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体育祭当日⑥ 〜新たな境地〜

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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体育祭当日⑥ 〜新たな境地〜

 

 ——ボウっ、ボウっ、ボウっ。

 

 ツナの額に灯った炎は、明滅を繰り返している。

 

「沢田さん、頑張ってください!」

「……」

 

 ユニが隣で応援をする中、ツナは集中してハイパーからスーパーへのダウングレードを行っていた。

 

 リボーン達は生徒棟の屋上からその様子を見守っている。

 

(……なんだか、リング争奪戦の事を思い出すな)

 

 明滅する炎を見ながら、XANXUS戦の事を思い出しているリボーン。

 そんなリボーンに、膠着した場に飽きて来た白蘭が話しかけてきた。

 

「……ねぇリボーン君?」

「何だ?」

「なんで綱吉君は動かないんだい? もうハイパー化には成功したんだろ?」

「まあな。だが、ハイパーモードでグラウンドに戻る事はできねぇんだ」

「どうして?」

「死ぬ気の炎が額に灯っているだろ? それを他の学生達やマフィア関係者達に見せるわけにはいかねぇんだ。だからハイパーから死ぬ気をダウングレードする必要がある」

 

 ああなるほど、と言いたげにポンと手を叩く白蘭。

 

「死ぬ気の炎とかボンゴレの秘匿事項だもんね〜。そりゃそうか。普段は何かの薬を飲んでいるらしいね?」

「ああ。ボンゴレが開発した特殊な丸薬でな。飲むとツナはハイパーモードと通常の死ぬ気モードのちょうど中間くらいの死ぬ気状態に入る。で、その状態では丸薬に含まれた成分による特殊効果で炎が額から噴出しないんだ。俺とツナはその状態を激スーパー死ぬ気モードと呼んでいる」

「へぇ、激スーパーねぇ」

 

 その時、じっとツナを観察していたγがある事に気がついた。

 

「ちょっと待て、今回は丸薬じゃなく自力でハイパー化しただろ? だったら丸薬による特殊効果がないじゃねぇか。どうやって激スーパーに変化するんだ?」

 

 γの疑問は最もだ。薬の特殊効果なしでどうやって死ぬ気の炎を抑えるのか。

 

 だがしかし、ツナとリボーンはγの疑問にすでに答えを出していたのだ。

 

「問題はそこだ。ツナも自力で死ぬ気モードになる修行を始めた時、その事に気づいた。そしてツナなりに解決法を見つけたのさ」

「解決法? どうするんだ?」

「死ぬ気の炎が額から噴出しないように、体内で抑えるんだ」

 

 簡単に言ってのけるリボーンに、γは眉を顰めた。

 

「……確かにそれができればいいんだろうけどよ、そんな事できるのかよ。だってハイパーモードでも通常の死ぬ気モードでも額に炎が灯ってるんだろ?」

「そうだな。その通りだぞ」

「じゃあどうするっていうんだ?」

「そんなの、体内で死ぬ気の炎エネルギーを完全制御するしかねぇだろ」

『!』

 

 リボーンのその言葉に、γも白蘭もひよりも驚いた。

 3人で最初に口を開いたのはひよりだ。

 

「……死ぬ気状態というのは、体内のリミッターが外されて、生体エネルギーが死ぬ気の炎エネルギーに変換されて全身を巡っている状態ですよね。体内で死ぬ気の炎エネルギーを止めておけないから、額からエネルギーが噴出して炎が灯るんじゃないんですか?」

 

 とても的を得た質問だった。

 

「ひよりの言う通りだぞ。死ぬ気モードの際に額に灯る炎は、体内に留めておけないエネルギーが額から死ぬ気の炎として噴出したものだ。だから、普通は止めようと思っても止められるもんじゃねぇ」

 

「だったら、ツナ君はどうやって?」

 

 ひよりに再度問われたリボーンは、ツナの事を指で差した。

 

「今、ツナがやってる事がその答えだ」

「……あの炎を明滅させている事が答えなんですか?」

 

 首を傾げるひよりに、リボーンは頷いて話を続ける。

 

「そうだ。ツナは今、死ぬ気の臨界点を探っているんだぞ」

「死ぬ気の……臨界点?」

「ああ。ひよりは臨界点という言葉を知っているか?」

 

 ひよりは少し考える素振りを見せると、リボーンの質問に答えた。

 

「確か……全ての物質に存在する、化学反応が急激に促進される温度のことですよね?」

「そうだ。簡単に言えば、物質の状態を維持できる限界だな」

「……よくわかんねぇな」

「ん〜、死ぬ気の臨界点なんて聞いた事もないなぁ」

 

