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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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大親友

 
前書き
作中でリュカさんが歌う曲は
チェッカーズの「ギザギザハートの子守歌」の替え歌です。
 

 
(ラインハット城)
リュカSIDE

ある晴れた昼下がり子牛を売らずに大親友をからかいに行く。
何時もの様に王家のプライベートエリアに隣接するバルコニーにルーラで降り立って、大親友一家が寛いでいる部屋の扉を開け放し、持って来たスピーカーを室内に向けて激しくギターを弾き鳴らす。

そして歌う。
大親友を賞賛する歌を……
そう"ヘッポコハートの子守歌”である!

♪ちっちゃな頃からクソガキで♫
♪15で王家に返り咲く♫
♪ナイーブみたいに言われたが♫
♪やる事なす事、仇(アダ)になる♫
♪ああ、分かってくれたの嫁だけだ♫
♪そんなにオレはヘッポコか?♫
♪ララバイ、ララバイお休みよ♫
♪ヘッポコハートの子守歌~♫

♪恋したあの娘(こ)が気になって♫
♪獄卒相手に喧嘩売る♫
♪あっという間に囲まれて♫
♪力任せに、殴られた♫
♪ああ、分かっていたけど弱かった♫
♪こんなにオレはヘッポコだ!♫
♪ララバイ、ララバイお休みよ♫
♪ヘッポコハートの子守歌~♫

聞き付けた大親友一家は開け放たれた扉から太陽という名の天然の照明が俺を照らすバルコニーに出てきてくれた。
バルコニーではなく“テラス”だったら、『太陽が照らすテラス』なんて親父ギャグが言えたのに(笑)

「お前……ふざけるなよ」
大親友の第一声がコレである。
友情を疑いそうだ(笑)

「お、何だ何だ? 我が国最新の音楽機器を披露してやったのにその言い様は! もう一曲歌ってやろうか? 今度は“踊るヘッポコリン”だぞ。あぁ因みに今のは“ヘッポコハートの子守歌”ね」
「いい加減にしろコノヤロー!」

「なんだよぉ~……今日は折角、王様の二人を我が国の芸高校(芸術高等学校)で行われる“新楽器の単位取得試験”の審査員に呼ぼうと思ったのにぃ~」
「何で俺等が他国の学生の試験に付き合わなきゃならないんだ!?」

「やっぱりさ音楽の素人の意見も必要だと思うんだよね」
「その意見に反対はしない……が、何度も言うが俺等が他国の学生の試験に付き合わなきゃならない理由が微塵も見つけられない」

「でも試験で演奏する曲は名曲なんだぜ! 一聴の価値はあるよ」
「だから、俺等は無関係なんだって! 協力しなきゃならない理由を言えって!」
「やれやれ……お歌はお嫌いですか」
「そういう事を言ってるんじゃない」

「じゃぁ別のお話をしましょう。立ち話もなんだから座って」
そう言って俺は晴れた冬の寒空の下、バルコニーに直接座り込む。
ちと尻が冷たい。

「あの……私は身重でして、冬の寒空の下に長時間居るのはちょっと……」
分かってるさそんな事は。
だから尻の冷たさを我慢して、俺はこの場に腰を下ろしてるんだよ。

「そうだね。妊婦さんには辛いね。暖かい室内に戻ると良い」
そう言い笑顔を浮かべ室内に戻る様に圧力を掛ける。
ポピーも解ったのだろう俺の方を気にしながらも旦那と共に室内の奥に引っ込んだ。
さぁ本番開始だな。

「この寒空は妊婦には酷だ……僕等は大人のつまらない井戸端会議をするだけだから、子供達は参加する必要は無いよね。話の内容は『ネル子爵』に関しての事だから」
「「「!?」」」

案の定というか、予想通りの反応をしてくれる嘘の吐けない大親友……と、その血筋。
自分達が不利になる事が判っている妊婦だけが、素知らぬ表情で俺の目を見ていた。
だからお前は省きたいんだよ。

「またあの四男が何かしでかしたのか!?」
“また”だと!?
「お義父様!」
この中で唯一聡いポピーが室内から義父の言葉に叱咤を飛ばす。

おやおやおやぁ~? 俺は『四男』とは言ってないのに、勝手に新情報をくれたぞ。
これは余罪がありそうですなぁ。
俺は息子の嫁(アルル)に襲いかかった事と、その話を聞いてビアンカが思い出し、以前一緒にアルカパに行った時にナンパされプックルに襲われた(襲わせた?)話題しか持って無かったのに。

