新暦72年の段階では、クロノ提督の判断は『それなりに妥当なものだった』と言って良いでしょう。
 また、クロノ提督は、その凶悪な犯罪結社を滅ぼすと同時に、それと「連携」を取っていた別の犯罪組織〈永遠の夜明け〉からも「主敵」として認識されてしまいました。こちらは、〈闇の賢者たち〉ほど狂暴な組織ではないようですが、それでも、用心に越したことはありません。
 そうした背景もあって、カレルとリエラは、72年に地球で生まれた後、75年以降も、しばらくはそのまま地球でひっそりと暮らし続けたのでした。

 一方、リンディは75年の6月、ミッドで機動六課が本格的に動き始めた頃に、(時系列としては「リリカルなのはStrikerS サウンドステージ01」の直後ぐらいに)「高町家の敷地の東側に隣接した、同じような広さの更地(さらち)」が売りに出されると、すかさずそれを「私費で」ひそかに購入し、梅雨(つゆ)明けを待って、そこに和風の家屋を二棟(ふたむね)、また「私費で」新築しました。
(別棟の方は、高町家の「道場」とよく似た外観の「平屋建て」です。)
 そして、犯罪結社〈闇の賢者たち〉も壊滅し、〈JS事件〉も片がついてから、リンディは10月末に今まで住んでいた家を引き払って、正式にそちらへ引っ越しました。
 こちらの家には、広い庭が付いているので、カレルとリエラも大はしゃぎです。
(しかも、両家の敷地を分け隔てる壁も、もう部分的に取り払われていたので、カレルとリエラは高町家の庭にもそのまま自由に出入りすることができました。まさに、「家族ぐるみ」の付き合いです。)

 続けて、同年11月の上旬、先の「第7節」でも描写したとおり、リンディはみずから〈本局〉に出頭して、〈上層部〉に「転属願」を提出しました。総務統括官の地位すら返上して、このまま正式に「現地駐在員」になりたいと言うのです。
【繰り返しになりますが、現地駐在員とは『何かしら問題のある「管理外世界」に駐在して、現地の住民の間に溶け込み、正体を知られないようにしながら、その世界の監視と〈本局〉への報告を続ける』という「大切だけれど、とても地味な役職」です。】

 管理局の〈上層部〉は当初、彼女の「転属願」の予想外の内容に困惑しました。
 確かに、〈外97地球〉には誰かしら現地駐在員が必要なのかも知れません。そして、その役職に誰が適任なのかと言えば、確かに、もうかれこれ10年も地球での生活を上手(じょうず)にこなしているリンディ以上の適任者はいないのかも知れません。
 しかし、役職よりも人物を基準にして言えば、リンディ・ハラオウン提督にはそれ以上の適職など、他に幾らでもあるはずなのです。
 それなのに、彼女は何故「あえて」そんな地味な職務を希望したのでしょうか? クロノ提督の命を本気で狙っていた結社も滅び去った今、カレルとリエラにも『どうしても地球で育て続けなければならない』というほどの理由は、特に無いはずです。

 新暦75年のこの時点で、リンディはまだ48歳。
 管理局の「定年」は、普通でも70歳です。提督や将軍であれば、本人の希望次第で定年を5年以内に限って延長することも可能なので、彼女の年齢は「あとは余生」と割り切るにはまだあまりにも若すぎます。
 管理局の〈上層部〉は、何とか考え直すようにと説得を試みましたが、彼女の意志は固く、結局は〈上層部〉も彼女の「転属願」をそのまま受理するしかありませんでした。
 そこで、年が明けると、リンディの家の別棟には〈本局〉から直接に魔力センサーや次元通信機や「転送ポート」などといった機材が運び込まれ、そこは公式の「時空管理局・駐在員詰所」となりました。
(実は、リンディは最初から「そうするつもりで」この別棟を建てていたのでした。)
【なお、リンディが現地駐在員を希望した「本当の理由」については、また第三部で述べます。】

