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綾小路くんがハーレムを構築する話

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綾小路くんと15人の子供たち
  未来からやって来た少女たち

AM6:45


カーテンから差し込む日差しは酷く暖かい。こんなにも暖かいと二度寝をしたくなる。そのまま、もう一度目を閉じて眠りの世界に入りたいところだが……実際はそうもいかない。今日も普段通り学校がある。正直言うと、憂鬱だ…。


綾小路「フッ……この俺が憂鬱と表現するのはらしくないか。」


俺はベッドから降りて、ぐっと伸びをしてからカーテンを開けた。まさか、この俺が学校に行くのが面倒だと思う感じるとはな。少しは『普通』の学生らしくなってきたのかもしれない。これで、もっと穏やかに過ごせれば文句は無いんだが……それは当分、期待出来そうにない。


俺がこの学校に居る限り、あの男や月城が俺を退学に追い込もうと仕掛けてくるのは止めないだろう。なんせ、今回は下級生を使って俺を貶めようとしてくる程だ。まぁ、元より手段なんか選ばない奴等だが…


やれやれ……いつになったら『普通』に過ごせる日がくるのやら。さて、朝からマイナス思考になるのは善くない。顔でも洗ってスッキリしよう。


ガラッ……


ななみ『あー!!!みんなーパパおきたよー♪』

ちなつ『ほんとうだ~おはよーパパ♪』

あおい『パパはやっぱりカッコいいね♪』

ゆい『パパ~だっこして~♪』

まき『ずるいずるい~わたしも!』

クリス『ここがお父様が高校時代過ごしたお部屋ですか♪』

はるき『きよぽんパパのへやなんもないねー?』

あかり『う、うん。でもおとうさんらしいね?』

ひまり『お父様のお部屋には書籍が無いんですね…残念です。』

かすみ『せまっ…』

ちか『ほんと、せまいねー?いまとぜんぜんちがう。』

さな『ちか、はしゃぐな。』

みく『なんもないじゃん、つまんねーの。』

つくし『なんか、おもしろいものないかなー?』

みすず「あなたたち静かにしてくれない?』

綾小路「…………!?」


ピシャッ!!!


俺は今の光景に驚き過ぎて、声も出さずに勢いよく扉を閉めた。人間、衝撃の光景を目の当たりにしたとき、声も出ないというのは本当なのかもしれない。


俺は何気なく、いつも通り洗面所に向かったら……そこには年端もいかない『少女たち』が居た。


しかもその『少女たち』は……恵たちをそのまま小さくしたような見た目だった。


…………なんだ、今の?俺の眼に何か異常を来しているのだろうか?


綾小路「…………うん、俺は疲れてるんだ。幻覚を視るなんて想像以上にヤバい。一度、横になろう。うん、それがいい。」


俺は手を頭に添えてベッドに横になった。……熱は全く無いな(元より風邪など1度も引いたことないが)


しかし、幻覚を視るほど疲れてるなんて……しっかり身体を休めないとダメだな。よし、寝よう。登校時間ギリギリまで寝れば、幾分か回復するだろう。


俺は目を閉じて、自分を落ち着けようと思っていたら…


ガラッ……!


ななみ「あれ~パパどうかしたの?』

あおい「パパぐあいわるいの?」

ゆい「えーーーたいへんだー!!!おいしゃさんよばないとー!」

ちか「おかあさんをさがしにいかなきゃー!」

みすず「落ち着いて。お父様は私たちが居ることに混乱してるだけよ。」

クリス「そうです。私たちのお父様は風邪を引くほど柔ではありませんわ。」

綾小路「……」


そんな俺を他所に『少女』たちはベッドの周りを囲んで話しかけてきた。しかも、ずっと『パパ』とか『お父様』と言ってくる。幻覚にしては凄く少女たちが立体的だなー……まるで本当にこの場に居るかのようだ。