「さぁて……国際問題に発展させない為に、僕等で事態の収拾をしようか(笑) さあさあ()うてみ。問題を起こした国の方から反省を込めて」
「わ、我が国は何も問題を起こしてはいない!」

「ではネル子爵家はラインハット王家とは無関係と捉えて宜しいのですな? 僕はグランバニア王家として公式に(くだん)の貴族を弾劾してもラインハット王家は何もしてこないよな?」
「そ、そういう訳には……」

そりゃそうだ。
ウルフの情報ではネル子爵家はラインハット王家にとって重要な貴族らしい。
他国に因縁付けられて無視する訳にはいかないだろう。

「僕は別にラインハットの貴族を弾劾したい訳じゃないんだよ。僕たち大親友だろ? 一緒に平和的解決方法を見つけ出そうよ(笑)」
「ム、ムカつく笑顔しやがって……」
イヤン、ショックぅ(笑)

「ネル家の四男のドン・ファン・ネルは……選りに選って我が国の王太子妃の懐妊祝賀パーティーで、その主役をナンパしたんだよ」
「あはははは、ウケるぅ~。美人なのも考え物だな。父親として娘に謝りたいよ(笑)」

「……………」
「で?」
(だんま)りをキメてんじゃねーぞ。

「『で?』とは?」
「おいおい……それはラインハット国内だけの問題だろ。僕の娘であっても、嫁いでしまった以上、僕には無関係だ。お前先刻(さっき)『また』っつたろ! 持ってる情報は今の内に出し切らないと、後で発覚した時に大問題にされるぞ……特に僕やウルフから(笑)」

「………ぐっ!」
大親友君は悔しそうに唇を噛みしめ、室内へと戻っていった義娘(むすめ)に視線を向ける。
向けられた義娘(むすめ)は諦めた様に目を瞑り首を左右に振っている。
ヘッポコ義父(おやじ)を持つと大変だな(笑)

「はぁ~……分かったよ、言うよ……はぁ~……」
諦めた大親友君は深い溜息を吐いて離してくれる事を表明。
流石は俺の大親友。サッサと話せ!

「お前は知らないと思うけど、サンタローズのミサを見学して、それが終わった後にシスター・フレアに襲いかかった……らしい。詳しくはフレイの方が知っているから、自分で聞いてくれ」
「それは……アレかな? コリンズにアルカパの町興しを押し付けた前日のミサか?」

「げっ!?」
目の前の大親友は俺の質問に、顔を青くさせて反応。
そのままの勢いで嫁さんと一緒に室内へ戻ってる実子(息子)に視線を送った。
息子も親父と同じくらい顔を青くして頷く。

あの日か……
アルカパでビアンカをナンパしてた野郎に見覚えがあったんだよねぇ……
男の事はあんまり記憶できないけど、流石に前日にはリュリュを口説こうとして撃沈してるのを見ちゃってたから、何となくではあるけど憶えていたんだよ。
今パズルのピースが合致するまでは、疑問どころか意識すらもしてなかったけどね。

「フレアさんって男性恐怖症だよ……僕以外の。そんな女性に襲いかかるって、かなりの大事(おおごと)になってるでしょ? その点は如何様に解決を図ったのですかな、王様?」
「か、解決も何も……村の者に追われて、四男(ドン)は逃げ出したんだ。それっきり消息は知らない」

「おいおい、性犯罪者を野放しにしてるって事じゃんか!」
「ち、違う! ネル子爵には相談して、当家で四男(ドン)を追っている」
なるほどね。ビアンカやアルルは、逃亡中のアホに絡まれちゃったのね。

「じゃぁその件は一旦置いといて……他にもまだまだ余罪はあるんだろ? 僕の持って来たサプライズプレゼントとは違うぞぉ?」
「無いよ! 俺等の方にはもう無いよ!」
勿論俺からのは、ただのハッタリだったから、ヘンリーの様子からすれば本当に無いのだろう。

「そっか……じゃぁ僕の情報を教えちゃうけど……ビックリしすぎて漏らすなよぉ(笑)」
「あんまり脅かすなよ」
ウケるぅ~。ヘンリーは勿論、コリンズもデールも……ポピーでさえも吐きそうな顔してる。