 臨界点の説明を受けてもピンときていない様子のγ。

 一方で白蘭は理解はしているのだろう。

 

 平行世界で得た膨大な知識が白蘭にはあるが、それでも死ぬ気の臨界点という言葉は聞いた事がなかった。

 

「当然だ。ツナが作った言葉だからな」

『え?』

 

 ツナが作った……という部分に違和感を感じるが、そこを今つっこむ必要はない。

 

 そう判断したひよりは詳しい説明をリボーンに求める事にした。

 

「死ぬ気における臨界点……って何なんです?」

 

「死ぬ気の臨界点は、体内で制御できる死ぬ気の炎エネルギーの限界値だ。ひより、例えば水なら臨界点を超えたらどうなると思う?」

 

「ちょっとした変化で、水蒸気爆発を起こすようになると思います」

 

「そうだな。死ぬ気の炎エネルギーも同じで、臨界点を超えると体内から死ぬ気の炎が爆発的に放出される危険性が高まるんだ」

 

 リボーンは淡々と言っているが、ひよりからしたら簡単に「ああそうですか」と飲み込めるものではなかった。

 

「そんな危険な事をやろうとしているんですか?」

「そうだぞ。それしか方法がないからな」

 

 それしかないと断言をするリボーン。

 ここで、白蘭もリボーンに質問する。

 

「で? あの明滅する炎にはどういう意味があるんだい?」

「あれは、零地点とプラスの状態を行き来して、現状の臨界点を探しているんだ」

「零地点? プラス状態?」

 

(この説明もリング争奪戦を思い出すな……)

 

 なつかしい感情を覚えながら、リボーンは説明を再開する。

 

「普段のニュートラルな状態を零地点。炎が灯る死ぬ気状態をプラスの状態とすると、ハイパーモードはプラスの最大値だ。つまり、普段の状態からハイパーモードの状態までを行ったり来たりする事で、死ぬ気の炎エネルギーを体内に押さえ込んでおける限界値を探っているんだ」

 

 リボーンの説明を、白蘭はうんうんと頷きながら聞いていた。

 

「なるほど、だから炎が消えたり強くなったりしているんだね?」

「そうだぞ。自力で死ぬ気になる為にした修行の中で、生体エネルギーを死ぬ気の炎エネルギーに変換する術と、それを体内でコントロールする術をツナは身につけたんだ。その応用で、死ぬ気状態でも体内で死ぬ気の炎エネルギーを制御できるんじゃないかという考えに至ったんだぞ」

「ヒュ〜♪ すごいね綱吉君!」

「まじかよ……」

 

 口笛を吹いて拍手する白蘭。γにいたっては絶句してしまっている。

 

 しかし、ひよりは今の説明に対して疑問が一つあったようだ。

 

「……待ってください。死ぬ気の炎を体内で完全制御したとしても、普段額から炎を放出して体内のエネルギー量を調節していた分が溜まって、すぐに限界値を超えてしまうんじゃないですか?」

 

 ひよりの質問に、リボーンは嬉しそうにニヤリと笑った。

 

「そうだな。だからこそ次の段階があるわけだ」

「……次の段階?」

「ああ。……おっ、ちょうどその段階に入ったぞ」

 

 リボーンのその言葉に、3人全員がツナを注視する。

 

 見てみると、ツナの額から炎は消えているが、まだツナは目を閉じたままだった。

 

 そのツナの様子に、リボーン以外の3人は少しの不安を覚えた。

 

「……成功したのか?」

「それにしては、まだ目を瞑っているねぇ」

 

「……あれが次の段階なんですか?」

 

 リボーンに視線を移して、ひよりはそう問いかけた。

 

「ああ。死ぬ気の臨界点を見つけたのなら、次にやるのは臨界点とマイナスの状態の行き来だ」

『!』

 

 マイナス状態という言葉に、またも3人の視線はリボーンに集まった。

 

「え? 今度はマイナスなんですか?」

「っていうか〜、マイナスってどんな状態?」

 

 再びリボーンの説明が始まる。

 

「マイナス状態は死ぬ気の逆。強制的に生命力を引き下げる事で、通常状態よりも更に体内の死ぬ気の炎エネルギーが空っぽになった状態だ」

「死ぬ気の炎エネルギーが……空っぽ?」

「そうだ。ツナの使う零地点突破は、その状態を利用して敵の炎を中和・吸収したり、自らの炎を負のエネルギーで凍結させる事のできる技なんだ」

 

