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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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町の未来を憂う者

<エコナバーグ>

「な!?5億ゴールド!何考えてるんやリュカはんは!」
オーナーから事の経緯を大まかに聞いたエコナは、旧知のリュカに対し至極当然な反応をする…
「だって…僕はステージに上がって歌を披露したんだよ!そっちのお嬢さんが言ってた!『ショウを観たら、料金を払うのが当然!』って…」

「そ、それはプロが正式にステージで歌を披露したからや!リュカはんはプロとちゃうやん!」
「僕プロだよ」
「ふざけんなや!リュカはんの何処がプロやねん!」
「じゃぁ、アイツ等の何処がプロなんだよ!?この劇場で下手くそな歌を披露した、あの2人はどの辺がプロなんですか?」
「そ、それは…」
優しく微笑むリュカを前に、脂汗をかき口籠もるエコナ…

「言った者勝ちじゃん!『私はプロですよ~!』って!」
「で、でも…金取るなんて知らんかったんや…後から言うなんてズルイやん!」
「後から言って来たのはそっちだろが!帰り際になって『観賞料50000ゴールドです』って、先に吹っ掛けてきたのはそっちだ!」
「ご、50000ゴールド!?」
エコナが急に大声を上げ驚く!

「何だ…知らなかったのか…きっと今までボッタクってたんだよコイツ!」
エコナはオーナーに向き直り、厳しい表情で問いつめだした。
「何考えてんや…あの二人の出演料は1ステージで2000ゴールドやで!」
「すげ…客1人でお釣りがくるじゃん!…儲けは全部、其奴のポッケの中か?」

「し、しかし…エコナ様は私に一任してくれたではないですか!?」
「そりゃ劇場経営は任せたけど、50000ゴールドは非常識やろ!お客が来なくなるやん!」
エコナはオーナーの襟首を掴み、殴りそうな勢いで怒鳴りつける。
「何を甘い事を…どうせ直ぐにこの町は寂れるのです…今の内に取れるだけ取っておかねば…」
オーナーはエコナの剣幕に焦ることなく、イヤラシイ笑みのまま本音をさらけ出した。

「………消えろ!お前はクビや!今すぐこの町から消えろ!」
「ふん!喜んで出て行きますよ…沈みかけた船に居着くほど酔狂では無いのでね…」
オーナーは取り巻きと元受付嬢を従えて、劇場から出て行こうとする…

「おい、待て!」
彼等を止めたのはリュカだった。
立ち止まりリュカを訝しげに見るオーナー。
「お前…声からしてムカつく!もう喋るな!!」
そう言うとオーナーの下顎に左手を這わせ、力任せに握りつぶした!
「きゃがっっっがが!!」
言葉にならない悲鳴を上げるオーナー…

「ベホマ」
リュカはオーナーの顎を握りつぶしたままでベホマを唱える…
オーナーは激痛が治まり静かになった。
「よし!これでお前のムカつく台詞を、二度と聞かずに済むね。………次は誰かな?」
リュカはそう言ってオーナーの取り巻き連中を見回した。
血相を変えて逃げ出す取り巻き連中!
喋れなくなったオーナーも「あうあう」言いながら、一緒に逃げ出して行く。


「リュカはん…ありがとう。お陰で助かったわぁ…あんな最低な野郎だったなんて…」
「何甘い事ぬかしてんだバカ女が!」
誰もが驚いた…エコナだけではない、アルル達もリュカの台詞に驚愕する!
「リュ、リュカはん…」

「エコナ…君は町造りを甘く見てないか!?ただ施設を建て、責任者を据えて任せれば良いと考えてないか!?」
リュカは怒っていた…
「責任者を指名するのならば、能力と人となりを考慮に入れなければいけないんだ!」
「そないな事言うても、あないな人間とは思わなかったんや!」

「僕は人選ミスを責めてるのではない…エコナも人間なのだから、ミスをするだろうし、奴も本音を隠してエコナに接触して来たのだろうから、見抜く事は容易ではないだろう…だからこそ、任命した後も注意深く状況を把握する事が必要なんだ!君は任せっきりで、劇場の事を何も知らないのだろう!スパイを仕立て、客として劇場に向かわせれば、このボッタクリは直ぐに発覚したに違いない…」
厳しい瞳でエコナを睨みながら話すリュカ…