「じゃぁ教えちゃうけど、何で僕がフレアさんを襲った事に気付いたか……それはね、そのアホがフレアさんを襲う直前に居合わせてて、尚且つ(リュリュ)に対してマナーのなってないナンパをしていて、更に翌日にはアルカパで僕の最愛の奥さんに悪質なナンパをしていたからですよぉ!」

「嘘だろ……」
「何考えてんだ……」
「最悪……」
ラインハット王家と俺の愛娘から悲痛の呻きが聞こえてくる。

「お、お父さん! 確かに王妃陛下に対しての不敬は許されない事ですし、我がラインハット王家は深く謝罪を致します。で、ですが……彼の者もナンパ相手が外国の王妃であるとは知らなかった訳ですし、ナンパ作法が無粋だったとしても、それを持って国際問題へと発展させるのは些か度が過ぎると言わざるを得ません。何卒ここは穏便に解決させましょう」

うん。
流石は僕の娘。
嫁いだ先の家を守る為に、最大限に尽力するその姿……感動するね。

「そうだね。今の状況は全部個人的な問題だよね……ところで話は変わるんだけどぉ、僕の国の学校で新楽器の単位修得試験があるんだよね。人前で……しかもお偉いさん等の前で演奏しても上手く出来るかを知りたいんだよね。君たち何処かに知ってる王族居ない? 完全に個人的用件だから、僕との個人的な繋がりを気にしている者でいいよ。是非とも紹介してくれよ」

「あのリュカさん。僕と兄上が是非ともその試験の審査に協力したいのですが」
「あ、あぁ……俺達大親友だろ! 是非ともお前の為に協力させてくれないか!」
「ええ、良いの!? 二人とも忙しいんじゃないのぉ?」

「水臭い事を言うな。大親友の為に時間を空けるさ!」
「助かるぅ~。じゃぁ来週にでも、もっと細かい日程をお知らせするよ」
良い感じで話が纏まりつつある。少しだけ和やかムードになった。

「しかし不思議だなぁ……」
「な、何がだ……?」
まだ警戒を解かないヘンリーは恐る恐る聞き返す。

「少なくともさぁ、ラインハット国内の貴族等には晴れの舞台で家名に傷を付けた事は周知されてるんだろ? なのに何で四男(あほ)は勘当されてないわけ?」
「いや、既に勘当されてるぞ」

「だとしたら大問題だよ。だってその後に平気で『ネル子爵家』を名乗ってるんだろ。ダメだろう……放置しちゃぁ」
「ま、待って下さいお父さん! 私達ラインハット王家もネル子爵家も放置などしておりませんわ! シスター・フレアの件もお母さんの件も、まだ四男(ドン)が勘当前の出来事ですわ!」

あぁ……
なんて優秀な娘なんだろうかポピーは。
嫁いだ先の家を守る為に、あんな見え透いた嘘を言うなんて(笑)

「なるほどねぇ。実は昨晩の事なんだけど……僕の義理の娘であるアルルが、とある事件に遭いましてね。今日の本題は実はそこなんだ」
「「……………」」
「と、とある事件……とは?」

先程までの和やかムードからはトーンを落とし、重い口調で発せられる俺の言葉に一同の胃が締め付けられる音が聞こえる気がする(笑)
それでも力を振り絞った大親友だけが訊ねてくれた。

「丁度昨日から息子夫婦は休暇に入っていてね、朝方から母方の祖父の家に旅行へ行ってるんだよ。あそこの露天風呂は良いからねぇ」
「ま、まさか……」

「僕の義娘(むすめ)が孫娘と一緒に温泉に浸かっていたらね、最近何かと話題に絶えないネル家の四男が現れて、子爵家の者である事を告げてマウントを取り、赤子を抱く女性に裸で迫って、拒絶されると逆ギレして襲いかかったんだ。幸いな事に義娘(むすめ)も孫娘も無事だったから良いんだけど……何度も言うけど、コレって昨日の事なんだ。その四男(あほ)何時(いつ)頃勘当されたのかなぁ?」
まさか『つい数分前』とか言わないよな?