……そうか、これは夢だ。じゃなきゃ、こんなの絶対に可笑しい。寮で一人暮らしの俺の部屋に年端もいかない少女たちが存在してる状況なんて有り得ない。


こんな夢を見るなんて自分が心配になる。よし、さっさと目を覚ませ俺。学校が憂鬱だからと言って、いつまでも寝るな俺。いつもの日常に戻ろう俺。


みく「おい!さっきからむしすんなよ、とうさん。おりゃっ!」

ちなつ「あー!みくちゃんだめだよー!パパをけったら!」

まき「パパだいじょーぶ?」

みく「いってー!なんでこんなにかてーんだよ~」

かすみ「そりゃ、かたいにきまってるじゃん。」

みすず「はぁー……蹴った本人が痛がってたらせわないわね?」


俺は目を瞑って極力やり過ごそうとしたら、伊吹似の少女が脛を蹴ってきた。全く痛くは無かった(むしろ、蹴った本人が痛がってる)


いや、それよりも今は別の心配が襲った。何故なら……蹴られた衝撃がやけにリアルだったから…。


まさか……これ……現実なのか?よし、こういうときは落ち着いて深呼吸だ。その後、夢かどうか確認しよう。


俺は大きく深呼吸してから自分の頬を力一杯引っ張った。それはもう引きちぎれそうになる勢いで。夢だと思いたい一心で引っ張った。しかし……


綾小路「……痛い。」

はるき「あはは♪きよぽんパパがへんなこうどうしてる~」

つくし「ほんとだーおっかしい♪」

あかり「おとうさんほっぺたあかくなってるよ?」

ななみ「わたしがほっぺたナデナデしてあげる~♪」

あおい「わたしもわたしも~♪」

その可能性は一瞬で塵と化した。

限界まで引っ張った頬はヒリヒリと痛い。この俺がこんな古典的な方法で夢か確かめる日がくるとは思いもしなかった。

そして、少女たちは俺の頬を優しく撫でてきた。触られた感覚もバッチリある。これはもう……

綾小路「夢ではない……のか?」

クリス「そうですよ、お父様。これは夢ではなく現実です。」

ひまり「お父様はそのように狼狽するのですね。とても新鮮です♪」

俺は観念したようにそう呟く。

有栖似の少女とひより似の少女が追い打ちをかけるように俺に言ってきた。夢じゃないと面と向かって言われると精神的にクる……これはどんな状況なんだ?

とにかく、一回起きよう……。

綾小路「ふぅー……うおっ!」

ななみ「パパいたいのなおったー?」

あおい「なおったにきまってるよ!」

ゆい「じゃあ、たかいたかいしてーパパ!」

まき「わたしだっこがいい!」

はるき「きよぽんパパ、わたしにも~♪」

ちか「わたしも~!」

ベッドから起き上がろうとしたところで少女たちに抱きつかれた……いや、突撃されたと言ったほうが正しいか。

勢いが凄かった為、変な声が出たが……少女たちは上手くキャッチできた。

クリス「皆さん、お父様が困惑してらっしゃいますよ?一度、離れて下さい。」

ゆい「えー!しょーがないなー。あとでちゃんとぎゅーってしてね、パパ?」

あおい「ちっ…」

はるき「きよぽんパパーあとであまえさせてねー♪」

有栖似の少女の一言で俺から離れていった。まぁ、俺の周りを囲んだままだが…

自由になった俺は起き上がり、ベッドの縁に座った(なるべく少女たちの視線に合わせる為)

これなら全員見渡せるな……よし。

綾小路「聞きたい事があるんだが……」

ゆい「はいはーい!じゃあ、わたしがパパとおしゃべりするー!」

まき「わたしもしゃべりたーい!」

あおい「わたしもー!」

はるき「きよぽんパパがききたいことならなんでもこたえるよー♪ねぇーあかり?」

あかり「うん!わたしもがんばる!」

みく「とうさん、そんなことよりしょーぶしよ、しょーぶ!」

ちなつ「パパはそんなひまないよ、みくちゃん。」

俺が質問しようとしたら一斉に少女たちが話し始めた。ある者は俺の足に巻き付いて喋り、ある者は俺の太腿に身を乗り出して喋り、ある者は手を挙げて全力でアピールしていた。

