| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の六

 
前書き
◇今話の登場ハンター

◇エクサ・バトラブルス
 「伝説世代」の1人であるレマ・トールと同郷の女ハンターであり、姉のように慕っていた彼女のようなハンターを目指している。武器はレックスディバイドIを使用し、防具はオロミドシリーズ一式を着用している。当時の年齢は19歳。
 ※原案はMegapon先生。

◇ジュリィ
 ドンドルマに錬金屋と鍛冶屋を構えている鉱石コレクターであり、自ら鉱石を採掘するために里を飛び出しハンターになった竜人族の少女。武器はガトリングランスを使用し、防具はギザミシリーズ一式を着用している。当時の年齢は46歳(人間換算では10代前半)。
 ※原案はひがつち先生。

◇ガレリアス・マクドール
 砂漠の村で生まれ育ったガンランス使いのハンターであり、義理人情に溢れた好青年。武器はディアブルジートを使用し、防具はディアブロシリーズ一式を着用している。当時の年齢は18歳。
 ※原案は妄想のKioku先生。

◇エレオノール・アネッテ・ハーグルンド
 「伝説世代」の1人であるクリスティアーネ・ゼークトの生家に仕えていた臣下であり、彼女を補佐するべく上位ハンターを目指している毅然とした美女。武器は蒼剣ガノトトスを使用し、防具はラギアシリーズ一式を着用している。当時の年齢は18歳。
 ※原案はゲオザーグ先生。
 

 
 フィレット達やイーヴァ達により、毒を吐き付ける間も無く倒されてしまった子分のイーオス達。その骸を踏み付けながら、不意打ちへの怒りに燃えるドスイーオスが襲い掛かって来る。
 その大顎を開いた鳥竜種の親玉は、子分達のものとは比べ物にならない量の毒液を吐き出して来た。

「うわぁッ!?」
「あぶなッ……!」

 咄嗟に真横へ転がり回避したハンター達が立っていた場所は、猛毒を帯びた大量の液に塗れている。もしまともに浴びていれば、彼らの防具でもタダでは済まなかっただろう。
 この狭い通路内では、足場に注意を払いながら回避するのも難しい。通路の淵に立たされていたことに気付いた彼らは、兜の下で冷や汗をかいている。

「こ、こんな足元がおぼつかない場所じゃあまともに戦えないよぉ……! で、でもっ……こんなところで負けてたら、レマ姉ちゃんに笑われるっ!」

 剣モードのレックスディバイドIを手にしているエクサ・バトラブルス。盾で辛うじて毒液を凌いでいる彼女は、足元の奈落を見遣り固唾を飲んでいた。

 オロミドシリーズ一式の防具を装備している彼女は、「伝説世代」のレマ・トールと同郷であり、その背を追ってハンターを志した女傑の1人……なのだが、そんな彼女にとってもこの悪条件での戦闘は困難を極めている。
 それでも憧れの姉貴分であるレマへの想いが、彼女に蛮勇を齎していた。足元の淵がひび割れていることも意に介さず、彼女は強い踏み込みで前進しようとしている。

「ちょ、ちょっとエクサ! ちゃんと足元見なよっ、危ないぞっ! ……ああもうっ、いつもの広い狩場だったらこんな奴ら楽勝だってのにぃっ!」

 そんな彼女の危なげな戦い振りに肝を冷やしているのは、近くでガトリングランスの大楯を構えている小柄な竜人族の少女――ジュリィだ。ギザミシリーズ一式の防具を纏う彼女は、兜の下に菫色の短い髪を隠している。

(だけど……負けるわけにはいかないっ! 絶対にあのクソ親父の鼻を、明かしてやるんだからっ!)

 ドンドルマで錬金屋と鍛冶屋を経営している鉱石コレクターであり、自由に採掘が出来るからとハンターを志した彼女は、竜人族としてはまだ幼い。
 そのため、無理に里を飛び出して経営を始めた今でも、古龍観測所に務める父とは折り合いが悪いらしい。しかも肝心の経営状況は、いつも閑古鳥が鳴いている。

(……あのクソ親父ぃ〜! 今まで人が来なかったのだって、あいつが手を回してたからに決まってるっ! 観測所なんて古本くさい場所にいるから陰湿になるんだよっ! そんなにあたしのこと嫌いか〜っ!)

 ジュリィの店が閑古鳥状態なのは、食うに困れば泣いて戻ってくるだろうという父の手回しの結果なのだろう。単に彼女の接客態度が原因、という線もあるだろうが。

 ――それでも、毎日のように採掘に勤しんでいる彼女には、決して退けない理由がある。運良く手に入った「さびた槍」の強化に、「鋼龍」クシャルダオラの素材が必要となっているからだ。
 

「……こうなったら、何がなんでも生き延びてやるんだからっ! 行くよエクサ、あんたも覚悟決めなっ!」
「おっ、ジュリィもなんだかやる気じゃんっ! よぉし、一緒に仕掛けるよっ!」
「その前にあんたは足元ちゃんと見ろっ!?」

