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綾小路くんがハーレムを構築する話

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短編
  綾小路くんがラッキースケベな災難に遭っちゃう話し。

AM6:00

いつも通りの時間に俺は目覚める。カーテンを開けて軽く伸びをしてからベッドを降りて洗面所に向かう。

顔を洗って、寝癖のついた髪を整えて制服に着替えた。

全ての用意を終わらせた俺はキッチンに向かう。直ぐ様、コーヒーを淹れる準備と共に朝食の準備を平行で行う。目玉焼きとベーコンをフライパンで焼いて、サラダを皿に盛り付けてテーブルに置いた。

自分で言うのも何だが、事料理に関して最近手際良くなってきた気がする。まぁ、簡単な料理なのも多少あるが。

腰を落ち着けた俺は出来たての朝食をさっさと食べ進めた。

綾小路「……ふぅ。」

朝食を食べ終えた俺は気分転換にテレビを付けて、淹れたてのコーヒーを喉に流し込んだ。

当り障りの無い静かな朝。こんな穏やかな日がいつまでも続けばいいなと思う。俺の取り巻く現状ではそう簡単に上手く行かないけどな……

『続いて今日の朝の星座占いのコーナー♪今日も元気に発表していきまーす♪一位はー……』

そんな気分でいると、朝の占いが始まった。番組の人気コーナーらしく、的中率が高いとネットでも噂だ。意外にも俺はこれを欠かさず観てる。暇つぶしと言ってしまえばそうなんだが、案外良い順位だと気分は良いものだ。

まぁ、俺は悪い順位でも特段気にしたりはしないので気楽に観てる。

『そして最下位は~~……てんびん座のあなたでぇーす♪今日は1日異性と色んな『とらぶる』に見舞われちゃうかも❤️と・く・に♪茶髪でイケメンで高身長の普段無気力だけど女の子に優しくてモテモテで青春謳歌中の高校2年生の男の子はご注意下さいね~♪』

綾小路「……」


最下位はてんびん座だった……最下位なのは別に構わないが今日のは何か引っ掛かる。注意される奴が男限定だし……随分とピンポイントに特徴を指定してるところが可笑しい気がする。


まぁ、そもそも俺は先程の注意される奴に該当しないから心配は無いか(てんびん座で高校2年で茶髪で無気力は合ってると思うが……)


それに、たかが占いの結果。深く考えるのも馬鹿馬鹿しいな……さっさと学校に行くとしよう。


俺はテレビを消してから部屋を出た。いつもと変わらずに。だがこの時は知らなかった……この俺が今日1日色んな災難に見舞われることになることに…。

AM7:20

エレベーター前。

この時間、寮内は静寂に包まれている。こんな朝早くから登校するような物好きは俺以外居ない(俺は一身上の都合でこの時間に登校してるだけだが)

だが、俺はこの時間に登校するのは嫌いではない。

はてさて、今日も乗っているかどうか?

チン……!

一之瀬「あ!おっはよ~清隆くん//////♪」

綾小路「……おはよう、帆波。」


エレベーターに乗っていた先客は帆波だった。いつも通り眩しいくらいの笑顔で俺に挨拶してきた。俺も挨拶を交わしてからエレベーターに乗り込み、帆波の隣に立った。


最近、この時間にエレベーターに乗ると帆波が先に乗っている。帆波は生徒会に所属している為、特別試験がある月は特に忙しく、朝早くに登校している事が多い。


一緒に登校する約束はしたことないのだが、ほとんど毎日会う為一緒に登校するのが日課となっている。


一之瀬「にゃはは♪清隆くん眠そうだね~?」

綾小路「まぁな。帆波はいつも元気だな?」

一之瀬「私は元気だけが取り柄だからね~♪」

エレベーターを降りた俺たちは会話をしながら、通学路を一緒に歩く。

帆波と、こうして他愛ない話しをしながら一緒に登校するのは悪くない。

短い時間だが、ちょっとした会話が出来るのは嬉しいものだ。

綾小路「いつも朝早いようだが、相変わらず生徒会は忙しいのか?」

一之瀬「ううん。今はそんなに忙しくないよ?特別試験も終わったばかりだし。」

綾小路「……そうなのか?じゃあ、別にこんな時間に態々登校しなくてもいいんじゃないか?」

一之瀬「え?あ、うん……そ、そうなんだけどね…//////」

綾小路「?」

帆波は別に生徒会の仕事で朝早く来ている訳では無かったようだ。

俺はてっきり生徒会が忙しい為にこの時間に登校していると思っていた。忙しくないならこの時間に登校しなくてもいいと思うんだが…

俺は純粋に理由が知りたかったので、帆波に聞いてみた。

一之瀬「だって……この時間なら清隆くんが居るから…//////」

綾小路「……俺?」

一之瀬「うん。清隆くんがいつも登校してる時間だから会えるかなぁと思って…にゃはは//////」

綾小路「そう……か。」

何とも予想外の答えが返ってきてしまった。俺はどう答えていいか分からず適当な相槌を打つ感じになってしまった。

帆波も言い終わった瞬間、こっちを見なくなったので暫く無言のまま並んで歩いた。


















学校内。

学校に着いた俺たちは下駄箱でそれぞれ上履きに履き替えた。

すると、帆波が…

一之瀬「あ、私ちょっと生徒会室に忘れ物あるから取りに行ってくるね?」

綾小路「……あぁ、分かった。」

上履きに履き終えた俺に帆波は一言そう告げてきた。

先程まで俺たちの間で気まずい空気が流れていたので、ここで別れるのはタイミング的に良かったかもしれない。

俺はそう考えて帆波より先に階段に上がろうとしたら…

一之瀬「清隆くん待って!」

綾小路「ん?」

一之瀬「あ、あの……良かったらこれからも一緒に学校行かない//////?」

綾小路「……俺とか?」

一之瀬「もちろん清隆くんが良ければなんだけど……ダメかな//////?」

帆波は俺の制服の袖を掴んで引き止めてから、上目遣いをしながら恥ずかしそうに言ってきた。

可愛い+美少女+上目遣い……反則級だな。

勿論、俺の返事は…

綾小路「……俺なんかで良ければ。」

一之瀬「ほ、ほんと?やったぁ~//////♪清隆くんありがとう//////♪」

綾小路「ほ、帆波?」

帆波はお礼を言いながら、俺の胸に抱きついてきた。

帆波から漂うシャンプーとシトラスの香りにクラっときた。加えて凄く身体を密着してきたのである部分が俺に押し当てられる訳で…

そして、帆波は急にハッとして…

一之瀬「にゃあ~~//////!ご、ごめんね!清隆くん//////!つい嬉しくて……じゃなくて、えっと、その…ごめんにゃなさ~い//////!」

綾小路「……」


帆波は自分の行動が恥ずかしくなったのか、俺を置いて走って階段を登って行った。


そんな急いで階段登ったら危な…


ガッ……グラッ!


一之瀬「……きゃっ!」

綾小路「帆波!」


俺がそう懸念していると、帆波は階段を踏み外して倒れ込んできた。階段の中段辺りに居たので、落ちたら怪我をしてしまう可能性が高い。


俺は帆波を受け止めようと構えた。上手く受け止めれば、被害は最小限に抑えられる。


タイミングを間違えるな、俺……今だ!