余りにも一斉に喋り出すから、誰から耳を傾ければいいのか混乱する……まるで聖徳太子の気分だ…

綾小路「えっと……」

みすず「ちょっと!あなたたちが一気に喋ったらお父様が困惑するじゃない。私が答えるからあっちに行ってて!」

ゆい「なんで、みすずちゃんにそんなこといわれなきゃなんないのー?わたしがパパとおはなしするから、みすずちゃんこそあっちにいって!」

みく「そうだそうだ!あたしはおまえのさしずは、うけないぞ!」

はるき「そんないいかたされたら、わたしもすなおにきけないな~」

あおい「みすずちゃんだけ、パパとおはなしするのはずるい!」

ちか「わたしだってパパとおはなししたいもん!」

ななみ「けんかはダメだよー!」

さな「そうだぞ、おちつけー。」

更には喧嘩までしだす少女たち。その様子はさながら子猫同士の縄張り争いのようで非常に可愛らしいが……対応に困る。

俺は子供と話した経験は皆無に等しいから
どうすればいいのか分からないんだが…

クリス「はい、皆さん、落ち着いて下さい。今は争ってる場合ではありませんよ?」

ひまり「焦らなくてもお父様にお話しする機会はあるんですから冷静になりましょう、皆さん。」

「「「「「「………………」」」」」」

二人の少女によって一瞬で静まった。

この二人が少女たちのリーダーのような役割を担っているのだろう。

まるで有栖とひよりを彷彿させるような感じだ……雰囲気も容姿も瓜二つだから尚更そう思う。

クリス「失礼しました、お父様。皆さんこの時代のお父様に会えたのが嬉しくて仕方ないんです。ご無礼をお許し下さい。」

綾小路「いや、大丈夫だ、うん。」

淑女の如くスカートをはためかせて俺に頭を下げてきた。

この年齢でこの対応力……末恐ろしいな。

とにかく、この流れを利用して本題に入らせて貰おう…

綾小路「……お前たちは何者だ?」

クリス「申し遅れました。私は綾小路クリスと申します。私たちは未来からお父様に会うためにやって来ました♪」

綾小路「…………未来?」

クリス「はい、未来です♪」

綾小路「あー……つまり…」

クリス「私は貴方の娘ですわ、お父様♪」

綾小路「……」


俺は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた気がした。だって、そうだろう……この少女たちは『未来』からやって来たと言ったのだから。


うん……余りにも衝撃過ぎてちょっと言葉が出ないなー……予想の斜め上どころか天地がひっくり返ったような気分だ…。


『未来』の俺の娘って……待てよ?じゃあ、まさか……他の少女たちも…


クリス「ついでに言わせて頂きますと、ここに居る皆さんも貴方の娘ですわ、お父様♪」

ゆい「はいはーい!私は綾小路ゆいだよーパパ♪」

ななみ「にはは♪私は綾小路ななみでーす♪」

あおい「綾小路あおいー♪」

まき「綾小路まきー!」

ちなつ「綾小路ちなつだよー!」

はるき「綾小路はるきだよ、きよぽんパパ~♪」

あかり「あ、綾小路あかりです。」

ちか「綾小路ちかでぇーす!」

つくし「綾小路つくし♪」

さな「……綾小路さな。」

かすみ「……綾小路かすみ。」

みく「綾小路みく!」

みすず「綾小路みすずです、お父様。」

ひまり「綾小路ひまりと申します♪」

クリス「年齢は皆さん同い年の4才です♪以後お見知りおき下さい、お父様♪」


俺が聞く前にクリスが笑顔で言った。そうかー……全員綾小路姓なのかー……うん、それは凄いなー……じゃあここに居る全員未来の俺の子供なのかー…。


……いやいやいやいや、ちょっと待て。一体何がどうなったらそんな事になるんだ?未来の俺の家系図はどうなってるんだ?あの男はそれを許したのか?


まずいな……思考が追いつかない。


こんなにも思考が固まった経験は生まれて初めてだ……『ホワイトルーム』に居たときですら、そんな経験は無かったと言うのに。今の俺は鳩が豆鉄砲を食らったような間抜けな表情をしているに違いない。