「そ、そんな事言うたって…ウチかて忙しいのや…アレもコレも一片に出来へん!」
「だったら町造りを一時停止させ、時間を作れば良いだろ!まともに機能しない施設を作って、町を成長させてる気か!?笑わせるな!町も人も、少しずつ成長するものなんだ…焦ったって膿が広がるだけだ!さっきのオーナーみたいな膿が…」
気付くとエコナは泣いていた…
リュカの厳しい言葉に…いや、自分の愚かさにかもしれない…

「良く聞きなさい…人が居るから、町や国が必要になるんだ。逆はあり得ない…極論すれば、町や国が無くても人は生きて行ける…でも町や国は人無しでは存在できない!何故だか分かるかいマリー?」
急に振られ驚くマリー…

「え、え~とですね…町や国は、人々が生き易い環境を整える為にだけ存在してるから…です!」
「その通り!其処に住む人々を犠牲にして町を大きくしても、規模が大きくなるだけで質は低下する!」
マリーはホッとした表情で力を抜き、リュカの事を見つめ続ける。

「エコナ、憶えてるかい?ロマリアで王位を断った時の僕等の会話を…」
「憶えてる…『権力には責任が付いて来るんだよ!権力が大きければ大きい程、責任も大きくなる』って言うてた」
「そう…町の長として、君は好き勝手に施設を建設させる事が出来る…でもそれには責任が付き纏うんだ!より良く町を成長させる責任が!君はそれを果たしてない………この町を見回ったけど、診療所が少なすぎる…商業施設や娯楽施設などの金儲けがし易い施設は多いけど、町民の為の福祉施設が極端に少ないよ!」

「それは…何れ作ろうと思うとったんや…今は手っ取り早く資金を稼がなあかんと思って…」
エコナは俯き答える…
もうリュカの顔を見る事が出来ない。

リュカは屈みエコナの顔を覗き込み告げる…
「君は本当にこの町を成長させたいの?…それとも、ただ権力を振りかざしたかっただけ?」
「ウチはこの町を、世界中に名を轟かせる町にしたいんや!世界最高のエコナバーグにしたいんや!」

「だったら町民とよく話し合い、町民の意見も尊重し、互いに理解し合いながら協力するべきだと思わないかい?」
リュカの優しい口調が、エコナの心に染み渡る。
もう涙が止まらない…
エコナも分かっていたのだ…自身の焦りが町民との隔たりを作っていた事に。


リュカはエコナの手を握ると、彼女を連れ一部損壊してる劇場を後にする。
「ど、何処に行くんや!?」
「決まってるだろ…君が町造りを決意したスタート位置に行くんだ…再スタートの為にね」
そう言ってリュカ達が向かった先は、小さな道具屋の前だった…
「此処は?」
エコナは此処が何なのか知らない…誰が営んで、誰が住んでいるのかも。
「さ…此処が君の再スタートラインだ!ここから先は自身の力で進みなさい。この家の人が君を見捨てずに、最後まで協力してくれるから…」
リュカはエコナの背中を押し、中へ入る様に勧める。

(コンコン)
エコナはリュカに言われるがまま、小さな道具屋のドアをノックする…恐る恐る。
「こんな時間、誰?」
「じ、爺さん!?…此処に住んでたんか…タイロン爺さんは!」
中から出てきたタイロン老人に驚き、思わずリュカ達の方へ振り向く…
しかしリュカ達は既に其処には居なかった。
自分たちの船に戻り、旅の続きを再開したのだ。
「エコナ、どうした?ワシに会う、嫌、違う?」
「爺さん…爺さん!!ごめんなさい…ウチ…ウチ…」
エコナはタイロン老人に抱き付き泣き出してしまう…

エコナは再スタートをする事が出来る様だ。
リュカは次にこの町に来るのが楽しみになる。
きっと素晴らしい町になっているだろうから…


 
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