 また、アルフはその後、正式に「現地駐在員・補佐」となり、さらに、中世のミッドチルダでは実際にしばしば(おこ)なわれていたという「三者契約」によって、リンディからも直接に魔力供給を受けることができるようになりました。
【これは本来、身分制の時代に発達した「親が造った優秀な使い魔を、子供にそのまま個人財産の生前分与として引き継がせるための技法」でした。
 事前にこれをしておいたからこそ、新暦81年に「エクリプス事件」の最終戦でフェイトが死にかけた時にも、アルフの方は全く無事だったのだ、という設定です。】

 なお、エイミィ・リミエッタ・ハラオウンは初産(ういざん)で男女の双子カレルとリエラを産んだ後、地球で長々と「育児休暇」を取っていました。
【この件に関しては、「リリカルなのはStrikerS サウンドステージ01」を御参照ください。】

 しかし、例の犯罪結社も壊滅し、〈JS事件〉も終わり、いろいろな意味で状況が一段落すると、エイミィは翌76年の春、子供たちが現地で三年制の幼稚園に入るのを機にミッドチルダへ戻り、ほぼ四年ぶりで本格的に復職しました。
(アルフはそれ以来、カレルとリエラが幼稚園へ行っている間は、もっぱら一人で「詰所(つめしょ)の番」をするようになります。)

 実を言うと、リンディの気持ちとしては「犯罪組織の手が、カレルとリエラにまで伸びること」を恐れていたと言うよりは、むしろ「この双子が父親の魔力を全く受け継いでいない、という可能性」を恐れて、幼い孫たちがミッドで劣等感に責め(さいな)まれたりすることのないようにと、エイミィの復職後も、もうしばらくは地球で二人の様子を見守ることにしていたのでした。


 また、ここからは、「プロローグ 第2章」よりも少し先の話になりますが……。
 新暦78年の5月末には、リンディ(51歳)は母ディサの「30回忌、祀り上げ」のため、15年半ぶりに、また一人で「三度目の里帰り」をしました。
 聖王教会の正統教義では、『故人の身魂(みたま)は、どれだけ長生きした人でも「30回忌」まで(まつ)れば、それでもう充分だ』ということになっているので、リンディとしては、これがもう「最後の里帰り」の「つもり」でした。
【実際には、リンディは新暦94年にもう一度だけ里帰りをすることになるのですが、その話は、また「第二部」でやります。
(なお、聖王教会の正統教義に関しては、「背景設定10」を御参照ください。)】

 また、同78年の6月末には、犯罪組織〈永遠の夜明け〉もまた、「マグゼレナ本部」をクロノ提督の率いる艦隊によって殲滅され、壊滅的な打撃を受けます。
 そして、同月には、カレルとリエラ(当時、6歳)も相当な魔力の持ち主であることが確認されたため、翌春からは魔法科のある学校に進学すべく、二人は同年の夏休みに、ようやくミッドに転居しました。
 ミッドでは、首都圏での〈マリアージュ事件〉も終わって、いろいろと一段落した後のことです。
(その後も、カレルとリエラは学校が夏休みになる度に、もっぱらアルフの送り迎えで「田舎のお祖母(ばあ)ちゃんの家」に泊まり込みで遊びに来るようになり、その年中行事は二人が「義務教育課程」を修了するまで、八年間も続きました。)
【となると、79年の春には、この二人は揃って初等科の一年生になっているはずなのですが、それでもVividのシリーズに全く登場しないのは、『この二人が「St.ヒルデ魔法学院」とは全く別の魔法学校に(かよ)っていたからだ』ということにしておきます。
(なお、後述のアンナ・ク・ファーリエは、カレルとリエラにとっては「同じ魔法学校の三年上の先輩」ということになります。)】