「ああ〜、あの技うざいよね〜♪」

 

 未来での記憶を思い返しているのか、白蘭は楽しそうに笑った。

 

「そして今回ツナがやろうとしているのは、死ぬ気状態において生まれる膨大な死ぬ気の炎エネルギーを、臨界点を若干超えた状態で完全制御するという事。だが、本来一定量は炎として放出され続けるエネルギーまでも体内で制御しようとすれば、少し時間が経った時点で必ず溢れ出てしまう。だからツナはこう考えた。『エネルギーが爆発しそうになる前に容量を増やせばいいんだ』、とな」

「爆発する前に容量を増やすなんて……あ! もしかして、だからマイナス状態にも行き来しているんですか?」

 

 何かに気づいたひよりに、リボーンはニヤリと笑った。

 

「ひよりは気づいたらしいな。そうだぞ、ツナは体内で死ぬ気の炎エネルギーを制御しつつ、溢れそうになったら瞬間的にマイナス状態になる事で、炎の漏洩を防ごうとしているんだ」

「なるほど……マイナス状態になれば、その分体内に空きが出来るから」

「そうだ。そうする事で臨界点を超えた状態でも激スーパー死ぬ気モードを維持する事ができるんだぞ」

 

 納得したひよりだったが、その表情は不安気だ。

 

「……でもそれ、相当大変ですよね」

「まあな。死ぬ気の炎エネルギーの完全制御には相当精密なコントロールが必要とする分、普通の死ぬ気状態よりも気力の消費も激しいだろう」

「そんなものを、体を使いながらやろうとしてんのかよ……」

 

 γもツナのやろうとしている事の難易度に気付いたのか、信じられないモノを目の当たりにしているような顔になっている。

 

「今のツナならやれるはずだぞ。ボンゴレⅩ世にも、ついにこの時がやって来たんだ」

 

「この時って?」

 

「大空と謳われた初代ボンゴレのボス、ボンゴレⅠ世。遥昔にⅠ世がマイナスの境地で零地点突破を編み出したように、正当な後継者であるツナにも、ツナ独自の境地で技を編み出す時が来たって事だ」

 

 ボンゴレに伝わる超圧縮エネルギーである、死ぬ気の炎の完全制御。

 ツナが至ろうとしているのは、プラスの状態からマイナス状態までの全てを掌握した境地だ。

 

「この時代に生きるツナならではの新技。その名も……〝死ぬ気の臨界点突破〟だ!」

 

 リボーンがそう言ったその瞬間、ツナがカッと目を見開いた。

 ツナの目はオレンジ色に染まり、覚悟を持った目つきに変化している。

 

 無事に炎を灯さずの死ぬ気状態、激スーパー死ぬ気モードへのダウングレードに成功したようだ。

 

 その姿を見て、リボーンはニッと笑う。

 

「よくやったぞツナ。死ぬ気の臨界点突破、無事に成功だ!」

「ツナ君! すごいです!」

「まじかよ、とんでもねぇな……」

「……」

 

 ひよりとγが歓喜している中、白蘭だけはツナの行末に恐怖のようなものを感じていた。

 

(……今はスーパーレベルだけど、いずれプラスの最大値であるハイパーレベルでもエネルギーを制御できるようになったりしたら……綱吉君はとんでもない存在になっちゃいそうだね〜)

 

 死ぬ気の炎エネルギーを完全に制御するという事は、自らの肉体を完全制御できると言う事。

 

 つまり、今までの死ぬ気モードよりも本来の力を引き出しやすいはずで、死ぬ気の到達点へ近づいてる証でもある。

 

 白蘭はその事に気づいたようだ。

 そして、それはリボーンも気づいている。

 

(ツナ、お前はまだ臨界点突破の入り口を通ったにすぎねぇ。これからもっと鍛えれば、いずれは死ぬ気の到達点でも炎を完全制御できる可能性だってある。そしてその先に、お前の目指している〝最高のボンゴレ〟への道があるはずだ)

 

 そんな未来を思い浮かべて、リボーンはまたニヤリと笑うのだった。

 

 

 

 —— ツナside ——

 

 無事に「死ぬ気の臨界点突破」に成功し、激スーパー死ぬ気モードへのダウングレードに成功した。

 

 これでグラウンドに戻れる、仲間達と共に勝つ為に。

 

「沢田さん、成功したんですね」

「ああ、すまないユニ。君のおかげだ」

「そんな、沢田さんの力ですよ」

 

 そう言うと、ユニは再び霧の匣を取り出して山村美紀に変装し直した。

 

「……私は先に行きます」

「ああ」

 

