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丸坊主もよし

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第一章

                丸坊主もよし
 三十五になってだった。
 原田誠一郎は九に髪の毛がなくなってきた、丸顔で岩の様な顔で一六五程の背で腹が出て丸々としている。
 その頭を撫でてだ、彼は言った。
「俺は大丈夫だと思ったのにな」
「若い頃はふさふさだったから?」
「ああ、それがだよ」
 家で妻の今日子に話した、一五三位の背だが胸はかなりあり明るくはっきりとした顔立ちで顔は丸目で黒髪は肩の高さで切り揃えている。
「急にな」
「それで言うのね」
「親父も祖父ちゃんもでな」
 髪の毛がなくてというのだ。
「親戚もな」
「皆ね、そういえば」
「ああ、それでな」
 原田は妻に言った。
「俺もか」
「遺伝ね」
「気をつけてたのにな」
 禿げない様にとだ、原田はぼやく顔で話した。
「子供の頃からな」
「髪の毛のお手入れしてたの」
「負担だってな」
「かけない様にしていたの」
「ああ、けれどな」
 それがというのだ。
「この通りだよ」
「厄介なことね」
「全くだよ、どうしたものか」
「じゃあ植毛する?」
「うちにそこまでの金ないだろ」
 原田はこの現実を話した。
「家のローンだって子供達の養育費だってな」
「車の車検もね」
「色々出るからな」
 だからだというのだ。
「そんな余裕はな」
「うちにはないっていうのね」
「俺一人のことでな」
「家のお金使うことはなの」
「どうもな」
 これはというのだ。
「駄目だろ」
「家のことは家のことね」
「俺のことは俺のことでな」
「あなたのことはなのね」
「俺の金で何とかしないとな、けれどな」
 それでもと言うのだった。 
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