 いろいろと一段落して、気が抜けたのでしょうか。
 カレルとリエラがミッドに転居した後、78年の暮れには、リンディ(51歳)は珍しく体の調子を崩したりもしてしまいましたが、翌年の「夏休み」に、可愛い孫たちが遊びに来る頃にはようやく復調し、それ以降は、また健康そのものの生活を(すえ)(なが)く続けてゆくこととなります。


 なお、余談になりますが、82年5月には、当時まだあまり体の頑丈な方ではなかったカレル・ハラオウン(10歳)は、「ヴィヴィオ選手(13歳)の弟分(おとうとぶん)」として一時的にナカジマジムに入会し、それから一年半あまりの間、ノーヴェたちによって鍛え上げられました。
 レベルが違い過ぎるので、IMCSの出場選手たちと同じリングでの練習はできませんでしたが、彼女らも休憩時間などには時おりカレルの練習に付き合ってくれました。
(中でも、一番よく付き合ってくれたのは、アンナとコロナだったようです。)
 おかげで、カレルは初等科を卒業する頃には、もうすっかり「打たれ強い体」に生まれ変わっていました。

 また、82年の11月には、リンディ(55歳)はまたミッド地上で、クロノやエイミィ、カレルやリエラとともに、クライド(享年28歳)を「28回忌」で祀り上げにしました。
 そして、その際、リンディは息子夫婦から下記の話を「今後の予定」として聞かされ、全く不本意ながらも、承諾を余儀なくされることになります。

 エイミィ(33歳)は、新暦72年の10月に初産(ういざん)を済ませた後、実に10年も経ってから、再び「男女の双子」を妊娠していました。
 出産予定日はまだ半年後(83年の5月)ですが……今回は、彼女の実母ロファーザ・リミエッタの「とても強い希望」により、年が明けるとともに、ミッドの実家の方に帰って産休を取ることになってしまったのです。
 それと言うのも、ロファーザが『先の孫たちは父方の祖母が育てたのだから、今度は母方の祖母である私が育てる番だ。リンディさんばかり、可愛い孫の世話ができるなんて、ズルい!』と強固に主張したためだったのですが……前回の「裏の事情」を知らないロファーザにとっては、これは「全く正当な言い分」だったため、リンディとしても彼女の要求を拒否するという訳にはいきませんでした。
【先に述べた「非常に強硬な態度」とは、要するに、このことです。(笑)】

 さて、エイミィには一人だけ弟がいました。
 弟のセブラスとは8歳も年が離れている上に、エイミィは初等科を卒業すると12歳でいきなり管理局に入ったため、正直なところ「ともに過ごした時間」は決して長い方ではなかったのですが、それでも、それ相応に仲の良い姉弟です。
 セブラスは若くして優秀な法務官となり、81年の秋に24歳で二年後輩のレドナと結婚してからも、ずっと自分の両親と同居していました。幸い、(よめ)(しゅうとめ)の仲も驚くほどに良好です。
 翌82年の暮れに、母親から『年が明けたら、姉エイミィが出産と育児のため、しばらくの間、こちらの家に同居することになる』と聞いた時には、セブラスも少しばかり心配したのですが、実際に(ふた)()けてみると、姉と妻の仲もすこぶる良好でした。
 そして、83年の6月、予定日よりも少し遅れて生まれたエイミィの双子「ゼメクとベルネ」を見て、レドナが夫に『そろそろ、私たちも』と相談をすると、セブラスも喜んでそれに同意します。

 ところが、割と軽い気持ちで(ただ単に、自分たちの体には何も問題が無いことを「確認」するだけのつもりで)医者に()てもらったところ、全く思いがけず、セブラスとレドナは二人そろって「先天性の不妊症」であることが判明してしまいました。
 ミッドでは昔から、生殖医療は法律でかなり厳しく制限されており、現行法においても、不妊症が片方だけならばまだしも「例外的に」認められる場合はあり得るのですが、『二人そろって』となると許可が()りることはまずあり得ません。
 昔から子供好きだった二人の落ち込み(よう)と言ったら、それはもう(はた)から見ていても痛々しいほどです。
 ロファーザは思い余って、エイミィに『どちらか一人だけでも養子にもらえないだろうか?』と相談しました。

