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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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仮初めの凱旋

<アリアハン>

「勇者アルル、只今戻りました…」
暗い表情で凱旋したアルル達はそのまま城へ赴き、アリアハン王へとこれまでの経過を報告する。
それは世界を平和にしたという華々しい事ではなく、闇の世界と言われる別の地に、バラモスを超える敵が居り、その存在が世界に混沌を撒いていると言う…


アルル一行はリュカの言に従い、ラミアを使って世界中を確認して回った。
リュカの懸念通り世界に平和は訪れてはおらず、凶暴なモンスターは今尚蔓延っている…
そして世界を見回る途中に、小高い岩山に囲まれた前人未踏の地を発見したアルル達は、その地の中央に城がある事をも発見し、訪れてみた。
するとそこは神の使いとされる『竜の女王』が住む城であり、衰弱した女王は次の世代の為に、自らの命をかけて卵を産もうとしていたのだ。
そして竜の女王は、生まれ来る子のために世界の平和を勇者アルルに託し、大魔王を倒すために必要とされる『光の玉』を渡す。
さらに女王は闇の世界『アレフガルド』の事も教えてくれた…
そこに君臨する『大魔王ゾーマ』の事も…

「な、なるほど…魔王バラモスの上に大魔王ゾーマが………して、そのゾーマが居るというアレフガルドへは、どの様に行くのか分かっておるのか?」
リュカと一部を除くアルル一行は、アリアハン王の前で恭しく頭を垂れている。
そんな彼女等の報告を聞いた国王は、心配げに今後の事を確認した。
「はい…ネクロゴンドにある『ギアガの大穴』より、闇の世界『アレフガルド』へ行けると竜の女王様は仰っておられました。更には、我が父オルテガも…その穴に落ちたという事です」

そう…火山に落ちて死亡したとされる勇者オルテガは、偶然にもバラモスを倒すより先に、アレフガルドへと落ち、そこで生きて…そして大魔王ゾーマを倒すべく孤軍奮闘しているかもしれないのだ。

「アリアハン王よ…祝賀パーティーは一時延期だのぉ!」
すると奥から、アリアハン王とアルル達の会話に割り込んでくる者が現れた。
「ロ、ロマリア国王陛下!?」
何と驚いた事に、奥の部屋からロマリア王が姿を現したのだ!
それだけではない…ポルトガ王にイシスの女王・サマンオサ王も一緒に姿を現した!

「こ、これは…陛下、一体…」
「驚いちゃったアルル?私達ね、もうすぐアルル達がバラモスを倒して凱旋してくると思ったから、みんなでお祝いしてあげようと、数日前からアリアハンに来ていたのよ」
イシスの女王レイチェルが赤ん坊をあやしながら説明する。
「あぁ…だからか!」
「な、何が『だから』なんですかリュカさん!?」
不意に声を上げたリュカに、過敏に反応するアルル。
「いや…僕はアリアハンの王様に会うのは初めてなのに、頭を下げなくても誰も怒らなかったから…変だなぁ~とは思ってたんだよ。レイチェル達が言っておいたんだね?」
「そうじゃよ。お前相手に目くじらを立てると、時間と体力の無駄だと忠告しておいたのだ!わっはっはっはっ!」
ポルトガ王が、楽しそうに笑いリュカと視線を交わす。
「リュカ殿は、人柄はアレですが無駄に強いので、下手に刺激すると我が近衛騎士隊と同じ運命になりますって説明したら、アリアハン国王陛下以外の融通の利かなそうな側近さん達も分かってくれました!」
他国のお偉いさんが集まる場で、無駄にトゲがある言い方をするのはラングストン。

「そう言うワケでな…リュカ殿達の偉業を、皆で祝おうと思っておったのだが…世界の平和はまだ先の様じゃの」
サマンオサ王が寂しそうに呟いた次の瞬間…
(ゴゴゴゴゴ…ドカーン!!)
室内に雷鳴が轟き、謁見の間に居合わせたアリアハン兵数名が、一瞬で消し炭と化し命を落とした!
「な、何事!?」
アルル達は慌てて周囲を見回すが、再度雷鳴が轟き始める!
「ふん!」
その瞬間、リュカが驚く様なスピードで、各国の王を抱き抱えアルル達の元へと戻ってきた。
そして鳴り始めてた雷鳴は、先程までアリアハン王が座っていた玉座を中心に落っこちた!
玉座は塵と消え、周囲にも広範囲で焼け跡を残す恐ろしい威力を見せつける。

