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借金王

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第三章

「私がいる限りだ」
「お金は返せる」
「そうなのですか」
「生きていれば」
「私位でないと借りられない額だが」
 それでもというのだ。
「私だからこそだ」
「返せるのですね」
「そうなのですね」
「カエサル様だからこそ」
「そうだ、だからそなた達は落ち着いて待っているのだ」
 澄んだ冷たい水で割った赤いワインを飲みつつ話した。
「私が返す時をな、神々に私が死なないことを祈りながらな」
「本当にお願いしますよ」
「生きていて下さいよ」
「そこは何とかですよ」
「わかっている」 
 悠然と余裕で満ちた態度で飲みそうして美酒と美食を楽しむのだった。そうしてさらに借金を重ねローマでの地位を固め。
 多くの戦に勝ちローマで絶対と言える者になった、その頃には彼はその莫大な借金をも上回る資産を得ていた。
 そしてその資産から借金を全て返して貸りていた者達取り立てに来た者達に対して話した。
「そなた達もこれで助かったな」
「全く、どうなるかと思いました」
「あまりにもお貸ししている額が莫大になっていて」
「返して下さるかどうか」
「不安になっていました」
「無理かと思っていました」
「私だから借りられてだ」 
 カエサルはまたこう言った。
「返せるのだ、そして私も必ず返すと決めていた」
「そうだったのですか」
「実はかなり疑わし気でもありましたが」
「踏み倒すのかと」
「その考えはなかった、私は借金は必要だからしていて私が生きていればどうでもなるとわかっていた」
 思っているでなくというのだ。
「そうだったからな」
「こうしてですか」
「返されるおつもりでしたか」
「最初から」
「むしろ借金なく今の私はなかった」
 カエサルはこうも言った。
「金がなくて何が出来る」
「女性も学問も政治も」
「全てですか」
「お金があってこそですか」
「そうだ、必要な金がないなら借りてだ」 
 自分の様にというのだ。 
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