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ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)

作者:闇谷 紅
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エピローグ「恐るべしは(三人称視点)」

「グウッ……! ヌゥゥ……ハァハァ」

 玉座に腰を下ろし、顔にびっしりと脂汗を浮かべた男の失われた両腕が火花を散らしつつ新たに作り上げられてゆく。魔王軍の拠点、鬼岩城の内部。魔軍司令ハドラーの部屋にはただ部屋の主が居るのみ。これが少し前であれば、幾つもの触手を持つスライム系の魔物がハドラーの脇腹の穴に緑色の触手を向け回復呪文を行使していたであろう。這う這うの体で帰還を果たしたハドラーはあと一歩遅ければ透明な球に満たされた蘇生液の中に放り込まれていたであろう程の重傷であった。

「危ういところであったわ」

 治療を行った赤い頭部を持つ癒し手のスライム達に口外無用を言いつけて下がらせたハドラーはもはや塞がったはずの脇腹へと苦々し気に視線を落とし険しい顔を作る。そう、誰も他に居ないが故の独言であったはずだが。

「手ひどくやられたな……ハドラー」

 玉座の後ろからの声にハドラーは恐縮した態で見苦しい姿を見せたことを詫びる。そこにあったのは、六つの宝石がはまった巨大な六芒星のレリーフとレリーフの中央にある三つの角を持つ目を光らせた作りものの顔。

「まあ気にやむことはない」

 勇者を葬った功績に比べれば名誉の負傷と咎める様子はない大魔王の声に視線を下げてハドラーは応じ。全幅の信頼を置いていると宿敵の消えた魔王軍に敵は居ないと背後の顔像から言葉をかけられ、異論は挟まぬ魔軍司令ではあるが、その言葉を額面通りに受け入れられる気にはとでもではないが、なれなかった。

「……確かにアバンは死んだ……」

 顔像の目から光が消え、静まり返った部屋の中、声には出さず呟くも思い出すのは宿敵の死した後のこと。自身の率いる軍勢であれば末端にすら入れるか疑問の余地が残るほど脆弱なモンスターが現れたかと思えば、宿敵の自爆にすら耐えたその身に穴を穿って見せたのだ。代償に自身も半身を失い地でのたうつことしかできぬ有様であったとしても、相手はモンスターの中でも雑魚と言っていい分類のものに重傷を負わされたというのが信じがたく。疑問が口に出れば、そのモンスターはアバンの弟子の一匹であったというではないか。

「そして、……あのダイと言う小僧ッ!!」

 脅威的な攻撃をしてきたアバンの弟子のモンスターは代償に深手を負った。だが、それを始末しようとしたところで襲いかかってきた弟子の小僧にハドラーは一方的に攻められ、放たれた一撃に防ごうとした両腕を斬り飛ばされ、それでも防ぎきれず胸へ斬撃を刻まれた。脇腹に穴を開けられる重傷を負った後だ、一方的に攻められたのも些少は仕方ないと見ても、まさか両腕まで失うとはハドラーも思っていなかった。もっとも、件の弟子がそれをなし得た理由については、ハドラーに一つ心当たりがある。

「ヤツの額に輝いたあの紋章は……竜の紋章!!」

 ただの雑魚モンスターですら宿敵の教えを受ければ自身に重傷を負わせる程になるのだとすれば、件の小僧が本当にあの紋章を持つ者、ハドラーの知る竜の騎士と言う存在であった場合、いかほどの脅威となることか。思わず触れかけた胸の傷は、宿敵から受けたモノより、その弟子から受けたものの方が治りも遅く。

「たたきつぶさねばならん! まだヒヨコのうちに……!! そして――」

 このまま放置していれば恐るべき敵となるであろうダイへの殺意を新たにしたハドラーは脳裏に一匹のモンスターの姿も浮かべる。それは、オレンジ色の人魂と言う姿をした、本来なら取るに足りぬモンスター。

「ヤツもだ。くたばりかけではあったが、トドメはさせんかった……」

 二度目の油断などするつもりのないハドラーではあったが、純粋なダメージだけで見るなら脇腹へのダメージも相当なモノであったことに加え、あれがなければダイとの戦いもあれ程一方的にはならなかったという確信がハドラーにはあった。

「見ていろ! 我が全軍をあげてでも……必ずやアバンの弟子どもを根絶やしにしてやるわ!!」

 玉座のあった間を後にし、鬼岩城に備えられた巨大な鬼の頭部の口から城の外に集うモンスターたちを見下ろして魔軍司令は気炎を上げる。ただ、この時その瞳の中にダイと共に自身の姿が浮かんでいるなどと言うことなど当のメラゴーストは知る由もなかったのであった。
 
 

 
後書き
完全に目の敵にされた主人公。まぁ、しかたないよね?

コミックス1巻部分にあたるお話はこれでおしまい。

お試し版としてのお話も「一巻編のみ」ということでしたので、ここで終了になります。

ご希望多ければ(お試し版)表記をとって続きも掲載することも考えますけど需要あるんでしょうかね?


尚、続きが気になる方のために別の小説サイトですが次話のアドレス乗っけてみます。

https://syosetu.org/novel/237788/28.html







 
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