「い、一体…!?」
〈わははははは!喜びの一時に驚かせた様だな。我が名はゾーマ。闇の世界を支配する者。このワシが居る限り、やがてこの世界も闇に閉ざされるだろう。さあ、苦しみ悩むが良い!そなたらの苦しみは、ワシの喜び。命ある者全てを我が生贄とし、絶望で世界を覆い尽くしてやろう!…我が名はゾーマ。全てを滅ぼす者。そなたらが我が生贄となる日を楽しみにしておるぞ!わははははははは………〉
何処からともなく聞こえてくる、絶望を携えた低い声…
「い、今のが大魔王ゾーマ………?」
アルルが恐怖を帯びた声で呟いた…
「「「「「……………」」」」」
各国王も、恐怖と絶望から声が出ない…

「アイツ…あんまり強そうじゃ無かったね!」
しかしリュカだけが、緊張感の欠落した声でゾーマの事をバカにする。
「何言ってるんですか!この場に居ないのに、強力な落雷を発生させ、兵士数名を消し去ったじゃないですか!!」
リュカの言葉にアルルは抗議する…それが己の恐怖心を増大させる事だと分からずに。

「でも…不意打ちだったじゃん。(笑)…しかも2発目は空振りだし!その事に気付いて無い様子だったよ!…きっと1発目も当てずっぽうだったんだよ!(大笑)」
恐怖で静まりかえる室内に、リュカの笑い声が響き渡る。
「そ、そうですよ!お父さんの言う通りですよ!もし大魔王ゾーマが、そんなに凄いヤツならば、真っ先に勇者アルルを狙うはずです!でも結果はモブが数名お亡くなりになっただけ…きっと大したこと無いのよアイツ!こうやって恐怖心を植え付けて、精神的に優位に立とうとしてるだけよ!」
マリーも父を援護すべく、なるたけ明るい声でゾーマの行いを否定する。

「そ、そうじゃよ!リュカ殿や勇者アルル殿が居るのだ…必ずやバラモスと同様に倒してくれようぞ!」
リュカに助けられたサマンオサ王が、声を張り上げて彼等を支持すると…
「そうよ。リュカは英雄なのよ!我が国でも…異世界でも…そしてこの世界の各所でも!絶望なんてしてられませんわ!直ぐに世界を平和にしてくれるのだから。私達は、自国の平和維持に尽力しましょう!」
気付くとレイチェルの言葉に、周囲の者達は歓声を上げていた。
勇者アルル…英雄リュカ…2人が居れば世界は救われる!
そう声を上げて自身を鼓舞しているのだ。
リュカは『英雄』と言う単語に、嫌な顔をしていたが………

「うん。世界はまだ平和になってないし、祝賀会はまた今度と言う事で…今日は一旦家に帰り、一休みをしようよ。アレフガルドへ行くのは、後日にしてさ!」
周りが異様に大騒ぎする中、リュカはアルルの肩に手を乗せて優しく家族の元への帰省を促す。
それに気付いたアルルは、瞳に力強い光を灯し、黙って頷くのだった。

「リュカよ、ちょっと待ちなさい!」
英雄扱いされるのを嫌がり、ともかくその場を離れようとするリュカ等を、ロマリア王が呼び止める。
「あ゛?あんだよ…もう帰らせろよ!」
眉間に深いシワを寄せ、心の底から嫌そうな声を出すリュカ。
今更ながら相手が王様でもお構いなしだ!

「そ、そう嫌そうな顔をするなよ…」
「『嫌そう』じゃなく、嫌なんだよ!どうせ面倒事だろ、僕を呼び付ける時は、大抵そうなんだ!………で、何?」
「ま、まぁ…面倒事ではあるのだが…先日、お前が近衛騎士隊を打ちのめしてくれた所為で、綱紀粛正を行う事が出来たんじゃ!本来は、副隊長だったラングストンに、時間をかけて行わせる予定だったのだが、思いの外早く終わったので、我が国からも達人を派遣しようと思うてな」
ロマリア王はそう言うと、ラングストンを押し出した。
「ほれ…我が国の近衛騎士副隊長を派遣するぞ!この男はお前程ではないが、かなりの達人じゃ!有望な戦力になるはず…」
リュカはビシッと敬礼するラングストンに目をやり、これ以上無いくらいの顰めっ面で言い放つ。
「やっぱ面倒事じゃん!部下を一新出来たから、扱いづらいコイツを追い出したくなったんだろ?それを僕等に押し付けるんだろ!…それともアレか!綱紀粛正が早く終わってしまって、楽しみを奪われた腹いせか!?」
「流石リュカ殿は聡明ですね!正にその通りでございます。ではでは、これからよろしくお願いします…って事で!」
相変わらずリュカの嫌味を一切気にせず、半ば強引にパーティーへと加わるラングストン。
戦力としては未知数だが、厄介事としては100点満点だろう…



 
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