「知ってる? 僕の奥さんの父親の実家は『山奥の村』と言って“サラボナ領”なんだよ」
王家の人間が知らないワケが無い。
ここで嘘でも『知らん』とか言ったら、流石に国交を断絶せざるを得ない。

先刻(さっき)の話をぶり返して申し訳ないけども、“ポピーが口説かれた”事や“フレアさんが襲われた”事も“ビアンカがナンパされた”事だって、全部ラインハット内での出来事だ。まぁ僕としてはムカつくけど、それこそ個人的問題として解決できる。うん、解決は出来るよね? でもさぁ……今度ばかりはさぁ……グランバニアでも無いラインハットでも無い外国だよぉ。しかも昨日。放置してないって言うけどさぁ……」

ラインハット王家の連中の顔を見ると血の気が無くなり青紫だ。
だよね~……サラボナまで巻き込んじゃってるもんね~(笑)
でも本当は大丈夫なんだよ。

昨晩報告を受けて直ぐに俺も手は打ったし、夜が明けて直ぐに自らハゲマン(ルドマン)のとこに行って、話は付けてきたからね。
まぁ『可愛い義娘(むすめ)を……』とか言って激怒して見せて、『この件は俺が直接解決するから手を出すんじゃねーぞ!』って脅したんだけどね。

とは言え機転が利くハゲマン(ルドマン)とアンディーが、俺の去り際に当人である四男(ドン)の捜索隊を出していたから、最悪身柄の確保は出来てるだろう。
だが俺の打った手の方が結果を出してるはずだ。
でもその事は此奴らに教えてやんない。

他人が不幸に陥るのが大好きな妊婦も、流石に喜べてない様子だ。
流産されたら本当に困るし、自室にでも戻って貰おう。
「ポピー……冬の冷気は妊婦には酷だ。僕も寒くて室内に入りたいから、お前は自室に戻りなさい。コリンズ、お前の嫁なんだ。労ってやれよ」

「「どの口が……」」
若い夫婦が声を揃えて呟いた。
俺は自分の口元を指差し笑顔で返答。

とは言え本当に体調が悪くなってるのか、フラフラと自室の方へと去って行く。
それを見計らい俺も室内へ……
マリアさんが温かいお茶を用意してくれてたんで、(いざな)われる前にありがたく頂いた。

「リュ、リュカ……何とか穏便に解決は出来ないものかな?」
「分かってる。義娘(むすめ)の旦那は物わかりが良い人物だし、我が国(グランバニア)の大きな利益になるのなら大事(おおごと)にはしないし、僕がさせない」
他人が見たら俺が一番騒ぎを大きくしてる様に見えるけどね(笑)

「グ、グランバニアの利益? ぐ、具体的には?」
「少しは情報が耳に入っていると思うけど、先日我が国(グランバニア)で新たな企業が起ち上がった。知ってるよね?」

「あぁ……一応は若い民間人女性だと情報は出回っているが社長はリューナだろ!? 完全にお前の手の者じゃないか」
「だから国家の利益になるんだろ。他人が社長だったら今こんな話を出さないよ」

「まぁ……そうだが……」
「で、この会社はグローバルに活動する事が前提だから、当然ラインハットにも支社を建てる」
流石のヘッポコでも、もう何が言いたいのか解ってきたみたいだ。眉間を押さえて項垂れてる。

「簡単に言うと、この会社の利益を最優先しろ。そしてその利益はグランバニアが最大得る事を保障し微塵も妨害するな」
「し、しかし……社長は元々ラインハットの゙人間だろ! それなのに……」

「大丈夫。会社が軌道に乗って海外支社を出す前に、ここの社長はグランバニア人と結婚してグランバニア国籍になる。今度紹介してやるよ……結構良い奴だよ」
「当たり前だ。俺にとってもリューナは娘同然なんだ! ふざけた奴だったら許さない。よく言うだろ……“女は父親の面影がある男に惚れる”って」

「その理論で行くとお前の息子は僕に似ているって事になるが良いのか?」
「全然良くない! 全力で訂正する」
ウケる。

俺もヘンリーも笑ってしまった。
お陰で場の雰囲気も緩んできた。
マリアさんが用意してくれたお茶のお陰かな?