 エイミィもさすがに即答はできず、夫に相談したのですが、クロノはしばらく考え込んでから、実に悩み深げな表情でこう語りました。
「まあ、『赤の他人の(もと)へ里子に出す』なんて話じゃないからな。『君の(おとうと)夫婦の子供』ということなら、僕たちも伯父(おじ)伯母(おば)として、いつでも普通に会いに行ける。
 そういう意味では、養子に出すことそれ自体に反対をするつもりは無いんだが……『生まれる前から一緒にいた二人を、大人(おとな)の都合で引き離してしまう』というのも、どうなんだろうな?」
 言われてみれば、確かに、そうかも知れません。
「だから……いや。これは、あくまでも『君さえ良ければ』という話なんだが……いっそのこと、『二人まとめて養子に出す』というのは、どうだろうか?」
 これには、エイミィもさすがに悩みましたが……確かに、「基本的に在宅の祖母」と「平日にも定時に帰宅してくれる両親、および祖父」とが揃っている家庭で育った方が、子供たちにとっては(しあわ)せなのかも知れません。

 思い起こせば、上の子供たち(カレルとリエラ)に対しても、エイミィは(少なくとも、ミッドに戻って来てからは)あまり「母親らしいこと」ができていません。
(クロノに至っては、仕事が忙し過ぎて、実の父親だと言うのに、『たまに会う』程度のことしかできていません。)
 それを思えば、下の子供たち(ゼメクとベルネ)は、やはり、こちらの家で育ててもらった方が良いのでしょう。
「でも、あなたは『こちらには、アルフがいないから』と、育児のお手伝い用に使い魔まで造ってくれたのに……」
「ああ。今はまだ基本的なコトを教えている最中(さいちゅう)だが……もし『育児の手が足りない』と言うのなら、このままリミエッタ家に貸し出しても良いし、もし『足りている』と言うのなら、今から僕の秘書か何かとして教育し直せば良い。ただそれだけのことだよ。君は、僕やシャルヴィのことよりも、子供たちのことを第一に考えてやっておくれ」
(シャルヴィというのは、クロノが「病気の仔猫」を素体として、双子が無事に生まれて来たその翌日に造った、使い魔の名前です。)

 結局のところ、エイミィはセブラスとレドナに『卒乳までは自分が責任を持って育てるが、その後で、この二人を養子に出す』と約束し、同時に、セブラスとレドナには『愛情を持ってこの二人を育て、この子たちが「それ」を受け止められるだけの年齢になったら、必ず、この子たちに真実を伝える』ことを約束させました。
 こうして、新暦84年7月、エイミィは丸一年半の産休を終えて復職し、ゼメクとベルネは正式に叔父夫婦の養子となったのです。

【シャルヴィも、一旦はリミエッタ家に入って「エイミィのお手伝い」を巧みにこなし続けたのですが、一般人のロファーザがあまり「使い魔」という存在に馴染(なじ)めなかったこともあって、エイミィと一緒に(84年の7月に)リミエッタ家を離れました。
 シャルヴィはその後、クロノの秘書になりましたが、最初に設定された性格があまりにも「幼児向け」すぎたため、(仕事能力そのものには何も問題など無かったのですが)性格的にはなかなか「秘書らしい秘書」にはなれなかったようです。(苦笑)】

 ゼメクとベルネが養父母から「真実」を知らされるのは、それから十年半もの歳月が経過した後の新暦95年1月、二人が(ミッド式の数え方で)12歳になり、初等科学校の卒業を目前に控えていた頃のことでした。
【ちなみに、カレルとリエラ(新暦95年の時点で23歳)は、第二部以降に「意外と重要な役」で登場します。
 また、ゼメクとベルネも、エピローグにIMCSの選手としてチラッと登場する予定ですので、こちらの二人のことも、どうぞお忘れなく。】


 
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