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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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お前を義息にもらう前に、知らせておきたい事がある

 
前書き
前回と今回のエピソードは、
田鰻様(ベギ様)のご結婚報告から
インスピレーションを得たモノです。
ですが世間一般的によくある状況の事なので、
田鰻様(ベギ様)には許諾を取ってません。

どうか訴えないで下さい。


※後書きに今回のエピソードで思い付いた替え歌を掲載。 

 
(グランバニア城:城内カフェ)
マリソルSIDE

未来の義息のラッセル君の動揺が凄い。
まぁ当然ではある。
いきなり王様が義理の父親になるのだから、冷静で居られるわけもない。

だがそんな事よりも、入り口付近に陣取ってるウルフ宰相等の笑い声に、ラッセル君は苛ついて見える。
真面目そうなピピン大臣も、あの輪に加わっている辺り、流石はリュカさんの部下だと思うわ。
ヘンリー様じゃぁ胃が保たないだろう。

混乱で目を白黒、そして顔を赤青にしてる未来の義息を目の前にして、気にする素振りも見せずにニヤニヤ顔の店員が運んできた紅茶を優雅に啜るリュカさんは、流石に役者が違う。
ヘンリー様だったら、当人よりも慌てて取り繕ったりしてるかもしれないわね。

暫くの間、未来の義息の混乱をオーディエンスの笑い声の中観察していると、落ち着きを取り戻したのか凄く真剣な顔でリュカさんに向き直るラッセル君。
いよいよお決まりの台詞かと思ったら……

「へ、陛下……お尋ねしたい事があります」
「……それはお義父さんにじゃなくて、陛下になのかな?」
同一人物ではあるが立場がまるで違うので、リュカさんも真面目な顔で問い返した。

「はい。陛下への質問であります!」
「……難しい国政の事なら、後ろの悪たれ宰相に訊いた方が早いよ。その方が僕が楽だし」
う~ん……リュカさんらしい。

「いえ、これは陛下にじゃないと分からない事です」
「……なるほど。何となく察したけど、一応質問内容を聞いておこうか」
何かしら……私には察する事が出来ないわ。

「俺が……いえ、私が宮廷画家に任命されたのは、陛下の娘さんと仲が良かったからでしょうか? 画家としての実力では無いのでしょうか!?」
多少なりともプライドがあれば、気になる事柄かもしれないわね。

「正直に言えば、お前が(リューナ)と付き合ってなければ宮廷画家になっていたかどうかは分からない」
「やはり……俺の実力を買って頂いたのではなく、縁故によってなんですね」
私は彼の絵に関わらず、絵画について見識があるわけじゃぁ無いけれど、リュカさんは実力の無い者を縁故だけで贔屓するとは思えないわ。

「言葉をちゃんと理解しろ。僕は『分からない』と言ったんだ。お前の実力を否定してるんじゃない」
「し、しかし……宮廷画家になってないかもしれないって事ですよね!?」
でも揚げ足を取ると“なってるかもしれない”って事よね?

「お前が宮廷画家になれた要因にリューナ()は関係してるって事だよ」
「……?」
……?

もう少し解りやすい説明が欲しいわ。
思わずリュカさんの顔を覗き込んでいると、チラッと私の方を見て微笑むリュカさん。
はぁ~~~……やっぱり格好いいわぁ!

「あの日……お前を宮廷画家に任命した日。既に僕はお前と(リューナ)が付き合ってる事を知っていた。だから優先的にお前の描いた絵を探して見たんだ」
「やはり縁故って事ですよね?」

「そこまではね」
「そこまで?」
そこまで?

