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心配して魂だけでも

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第一章

                心配して魂だけでも
 坂口香耶は結婚して三年になる、夫は鴎外という。名前は医者でもあった文豪のものだが職業は球場職員で全く別だ。外見も森鴎外とは全く違い黒のスポーツ刈りで面長で穏やかな顔立ちですらりとした長身の人物だ。
 香耶は黒髪を後ろで束ねていて背は一五二位で胸が目立ち脚はほっそりとしている。和風の顔で優しい感じの垂れ目がトレードマークだ。
 その彼女がある日だ、朝起きて夫に言った。
「昨日不思議な夢を見たのよ」
「どんな夢かな」
 夫は朝食のご飯に納豆をかけつつ尋ねた。
「一体」
「ええ、ミカが夢に出たのよ」
「トラっていうと実家で飼ってた」
「そう、雌の茶トラのね」 
「随分可愛がってたんだよね」
「そうだったけれど」
 それでもとだ、味噌汁を飲む夫に話した。
「十七年一緒にいて」
「亡くなったんだったね」
「五年前にね」
「僕も会ったけれど」 
 交際している時にだ、それで夫も述べた。
「いい娘だったね」
「ええ、そのミカがね」
 妻は夫にさらに話した。
「昨日夢に出て来たのよ」
「そうなんだ」
「しかもね」
「しかも?」
「寝てるその時にね」
 夫と同じベッドである。
「背中に何か感触が来て」
「それはランじゃなかったんだ」
「ニャ~~~」
 夫はここで自分達の家族である白い雌猫を見た、見れば二人の傍に置かれている猫用の食器の中のキャットフードを食べている。 
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