綾小路「…………」

ななみ「たいへん、たいへん!パパがまったくうごかなくなっちゃったよ?」

ゆい「おーい、パパー?」

みく「なんだよ、とうさんまたボーッとしてんのか?」

ひまり「みくさん。お父様は今、色んな角度から物事を考えてる最中ですから邪魔してはいけませんよ。」

まき「ひまりちゃんのいってることむずかしくてわかんないや…」

ちなつ「いまはパパのかんがえがまとまるまでまってればいいってことだよ。」


落ち着け、俺……一旦、状況を整理しよう。ここに居る全員は未来からやって来た4才の俺の子供。


しかも、15人……未来の俺は何をしでかしたんだ?いや、一旦それは後で聞くとして…


総合的に今の状況を鑑みると『未来』から来たっていうのは強ち嘘じゃ無さそうだ。


綾小路「俄に信じがたいが……今はお前たちの事を信じるとしよう。そうでなければ色々説明がつかないことの方が多いからな。」

クリス「瞬時に物事を理解する能力……流石は私たちのお父様ですわ♪」

ひまり「お父様なら当たり前ですね。」

ななみ「パパがしんじてくれたー♪」

ゆい「やったー♪うれしー!」

まき「わぁーい♪」

あおい「こんなかんたんにしんじてくれるなんてさすがはわたしたちのパパだー!」

あかり「そ、そうだね!」

みく「ほんとにしんじてんのかよー?てきとーなこといってるだけじゃないのか?」

はるき「きよぽんパパはそんなむせきにんなこといわないよ、みくちゃん。」

みすず「そうよ。私たちのお父様はそんな愚かな人ではないもの。」

ちか「なんかむずかしいけどパパはスゴいってことだよね、さなちゃん?」

さな「そうだな。」

つくし「パパがおどろくかおスゴくおもしろかったなぁ~♪」

かすみ「たしかにおもしろかった。」


実際、少女たちの言葉を全て鵜呑みにするのは早計かもしれない……だが、決して投げやりになってる訳では無い。信じてる理由はちゃんとある。


この部屋に少女たちが居る状況がどうあっても思いつかない点だ。高度育成高等学校の寮の部屋に幼い子供が忍び込むのは不可能。入るのにも部屋のカードキーが必要だし、第一15人もの子供が寮付近を彷徨いていたら監視カメラに映らないわけがない。


今の時刻は8時前。現時点でそんな騒ぎになっていないということは……俺以外、少女たちの存在は知らないという何よりの証拠。


そうと決まれば……周りにバレないよう、慎重に対応して話しを聞かないといけない。まずは……どうやって『未来』から来たのか?ここに来た理由と合わせて聞いてみるか。


綾小路「色々話したいことがあるんだが…」

ゆい「よーし!じゃあ、こんどはママにあいにいこー♪」

まき「さんせーい!」

あおい「みんなー!ドアはこっちだよー!」

ちか「わたしもママさがすー!」

はるき「わたしたちもママさがしにいこー!」

あかり「え、でもいいのかな?」

つくし「わたしもママのおどろいたかおみたいからいくー!」

みく「かあさんがおどろくかおか……おもしろそうだな。」

かすみ「ひまだからわたしもいこっと。」

ちなつ「わたしもいくー!」

さな「こら!かってにうごくな、もどってこい!」

ななみ「みんなー!パパのそばをはなれちゃダメだよー!」


ドタドタドタ……ガチャッ!!!


俺が話す間もなく寝室を飛び出て、12人の少女たちは母親に逢いに行くと言って部屋を出て行った。


ってことはこの近くに居るってことなのか?一体それは誰なん……ん?ちょっと待てよ……これって相当まずくないか?


子供たち見つかる→大騒ぎになる→俺、退学。馬鹿みたいなフローチャートだが、そうなるのは間違いないよな?


