こいつだけ戦死していたら
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第二章
「洗脳されて巨人ファンになるからな」
「怖いよな」
「昔はそんな漫画ばかりだったんだよ」
昭和三十年代から平成になるまでだ、巷には子供を洗脳する意図が明らかな邪悪な漫画が世に普通にあったのだ。
「だからお父さんも言うんだ」
「巨人が主人公の漫画は子供に読ませるな」
「そうだね、じゃあ今から読むよ」
息子は父に応えた、そして実際に読んだが。
読み終わってだ、彼は両親に言った。
「話は聞いてたけれど最低の糞親父だね」
「ああ、あの親父か」
「まさにそうよね」
両親もその通りだと答えた。
「自分の息子毎日虐待してるからね」
「プロになっても他人利用して息子いじめてるからな」
「もうあの人はね」
「本当に最低だな」
「それで思ったんだけれど」
息子は両親に率直に述べた。
「あの親父戦争行って戻って来てたね」
「そうした時代だったからな」
父はその作品の最初の場面から述べた。
「当時の野球選手の人達もな」
「戦争行ってたね」
「それで死んだ人も多いんだ」
戦死した人もというのだ。
「阪神だったら景浦さんだな」
「残念だね」
「ああ、戦争はやっぱりないに越したことはないな」
「そうだね、けれどあの親父が死んでくれてたら」
戦争でというのだ。
「他の戦死した人が皆生きていてくれたら」
「そうなったらよかったな」
「生きていても息子さんいじめるだけだしね」
両親も息子の言葉にそれはと応えた。
「大リーグ養成何とか出して」
「アニメだとちゃぶ台ひっくり返したしな」
「食べものも粗末にするし」
「人間ああなったら駄目だな」
「そんな親父だけ死んでたら」
戦争でというのだ。
「よかったね」
「それはそうだな」
「あの戦争では沢山の人が亡くなって」
「野球選手もそうだったが」
「あの人だけそうなったらよかったわね」
「そう思ったよ、死んだらいけない人もいて」
息子はさらに言った。
「生きていたら駄目な人もいて」
「あの親父はそうだったな」
「あの戦争で死んだらよかったわね」
「そう思ったよ、そうなったら息子も巨人がどうとかならなかったね」
「阪神に行けばよかったな」
「阪神の星になればよかったわね」
一家で思った、そしてだった。
あらためて巨人の邪悪さについて語り合い阪神の素晴らしさも知ろうと決意した、その漫画を通じても思うことであった。
こいつだけ戦死していたら 完
2022・11・27
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