ガシッ!……フワッ。ムニュッ❤️


綾小路「……ふぅ。ケガはないか?」

一之瀬「う、うん……ありがとう、清隆くん…//////」


落下してくる帆波の衝撃を後ろに流しながら、何とか帆波を抱き止めた。


咄嗟の判断だったので、お姫様抱っこの形になったが……俺が完璧にキャッチ出来たのでケガの心配は無さそうだ。


とにかく良かっ……ん?


何だ……この右手に宿る柔らかい感触は?それに、左手もやけにスベスベした感覚がある気が?俺は恐る恐る帆波の方に視線を向けた。すると…


綾小路「…………!?」

一之瀬「ん…//////!」

俺の右手は帆波の肩ではなく……帆波の豊満な胸を掴んでいた。

更に左手はスカート越しではなく、直に帆波の太ももに触れてしまっていた。

綾小路「す、すまない。今のは不可抗力と言うか、わざと触った訳ではなくて…」

一之瀬「あ、いや、えっと、こちらこそ迷惑懸けてごめんなさい。それに変な声も出しちゃって…//////」

綾小路「……俺の方こそ申し訳ない。」

少なからず、動揺した俺は慌てて帆波を下ろした。そして二人して謝りあうと言う不思議な構図が出来ていた。

やってしまった……咄嗟の事とは言え、女性の身体に触るのだからもっと細心の注意を払うべきだった。

胸と太ももを触れられて、許してくれないと思うが今は謝るしかない。その思いで俺は頭を下げた。

一之瀬「清隆くん……そんなに謝らないで?清隆くんがキャッチしてくれたお陰で私はケガしなかったんだから。だから……ありがとう、清隆くん//////♪」

綾小路「いや、俺がもっと上手くキャッチしていればこんなことには…何かお詫びさせてくれないか?」

一之瀬「そ、そんな!お詫びなんて……助けてくれただけで十分だよ…。」

綾小路「何かしないと俺の気が済まないんだ。帆波の要望なら何でも応える。」

一之瀬「えぇ!?う、うーん…」

引き下がらない俺を見て、帆波は困ったように考え始めた。

帆波は優しいから、俺のお詫びなんて要らないのは解ってる。

だが、事故とは言えセクハラ行為をしてしまったのだから出来る限りの対応をしないといけない。

一之瀬「じゃあ……1つお願いしてもいいかな?」

綾小路「勿論だ。」

一之瀬「私いま階段登るのスッゴく怖いから清隆くんにお姫様抱っこして欲しいなぁ……とか言ってみたり//////?にゃはは…//////」

綾小路「……」

俺は固まった。それだと俺にまた身体を触れられることになると思うんだが…

だが、帆波のご所望はお姫様抱っこ。なら、俺はそれに応えるしかない。

一之瀬「……なーんちゃって♪清隆くんが気に止んでるから冗談言ってみただ…」

綾小路「それくらいお安いご用だ。」

一之瀬「へ?」

帆波が何か言っていたような気がしたが、今の俺にそれを聞く余裕は無かった。

俺は自分の鞄と帆波の鞄を両肩に掛けてから、帆波をお姫様抱っこした。

今度はしっかりと帆波の肩を掴み、太ももではなく膝裏に左手を入れて支えた。

一之瀬「にゃあっ//////!?き、清隆くん今のは冗談で…//////」

綾小路「しっかり掴まっててくれ、帆波。」

一之瀬「……にゃい//////(にゃーーー//////!本当にお姫様抱っこしてくるなんて王子様みたいだよ~//////さっき私を助けてくれた時もスゴくカッコ良かったし♪胸触られちゃった時は恥ずかしかったけど…今、スゴい幸せ//////)」

俺は周囲を警戒してから階段を登って歩いた。

こんなところを見られたら、あらぬ誤解を生みかねない。

誰にも見られないよう、周りに気を配りながら素早く生徒会室に移動した。その間、帆波が熱っぽい視線を送っていた事には気付かなかった。


















2ーD教室。

ガラッ……!

帆波を無事に生徒会室まで送り届けた俺は教室に辿り着いた。教室には誰も居なかった。そして、真っ先に自分の席の元に行き、机に顔を伏せた。

そして、俺は……

綾小路「……ふぅー。」

無人の教室で大きく息を吐いてから、眼を閉じた。

今、俺がこんな行動をしてる理由……それは必死に煩悩を振り払う為だ。少しでも気を抜くと、思い出してしまう。

帆波の豊満な胸と太ももの感触を。

綾小路「凄く柔らかかった……じゃない。落ち着け、俺。」


教室に誰も居ないとは言え、自分の部屋以外でこんな風に独り言を言うのは初めてだ。


それくらい今の俺は冷静で居られてない。俺だって思春期真っ只中の健全な男子高校生。女性の胸や太ももに触れたら、心が落ち着かなくなるのは当然だ。


とにかく、今は落ち着こう。深呼吸を……


ガラッ……!


櫛田「あ!清隆くんいた~!」

堀北「……貴方は相変わらず朝早いわね?」

綾小路「……桔梗、鈴音。」

俺が深呼吸をしようとした瞬間、教室のドアが開いた。

担任の茶柱がカーテンを開けに来たと思ったが、入ってきたのは桔梗と鈴音だった。

櫛田「おっはよう、清隆くん♪」

堀北「おはよう、清隆くん。」

綾小路「おはよう……二人とも今日は随分来るのが早いな。どうしてだ?」

桔梗は自分の席に鞄を置いた後、俺の席に挨拶にやってきた。

俺の隣の席に座っている鈴音も挨拶をしてきた。

櫛田「私は~清隆くんがこの時間に登校してるって聞いて、早く来てみました~♪」

堀北「私は早く目が覚めただけよ。」

綾小路「……そうか。」

鈴音は有り得そうな理由だが……桔梗は不思議な理由だな。

俺が登校してる時間と知ってどうして早く来るんだ?まぁ、別に何だっていいが。

櫛田「きーよたーかくん!せっかくだからお喋りしよ♪」

綾小路「桔梗も物好きだな……まぁ別に構わないが。」

櫛田「やった♪じゃあ、もっと近くに寄ろうっと//////♪」

桔梗は俺の机に乗り出すように、顔を近付けてきた。

桔梗も帆波と同じで、本当に距離が近い。近すぎて緊張するんだが…

堀北「……あなたたち、ちょっと近すぎるんじゃない?」

櫛田「え~そうかなぁ?いつもこれくらいだよ~?」

堀北「そんなに近いと喋りづらいと思うけど?」

櫛田「別に堀北さんに関係無いじゃん。それともなに?堀北さん、私に清隆くんと仲良くされるのがイヤなの~?」

堀北「べ、別にそういうわけじゃないわよ//////!」

俺たちの距離の近さに鈴音が苦言を呈してきた。

売り言葉に買い言葉で桔梗も直ぐに反論していた。

俺は何も言わずに静観しておこう。面倒事に捲き込まれるのだけはゴメンだ。

櫛田「堀北さんなんて放っとこ清隆くん♪それより……あれ?スンスン」

堀北「ちょっと、櫛田さん!?あなたなにしてるの!?」

綾小路「?」

桔梗は鈴音との舌戦を止めて俺の方に向き直った瞬間、突然桔梗の言葉が止んだ。

そして、桔梗は俺の制服の匂いを嗅いできた。お前は犬か?と心の中で思っていたら…

櫛田「ねぇ、清隆くん……なんで清隆くんから女の子の匂いがするの?」

堀北「な!?」

綾小路「は?」

桔梗の質問に俺は固まった。

女の子の……匂い?そんなもの俺が纏ってる訳ないだろ…桔梗は急に何を言い出すんだ?