綾小路「……まずい。早く後を追わないと俺が終わる。」

ひまり「皆さんお元気ですねー?」

クリス「あらあら♪これは大変ですわ♪」

みすず「そんな呑気なこと言ってられないわ。」

ひまりとクリスは出ていくゆいたちを傍観していた。単にゆいたちのように活発なタイプではないのかもしれない。

とにかく、今は早く後を追わないとな……

クリス「お父様、私たちも連れてって下さい。」

ひまり「ゆいさんたちを止めるには私たちが必要ですよ、お父様?」

綾小路「……分かった。」

流石に幼い子供だけを置いてくのは危険だからな……連れてくしかない。俺は肯定してから、烈火の早さで全ての準備を整えて玄関を出た。

急いでいるので俺は右手でクリスを左手でひまりを抱えて、みすずと共に階段で降りた。
寮のエントランス。

ザワザワ……

俺が急いで下まで降りると、時すでに遅し……下は騒ぎになっていた。

男子生徒『おい!さっきのあれって子供だったよな?』

男子生徒『なんでこんなとこに居たんだ?迷子か?』

男子生徒『こんな朝早くから迷子って有り得ないだろ。』

女子生徒『でも、なんかお母さんを探してなかった?』

女子生徒『私もそう見えたー!先生呼んどく?』

俺は周りに気づかれないように、こっそり様子を伺った。

そこかしこから聞こえる生徒たちの疑問の声。ここから見る限りだと、ゆいたちの存在は確認出来ない。

学校に向かって行ったのか?迷子になってないといいんだが……

みすず「はぁ……あの子たちは、どうしてこうも面倒ばかりかけるのかしら?」

ひまり「今更そんなこと言っても遅いですし、今は皆さんを見つけるのが先ですね。」

綾小路「……そうだな。」

クリス「では急ぎましょう。みすずさんもお父様に乗って下さい♪その方が早いですから♪」

乗るって俺は車扱いかと内心思ったが……クリスの言う通りそっちのが早い。

俺はしゃがみ込んで、みすずに背中に乗って貰うように誘導した。みすずは直ぐに飛び込んできた。

そんなに俺に乗りたかったのだろうか?

綾小路「しっかり、掴まっていろよ?本気で走るから振り落とされないようにな?」

みすず「は、はい!……きゃっ!」


俺は、みすずが言い切る前にフルスピードで走った。あっという間にエントランスを抜けて、通学路を走る。


他の生徒たちが登校してる時間の為、走ってる俺は大変目立っていた。全員、俺の走ってる姿に驚いていた。


驚いてる理由は絶対、子供3人を抱えて走ってる俺の姿だろう……これ、どう言い訳すればいいのやら…


クリス「速い、速いですお父様♪」

ひまり「お父様!もっと速く走って下さい♪」

みすず「す、すごいです!」

俺が走ってるスピードに感動してるのか、さっきまでの大人びた雰囲気はなく、3人とも子供みたいにはしゃいでいた。

いや、まぁ、子供なんだが……他の子に比べると理知的な雰囲気を持ってるからな、この3人。

俺は楽しそうな3人とは裏腹にこの事態をどう乗り切るか考えながら、学校に向かって走った。















学校内。

ザワザワ……

学校に着いた俺たちは、自分の教室の階に到着した。すると、案の定人集りが出来ていた。

ゆい「ママどこー!へんじしてー」

まき「ひといっぱいだねー?」

ちなつ「そうだね~」

あおい「きっとこのなかにいるよ!」

はるき「どこのクラスかなぁ?」

あかり「やっぱり、おとうさんとくればよかったかな…」

みく「ふん!とうさんなんかいなくても、じりきでみつけてやるよ!」

つくし「そのいきでがんばろ!」

かすみ「どこにいんだろ…」

ちか「ママー!」

さな「ちか、しずかにしろ!まわりにめいわくがかかるだろ?」

ななみ「みんなー!パパのとこにもどろうよー!きっとしんぱいしてるよ?」

この階全体に聴こえるくらいの声量で話してるのは、ゆいたち。

とりあえず、迷子になっていなかったようで安心したが……すっかりと注目の的になってしまっていた。

周りに居る生徒たちの反応はと言うと…

須藤「おいおい?なんでこんなとこにガキがいんだよ?」

池「俺が知るからよ!にしても全員可愛いな~!」

神崎「……何故学校に子供が?」

柴田「先生か誰かのお子さんとかじゃねーの?」

橋本「へぇーこいつは面白い。これはこれで退屈がしのげるってもんだ。」


須藤や池を筆頭に男連中は不思議そうに見てるだけで干渉はしていない。一方、女子連中も遠目から「可愛い」と連呼してはしゃいでるだけに過ぎなかった。


触らぬ神に祟りなし……自分から揉めごとに突っ込もうとする変わり者はそう居ない。俺だって関係者じゃ無かったら今頃、傍観していた一人に過ぎなかっただろう。


まぁ、それはそうとチャンスだ。今なら、俺が先生の元に連れてくと言って子供たちを連れ出しても不自然には見られない。俺が急に子供の相手をし出したら気持ち悪がられると思うが…そんなの関係ない。


