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ハドラーちゃんの強くてニューゲーム

作者:モッチー7
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第4話

 
前書き
アニメ版のハドラーの月命日が16日と決まった様なので(涙)……
その月命日にうぼのあん氏(https://www.pixiv.net/users/159931)の16年前に戻ってやり直すハドラー(https://www.pixiv.net/artworks/86959749)を参考に(パクった)、ハドラー様が魔法騎士レイアースの獅堂光の様な姿になるお話を作ってみました。

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/8799426

ハーメルン版→https://syosetu.org/novel/285717/

星空文庫版→https://slib.net/116880 

 
地上に暮らす人間達は、ある事実を知らないでいた……それは、地上支配を目論む侵略者の実際の数である。
つまり、ハドラーやバーンの様な歴史の表舞台に到達した侵略者は、実際はほんの一握りに過ぎないと言う事である。
戦いの中で力尽きる、不慮の事故に遭う、戦力が思った程集まらない、悪運が尽きるなど、様々な理由によって地上侵略を諦める事を余儀なくされ、侵略者から侵略未遂者へと降格して表舞台に辿り着く前に全てが終わってしまう事も珍しくないのだ。大魔王バーンと魔界を二分する実力者である筈の冥竜王ヴェルザーですら、現時点で現存する竜の騎士(ドラゴンのきし)バランに目を付けられてしまい、未だに歴史の表舞台に達しない有様である。

魔界某所の洞窟で複数のドラキーを従えるこの男もまた、そんな侵略未遂者止まりの男である。だが、それはあくまで1周目(ぜんかい)までの話であり、ハドラーちゃんがカール王国に大魔王バーンの存在と野望を暴露した影響によって、この野望多き男の命運も変わり始めていたのだ。
「……そうか……7か所まで絞れたか……」
どうやら、この男もハドラーちゃん同様、大魔王バーンの居場所を探している様子である。だが、
「この私に大魔王バーンの存在を教えてくれた功績は評価するが、使い方を間違えている様ではまだまだ知略無き愚かな小娘だな」
バーンを探す理由はハドラーちゃんと真逆であった。
「こういう強大な後ろ盾をどう巧く利用出来るか、それが真の知恵者の戦いよ」
どうやらこの男、ハドラーちゃんと同様に地上消滅計画に対するバーンの本気度を診誤った様である。
だからこそ、この男はバーンを倒すべき仇敵ではなく、膨大過ぎる利用価値を有する後ろ盾として利用すると言う考えに至ってしまったのである。
「これで決まりだハドラー……地上は遂に私の物になると約束されたのだ」
何も知らぬまま、この男の野望が動き出す。2周目(こんど)こそ、侵略未遂者止まりで終わらぬ様に。
「では……私のスケジュールの作り直しを始めるか……私がバーンに謁見する為に……」

その頃ハドラーちゃんは、
「……ウ……グッハァ!またしてもザボエラの顔が浮かびやがった!俺はただ、サババでの再戦までの俺の足取りを思い出そうとしただけなのに!」
自分のスケジュールの構造に悩んでいた。
ヨミカイン魔導図書館で破邪の洞窟の存在を知ったハドラーちゃんは、サババでの再戦を終えてから破邪の洞窟の攻略を始めようと地底魔城に戻ったのだが、サババでの再戦までの間に1周目(ぜんかい)の自分が何をしていたのかを思い出そうとしたのだが……
「……ウ……グッハァ!またザボエラが出て来おった!」
1周目(ぜんかい)のサババでの再戦までのハドラーの行動を思い出そうとする度に、ザボエラの顔が脳裏に浮かんでしまうのだ。
今のハドラーちゃんにとって、ザボエラは文字通り顔も見たくない裏切り者であった。
1周目(ぜんかい)では同じ魔王軍のメンバーとして、ハドラーと共にアバンやダイ達と戦った戦友であったザボエラ。
優秀な策士、強大な魔力、超魔生物の開発、最期まで大魔王バーンに反旗を翻さなかったなど、褒められる点が無いとは言い難いものの、マイナス点がプラス点を大きく上回ってるのが難点過ぎた。特に性格面の成長の遅さと人脈面の飽きっぽさは目を覆いたくなる程で、陰口・悪口の様なあだ名が多いのも特徴(欠点)である。
かく言うハドラーもザボエラに裏切られて見捨てられ、抜け駆けまでされ、結果的にザボエラの復権の為の踏み台にされた。しかも、運悪くザボエラ復権の為の踏み台にされた日が、ハドラーの手でバーンを殺せる最大のチャンスであった。
そんなザボエラを1周目の時は殺せなかったハドラー。その理由は、超魔生物化に大きく貢献した事とザボエラの息子ザムザの死を悼んでの事。だが、今のハドラーちゃんにザボエラから受けた恩に報いる気持ちは一欠けらも残っていなかった。