 そして、ユニ……もとい山村はどこかに歩いて行った。

 

「……」

 

 1人になった俺は少し体を動かして今の状態を確認する。

 

 感覚的には、小言丸を飲んでの激スーパー死ぬ気モードよりも体がうまく使える気がする。

 

(これなら……いけそうだ)

 

 学生証端末を取り出して時間を確認すると、昼休み終了まであと5分程度だった。

 

「よし、間に合ったな。グラウンドに戻るぞ!」

 

 そして、俺はグラウンドへと向かったのだった。

 

 

 —— グラウンド、Dクラステント  ——

 

 ツナがグラウンドに走り出した頃、Dクラスのテントでは仲間達が集まっていた。

 

「ツナ、間に合うよな……」

「当たり前よ。沢田君を信じなさい」

 

 少し不安そうな須藤を、堀北が励ましている。

 

「ツっ君、何をしてるのかしら?」

「勝つ為に必要な事って、何だろうね」

「……何か精神統一らしいぞ」

 

 軽井沢、平田、綾小路君はツナが何をしているのかを気にしていた。

 

 綾小路の精神統一という言葉に軽井沢が反応した。

 

「精神統一って、それで何か変わるの?」

「……そうだな。沢田ってたまに雰囲気が変わる事があるんだよ」

「え? そう? 私見た事ないかも」

「僕も見た事ないな」

 

 3人のその会話に堀北と須藤が加わって来た。

 

「綾小路君、それって私達を敬称なしで呼んでいた時の沢田君の事?」

「ああ、あの時の沢田は、いつもと雰囲気が違っていた。何となく頼もしいというか、迫力があるというか……」

「そうね……私もそう感じたわ。いつもよりも大人っぽいっていうか冷静というか……上手く説明できないけれど」

「俺を助けてくれた時も、なんとなくそんな感じがした気もすんなぁ」

 

 綾小路達の話に、軽井沢は目を輝かせた。

 

「ええ! そんなツっ君見たことないわよ! 是非見てみたいわね!」

「多分見れるぞ。俺の予想が正しければ、おそらく沢田はその時と同じ雰囲気で帰ってくるはずだ」

「まじ!? 超楽しみなんだけど〜♪」

「あ! 皆、沢田君が戻って来たよ」

『!』

 

 平田の発言で、全員がグラウンドの入り口に目を向ける。すると、確かにツナがこちらに向かって走って来ていた。

 

 程なくして、ツナはDクラスのテントに到着した。

 

『……』

 

 ツナが近くに来た瞬間、全員がツナがいつもと違う事に気がついた。

 全身に死ぬ気の炎が充満しているからか、存在感が強くなっているのかもしれない。

 

「……すまない、遅くなった」

 

 遅れた事を謝罪すると、ツナは堀北と須藤を見て微笑んだ。

 

「堀北、よく連れて来てくれた。ありがとう」

「! 当然よ、それが今の私に出来ることだもの」

「さすがは堀北だな。……須藤もよく戻って来てくれた。ありがとう」

「お、おう。……ツナ、すまなかった。俺、残りの推薦競技に全力で臨むからよ!」

「ああ。頼んだぞ!」

 

 ツナの様子を見ていて、軽井沢と平田は綾小路達の言っていた事を理解した。

 

(本当に……全然違うじゃない。なんかいつもよりツっ君がカッコよく見えるわ)

(これが本気の沢田君? 本当にいつもと違うんだな)

 

 その時、ツナが平田に声をかけた。

 

「平田、推薦競技のメンバーを集めてくれ」

「え? うん、わかったよ」

 

 そして、すぐに推薦競技のメンバーが集まった。

 

 集まったのは、ツナ・綾小路・堀北・須藤・平田・櫛田・池・小野寺・三宅・前園の10名。午後の競技はこの10名で戦う事になる。

 

「皆、後は推薦競技のみだ。俺達は今、学年でも最下位。それに赤組も負けている。だが、残りの推薦競技で全て1位をを取れればまだ望みはある! 俺は死ぬ気で1位をとりに行く。でも俺1人の力じゃ勝てない、皆の力が必要なんだ。だから最後まで諦めないで力を貸して欲しい!」

 

「おお!」

「ええ!」

「もちろんだよ!」

「うん!」

 

 メンバー達から受け入れてもらえて、ツナは満足そうに微笑んだのだった……

  



読んでいただきありがとうございます♪

臨界点についてですが、ヤフー知恵袋で見たにわか知識なので、本来の意味と違っても許してください!

次回で推薦競技に入ります!
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