俺は3人と一緒に、ゆいたちの所に向かおうとしたその瞬間……


一之瀬「こんにちは~♪皆、可愛いね~♪ちょっと、お姉さんたちとお話し出来るかな?」

櫛田「皆どこから来たのかな?お父さんとお母さんは何処か分かる?」


桔梗と帆波が先に、ゆいたちと接触してしまった。二人とも怖がらせないように目線を合わせて笑顔で話し掛けていた。


しまった……こういう時、いの一番に手を差し伸べるであろう人物たちを忘れていた…。とにかく、ゆいたちが可笑しな事を言う前に無理矢理にでも連れ出さなければ!


すると、ななみたちが……


ななみ「あー!!!ママー!」

あおい「ほんとだ、ママだー!」

一之瀬「にゃにゃ?ママ!?」

櫛田「ふぇっ!?わ、わたし?」

綾小路「……は?」


俺が、ゆいたちの元に着いた途端……ななみとあおいがとんでもないことを言った。それはもう廊下中に聴こえるくらい大きな声で。


今、二人は帆波と桔梗に向かって『ママ』って言ったんだよな?


俺が『パパ』で帆波と桔梗が『ママ』って……つまり…


あおい「あ、パパー!みてみて~ママみつけたよー!」

ななみ「ほんとだ、パパだー!わたしたちをおってきてくれたの?わぁーい♪」

綾小路「……」

一之瀬「き、清隆くんがパパ//////!?」

櫛田「え?え?それで私たちがママ?ど、どういうことー//////!?」


帆波と桔梗は真っ赤な顔をして座り込んでしまった。俺も今日2度目となる、衝撃を受けたので危うく腰抜かしそうになった。


確かに二人とも帆波と桔梗の面影あるなと思ってたが……ん?