どうして睨むように俺を見るんだ?

櫛田「は?……じゃないよ!だってほら!清隆くんの制服から女の子の香水の匂いするもん!」

堀北「へぇ……それが本当なら一体どういう事かしら、清隆くん?」

綾小路「ちょっと待て。そんなわけないだろ。」

櫛田「じゃあ、なんで香水の匂いするの?理由を話して!」

香水の匂い?そんなこと急に言われても全く身に覚えが……いや、待てよ?そういえばさっき……帆波と密着したなような…

俺も一応自分の制服の匂いを確認した。仄かにシトラスの香りがする。

恐らく、帆波の香水の匂いが俺に移ったんだろう。

綾小路「お、落ち着け二人とも。これには事情が…」

櫛田「ちょっと落ち着いていられる状況じゃないなぁ……一体誰とイチャイチャしてたの?」

堀北「とりあえず、女たらしの貴方に鉄槌喰らわせても問題無いわよね?歯を食いしばりなさい。」


桔梗は身を乗り出さんばかりに問い詰めてきた。鈴音は俺に攻撃する気満々だ。こういうときだけ息ぴったりなんだな、お前ら。


イチャイチャした訳では全くないし、帆波の香水の匂いが付いたのは深い訳があるのだが……それをここで正直に話す訳にはいかない。何とか二人を宥めて乗り切らないとヤバい。


いや、もうそれは遅いな。鈴音が手刀のポーズを取りながら此方にきている。万事休すか……と思っていたら…


ガッ!グラッ……


堀北「……きゃっ!」

櫛田「わわっ!?」

綾小路「……うおっ!」


鈴音が俺の椅子の脚に躓き、桔梗は俺の机に身を乗り出し過ぎてバランスを崩し倒れてきた。


二人とも突然俺の方に倒れてきたので、回避する余裕はなく……



ドサドサっ!!ムニュッムニュッ❤️



椅子ごとひっくり返ってしまった。俺の方に倒れて来た二人は俺の上に乗っかる形になった。


何だか……俺の視界がやけに暗い。しかも、とても柔らかい物が顔に押し付けられてるような?


ん?まさか……


綾小路「…………!?」

櫛田「ふぇっ//////!?」

堀北「な//////!?」

俺の顔には桔梗の左胸と鈴音の右胸が押し付けられていた。

しかも、倒れて来た勢いそのままだったのでダイレクトに俺に伝わってきた。

よりにもよってこの二人と、こんな事になるとは……終わったな、俺。

櫛田「わわっ//////!?ご、ごめんね清隆くんケガとかしてない?」

堀北「ご、ごめんなさい…//////私も押し倒すつもりはなくて…」

綾小路「あぁ……いや…俺の方こそすまん。」

櫛田 「……//////(清隆くんにおっぱい押し付けちゃったよ~//////しかも今回は事故だけど……うぅ、恥ずかしい//////)」

堀北「……//////(この私が椅子に躓いて彼の上に倒れるなんて不覚だわ。しかも彼の顔に自分から胸を押し付けるなんて…//////)」


俺がそう覚悟を決めていると、二人は直ぐに俺の上から離れて謝ってきた。


まさか鈴音たちから謝ってくるとは思わなかった……桔梗は強請をかけるか、鈴音は俺を完膚なきまでに攻撃してくると思ったんだが…


二人とも顔を背けて黙り込んでしまったし……どうしたものか…


ガラッ……!


茶柱「……ん?お前たち床に座り込んで何してるんだ?」

櫛田「な、なな、なんでもないです!」

堀北「……お、おはようございます、茶柱先生。」

俺たちの間で気不味い空気になっていると、教室のドアが開いた。入ってきたのは担任の茶柱だった。

二人は立ち上がって、茶柱に挨拶しに行った。謝るタイミングを見失ってしまった……まぁ、今は顔を合わせにくいだろうし…。

少し時間を置いてから、ちゃんと謝るか…俺はそう考えて椅子に座り直した。
昼休みの屋上。

明人たちと昼を食べ終えた俺は一人で屋上に来た。缶コーヒー片手に景色を観ながら一息ついている。

幸い屋上には誰も居なかった。

綾小路「……許して貰えて本当に良かった。」

俺は缶コーヒーを飲みながら、大きく安堵した。

あの後、俺は二人に頭を下げて謝罪した。最初は許して貰えないと思ったが、意外にもあっさりと許して貰えた。

明らかな事故だったのと、俺が故意に胸に顔を近づけた訳では無かった二点の理由から許してくれた。

まぁ、鈴音にはこの事は他言無用と怖い顔で睨まれたが(腕に水筒が嵌まった事件の時と同じくらいキツく)

綾小路「それにしても……今日は朝から大変な目にあった…。」


帆波の件と今回の件。まさか、1日に2回もこんな目に遭うとは……俺の精神衛生上宜しくないな…本当。いや、実際大変な目に合ってるのは帆波たちなんだが。


しかし、美少女相手に連続でハプニングが起きるのは俺の身が持たない……何で今日に限ってこんな事が…


『今日は1日異性と色んな『とらぶる』に見舞われちゃうかも❤️』


綾小路「……」


ふと、俺は朝の占いの事を思い出した。


確かに今日のてんびん座は最下位でアナウンサーに異性と『とらぶる』に見舞われると指摘されたが……まさかそれが当たってるのか?


いや、ないな……それはない。


いくらネットで当たると噂の占いでも有り得ないだろう。特に気を付けるべきと言われた相手も俺に当てはまらないものが多かった筈だ(茶髪で無気力で高校2年は合ってるが)


たかが、占いだ……俺の考え過ぎだよな?馬鹿な事を考えるのは止めて、教室に戻るか。


ガラッ……!


長谷部「あ!やっぱここに居たね~きよぽん♪」

佐倉「清隆くん。まだ下りてなかったんだね……よかった//////」

綾小路「……波瑠加、愛里?」

教室に戻ろうと思ったところで、屋上の扉が開いた。

入ってきた相手は、俺のグループの波瑠加と愛里だった。二人は俺に手を振りながら、小走りで此方にやって来た。

波瑠加たちが屋上に来るなんて珍しいな……何しに来たんだ?

長谷部「きーよぽー……おわっ!?」

佐倉「清隆く……ひゃっ!?」

綾小路「!」


ガッ!グラッ……


波瑠加と愛里は俺の場所に辿り着く寸前のところで躓いた。こんな場所で転んでしまったらスカートの二人はケガをする危険がある。俺は倒れてくる二人を受け止めようと前に出た。


ギュっ❤️ムニュッムニュッ❤️


俺は二人を抱き止めるように支えた。


綾小路「……急に走ると危ないぞ?二人とも大丈夫か?」

長谷部「う、うん。ありがと、きよぽん//////」

佐倉「ありがとう……清隆くん//////」


幸い帆波の時と違って、受け止めやすい状況だったので腰の辺りを支える事に成功した。二人を俺の胸に抱き締める形にはなったが……


とにかく、二人が転ばなくて良かっ……ん?