「もしお前に絵の才能が全く無い……もしくは絵画に関する知識の無い僕にですら下手くそだと思える絵を描いていたら、そんな奴を宮廷画家になんかするものか!」
「つ、つまり……実力は評価していただいてる、そう思って良いのですか?」

「そうだよ。知っての通り僕は絵画や彫刻に関して知識が無いし興味も薄い。そんな僕でも絵画に関して概ね三段階での評価が出来る。上手い・普通・下手の三段階だ。絵画に関して見識が深くて百段階くらいのランク付けをする奴なら、お前より実力のある者は見つける事が出来るんだろうけど、ランク100とランク99の違いなんて僕には判らない……どっちも僕のランク付けじゃぁ“上手い”に括られる」

「……? やはり縁故なのですか?」
「だ~か~ら~! 実力を確認する切っ掛けはリューナでも、実際に実力が無ければ登用しないって事だよ!」
んんん~~~???

娘さん(リューナ)が居なければ、俺は宮廷画家にはなれてない……と」
「だから違ーってんだろ! リューナの存在がなければ宮廷画家になれたか否かは分からない。今回に関して言えばお前が宮廷画家になる切っ掛けを作ったのはリューナだ。でも僕は実力も無い奴を登用はしない!」

う~ん……何となくだが解ってきたわ。
リュカさんなりに彼の実力は認めてる……でも宮廷画家に無っ等切っ掛けはやはりリューナの存在って事よね。
義息(ラッセル)君も複雑な顔をしてるわ。

「不満かい……それとも納得しづらいかな?」
「そ、そうですね……俺にもプライドがありましたから……」
まぁ多少はそうよねぇ。

「……じゃぁ順序が逆になるけど、お前のプライドを守る話に移ろう」
「……?」
何だろうか……順序が逆?

「お前を中心に、この世界に“漫画文化”を広めてもらいたい」
「漫画文化……!?」
『漫画文化』とは何だろうか?

リュカさんは持参してきた茶封筒からA4サイズの紙(書類?)を数枚取り出しテーブルに広げる。
その書類には横に2・縦に4で四角く区切られ、その中に絵と文字が書かれた落書きの様な物が描かれている。
落書き……多分、ネコかイヌとツリ目の男、それと眼鏡を掛けた龍(?)が描かれている。

「何ッスかそれは?」
如何(どう)やらリュカさんの行動(+絵と思われる内容)が気になったウルフ君と仲間達は、私達の席へと近付いてきてテーブルの上を覗き込んでいる。
あなた達は部外者でしょ。

「これは四コマ漫画だ」
「四コマ? 八コマ有る様に見えるが?」
私にもそう見えるが、それを堂々と言うのがウルフ君だ。

「2話分だバカ!」
「バカって言うな馬鹿! 『話』って事はその漫画ってのはストーリーがあるのか?」
「漫画ってのは絵と文字を使って表現する物語だ」
「小説とかとは違うの?」

「小説の場合は、随所に挿絵が入ってるだけだろ。この漫画ってのは、文字だけでは表現しきれない部分を絵で、絵だけでは表現しきれない箇所を文字で表現する事が出来る、この世界には無い物語の表現方法だ」
「そんな都合の良い表現方法があるのかよ?」

「あるんだよ。性格の悪い孤児が、異世界の美少女に見初められて連れて行かれた世界で、巨大な権力を思うままに振るえる様なご都合主義があるように、こんな都合の良い表現方法はあるんだよ(笑)」
「例に挙げたご都合主義は、都合の悪い部分を秘匿してるけども?」

「兎も角……万人が理解しやすくなる様な物語の表現方法をグランバニア発で世界に広めようと考えている。そしてその始祖にラッセンがなってほしいと思っている」
「お、俺にそんな重大な役目が務まると……?」
流石にラッセル君も戸惑ってるわね。

「漫画的表現ってのはね、何も現実に忠実である必要は無いんだ。勿論、物語の種類によってはリアリティーが重要になる事はあるけども、お前が描く空飛ぶイルカの絵や、水上を走る白馬の絵なんかは、まさに漫画の誇張的表現にピッタリだと思うんだ」

「それで……これがリュカさんの言う、漫画的表現の作品か? 生意気そうな男が、ネコ(?)の尻尾を踏んで引っかかれてる絵が?」
リュカさんが持って来た(多分事前に描いてきた)(漫画)を指さし尋ねるウルフ君。