 例え不利な地理条件だろうと、決して負けられない理由。それぞれの胸にその炎を灯して、2人の美少女は大槍と盾斧を手に、ドスイーオスが率いる群れへと向かって行く。


「……! 見ろ、エクサとジュリィが突撃する気だぞ!」
「あの位置からか!? 危険過ぎるぞ、あんな淵で! もし弾かれて体勢を崩されたら……!」
「私達もカバーに向かうぞ! 2人が危ないッ!」
「分かったッ!」

 その状況を目にしていた2人のハンターは、活路を開こうとしているエクサ達を援護するべく動き出していた。青年の手にあるディアブルジートの先端部が火を噴き、美女が握っている蒼剣ガノトトスの刃がイーオスの首を刎ねる。
 仲間達の救援に向かう2人の剣士は、上位昇格を目指して研鑽を重ねて来た技を存分に振るい、眼前の敵を瞬く間に屠っていた。

(……未だ、私は若輩の身。だがこの手で助けられるものがあるなら、私はそれに応えるだけだ……!)

 「角竜」ディアブロスの素材を元とする、ディアブロシリーズ一式の防具。その鎧で全身を固めているガレリアス・マクドールは、同素材で構成されたディアブルジートによる刺突で眼前のイーオスを蹴散らしていた。

 砂漠の村で生まれ育った彼が険しい生い立ちの中で得た、195cmはあろうかという頑強な肉体は、身の丈を大きく超えるガンランスを軽々と使いこなしている。
 友のためならばと己の危険すら顧みないその人格も、戦いの日々の中で培って来たものなのだろう。

「……私達ハンターを、無礼(なめ)るなよッ!」

 エクサとジュリィの進む道を切り拓くべく、彼のディアブルジートは勢いよく火を噴いた。ガンランスの炸薬を全て使用する、フルバースト。起爆式の杭を撃ち込む竜杭砲、そして渾身の火力を解き放つ竜撃砲。

 ガレリアスの十八番たるその連続攻撃が、行く手を阻むイーオス達を吹き飛ばしていく。だが、その快進撃はいつまでも続くものではない。ガンランスの炸薬が尽きれば、自ずとその砲火も止まってしまうのだ。
 砲身内の炸薬を使い果たしたガレリアスに、他のイーオス達が群がって来る。だが、その大顎から毒液が放たれる前に――ディアブルジートの大楯から飛び出して来た美女が、己の大剣で勢いよく邪魔者達を薙ぎ払ってしまった。

「流石だな、ガレリアスッ! ……その装備に見合う活躍をして来たのだと、一目で分かる妙技だッ!」

 ラギアシリーズの防具を纏い、蒼剣ガノトトスを振るう蒼き戦乙女――エレオノール・アネッテ・ハーグルンド。ガレリアスと共にエクサ達の援護に動いていた彼女は、その巨大な刃でイーオス達を瞬く間に斬り伏せていた。
 腰まで伸びている銀色の長髪と、豊満な爆乳を防具に隠している彼女は。180cmにも及ぶ長身と、その体格に見合う膂力を込めて――蒼剣ガノトトスを振るっている。

(クリスティアーネお嬢様に追い付くためにも、仲間達のためにも……私は、この戦いでさらに成長して見せるッ!)

 「伝説世代」の一角にして、フラヒヤ山脈の大貴族でもあるクリスティアーネ・ゼークト。その生家に仕える彼女は、クリスティアーネを補佐するべくハンターを志した生粋の忠臣なのだ。
 年齢の差や訓練所で過ごした期間などの違いもあり、今はクリスティアーネに大きな差をつけられている彼女だが。経験と実力の大差に苦悩しながらも、仲間達との絆を頼りに精進を続けている。

(……やはり強いな、ガレリアスは)

 特に、己の腕一つでディアブロスを狩猟して今の装備を作り上げたガレリアスに対しては、深く想うところがあるのか。彼女は時折、ガンランスを振るう彼の横顔を切なげに見遣っていた。
 武器の素材となったガノトトス亜種と防具の素材となったラギアクルスは、双方の縄張り争いに巻き込まれた近隣の港町から依頼された際に狩猟したものなのだ。同時狩猟という偉業には違いないが、それは「漁夫の利」でもあると彼女は見ていた。

 ――自分はまだ、この装備に見合うハンターにはなれていない。クリスティアーネ様の背中には、程遠い。

 そんな劣等感を抱えながら戦って来た彼女にとって、「この装備は自分の力で築き上げたのだ」という自負と自信に溢れたガレリアスの姿には、1人の女性として惹かれざるを得なかったのである。

「エレオノール! 炸薬を使い果たした今の私には、盾役しか務まらん! ……『剣』の役は、頼んだぞ!」
「……あぁ、任せておけガレリアス! エレオノール・アネッテ・ハーグルンド、推して参るッ!」

 だが、今はまだ「そんな時」ではない。この大剣と防具を身に付けている自分を、胸を張って誇れる日が来るまで、想いを告げるわけにはいかない。
 だから今は、せめて。その隣で、彼の力となりたい。そうすればきっと、クリスティアーネお嬢様の背中にも近付いて行ける。その想いの炎を人知れず豊満な胸に宿して、エレオノールは大剣を振りかぶっていた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