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悪質アイドルヲタ

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第二章

「順番は守って下さい」
「何や、わしを誰と思うてるんや」  
 清原はスタッフの人にも凄んだ。
「わしが一番壬生瞳ちゃんのグッズ買うてるんやぞ」
「そういう問題ではありません」
「何や、わしは巨人組の若頭やぞ」
「そういうことではなく」
 他のスタッフの人達も出てだった。
 必死に清太を止めた、だが。
 清太は遂にスタッフを殴りだし無理に推しのアイドルの娘の前に出て手を差し出した、そして暴力を見て怯えている彼女に笑って言った。
「嬢ちゃん、今夜どや」
「あの、困ります」  
 小柄で童顔で大きな黒目がちの目で黒髪ロングのステージ衣装を着たままの彼女は怯えきって応えた。
「並んで下さい」
「そんなん関係ないやろ、わしは嬢ちゃんの一番のファンや」
「そういうことではなくて」
 アイドルの娘は何とか言葉を出していた、グループの他の娘達も怯えきっていて動けない。だがファン達は黙っていなかった。
 警察に通報し暴れている動画や画像を密かに取った、それでだ。
 ネットに拡散もした、そして警察が来てだった。
 アイドルの娘に迫っている清太を捕まえ連行していった、清太はまだ暴れていたがそれでもだった。
 パトカーに入れられた、スマートフォンに撮って自分のツイッターにあげていた岡田は彼がいなくなったからファン達に話した。
「応援するならね」
「ああいうのは絶対に駄目だよ」
「最低だよ」
「握手会も順番を守る」
「注意されて暴力振るうなんてもっての他」
「それにアイドルの娘に付き合えって言うなんて」
「何処までも酷いよ」
「アイドルは応援してその成長を楽しむ」
 岡田は真面目な声で言った、その手には推しの娘の団扇等グッズがある。
「そうしたものでね」
「付き合えとかね」
「そんなこと言ったら駄目だよ」
「下心なく応援する」
「そうでないとね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「僕達はあんなことはない様にしようね」
「絶対にね」
「真のアイドルファンこそマナーを守る」
「紳士でないとね」
「応援もね」
「そうしないとね」
 こう言って握手会の後は打ち上げでファン同士で居酒屋に行ってアイドル論議に花を咲かせた、そして後日。
 彼等は清太が実際に指定暴力団の構成員であり傷害や恐喝の常習犯であり覚醒剤にも手を出していることを知った。そしてあらためてそうした人間にはアイドルを応援して欲しくないものだと思ったのだった。そのうえでそれぞれの推しの娘達を応援していった。


悪質アイドルヲタ   完


                    2022・7・23 
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