「うん、そうだよ……あぁ、タイトルを書き忘れてた。え~と『ずっこけウルポン』っと(笑)」
「誰が“ずっこけ”だ!? 俺はマヌケじゃねーぞ! ってかウルポンって呼ぶな!」
なるほど……言われてみればウルフ君に見えなくも無いわね。意外にリュカさんも絵が上手いのね。

「だから言ったろ。漫画的表現は別にリアリティーが無くても良いんだよ。まぁ観る側が如何(どう)感じるかは人それぞれだけど(笑)」
「もう一つの漫画は何てタイトルだよ? 何か貧相な男が箱(トロッコ?)に乗って、同じ所を回り続けてるだけのヤツは!」
先刻(さっき)リュカさんが言った縦4コマで1話……その隣に描かれてるもう1話の事をウルフ君も気になってる。

「こっちのタイトルは『龍神様、激闘の20年間』だ。こっちは実話に基づいてリアルに描かれている。神様を題材にしてるから、敬意を払って描かせてもらったよ(笑)」
「か、神様を題材にしてるのに、リアルなんですか?」
ラッセル君の意見は尤もね……でもリュカさんなら問題無いのよ。

「まぁ読み手によって感じ方は様々だけどね。兎も角さ、こういう絵の技法……物語の表現方法を習得してもらいたいんだ。僕もそれほど知識があるわけじゃ無いから、教えると言うよりも一緒に考えていく感じだけど、それでもお前よりかは知識があるし、お前の能力を解っている。後はお前のやる気次第だ……そればかりは僕には如何(どう)にも出来ないしね」

そうね……流石にやる気が無い者に、何かを為し得させるのは難しいわよね。
「……わ、分かりました。何所まで俺に出来るか分かりませんが、俺の全力を以て漫画を学びたいと思います!」
まぁそうよね。これから結婚する相手の父親からの申し出なんだから、断れないわね。

「うん。じゃぁ勉強を開始するのは明日からって事で……おい部外者共。お前等はもう帰れ、そして仕事しろ馬鹿者。順序が逆になったが、これから本題に入るんだから」
「何だよ“本題”って? これ以上に重要な打ち合わせがあるのかよ!?」
ウルフ君……絵に纏わる事だから、もっと聞きたいみたいね。でも忘れてるわよ。

「これから僕は娘の彼氏から、結婚の挨拶を受けるんだ。お前等の暇潰しに付き合ってる場合じゃない!」
「「「あ!」」」
部外者一同の声が揃った。

ピピン大臣までウッカリした表情してるわ。
やっぱり彼もグランバニアの人なのね(笑)

マリソルSIDE END



 
 

 
後書き
関白王宣言(さだまさしの『関白宣言』の替え歌)
Vocal:リュカさん

♪お前を義息にもらう前に 言っておきたい事がある♫
♪かなり厳しい事実を言うが 国の実状知っておけ♫

♪娘のコネで選ばれたけど お前の才で雇われもした♫
♪絵画(モノ)は上手く作れ いつもキレイに描(か)け♫
♪出来る範囲で構わないから♫

♪忘れてくれるな基本が出来ない男に♫
♪技法を授けるはずなど無いって事を♫
♪お前にはお前にしか 描(えが)けぬモノがあるから♫
♪義父(ぼく)の事を口外せず 黙って僕に付いてこい♫

♪文化が育って浸透したら 自分の功を自慢してはいけない♫
♪例え僅か一作でもいい 自分の実力と言ってはいけない♫

♪何も望まない 僕の功でもない 後(のち)の文化の礎(いしずえ)にせよ♫
♪お前のお陰で いい世界になったと 皆が思うから 必ず思うから♫

♪忘れてくれるな 僕の治める国は 治める国家は 生涯お前を称える♫
♪忘れてくれるな 僕の治める国は 治める国家は 生涯お前称えつくす♫




今回のエピソードを書き終えて
お風呂で鼻歌を歌ってたら出来上がった替え歌。
マリーが作るのとは違って綺麗な歌詞になってしまったw 
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