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馬鹿息子

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第一章

                馬鹿息子
 亀吉は江戸のそこそこ大きな店の三男坊である、兄二人は真面目に家業に励んでいたが彼はというと。
「お前今日もか」
「今日も行くんだな」
「当たり前だろ」
 飄々とした剽軽そうな顔で仲間達に話した、髷は歪み服は今の江戸の流行りのものを着崩して着ている。
「金があったらな」
「吉原か」
「そっちに行くか」
「それで遊ぶんだな」
「ああ、そしてな」 
 亀吉は笑って話した。
「女抱いて酒飲んでな」
「やってくるんだな」
「今日も」
「そうしてくるな」
 こう言って吉原に足を向けるが。
 友人の一人が彼にこう言った。
「親父さんやお袋さんは何も言わないのか?」
「俺が吉原行ってもか」
「ああ、それで兄さん達もな」
「言われる様なヘマはしてないぜ」 
 亀吉は友人に笑って話した。
「俺だってな」
「要領よくか」
「そうだよ」
 こう言うのだった。
「だからな」
「吉原にもか」
「親の目を盗んでな」
 そして兄達のというのだ。
「それでだ」
「楽しんでくるか」
「今日もな」
 遊び仲間達に言ってだった。
 亀吉は吉原に行って朝に帰った、そして家にふらりと帰ると。
 両親が店を開く準備をする中で彼に言った。
「またか」
「また吉原に行ってたのかい」
「別にいいだろ」
 亀吉は笑って返した。
「うちの店じゃ小遣い程度の金しか使ってないしな」
「そういうことじゃない、いつも朝帰りなんて止めろ」 
 真面目な顔の父は怒って言った。
「身体に悪いぞ」
「悪い?俺は全く平気だぜ」
「女と遊んで大酒飲んでか」
「そうさ、全然な」
「あのね、朝寝朝酒朝風呂じゃないか」
 やはり真面目そうな母が言ってきた。
「そんな暮らしでいいのかい」
「ちゃんと家の仕事をしてるからいいだろ」
「よくないよ、あんたそのうちえらい目に遭うよ」
「遭わないさ、じゃあ働くな」
「全く、兄ちゃん二人は真面目に働いてるってのに」
 母は苦い顔でこうも言った。
「どうしてあんたはそうなんだよ」
「やんちゃだよな」
「わかってるならちゃんとするんだよ」
「多少羽目を外してもいいだろ」
「外し過ぎだよ」   
 母だけでなく父も言うが亀吉は笑って聞き流してだった。
 家の仕事に入った、そうして夜はまた吉原に行き出会ったが。
 彼は店に来た仲間達に店の品物で新しく入ったものを見せて品定めを受けてからこの時も吉原の話をしたが。
 ふとだ、仲間達にこう言った。
「最近和太の兄貴見ねえな」
「ああ、そうだな」
「そういえばそうだな」
「あの人見ないな」
 仲間達も彼の言葉にそれはとなった。 
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