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瘤で

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第四章

 前田は奥村に真剣な顔で話した。
「意識して隠してないな」
「偽物はそうですね」
「自分に元からあるものでなくてな」
「付けたもので」
「影武者だからな」
 本人ではないというのだ、あくまで。
「それで瘤があることを見せる」
「本物に瘤があるので」
「瘤があるから本物だ」
「こっちはそれを見抜きました」
「それを相手もわかった、だからな」
 それでというのだ。
「相手も瘤を見せる様になった」
「偽物は意識して」
「それが出ている、今の独裁者は瘤を見せる様にしているな」
「意識して」
「本物はスーツの襟で隠しているが」
「コンプレックスなので」
「そうしているがな」
 それがというのだ。
「本物はそうしているのにな」
「偽物は隠している様で」 
 本物がそうしている様にだ。
「見せている、本物にあるからな」
「そこが違いますね」
「ああ、だからな」
「本物と偽物は違いますね」
「だから何かあればな」
「瘤で見分けますね」
「今もな、その何かをする時が何時かわからないが」
 それでもというのだ。
「いいな、何かあればな」
「瘤ですね」
「それで見分けることになるぞ」
「わかりました」
 奥村は織田の言葉に頷いた、そうしてだった。 
 以後もその独裁者を見ていった、独裁者は瘤を隠していた。だが見る者はわかった、本物と偽物の違いが。そしてその時が来た時に備えていたが。
「そうか、死んだか」
「はい」
 一等陸佐になった奥村は陸将補になった前田に報告した。
「今しがたです」
「情報が入ったか」
「これまで何度もそうした情報が入りましたが」
「今度は本当だな」
「すぐにマスコミにも伝わるかと」 
 表にもというのだ。
「今日のうちに」
「そうか、瘤も見てな」
「その時に備えていましたが」
「少なくともあの独裁者の代にはなかったな」
「そうなりましたね」
「後は息子が継ぐな」
「ええ、共産主義ですが世襲なんで」
 奥村はこのことはシニカルに言った。
「その為にです」
「そんな国があることもおかしいが」
「そうですね、共産主義なのに」
「何はともあれ息子が継ぐな」
「そうですね、ではこれからは」
「どうせ息子も影武者置くしな」
「独裁者ですからね」
 だからだというのだ。
「もう独裁者あるあるで」
「そうするからな」
「だから今度はですね」
「息子の本物と偽物の実分け方を突き止めるか」
「そうしましょう」
 二人はこう話してその息子のことを調べることにした、父親は死んだが今度は息子だった。敵対する国の独裁者への調査は続けられるのだった。


瘤で   完


                   2022・2・16 
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