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九尾を内包せし写輪の忍

作者:幻想花札
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序章

日本の樹海の奥地にある『うちは』と呼ばれる最強の忍が住まう隠れ里。

かつて日本の裏を牛耳っていた一族で、未だに存命する忍の始祖に中る。

そんなうちはは今滅亡の危機に陥っていた。

うちはが長“うちは テンツイ”が双子を生んだ。

一人は兄に当たる“うちは テンマ”

一人は弟に当たる“うちは ミライ”

二人は天才だった。

歴代でも最高峰とも言える才能の持ち主で、テンマは複数特化型の天才でミライは全ての忍術を習得した忍術特化型の天災だった。

だが、うちはは闇に生きる一族。外界から閉ざされ、任務以外では外界に干渉するのは禁止されていた。

だからこそテンマは一族を呪った。生まれて来たのに世界を知らず死ぬなど我慢出来ないと。

だからこれは必然だったのかも知れない。

テンマはうちはが古来の魔の都で暴れた最上級の怪物“九尾の妖孤”を封じた封印術を囮として解いたのだ。

封印を解かれた九尾をミライが父テンツイが禁術『屍鬼封印』であろうことか自らの弟の胎に封じ込めたのだ。

その結果テンツイは死に、うちはの一族に動揺が走った。

『突如封印が解けた九尾をミライに封印して死んだ』

これは当然だった。最高峰の怪物を封じ込められたミライを皆が化物扱いし、虐待し始めたのだ。

動揺している時をテンマは突いた。

そう。この時に『うちは大虐殺』が起こった。









SIDE:ミライ

ミライは燃え盛る村の中で刀を持って戦っていた。

何時も通りの日常が今日も続く筈だった。だけど、自分が敬愛していた兄が皆を殺した。

父も母も友達も皆。

泣いた。ミライは泣いた。そして憎悪した。自分に九尾を封じ込めた父を。助けてくれなかった母“うちは シンク”を。自分は何もしていないのに虐待してきた皆を。

そして………全てを奪った兄、テンマを。

「あひゃゃゃゃゃゃっ!!!!最っ高にいい気分だぜぇ~~ミライ!!」

ミライの目の前に立つ黒い短い髪に、血のように真っ赤な瞳に浮かぶ黒い三つの勾玉。

この瞳こそ、うちはに伝わる最高の魔眼『写輪眼』。相手の行動・クセ・技諸々全てをコピーし全ての基礎スペックを上げる瞳。

だが、ミライの眼にはまだ二つしか勾玉が浮かんでいない。

「なぜみんなを殺したテンマ!!!」

刀………日本でもっとも有名な神刀『草薙剣』を逆手に持ってテンマを睨む。

睨まれているテンマは心底ムカついているのか、足元の死体をゲシゲシと踏みながら喋る。

「なんで殺したかって?んなの簡単じゃん。鬱陶しいからだよ!!俺はな世界が見たかった!こんな狭い箱庭じゃなく広大な外界を!!だが、外界を任務以外では知るのは死罰もの。だったらどうする?簡単ななことだよな~~全員殺しちまえば楽だもんなぁ?あひゃゃゃゃゃゃっ!!!!」