ちょっと待てよ……それじゃあ、ゆいたちの母親って……もしかして…


軽井沢「うわっ!清隆の周りにちっちゃい女の子が学校に居るんだけど!?」

佐藤「えぇーなんで!?」

松下「ほんとだ~びっくり!」

長谷部「おやおや~きよぽんが女の子たちと戯れてるね~?これはお灸が必要かなぁー?」

佐倉「お、おはよう清隆くん!その子たちどうしたの?」

神室「朝からうるさっ…」

坂柳「おはようございます、清隆くん♪この騒ぎは貴方が一枚噛んでるのですか?ふふ♪」

伊吹「つか、人多っ!邪魔なんだけど…」

椎名「何かあったんですかね?寮の中でも騒ぎがあったようですが…」

堀北「……一体何の騒ぎ?」

星之宮「きゃ~可愛い♪この子たちね~迷いこんだって言う子たちは♪」

茶柱「……騒ぎの原因はあれか。」

朝比奈「なんか2年のクラスの階に子供が迷いこんだって話しを聞いてここに来てみれば、本当にいたんだね~?可愛い♪」

綾小路「!!!」


俺は声のする方を恐る恐る振り向いた。今、間違いなく来て貰ったら困る一団が登場してしまった。


ゆいたちにとっては『最高』の俺にとって『最悪』のタイミングだろう。


そして……ゆいたちの反応は…


ゆい「あー!!!ママたちだー!」

まき「やったー!わたしのママもいるー!」

ちなつ「まだ、とうこうしてなかったんだねー?」

はるき「ほんとだーわたしとあかりのママもいるー♪」

あかり「よかった!」

みく「かあさん、みっけー!」

かすみ「ふーん、いまきたんだ。」

ちか「ママいたー!!ママいたよ、さなちゃん!」

さな「うれしいのはわかるが、あんまりはしゃぐな、ちか。」

つくし「きてくれてよかった~♪じゃなきゃさがさないといけなかったからねー」

クリス「お母様……お綺麗です♪」

ひまり「私のお母様もいました♪」

みすず「お、お母様?まだ心の準備が…」


ゆいたちの嬉しそうな声が廊下中に大きく反響した。


そして、ゆいたちはそれぞれの『母親』に甘えるよう抱きついていった。


俺と一緒に居た3人も『母親』の登場が嬉しかったようだ。抱きつくまではいかなかったが、すり寄るように近づいていった。


軽井沢「ちょっ!急に飛び込んで来ないでよ……へっ?てか、あたしがママ?」

佐藤「えぇーわ、私も?」

松下「はい?私がママ?」

長谷部「おっとと?これは一体何事なのかなぁ?」

佐倉「ふぇっ…//////?」

伊吹「……は?母さん?ちょっ!なんでくっついてくんのよ?」

神室「わ、私?」

坂柳「おや?これは一体どういうことでしょうか?」

椎名「お母様と言うのは私の事ですか?」

堀北「お、お母様?わ、私が?急に何を言ってるのこの子たち!?」

星之宮「わ、私たちのことママだってよ~サエちゃん?」

茶柱「……な、何をバカなことを言ってるんだ、この子たちは!?」

朝比奈「え?私もなのー?」

綾小路「やっぱり……そうなのか…」

恵たちは戸惑いながらもゆいたちを受け止めていた。いや、受け止めたと言うよりそうせざるを得なかった感じか。さっき俺が突撃された時と状況が酷似している。

無情にも俺の勘が当たってしまった……ゆいたちの『母親』は恵たちだった。元々、恵たちを小さくしたような見た目で似すぎているとは思っていたが…

いや、それにしても……恵たちはともかく、先生たちとの間にも子供って…

軽井沢「ちょ、ちょっと、清隆!これって一体どういうことなのよー//////?」

堀北「分かるように説明して頂戴//////!」

伊吹「そうよ!あんたがこの子たちに変なこと吹き込んだんじゃないでしょうね!」

椎名「やっぱりと言うのはどういうことでしょうか、清隆くん?」

一之瀬「お、おち、落ち着いてー」

櫛田「そ、そそ、そうだよ//////皆、落ち着いてー!」

長谷部「きょーちゃんたちが落ち着きなよ~」

ゆいたちに抱きつかれたまま、恵たちは問い詰めてきた。それはもう、凄い剣幕で…

落ち着いていられないのは良く解る。出会ったばかりの女の子に『ママ』なんて急に言われたらテンパるに決まってる。

ゆい「パパをいじめちゃダメだよー!ママ!」

「「「「「「「「パパ?」」」」」」」」

ゆい「そうだよー!私たちのパパ!ねーみんなー?」

「「「「「「「「うん♪」」」」」」」」

俺たちの様子を見ていた、ゆいが恵たちを止めた。満面の笑顔で『パパ』と言いながら、他の子たちに返事を求めて全員が楽しそうに笑った。

そして、恵たちは全員ハモるように『パパ』と言う単語に反応して固まってしまった。

何秒か固まった後……

「「「「「「「「えーーー!?(はぁーーー!?)」」」」」」」」

ゆいたちよりも大きな声が廊下中を襲った。

軽井沢「き、清隆がパパであたしがママって……なんなのよ、それー//////?」

佐藤「な、何がどうなって…//////」

松下「え、えぇ//////?」

長谷部「あ、あはは…ちょっとびっくりだね//////?」

佐倉「清隆くんがパパで私が……あわわ//////」

伊吹「そ、そんなん信じられるわけないでしょ//////!」

神室「そうよ……わ、私と綾小路がどうなったらそんな関係になるってわけ//////!?」

坂柳「彼とはいずれそうなる運命だと思ってましたが……驚きですね//////♪」

椎名「清隆くんと私の子ですか//////♪」

堀北「わ、私と彼の子供って…冗談でしょ//////?」

朝比奈「あはは、急展開すぎてお姉さんちょっとついてけないなぁ…」

星之宮「綾小路くんがパパだなんて……サエちゃんいつの間に綾小路くんとそんな間柄になってたのよー!?」

茶柱「そ、そんなことするわけないだろ//////!子供の言うことに一々反応するな!」

綾小路「……」

恵たちの阿鼻叫喚が渦巻く中、俺は廊下から観える景色を眺めて現実逃避していた……

この日を境に俺の目指していた『普通』とは酷くかけ離れた日常を送ることになる。

果たして、俺は無事に乗り切れることが出来るのだろうか?今の俺には知るよしもない。


 
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