何だ?この両手に伝わる柔らかい弾力のある物は……まさかこれって……?俺は恐る恐る視線を下に向けた。


綾小路「…………!?」

長谷部「やんっ//////!?」

佐倉「ひゃんっ//////!?」

俺の両手は腰を支えたと思っていたが……お尻の方を支えてしまっていた。

右手は波瑠加のお尻を左手は愛里のお尻を掴んでいた。しかも……俺の手がスカートを巻き込む形になっていてほぼ直にお尻に触れていた。

俺は直ぐに波瑠加と愛里のお尻から手を離した。

綾小路「す、すまない!そういうつもりで触ったわけじゃ…」

長谷部「……きよぽんのエッチ//////」

佐倉「あうぅ…//////」

波瑠加は上目遣いでジト目を向けて、恨み言をいうように言った。愛里は俺の胸に顔を埋めて、声に為らない声を出していた。

明らかなセクハラ行為を受けたのだから当然の反応だと思う。

俺は両手を挙げながら二人に謝った(これ以上、俺の手が二人の身体に触れないようにする為)

長谷部「これはきよぽんに責任取って貰わないといけないよね~//////?」

綾小路「……分かってる。俺に出来る事があるなら何でも…」

長谷部「……っていうのは冗談♪きよぽんが慌ててるところ初めて見たから、ちょっとからかってみました~♪」

綾小路「……」

長谷部「だいじょーぶ♪きよぽんがエッチな目的で触ったんじゃないことちゃんと分かってるから。ねぇー愛里?」

佐倉「う、うん。触られちゃった時はびっくりしちゃったけど…//////」

長谷部「それね~?私なんかスッゴいエッチな声出しちゃったし……あはは//////♪」

俺は結構本気で責任を取るつもりでいたが……二人は俺が故意にセクハラ行為をした訳じゃないことを理解してくれた。

だが、この場面でからかうだけは勘弁して欲しいものだ……。

綾小路「……本当に申し訳ない。」

長谷部「もう~そんなマジに謝らなくてもいいって。元はと言えば、何もないところでコケそうになった私らが悪いんだし。」

佐倉「そうだよ。清隆くんが庇ってくれなかったら絶対転んじゃってたし……ありがとう、清隆くん//////」

長谷部「そうそう♪ありがとね~きよぽん//////♪」

おどけたように笑う波瑠加。こんなことした俺にいつも通り接してくれるなんて……本当に優しいな、二人とも。

俺は良い友人を持ったものだ。それは大いに感謝しているが……今は別の問題が…

綾小路「あー……ところで、二人はいつまで俺にくっついているんでしょうか?」

佐倉「あわわ!?ご、ごめんね清隆くん。今、離れ…」

長谷部「えー?別にいいじゃん。このまんまでも~♪愛里だってきよぽんから離れたくないでしょ~?せっかくのチャンスなんだし~♪」

佐倉「そ、それは……えっと…//////」

波瑠加たちは俺に抱き着いたまま、俺と話しをしている。それなら当然、二人と密着した状態なので非常に柔らかい感触が俺に伝わってくる。

スゴく良い匂いもするし……少々困るんだが…。

長谷部「とにかく、予鈴鳴るまでこのままってことで♪」

綾小路「いや、それは…」

長谷部「なぁに~きよぽん?私たちにくっつかれるのイヤなの~?」

綾小路「そういう訳ではないが…」

長谷部「それじゃ決まりね~♪じゃあ、愛里もきよぽんに目一杯甘えちゃおう~♪うりうり~って//////♪」

佐倉「えぇ…//////!?」


俺が強く反論出来なかったお陰で、予鈴が鳴るまでこの状態でいることになった。二人は俺の胸に顔を埋めて遊んでいる。


何でこんな状況に……他の誰かに見られでもしたら誤解が生まれそうなんだが。だが、二人を無理矢理引き離す訳にも…


ガラッ……!