「大凡の事は理解出来ましたがリュカさん。ネル子爵家は如何様に擁護させるのですか? 我が国(ラインハット)とグランバニアとの間でしか利益は出ておらず、アルル王太子妃殿下への不敬はサラボナ通商連合領内で起きた事件。彼の国(サラボナ)が黙っているとは思えませんが」

「ネル家も子爵とは言え、それなりに広めな領地は持ってるんだろ? その一部をPONY(新会社)に格安で貸せよ。そこに海外支社建てるから、友好的な結び付きを維持できる。そこら辺の説得はお前と兄貴でしてくれ……何だったら国家間を超えた大事件なのだから脅すのも有りだろ」

「う~ん……脅すのは……ちょっと……」
「いや、説得方法は何でも良いけども、グランバニアとネル子爵家が戦争をおっ始めたらラインハット王家はどちらに加担するの? 中立は勝った方の敵だよ? 流石に僕がお前の兄貴と大親友でも……ねぇ」

「止めろ、デールを脅すんじゃない! 俺が何とか話を纏めるから、お前は心配しなくて良い」
「大丈夫、その心配はしてないよ。でも早めに四男(あほ)の身柄を確保しておいた方が良いなぁ……これ以上身分を使って問題を起こす前に」

「分かった……」
俺の一人勝ちな問題解決に100%の納得はしてないが理解はしてくれた。
う~ん……少しは助け船を出してやるかな。

「なぁ(くだん)四男(あほ)なんだけど、女絡みで問題を起こしすぎだと思う。もう少し落ち着かせた方が良いぞ」
「女絡みの事でお前が意見を言うな!」

「僕は女性問題を起こした事は無いモン」
「表沙汰になってないだけだろが!」
「それが全てだ」
「……まぁそうだが」

「兎も角さ……ネル家に話を持ちかけて優良な土地を破格な賃料で外国企業に貸し出す口実として、我が国(グランバニア)の人間と四男(あほ)を結婚させれば、対外的な理由付けになるだろ。だから僕の知り合いの女の子とお見合いをさせたいんだ。勿論お見合いと言ったが、四男(あほ)には拒否権が無い。それどころか僕の知り合いの女の子に嫌われて破談にならない様に尽力させて欲しい。そうだな……『このお見合いが成功しなければ今回の国際問題の解決策として犯人を極刑にして周囲を落ち着かせる必要がある』的な事を言ってさ」

「そ、それは良いが……その女性の意思は無視していいのか?」
「良くないよ! だから好かれる様に四男(あほ)が努力せよって言ってるの! まぁ大丈夫だろう。この()はちょっとだけ婚期を逃しちゃってるんだけど、男の趣味はありがたい事に年下好き。しかも可愛い男の子が大好きなんだ。僕は全然記憶に無いんだけど、ビアンカとアルルの証言だと、それなりに美形だって話だし……四男(あほ)が嫌われるようなことをせず下手に出ていれば破談にはならないだろう」

「確かに……それは……そうだが……」
「あぁ因みに、その()の写真を持って来てるんだよね」
「写真?」
「うん。ウルフの絵の上手さを魔道機械で再現させた物」

そう言って俺は何故だか用意していたクエンティーナ・マサイスちゃんの写真を見せた。
今日の朝一で用意した写真だ。
なお、昨晩は深酒が過ぎたらしく、寝坊ギリギリで顔が浮腫み最悪な状態であるとの本人談。

「こ、これは……」
「こ、個性的な……お、女の……()(?)ですね」
「うん、女の()。因みに30歳と10ヶ月の軍曹だ」

「確かに……我が国(ラインハット)の感覚では……ちょっとだけ今期を逃しておりますね……12年程をちょっとと言うのならですけど」
ウチ(グランバニア)も平均的な婚期は似た様なモノだよ」

「ちょっと……かぁ……」
四男(あほ)の身柄を確保できたら連絡くれよ。クエンティーナちゃんに見せる用の写真を撮りに来るからさ。多分彼女は気に入ってくれると思うよ……なんせ最近失恋したみたいだから。狙ってた新人兵士に彼女が出来ちゃったみたいでね。ここんところ仕事終わりに城下の酒場で荒れまくってるんだ。彼女ちょっとだけ酒癖が悪いから酒場の主人等が大袈裟に騒いじゃってね。結婚できれば落ち着くでしょ」

「ちょっとだけ酒癖が悪い……お前の言う“ちょっと”が信用できないんだが」
「逆に考えてよ。これほど信用できる言葉は無いよ」
皆、美女の写真から目が離せず思い沈黙が支配する。
あはははは、ウケるぅ~。

リュカSIDE END



 
 

 
後書き
今回は長かったけど、
何故だかサクサク書くことが出来た。
ドン・ファン・ネル……やるなぁ。 
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