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ドロノキ

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第一章

                ドロノキ
 アイヌに伝わる話である。
 世界を創造したカムイ達はまずはドロノキを創った、それから様々なものを生みだしていき世界がはじまったが。
 カムイ達は人間に様々な物事を教えその中で火を使うことも教えた、すると人間達は木に火を就けて使う様になったが。
 人間達はドロノキを火にくべるとたちまちのうちに困った。
「参ったぞ、煙がくすぶるだけだ」
「それだけじゃないか」
「しかもその煙につられて悪霊達が来る」
「しかも木屑が疱瘡になる」
「火に使う臼はバケモノになる」
「棒は怪鳥になる」
「こんな厄介な木はない」
 こう言うのだった。
「何だこの木は」
「物凄く厄介だぞ」
「どうしてカムイ達はこんな木を創られたんだ」
「それもこの世ではじめて創られたというのではないか」
「全く以てわからん」
「この木に何の意味があるんだ」
「災いでしかないぞ」
「いいことなぞ何もない」
「害以外の何でもない」
「こんな木いらん」
「まことにな」
 人間達はこう言ってドロノキを避ける様になった、それを見てだった。
 カムイ達は天界において困ったという顔で言うのだった。
「いや、わかっていないな」
「そうだな」
「そうではない」
「あの木は災いではない」
「災いの元凶ではない」
「人間達はわかっていないな」
「どうもな」
 こう言うのだった。
「あの木も必要だ」
「我々はこの世に必要なものしか創っていない」
「不要なものなぞ創ることはない」
「必要だから創ったのだ」
「それもドロノキが最初なのは意味がある」
「そうなのだが」
「人間達はわかっていないな」
 天界で困った顔で話した、そしてだった。
 ここでだ、カムイ達はあらためて話した。
「ここは教えるか」
「そうするしかないな」
「人間達がわかっていないならな」
「教えるべきだ」
「さもないとこのままだ」
「わからないままだ」
「では教えよう」
 そうしようという話になった、それでカムイの一柱があえて人間達のところに行って教えることになった。
 それでだ、そのカムイは人間達のところに行って話した。
「そなた達は呼び寄せるということを知らないのか」
「呼び寄せる?」
「呼び寄せるといいますと」
「まず話すことがある」
 カムイは人間達に真剣な顔で話した。
「この世にある災いの数は決まっている」
「そうなのですか」
「無限に生み出されるのではなく」
「決まっているのですか」
「そうなのですか」
「そうだ、そなた達や他の生きものと同じく増えるが」
 それでもというのだ。
「ある程度な」
「決まっていますか」
「その数は」
「そうなのですか」
「だから潰せばだ」
 そうすると、というのだ。
「その分だ」
「減りますか」
「そうなりますか」
「災いは」
「そうなのだ、だからだ」
 そうしたものであるからだからというのだ。 
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