綾小路「!」

軽井沢「清隆~!いる~?」

松下「教室にも図書室にも居なかったし、ここじゃないかな?」

佐藤「清隆くんが居るとしたら屋上しかないもんね?」

俺がそう考えてた時、屋上の扉が開いた。
入ってきた相手は、この状態を見られたら一番困るメンツと言っても過言では無い。

やって来たのは……恵たちの3人だった。

一通り屋上を見渡した恵たちは俺たちを見つけて…

軽井沢「あ、清隆居た♪……ん?はぁーーー?あんた一体なにしてんのよー!!!」

佐藤「長谷部さんたちと抱き合って……えぇっ~//////?」

松下「も、もしかしてお取り込み中だったり//////?」

長谷部「ありゃりゃ~……」

恵の大きな声が屋上に響き渡った。

そして、恵たちはズンズンと歩きながら此方にやって来た。

軽井沢「き・よ・た・か?真っ昼間から長谷部さんたちと抱き合って一体なにしてるのかなぁ~?んーーー?」

松下「これは浮気現場発見ってやつかな?」

佐藤「うぅ……」

あっという間に俺の場所に辿り着いた恵は鬼の形相で問い詰めてきた。松下はジト目で麻耶は泣きそうな声で。

波瑠加たちは恵の威圧に気圧されて俺の背中側に移動した。

綾小路「落ち着け、恵。別に抱き合っていたわけじゃない。そう見えただけだ。」

長谷部「そうだよ~軽井沢さん。ここで転びそうになった私たちを、きよぽんが受け止めてくれただけだよ?ねぇー愛里?」

佐倉「う、うん!」

3人(主に恵)を宥めるように俺たちは事情を説明した。波瑠加が大まかな説明をしてくれて助かった。

恵は俺の顔をじっと見て嘘じゃないか確認してきた。

軽井沢「……本当でしょーね?」

綾小路「本当だ。俺はお前に嘘はつかない。」

勿論、これは全て事実。

少しイレギュラーな事態に見舞われたりしたが…

軽井沢「ふーん……じゃあ、まぁ?信じたあげる。」

佐藤「てことは、長谷部さんたちを抱き締めてたわけじゃないんだね?よかったぁ…」

松下「まぁ、流石に誰が来るか分かんない屋上でイチャイチャはしないよね。」

何とか3人は話しを理解してくれた。

一事はどうなるかと思ったが……信じてくれて良かった。

綾小路「分かってくれたようで何よりだ。……恵たちは何で屋上に来たんだ?」

軽井沢「べ、べっつに!ただ、景色観に来ただけですけど//////?」

綾小路「そうなのか?」

佐藤「そ、そうそう//////!景色観に来ただけ?みたいな?」

松下「あはは…」

景色観に来たって言う割りには景色を観る素振り全く無かった気がするが……まぁ、なんでもいいか。

ここに来る理由は人それぞれだ。

綾小路「あー……俺たちはそろそろ教室に戻ろうと思うんだが…」

長谷部「えー?もう戻るの~?」

佐倉「予鈴もそろそろ鳴る頃だし、戻ろうよ波瑠加ちゃん!」

長谷部「……しょうがないなぁ。」

綾小路「恵たちはどうするんだ?」

俺は自然の流れで教室に戻ることに成功した。

流石に予鈴が鳴るまで二人にくっつかれるのは困るからな……

まぁ、二人とも俺の背中にぴったりとくっついたままなんだが。

軽井沢「……戻る。」

綾小路「じゃあ、一緒に戻るか。」

軽井沢「うん//////」


恵たちも教室に戻ると決めたようで、屋上の扉に向かった。景色観に来たのにもう戻るのか?と一瞬思ったが何も言わないでおいた。


俺たちも恵たちの後ろについて歩く。波瑠加は教室に戻ることに気乗りしなそうだったが、愛里に宥められて渋々歩いていた。


やれやれ……屋上も憩いの場とは言えなくなってきたかもな…と考えていたとき…


ビュオォッ!フワッ❤️フワッ❤️フワッ❤️


屋上全体に急な突風が吹いた。


軽井沢「たうわっ!?」

佐藤「ひゃっ!?」

松下「わっ!?」

綾小路「…………!?」

俺たちに襲った突風は……前を歩いていた恵、麻耶、松下のスカートが捲れ上がる状況を作っていった。

俺は恵たちの後ろに居た為、その瞬間を目撃してしまった。

軽井沢「……//////(なんなのよ、今の風はーーー//////!スカート捲れちゃったじゃ……ん?あたしたちの後ろには清隆が…//////)」

佐藤「……//////(き、清隆くんが後ろに居るのに風でスカート捲れて//////どうしよ……今日可愛い下着じゃないのに~//////)」

松下「……//////(こ、こんな急に突風が吹くってある//////?綾小路くんが後ろに居るのに……絶対見えたよね、これ//////?)」

綾小路「……」

風が収まった後、3人はゆっくりと後ろに居る俺の方を向いてきた。

無言で恥ずかしそうにスカートを押さえながら。

俺は居たたまれなくなって顔を背けた。

軽井沢「清隆……見た//////?」

佐藤「き、きき、清隆くん……見えた?見ちゃった//////?」

松下「綾小路くんからの距離だと見えちゃったよね……たぶん//////」

綾小路「…………いや。」

軽井沢「なにその間はーーー!……ぜっっったい見たんでしょ//////?清隆のエッチ、スケベ、変態//////!」


恵たちに詰め寄られ、顔を背けたまま俺は否定したが……実際バッチリ見てしまったので罪悪感が半端ない。


恵は……水色、松下は……桃色、麻耶は……白だったな…うん。


一瞬の出来事だったが、自分の動体視力をこんなにも恨めしく思ったことはない。恵たちに罵倒されても仕方ないと思った。


綾小路「……落ち着け、恵。一瞬だったから見えてない。」

軽井沢「ほ、本当でしょーね//////?」

佐藤「清隆くん、本当…//////?」

松下「嘘じゃない?綾小路くん?」

綾小路「……本当だ。」


これに関しては大嘘だが……恵たちを刺激しないよう、ここは敢えて嘘をつかせて貰う。


……すまない、3人とも。


知らない方が良い事も世の中にはあるんだ。この事は綺麗さっぱり俺の記憶から消すから許してくれ…。


軽井沢「物証があるわけじゃないし……仕方ないから今回は信じてあげる。でも、今からあたしたちは清隆の隣歩くから。そうすれば、今みたいな事にならなくて済むし//////!」

綾小路「……分かった。」

軽井沢「二人とも清隆の隣行こ!」

佐藤「う、うん!」

松下「りょーかい♪」

嘘ついた事と、恵たちの下着を見た罪悪感から俺は恵の申し出を呑んだ。

元々、俺の両サイドに居た波瑠加たちは俺の背中に移動して、恵と麻耶は俺の両腕にくっついてきた。ちなみに松下は麻耶の隣。

俺は5人に囲まれるような形で歩くことになった。

軽井沢「よし……これなら見られる心配はないわね//////♪」

佐藤「清隆くんが隣に……緊張しちゃうよぉ//////」

松下「良かったねぇ~佐藤さん。」

長谷部「……(むー……そこは私と愛里のポジションなのに~。すーぐ女の子の要求呑むんだもんなぁーきよぽんは。さっきまで私たちのお尻触って動揺してた癖に//////!きよぽんの女たらし)」

佐倉「……(清隆くんにお尻触られちゃうなんて…びっくりしちゃったよぉ//////でも……相手が清隆くんだったから…良かったかな//////)」

結局俺はこの状態のまま、教室に戻ることになった。波瑠加と愛里の無言の圧力?みたいなのが背中に感じられた。

教室に着いてからは鈴音と桔梗に何があったのか詳しく取り調べされて大変だった…。

放課後。

全ての授業が終わり、教室内ではほとんどのクラスメイトが帰ってる中、俺は自分の席に座って考え事をしている。

考え事と言うのは……今日の出来事についてだ。朝の帆波の件から始まって、鈴音たちとの事故。屋上では波瑠加たちと恵たちの一件……今日はずっと災難続きで何かがおかしい。

いや、見方によってはラッキー続きとも言えるが……とにかく、こんなにも連続でハプニングが起きるなんて有り得ない。

綾小路「……はぁ。」

これは……いよいよ占いが合ってると考えた方が良い。あまり信じたくはないが…

とにかく、これ以上何も起こらないようにするには……俺が誰とも帰らなければいい。

幸いもう放課後。もう少し人が捌けるまで待ってから一人で帰れば…

『『『『『清隆くーん♪×5』』』』』

俺がそう考えていたその時、教室の外から女子5人の大きな声が聴こえた。

その声の主は教室に入ってきて、俺の席までやってきた。

一之瀬「にゃはは♪清隆くん一緒に帰ろう//////♪」

櫛田「帆波ちゃん呼んできたよ~帰ろう清隆くーん♪」

坂柳「ふふ♪ごきげんよう清隆くん♪私たちと一緒に帰りませんか//////?」

神室「な、なんで私も数に入ってるのよ?」

椎名「やはり、まだ教室に居たのですね?帰りましょう、清隆くん♪伊吹さんも連れて来ました!」

伊吹「ちょっと離してよ!なんであたしがこいつと帰んなきゃいけないのよ?」

軽井沢「き・よ・た・か?当然あたしたちも一緒に帰るんだからね//////?」

佐藤「私も清隆くんと一緒に帰りたいな……なんて言ってみたり//////?」

松下「綾小路くんってほんと人気者だね~?」

長谷部「きよぽん!私と愛里も忘れてもらっては困るんだからね?」

佐倉「私も清隆くんと帰りたいな//////!」

堀北「帰り道も同じことだし……私も一緒に帰ってあげてもいいけど//////?」

綾小路「……」


入ってきた相手は……有栖、真澄、帆波、ひより、伊吹。桔梗は帆波を呼びに行っていたようだ。


そして、全員が俺と一緒に帰ろうとしている。その為に来た有栖たちと教室に居た波瑠加たち。俺の目論みが一瞬で塵と化した。


もしもこの状態でここに居る誰かとハプニング……もとい『とらぶる現象』が起きたら俺の精神が持たない。ここは何としても一人で帰らねば。さぁ、断れ、俺!


坂柳「ふふ♪帰りましょう、清隆くん♪」

綾小路「……そうだな。帰るか。」

一之瀬「にゃはは♪帰ろう帰ろう~」

俺は帰り支度をして立ち上がった。そして、女性陣たちと共に教室を出た。

まぁ……美少女たちに上目遣いで一緒に帰ろうなんて言われて断れるわけないよな、うん。

これは仕方ない……それなら有栖たちに誘われても今日は何処も寄らないようにしよう。そうすれば、大丈夫な筈だ……多分。

















昇降口前。

ザーーー!!!