その後、過去を振り返る度に憎きザボエラを思い出すを繰り返したハドラーちゃんは、1つの悲しい結論に至ってしまった。
「それってつまり……アバン達が必死に修行の旅をしている間、俺は地底魔城で暢気に踏ん反り返っていただけだと言うのか!?」
そう思った途端、1周目(かつて)の自分の情けなさに罪悪感を懐き、アバンに謝意の品を送りたくなった。
(今のアバンが最も欲しい物は俺の頸だろうが、俺がバーンの頸を狙っている内は無理だ。かと言って、アバンが何を貰ったら喜ぶのかを知らん……どうしたものか?)
だが、悩みながら無意識で行った行為が、ハドラーちゃんに1つの答えを与えた。
(ん?……これだ!)

思い立ったが吉日とばかりにロモス王国に急行するハドラーちゃん。
目の前に現れたハドラーちゃんに驚きつつも虚勢の叫びをあげるシナナ国王。
「貴様ぁー!わしの国に何をする気だぁー!?」
そんなシナナ国王の虚勢を観たハドラーちゃんは、ザボエラへの猜疑心を更に大きく膨らませた。
(フローラ王女といいこのチビデブといい、指導者にとって王族の責務から逃げる事は恥だと言うのか……たく、ザボエラにもこれ程の根性が有れば)
だからと言って、シナナ国王の爪の垢を煎じてザボエラに飲ませても意味は無いし、サババでの再戦に遅刻する訳にもいかない。
それに、今日ロモス王国に来た理由は、ロモス王国を陥落させる訳でもなければ、ザボエラに嫌がらせをする為でもない。
「王の心が折れた時点で国の負けと言う訳か?だが、臣民無き国を国と呼んで良いと思うか?」
そんなハドラーちゃんの言葉が、シナナ国王の警戒心を更に煽った。
「何が言いたいんだ、貴様?」
その途端、ハドラーちゃんは聖母の様な微笑みを浮かべながら訊ねた。
「覇者の剣とこの国の国民全員の命、どっちを残して欲しい?」
「へっ?」
シナナ国王は目が点になった。