「そんな………たったそんな理由で………」

死体を踏み潰し、眼を瞳孔まで見開き、口を三日月のように開けながら叫ぶ。

「だからさ?とっととおっちんじまってくんねぇかな?ミライちゃんよぉぉぉ!!!!」

テンマは口寄せの巻物から2mはある巨大な布に包まれた大刀『鮫肌』を口寄せし、力一杯で振り下ろす。

「っ!?お前こそ死んでしまえ………テンマァァァァ!!!!」

得意性質の雷遁の中でも上級に位置する千鳥。その千鳥を性質変化を持ちて草薙剣に纏わせ、斬り上げる。

「『水遁・水鮫筋斬』」

水遁が性質変化で鮫肌に水を纏わせ、草薙剣とぶつかり合う。

互いの武器が激突し、衝撃波が暴れまくるが相性的にミライが有利だ。

雷は水を通る。確かに雷遁は土遁を剋すが水も微妙に剋す。

だが、千鳥を纏わせた超高等忍術【千鳥刀(チドリカタナ)】は水鮫弾を纏わせた超高等忍術【水斬鮫肌(ミズキリサメハダ)】に圧されている。

それは何故か。簡単だ。ミライは万能型に対しテンマは複数特化型だからだ。万能な故に特化型には勝てない。

草薙剣が弾かれる前に後方へ下がる事で鮫肌を躱し、一息で忍術の為の印を結び息を吸う。

「【火遁・豪火球の術】」

ミライの吐かれた口から直径3mはある豪火の球体が吐き出され、テンマへ向かう。

テンマは鮫肌を振り切った状態を突かれた為に次の行動に遅れる。

「ちっうぜぇんだよ!!【風遁・大突破】!!」

印を結ぶ。するとテンマの後方から暴風が吹き荒れて豪火球が掻き消されミライへ押し寄せる。

「【土遁・土隆隔壁】」

自分を包むように大地が隆起し、ドーム状にミライを護る。暴風であろうとこれ程の質量の土の隔壁を破壊することは出来ない。

だがミライは選択を間違えた。使うのはこの忍術ではなく土を纏って自分の防御力を増やす『土遁・土体鎧』を使えばよかったのだ。

しかしこの術は確かに防御性能が高いが、自分をドーム状に覆うという欠点がある。

故に視界を確認出来ない。

「そんな所に引きこまっちゃってどうしたのかなぁ?お兄ちゃんが出して上げようかぁ?クキャャャャャッ!!!【火遁・火包流】」

ありとあらゆる忍術を納めているミライにはこの忍術がどのような効果が解った。

「(マズイ!!このままでは蒸し焼きにされるっ)」

火包流とは対象を炎の波に閉じ込めるという威力よりもジワジワと相手の体力を削る忍術である。簡単に言うとほのおのうず。

認識してから行動に移る。印を結んで息を吸う。

―水遁・水乱流の術―

口から吐き出された水は渦巻く波へと代わり、土の隔壁を解除した瞬間に押し寄せる炎を掻き消しテンマを押し流す。

流石のテンマもこう返されると思っていなかったのか、驚いた顔をしている。

「さすがだなぁ『忍匠(ニンジャマスター)』全ての忍術を知っているのは伊達じゃねぇなぁ!!」

「五月蝿い。さっさと死ね………」

「連れねぇじゃねぇかミライちゃんよぉ~~そもそも車輪眼が二つしか覚醒していないミライちゃんが完全に覚醒している俺様に勝てると思ってんのかぁ?えぇミライちゃんよぉ!!!!【水遁・水鮫弾の術】」

印を結んだ瞬間………ミライが使った水乱流の水までもが合わさった巨大な水の鮫がミライに噛み付こうと顎を開ける。

「無駄だ!!」

―【雷遁・雷刀一閃】―

草薙剣を横に一閃すると、帯電していた千鳥が飛ぶ斬撃となって鮫を卸した。

「囮だよぉそれは!!」

―【風分身】―

風がテンマとなった分身が頭上に現れ、ミライの背中を鮫肌が抉り裂く。

「ぎっがあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

響く悲鳴。だがミライは崩れ落ちる体勢のまま草薙を逆手に持ち替え、横に斬り捨てた。

風に戻るテンマ。

「痛い?ねぇ痛いですか~~ミライちゃん?そりゃ良かったよ!!」

投擲する手裏剣。

「ぐっ……」

―【千鳥流し】―

身体から千鳥を発して手裏剣を弾く。弾かれた手裏剣を瞬時に掴み、千鳥を纏わせて逆に投擲し返すミライ。

―【千鳥手裏剣】―

青白い雷撃を纏い、切れ味を底上げされた手裏剣をテンマは鮫肌を振るうことにより発生する衝撃波で弾く。

「そこだっ!!【火遁・豪火球の術】」

印を瞬時に結び口元で丸を作ってそこに息を勢いよく吹くと数mの大きさの火球が地面を削りながらテンマを襲う。

「甘ぇぜミライ!!【水遁・豪水球の術】」

ミライと同じく瞬時に印を結び、口元で丸を作ってそこに息を勢いよく吹くと数mの大きさの水球が地面を削りながらミライを襲う。

丁度中間地点で火球と水球が激突し、巨大な水蒸気爆発が発生する。



モウモウと水蒸気が立ち込める里。視界が完全に塞がれたその中で鋼と鋼がぶつかり合う音が響く。

ズバッと水蒸気を斬り裂き蒼雷を纏う草薙剣が鮫肌を弾く。

「お……おぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

―【千鳥刀・蒼月の太刀】―

青白い三日月を描き、その軌跡をなぞって千鳥刀が振るわれ、テンマの頬を裂く。

「っ!?」

ばっ!!瞬身で一気に距離をとるテンマ。有り得ないと言う表情で裂かれた頬を撫でる。

「おいおいっミライはまだ二つしか目醒めていないんだぜ?なのに完全に覚醒しているこの俺様が傷を負った?」

次の瞬間、その顔が憤怒に染まった表情に豹変する。

「この糞が!!糞が!!糞がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「っ!!」

消えるテンマ。ミライの写輪眼にはその動きを見切る事が出来ない。

一瞬で接近され、振るわれた鮫肌が草薙剣を弾き飛ばし、鮫肌から離した左手で腰横から九無を取り出しミライの首に突き刺す。

「がっ(認識……出来ない………!!)」

ゆっくり倒れるミライの襟首を掴み、宙に浮かせる。

「手加減してやったらいい気になりやがって!!てめぇ見たいな化物がこの俺様に勝てると思ってんのかあぁん?」

「ごほっ」

気道から血が逆流して息が出来ない。

「ちっもうやめだ。ぶち殺してやる!!」

テンマは左手にチャクラを集め乱回転させると、それは小さなチャクラの台風となる。

―【螺旋丸】―

Aランクに値する高等忍術。それをミライの腹に打ち込んだのだった。
 
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