坂柳「おやおや?スゴいどしゃ降りですね?」

軽井沢「えー!?嘘でしょー?今日天気予報で雨降るって言ってたっけ?」

椎名「いえ。この時期ですから天気雨だと思います。」

伊吹「雨降るとか最悪なんですけど…」

綾小路「……」

靴を履き替えた俺たちを待っていたのは強烈なスコール。どしゃ降りとなって雨が地面を叩きつけていた。

確かに梅雨時とは言え、こんな急に降るとは……

坂柳「今日は皆さんと新しく出来たカフェに参ろうと思いましたのに……水を差されるとはこの事ですね。」

櫛田「あ、それ知ってる。ケヤキモールの奥に出来たところでしょ?私も気になってたんだよね~。それなのに雨なんて……はぁー。」

椎名「まぁまぁ。お天気雨でしょうから少し待ってれば止みますよ。」

一之瀬「そうだね♪雨止んでから皆で行こ!ねぇ~清隆くん//////♪」

綾小路「……あ、あぁ。」


まずい……このまま雨が止むのを待っていたら、俺も一緒にカフェに行く事になる。何か手を考えなければ……ん?


もしや……今が最大のチャンスなのではないか?


この雨の中なら帰ろうとする奴は誰一人として居ない。つまり……俺がこの雨の中、走って寮まで帰れば誰も追ってはこない。


確実に濡れ鼠になるが……迷ってる暇はない。俺は直ぐ様ストレッチを開始した。


軽井沢「清隆?急になにしてんの?」

綾小路「……ストレッチだ。雨を見てたらなんか急に身体を動かしたくなってな。」

長谷部「こんな場所でストレッチなんて変わってるね~きよぽん?」

神室「……綾小路の変わった行動なんて今に始まったことじゃないと思うけど?」

堀北「同感。」

俺がストレッチを始めると、不思議そうに見てくる女性陣。

まぁ、昇降口でストレッチをするやつなんて誰も居ないだろう。変わってると思われても仕方ないが……鈴音と真澄は失礼じゃないか?まるで俺がいつも奇行な行動してるような口振りだ。

だが、今の俺はなりふり構ってられない。軽くストレッチをした後、俺はクラウチングスタートを取った。

軽井沢「え?ちょっと清隆?今度はなにしてんの?」

綾小路「……クラウチングスタートの練習だ。」

櫛田「クラウチングスタートの練習って……何もストレッチで走る姿勢取らなくても…」

綾小路「いや、走る為には必要の所作だ。俺は用事を思い出したから先に帰る。……じゃあな!」

軽井沢「……ちょっ!?清隆ーーー!?」

一之瀬「にゃ!?清隆くん?」


俺は恵たちの制止を聞かずに、クラウチングスタートを切って一気に駆け抜けた。


大粒の雨が俺を一気に濡らす。濡れた地面に脚を取られそうになるが、俺の体幹なら耐えられる。


後ろを振り返らず、体育祭で魅せたスピード以上の速さを出して寮まで走った。



















松下「い、行っちゃったぁ……綾小路くん急にどうしたんだろうね?」

佐藤「清隆くん足はっや!」

神室「こんな大雨のなか走って帰るなんてバカなんじゃないの?」

堀北「何考えてるのかしら?」

佐倉「清隆くんの用事ってなんだろ?」

椎名「まさか……私たちと一緒に居たくなかったんでしょうか?どう思います、伊吹さん!」

伊吹「知らないわよ。あいつの考えてることなんて。」

坂柳「私たちを置いて先に帰るとは良い度胸ですね?それなら此方からも提案がありますわ♪皆さん耳を貸して下さい♪」

俺が走り去った後、女性陣が悪女の笑みをしていたのは俺は知る由もなかった。

俺の部屋。

ポタポタ……

綾小路「……ふぅ。結構濡れたな。」

自分の部屋に着いた俺は直ぐに洗面所に向かった。

濡れた制服を脱いでからタオルで乱雑に髪と体を無造作に拭いた。寮まで近いとは言え大雨の中、寮まで走って来たせいかだいぶ濡れた。

制服は明日クリーニングに出せば大丈夫だろう。明日は土曜で学校は休みだから問題ない。

綾小路「今度有栖たちと会った時が怖いな…」


唯一の不安要素はそれだ。一緒に帰るという約束をすっぽかした俺に有栖たちが怒ってる可能性もある。


次、会った時どう言い訳をしようか……いや、今は考えないようにしよう。


とりあえず、シャワーでも浴びるか。冷えた身体は温めないと体に障る。俺は新しい着替えを持ってこようと寝室に向かった。すると……


ピンポーン♪


綾小路「ん?」


インターホンが鳴り響いた。何だかとっても嫌な予感がするのは気のせいだろうか?


よし、ここは居留守を使わせて貰……


ピンポーン♪ピンポーン♪ピンポーン♪ピンポーン♪ピンポーン♪


綾小路「……」


俺が出るまで鳴り続ける奴だ、これ。しかも……誰が鳴らしてるか想像出来てしまった。とにかく……ここは出るしかない。


もう、覚悟を決めよう。


俺は朝着ていた部屋着を身に付けて、深く深呼吸をしてから扉を開けた。


ガチャッ……!


綾小路「……はい。」

坂柳「漸く出てきて下さいましたね♪ごきげんよう、清隆くん♪先程振りですね?」

櫛田「えへへ♪ただいま~清隆くん♪」

堀北「ここは貴女の部屋じゃないでしょ、櫛田さん?」

椎名「清隆くんの様子が気になって皆で来ちゃいました♪」

長谷部「きよぽん急に走って帰っちゃうんだもんね~?」

軽井沢「はっくしゅ……うぅ~寒っ!もっと早く開けなさいよ、清隆!」

そこに居たのは……先程まで一緒に居た女性陣だった。やはり、そうだよなー…うん、知ってた。

せっかく俺が、ずぶ濡れになってまで有栖たちと距離を取ったと言うのに……苦労が全て水の泡だ。

なんで俺の部屋に来たんだ?

綾小路「えっと……なんでここに?」

軽井沢「今はそんなの後でいいでしょ。とりあえず中に入れてよ、清隆。あんたのせいでこっちはメッチャ濡れたんだから!」

椎名「そうですね……まずは清隆くんに冷えきった私たちの心も身体も暖めて貰いましょうか//////♪」

なんて暴論だ……お前たちが濡れたのは俺の責任じゃないだろ。

そして、俺の部屋に上がる気満々なのか?

綾小路「あー……その…そんなに濡れたのなら、自分の部屋で着替えれば良いんじゃないか?」

坂柳「……貴方に会うために雨に濡れてまでここを訪れた私たちを追い返すのですか?」

櫛田「清隆くん……入れてくれないの?」

綾小路「……」


俺に上目遣いで問い掛けてくる有栖たち。


全員、雨で制服が濡れているお陰で目のやり場に困る。俺はたまらず視線を上に向けた。


ここで素直に帰ってくれる訳もない。それに風邪でも引かれたら後々面倒だ。だが、密室状態で恵たちと一緒に居るの危険過ぎる気が……


『『『『『『『『ダメ(ですか)?×7』』』』』』』』


綾小路「……いえ、どうぞお入り下さい。」

坂柳「ふふ♪分かれば宜しいんですよ♪さぁ、皆さん入りましょう♪」

有栖の一言で俺の部屋に続々と入る恵たち。真澄と伊吹は有栖とひよりに入れられてたが…

まさか、全員俺の部屋に訪ねてくるとは……想定外だ。

なんでこんなことになってしまったんだ?いや、もうこうなったら『とらぶる現象』が起きないよう祈るだけだ。俺から有栖たちに近づかないようにしよう。俺はそう考えてそっとドアを閉めた……。

















洗面所。

綾小路「俺の服を持ってきた。どれでも好きなの着てくれ。後、タオルも勝手に使ってくれ。」

一之瀬 櫛田 長谷部「「「はぁーい♪」」」

坂柳「着替えたらそちらに参りますね、清隆くん?」

軽井沢「清隆ぜっっったい覗かないでよ//////!」

綾小路「分かってる。」


女性陣に俺の服が入った衣装ケースを渡した。流石に髪とかタオルやドライヤーで乾かせても濡れた制服のままだと風邪を引くからな。


覗くなと恵に言われたが、俺だって命は惜しい。これ以上余計な『とらぶる』はゴメンだ。


俺は直ぐにその場を離れた。


5分後……


綾小路「……こんなものか。」

俺は女性陣が着替えてる間にテーブルを角に退かしスペースを空けて待っていた。

俺の部屋は何も無いが、なにぶん部屋に来ている人数が多い。少しでもスペースを空けておかないと、全員座れないからな。

本当は待っている間にコーヒーの準備とかするべきなんだが……生憎12人分のマグカップ等は無いし、仕方ない。

ガチャッ……!