ハドラーちゃんの予想通り、ロモス王国に覇者の剣が保管されていた。ハドラーちゃんの右腕に内蔵されている筈の覇者の剣がである。
これこそ、俗に言う『強くてニューゲーム』の妙である。
つまり、ハドラーちゃんが1周目(ぜんかい)から覇者の剣を持ち出した事で、2周目(このせかい)には覇者の剣が2本もある状態になってしまったのだ。
そして、図らずも2本に増えた覇者の剣を持ってハドラーちゃんが向かったのは、かつて魔界最高の武器職人だった男が地上で暮らす時に使っている小屋。
「貴様がロン・ベルクだな?」
「……」
「この剣の砥ぎ直しを依頼したい。この剣はオリハルコンで出来―――」
「帰れ。俺はもう2度と気合いを入れて武器を作る事は無い」
あからさまな拒絶反応に少しだけ引くハドラーちゃん。
「オリハルコンで作られた剣でも駄目なのか?」
「俺の興味は、自分の作った武器がどれだけの威力を発揮してくれるかだけだ。ところがどうだ?最近はろくな使い手がいない。どんな強力な武器も持ち主がバカじゃ飾りみたいなもんよ。その辺に転がっている剣、飲み代稼ぎに作った物だが並みよりはマシだ。くれてやるから持って帰れ」
短気な客なら、この段階で既にロンと取っ組み合いの喧嘩を始めている頃だろうが、事前にロンが頑固な職人気質だと聞いていたハドラーちゃんは、そう簡単にロンの首を縦に振らせる心算は無かった。
故に、ハドラーちゃんの暴力の犠牲者はロンではなく……
「この俺を殺そうとしている輩にくれてやる武器を、こんな酒の肴にすらならぬ駄作で済ませよとは、舐められたものだな!」
ハドラーちゃんはそう言うと、部屋に有る剣を次々と叩き壊した。
「こんな気合いの1画目すら無い駄作で俺の頚を斬ろうとは、笑止!片腹痛いわ!」
少しだけ暴れたハドラーちゃんは、この小屋に入る直前に小屋から出て来た先客の存在を思い出し、大急ぎでその先客を連れ戻した。
「貴様も貴様だ!ここまで馬鹿にされ、駄作の引き取りを強要され、おめおめ逃げ帰るとは、貴様はそれでも戦闘に身を置く者か!?」
「何なんだアンタ!?何様の心算だ!?」
剣身を素手で握り潰すハドラーちゃんを見て怯える先客に反し、ロンは酒を飲みながら無言を貫いた。
「ピエェーーー!?普通逆だろぉー!」
「……」
ここまで侮辱(やって)も乗って来ないロンに対し、ハドラーちゃんはトドメの一言を口にする。
「そんな事だからロン、何時まで経っても貴様は真魔剛竜剣に勝てんのだ」
ピク。
ハドラーちゃんは、ロンの瞼が一瞬だけ微動したのを見逃さなかった。
(やはりな。どんなに頑固で人見知りな堅物であろうと、職人の意地が残ってる内は、作品を侮辱していれはそのうち食い付て来るさ)
「ま、真魔剛竜剣如きに負けを認めるのであれば、貴様もそこまで。俺の遊び相手に成れる器では亡かったと言う事だ。ハハハハハハハハ!」
無言を貫きつつ不満の表情を浮かべるロンを視て脈ありだと判断したハドラーちゃんは、
「デルパ」
魔法の筒に隠していた悪魔の目玉を取り出した。
「取り敢えずこいつを置いて行く。『送り先である勇者アバンの事が全く解りませんから出来ませんでした』などと言われない様にな」
言いたい事を言い切ったハドラーちゃんは、怯えて小さくなっている先客を引っ張りながら、ロンが暮らす小屋を後にした。
「貴様もさっさと帰れ。こんな気合い不足な職人擬きに時間を費やしていたら、それこそ文字通りの時間の無駄だ」
「何なんだお前?ヒッ!?来るな化物!助けてくれえぇーーーーー!殺されるウゥーーーーー!」
「五月蠅い黙れ!本当に殺すぞ!?」
何の前触れも無く現れ、台風の様に侮辱(あばれ)、覇者の剣1本と悪魔の目玉1匹を置き去りにしながら風の様に去って行ったハドラーちゃんを、ただ無言で見送るロン・ベルク。

ロン・ベルクへの挑発を終えて地底魔城に戻ろうとしたハドラーちゃんだったが……
「……フッ、やっとか?これ以上黙殺され続けられたら、俺は完全に泣き崩れる所だったぞ……」
気付いた時にはもう……巨大な鎌がハドラーちゃんの頚に突き付けられていた。
「死神」
ハドラーちゃんの背後にいきなり現れたキルバーンとピロロ。
「聞いたよ?君はバーン様の事をボケ老人と罵ったそうじゃないかぁ」
「いーけないんだいけないんだー♪バーン様に怒られるー♪」
だが、この程度では今のハドラーちゃんは動じない。
「寧ろ光栄だよ。大魔王バーン様に不忠を働きし愚か者を処刑するのが仕事である暗殺者を送り込むと言う事は、この俺も大魔王バーン様にそれなりに警戒されていると言う証拠なのだろ?」
それを聞いて感心するキルバーン。
「なかなか度胸があるね君。ボクはそう言うのをゆっくり……」
キルバーンがハドラーちゃんを脅す様に耳元に口を近づける。
「じわじわと壊すのが大好きなんだ」
でも、やはりハドラーちゃんは動じない。
「だが断る。そう何度もつまらん邪魔はさせんぞ……死神!」
(また?)
ハドラーちゃんの言った『また』の意味が解らず困惑するキルバーンとピロロだったが、そんな動揺を隠しながら虚勢の笑い声をあげるキルバーン。
「ふ?ふふ?フフフフフ」 
 

 
後書き
第3話を視た人は、このままアバンをほっといて破邪の洞窟に往ってしまうと勘違いしてしまうかもしれませんが、まだ往きません。
勇者アバンと獄炎の魔王第4巻を既にお読みの方はご存知の通り、この後はサババの再戦と言う大事な大事なイベントがありますので、それをおサボリする訳には行きません。
ただ、ただ勇者アバンと獄炎の魔王をまるパクリしてるだけでは歴史は一向に変わらないと言う事で、シナナ国王とロン・ベルクの登場を早めてみました。 
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