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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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喉自慢大会

<エコナバーグ>

「それで………お嬢様、どういたしますか?」
支配人はマリーにまで恭しく接する…
例えグランバニアがこの世界の国で無くとも、リュカの影響力は無視出来ない!
ロマリア・イシス・ポルトガ・サマンオサ…そしてエルフ族。
鎖国を行っていたアリアハンの国王より、各国に対する影響力は強い。
ロマリア・イシス・サマンオサなどは、可能であればリュカを国王に据えたいと思っているぐらいだ!
新しく出来た独立都市など、一瞬で滅ぼす事が出来る影響力だろう…


さて…
ちびっ子喉自慢大会への参加を考えているマリー…
急に何かを思いついた様で、リュカに可愛くお願いをする。
「お父さん…私、お父さんの伴奏で歌いたいなぁ」
「え、僕の伴奏で?………構わないけども、何を歌うのか分からないと…」
急に伴奏を頼まれ、少し驚いたが悪い気はしないのでにこやかに承諾する。

しかしリュカが弾ける曲目でなければ意味がない…
「大丈夫!きっと知ってますわ。私が誰より1番だっちゃ的な歌ですから!」
「あぁ…OK、それなら大丈夫!」
他の者には理解出来ない、2人だけの会話…
自分たちの知らない事で会話するのを、互いの伴侶が嫉妬する2組のカップル…
どうやらこの父娘(おやこ)は、かなり似た者同士の様だ。



ステージ横の待機所で、自分の出番を待つマリーとリュカ。
マリーの順番が訪れるには、あと2人がステージへ上がらなければならない…
その2人の内の1人…マリーの前に歌う女の子は、かなり緊張している様子だ。
マリーよりも少し年上の女の子…
ステージの方を見続けて、胸の前で握り締めた両手を、ガクガク振るわせて立っている。

「お嬢ちゃん…もう少し、肩の力を抜いた方が良い。その方が可愛いよ」
リュカが優しく女の子へ話しかける。
「で、でも…し、失敗したら…」
このままステージに上がったら、間違いなく失敗するだろう女の子。
思わずマリーは笑ってしまう…
だがリュカは優しくアドバイスをする。
「失敗したって良いじゃないか!人間誰しもミスはある。でもね…失敗を味方に付ける事が出来るのは、誰にでも出来る事じゃない!」
「失敗を味方に…?」
「うん。歌ってる最中に間違えたら『テヘ♡』って感じで笑ってみせる。そうすれば、誰もミスったことは気にしないよ…むしろ『可愛い』って好印象になるね!だから、失敗したってどうってことないって気持ちで挑んでみなさい。自分の実力を出し切れるから」


リュカが女の子の緊張を解してる間に、彼女の出番が回ってきた。
先程とは打って変わってリラックスした表情の女の子…
彼女はマリー達の目の前で、素晴らしい歌声を披露した。

「むぅ…結構なライバルじゃないですか!あのまま自滅を待てば良かったのに、アドバイスしてどうするんですか!」
「まぁまぁ…他者の自滅で勝つよりも、自身の実力で勝利する事が重要だよ!お父さんはマリーの為に、彼女の実力を引き出したんだ!」
言ってる事は正しいのだが、どうにも信用出来ない彼の言葉…
「そんな事言って…お父さんの好みの女の子だったんですか?」
マリーもリュカがロリコンでない事は分かっているのだが、それでも文句を言いたくなる様な実力の持ち主だった。

「う~ん…10年後に口説こうかな?」
10年後に再会して口説けば、100%落ちると想像出来るマリー…
最近、兄の苦労が分かってきた。


「お兄さん、ありがとうございます!!」
先程の女の子が出番を終え、リュカの元へ戻って来るなり抱き付き礼を述べる。
「別にお礼を言われる事ではないよ。…それに、お礼してくれるのなら、10年後にでもベッドの中「お父さん、行きますよ!」
まだあどけなさの残る少女に、とんでもない事を言いそうな父を見て、慌ててステージへと促すマリー…
リュカはヤレヤレといった表情でステージへと上がった。

ステージに上がり劇場内を見渡すと、先程とは打って変わり、溢れんばかりの満員状態になっていた。
支配人が慌てて町中に、リュカの生演奏が聴けると触れ回った影響なのだ。
しかも最前列の特等席には、ビアンカ等家族の他に、元カノーツ&エイカーファン…もとい、リュカファンまでもが押し寄せてきている。

「どうもこんにちは。私はマリー…今日は支配人さんの特別な計らいで、ピアノが上手いお父さんに演奏してもらって歌いたいと思います。歌う曲は、私のお母さんの心情を現している歌です。頑張りますので聞いて下さい!」
マリーが満員の客席に向けて挨拶し終わると、リュカに向けて合図を送る。
そしてリュカの見事な演奏が始まり、マリーも歌い出す…
曲目は『ラ○のラブソング』
勿論、この世界でこの曲の事を知っている者はリュカとマリーだけだが、コミカルな歌詞とリュカの素晴らしい演奏で、観客達を大いに楽しませている…
ただ1つ残念なのは、マリーの前に歌った少女が、あまりにも素晴らしい歌唱力だった為、マリーは比較対象となり、その点は評価が低くなってしまった…
マリーもけして下手なワケでは無いのだが………


マリーの歌も終わり、全ての参加者が歌い終わったステージでは、飛び入り参加も含めた参加者全員が集まり、審査員達から評価をもらっている。(因みにリュカはステージ脇に)
そして最後に、最優秀者が発表される事に…
最優秀者には商品として『不思議なボレロ』が贈られる事になっている。

リュカは事前に支配人等に「僕の娘だからと言って、手心を加える様な事だけは無い様に!」と、釘を刺したと言う…
そんな事を知らないマリーは、結構な自信を持って発表を待っているのだが、高らかと名前を呼ばれたのはマリーの前に歌った少女…アルエットちゃんであった!

可愛らしく女の子用に作り替えられた『不思議なボレロ』を手に、アルエットちゃんは何度もリュカへ頭を下げ、親元へと戻って行く。
負けた事が悔しいマリーは、リュカの元に戻ると涙目でアルエットへアドバイスした事を責め続ける。
支配人等に手心を加えない様に言った事が知れたら、より一層怒り出すだろう…
意外に負けず嫌いな娘に、些か驚いているリュカであった。

尚、この事を切っ掛けに、マリーが歌の特訓をする様になるのは、また別の話であろう…



 
 

 
後書き
アルエットとは、
フランス語で雲雀(ひばり)の事です。
往年の歌姫、美空ひばりさんも、幼い頃よりステージで歌を披露しておりました。
思いつきではありますが、あやかろうかと…
別にアルエットちゃんで話を続けるつもりは無いのですけどね! 
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