坂柳「清隆くんお待たせしました//////♪」

椎名「皆さん着替え終わりましたよ//////♪」

綾小路「…………!?」


有栖たちが着替え終わったようで、続々と入ってきた。


俺は有栖たちの方に目を向けた。そして俺は全員の格好を見て固まった。


その格好とは……俺のシャツとYシャツのみを着た状態で俺の元に現れたのだから。


坂柳「清隆くんどうですか?似合ってますか//////?(ふふ♪夢にまで見た貴方の彼シャツ……とても最高の気分ですわ//////♪)」

椎名「清隆くんの匂いがして落ち着きますね//////♪(清隆くんの彼シャツを経験出来るとは……雨に感謝ですね//////♪)」

伊吹「なんであたしまでこんな奴の…//////(あたしは自分の部屋に帰るつもりだったのに……椎名の奴。あーもう!こいつには借りは作りたくないってのに…//////)」

一之瀬「にゃはは……清隆くんの服おっきいね//////?(にゃ~//////♪清隆くんの彼Yシャツが体験出来るなんて~幸せだよ~//////♪)」

櫛田「ほんとほんと♪流石男の子って感じだね//////♪(遂にやったよ……清隆くんの彼シャツデビューだよ、私//////!)」

軽井沢「ま、まぁ?清隆も身長高いから当然なんだけど//////♪(清隆の彼シャツ……最高過ぎるんですけどーーー//////!!!あたしの身体を包むこの感じ……ヤバすぎかも…//////)」

佐藤「わ、私たちにはちょっと大きすぎるね//////?(清隆くんの彼シャツ……私も思い残すことないかも//////)」

松下「た、確かに…//////(なんか流れで私も綾小路くんの部屋に来ちゃったけど……まさか彼シャツ体験出来るなんて//////)」

堀北「凄くスースーして落ち着かないわ…//////(彼の服、思ったより大きいのね…//////何だか落ち着……って私は別に彼シャツとか興味ないんだから//////!)」

神室「なんでこんなことになってんのよ…//////(どうして私まで坂柳に付き添わないといけないのよ//////!?綾小路の服借りるなんて……まぁ、その…嫌な気はしないけど//////)」

長谷部「ふ、ふーん……きよぽんのYシャツってこんな感じなんだ~//////♪(きよぽんの彼Yシャツ……最高だね//////♪女の子の憧れのシチュエーションを体験出来るなんてラッキ~//////♪)」

佐倉「はわわ…この格好恥ずかしいよぉ//////(下着の上から清隆くんの彼Yシャツなんて……恥ずかしいけどスゴく嬉しいよぉ~////////////)」

綾小路「……」


俺のシャツを着ているのが……有栖、ひより、麻耶、松下、伊吹、真澄。俺のシャツを精一杯押さえて下着が見えないようにしている仕草がやけに色っぽい。


俺のYシャツを着ているのが……恵、帆波、桔梗、波瑠加、愛里、鈴音。Yシャツによってある部分がいつも以上に強調されていて凄く魅惑的だ。


しかも、全員スカートも穿いておらず、俺の服のみ着ているだけなので脚を惜しげもなく晒していた。


さっきの濡れ透け状態も十分、目のやり場に困ったが……今の有栖たちの格好の方がより扇情的でアウトな気がする。これ以上、有栖たちを見ないように俺は目を固く閉じて明後日の方向を向いた。


坂柳「ふふ♪目なんか瞑ってどうしたんですか、清隆くん?もっと私たちの姿をちゃんと見て下さいよ♪」

椎名「そうですよ♪どうして顔も背けてるんですか?こっち見て下さい、清隆くん//////♪」

綾小路「無理に決まってるだろ……何で全員、上しか着ていないんだ?そんな格好で男の前に現れたらダメだろ…」

坂柳「安心して下さい♪こんな格好するのは貴方の前だけと決めていますので//////♪」

櫛田「そうそう~♪清隆くんだけに見せる姿だから大丈夫~//////♪」

一之瀬「にゃはは♪私も~//////♪」

うん……そういう問題じゃないんだけどな。

俺なら襲われる心配は要らないとお前らは思ってるかもしれないが、俺だって健全な男子高校生。

そんな格好でうろつかれたら気が休まらない。

堀北「言っておくけど、私たちだって好きでこの格好で居たいわけじゃないわよ。こんな破廉恥な格好…//////」

軽井沢「そうよ!スカートも濡れちゃったんだからしょうがないでしょ//////!」

長谷部「スカートはビショビショってわけじゃないんだけど~……濡れたままだと気持ち悪いしね~」

坂柳「そういうことです。私たちの格好に理解して下さいましたか?ではそちらに行きますね、清隆くん♪中に入らないと私たち風邪引いてしまいますから。」

有栖たちはリビングに入ってきた。そして、俺に近付こうとしてきた(俺は目を閉じてるので気配で察した)だが、その格好で近付かれるのは非常に困る。

今『とらぶる現象』が起きてしまったら確実にアウトだ。

こうなったら近付かれないようにするしか……何とか言葉を纏めて説得を…。

綾小路「待ってくれ……今、俺に近寄るのはダメだ。いつ……その…俺が間違いを犯すか分からない(とらぶる現象がという意味で)」

『……え////////////!?×12』

俺は目を固く閉じて、有栖たちを手で制止して言った。

だが、俺自身かなり焦ってるせいか言葉が上手く出なかった…

伊吹「ちょっはぁ//////!?ま、間違いを犯すって……急になにいってんのよ、バカーーー//////!!!」

堀北「そうよ!貴方自分が何を言ってるか分かってるの//////?」

神室「ま、間違いとか意味分かんないんだけど…ほんとなにいってんのよ//////!」

俺の言った言葉に急に狼狽え始めた恵たち。気配で全員の脚が止まったのが分かった。

良く解らないが……今、説得を試みるなら今しかない!(今の状況に焦っているせいで恵たちが勘違いしてることに気付いてない)

綾小路「俺は恵たちに警鐘を鳴らしてるんだ。今、その格好で俺と居ると危険だ。だから俺に近寄るな。」

一之瀬「き、危険…//////?」

佐藤「ふえっ//////!?」

佐倉「はわわ…//////」

軽井沢「そ、それはつまり……清隆があたしたちに何しでかすか分からないって意味…//////?」

松下「あ、綾小路くんに限ってそんなわけ…//////」

恵が代表して俺に質問してきた。

まぁ……いつ『とらぶる現象』が起きるか分からないからな。そういう意味では何が起こるか分からない。

ここは肯定しておこう。

綾小路「まぁ、そうだな。」

軽井沢「たうわ////////////!?」

椎名「まぁまぁまぁ//////♪」

長谷部「き、きよぽんも男の子だもんね//////?私たちがこんな格好してたらそりゃあね……あはは//////」

綾小路「とにかく、俺は恵たちに何もしないよう心掛ける。部屋の隅に目を瞑ってじっとしてるから制服が乾いたら速やかに俺の部屋を出ろ。いいな?」

『ひゃい…////////////×6』


何とか恵たちに納得して頂けて良かった。1つ気掛かりなのは……恵たちが途端に大人しくなった事とシャツの裾を直すような音が聴こえた事だが…まぁ、いい。


これだけ忠告すれば近寄って来ないだろう。後は俺が女性陣から距離を取れば全てが丸く収まる。


俺は目を瞑って手を挙げながら後退りした。一見、俺の行動は恵たちから見たら馬鹿っぽく映るだろうが背に腹は代えられない……俺はゆっくりと後退りして進んだ。すると……


ギュッ❤️ギュッ❤️


綾小路「……ん?」


急に俺の胸元に柔らかい感触と良い香りが伝わった。


この温もりと感触……まさか……いや、そうとしか考えられないよな?俺は目をゆっくり開けた。


坂柳「ふふ♪清隆くんに抱きついちゃいました//////♪」

椎名「捕まえましたよ、清隆くん//////♪」

綾小路「…………!?」

『な!?!?×10』

視線を下に落とすと……有栖とひよりが俺に抱きついている様子が広がった。

有栖たちの距離感を掴めていなかったとは言え、二人の予想外の行動に俺は酷く動揺した。

坂柳「ふふ♪貴方の胸に身を預けるのはとても安心しますね//////♪」

椎名「本当ですね//////♪」

軽井沢「ちょっとちょっとーーー!!!なに清隆に抱きついてんのよ!!!」

恵の大きな声が俺の部屋全体に広がった。

その声にハッとした俺は直ぐに二人に離れて貰うように行動に移った。

綾小路「そうだ。何で二人ともこんな真似を……話し聞いてなかったのか?今、俺の近くに居るのは本当に危険…」

坂柳「……別に私は貴方になら何されても構いませんよ//////?ですから、どうぞ遠慮なく間違いでもなんでも犯して下さい//////♪」

椎名「私もです//////♪どうぞ清隆くんのお好きなようにして下さい//////♪」


有栖とひよりは猫撫で声で甘えるように俺の胸元に身を預けてきた。


二人の言い方がとてもイヤらしく聴こえたのは俺の気のせいだろうか?


ん?俺はもしかして……とんでもない言い間違いを恵たちにしてしまったのか(漸く事の重大さに気付いた)


堀北「な、なにバカなこと言ってるの貴方たち//////!?」

坂柳「馬鹿な事とは些か失礼ですね?私は本心からそう想っておりますよ?」

一之瀬「そ、そういうのはもっと段階を踏んでからじゃないとダメなんじゃないかな……//////?」

軽井沢「そういう問題じゃないでしょ!!!とにかく二人とも早く清隆から離れなさいよ!」

坂柳「それは不可能かもしれません//////何故なら……私の身体が離れてくれないみたいなので//////♪」

椎名「私もです//////♪清隆くんの胸元には不思議な引力があるみたいですね~♪」

軽井沢「こ、この……!」

坂柳「そんなに羨ましいのなら、あなた方も此方に来たらどうです?その格好で彼に甘えられる勇気があるのなら……ですが♪」

俺に擦り寄りながら、恵たちを煽る有栖たち。

そして、俺の方に睨みを効かせる恵たち。

これはもう……取り返しのつかない状況まで転がり落ちてしまったのではないだろうか?

軽井沢「い、言われなくても……行くわよ//////!」

佐藤「わ、私だって…//////!」

松下「私も二人を援護するよ~♪」

櫛田「私も清隆くんに甘える~//////♪」

一之瀬「私も清隆くんに甘えたいなぁ~……にゃはは//////♪神室さんも行こ!」

神室「ちょっと…//////!?」

長谷部「私たちもきよぽんにまた抱き締めて貰いに行くよ~愛里//////♪」

佐倉「ふ、ふえぇっ//////!?」

堀北「私は彼に甘えるとか馬鹿な考えなんてないけど……貴女たちを彼から引き剥がす為にそっちに行くわ//////」

伊吹「あたしもそんな気更々ない。だけど、ここで退いたら負ける気がするから行く。」

綾小路「お、おい……」


有栖たちが煽ったお蔭で恵たちは俺の方に鬼の形相で向かってきた。


何だか……とっても嫌な予感がする。今日起こってきた『とらぶる現象』で一番ヤバい気が……と思った次の瞬間!


ガッ……!


軽井沢「たうわ!?」

佐藤「ふぁっ!?」

松下「あっ!」

櫛田「わっ!?」

一之瀬「にゃあ!?」

神室「えっ!?」

長谷部「うわっと!?」

佐倉「ひゃっ!」

堀北「きゃっ!?」

伊吹「はっ!?」

綾小路「うおっ!」


恵たちは絵に描いたような躓き方で俺の方に倒れ込んできた。


恵たちの倒れる瞬間が、まるでスローモーションのように視えた俺は受け止める格好が取れず(有栖とひよりが俺にくっついてるせいもあるが)


ドシーン!!!ムニュッ×10❤️


恵たちに覆い被さられた俺は後ろに倒れ込んでしまった。同時にとても柔らかい感触と良い匂いに包まれた。


『……////////////!!!×10』

綾小路「…………!?」


俺はゆっくり目を開けて確認すると……女性陣が俺の周りを囲むように倒れていた。


俺の胸元に有栖、ひより、恵。右腕側に帆波、桔梗。左腕側に波瑠加、愛里。右脚側に鈴音、伊吹。左脚側に真澄、麻耶、松下。


今の衝撃でシャツやYシャツが捲れてあられもない姿になっていた。そして、全員と眼が合って何秒かした後……


軽井沢「な、なにあたしたちの方見てるのよーーー!清隆のエッチ、スケベ、へんたい////////////!」

佐藤「あうぅ…//////」

松下「綾小路くんとこんなことになっちゃうなんて…//////」

櫛田「清隆くんに押しつけちゃってるよぉ…//////」

一之瀬「にゃはは……ちょっと恥ずかしいかな…//////?」

神室「さいあく…//////」

長谷部「あはは♪またきよぽんに助けられちゃったね~//////♪」

佐倉「……ぷしゅ~//////」

堀北「こんな格好で自分から身体を押しつけるなんて……痴女じゃない…//////」

伊吹「……//////」

椎名「やはり、皆さんも清隆くんに甘えたかったんですね//////♪やり方は少々強引の様ですが…」

坂柳「ふふ♪清隆くんにとって眼福なのは間違いないですね//////♪もう少しこのまま余韻に浸っていましょう//////♪」

綾小路「……」


女性陣が俺の上に乗っかったまま、様々な反応を見せていた。


数分後、俺は女性陣に正座を強いられてこっぴどく叱られた後(主に恵、鈴音)女性陣に許しを貰えた。


この一件以降『とらぶる現象』は起きなくなったが……代わりに女性陣からの身体的密着が凄く増えたので精神衛生上困る事態になってしまった。


そして……これからは占いだからと馬鹿にするのはもう止めようと固く心に誓ったのだった。
 
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