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ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)

作者:闇谷 紅
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番外2「メラ公(ポップ視点)」

「おま、メラ公! 何でっ」

 何でそこになんて疑問は後になりゃ、あっさり解決した。先生の洞窟を吹き飛ばす程の自己犠牲呪文なら、島のどこに居ても何かがあったッて気づくだろう。ただ、その時ゃ、おれはそれどころじゃなかった。訳が解かんなかった。いきなり、結界をぶち破って魔王が現れて、先生があの魔王を倒したって勇者だったって聞かされて、先生の足手まといにならないように弟弟子の手を引っ張りきめんどうしの爺さんを抱えて逃げ。

「魔王のお前自ら出向いてくるとは……考え方によってはちょうどいい」

 おれがとんでもない人のところに弟子入りしちまったと思いつつ見守る中で、先生と魔王の戦いが始まったんだ。先生が魔王の爆裂呪文を握り潰し、お返しに閃熱呪文を見舞って見事に呪文が決まったと思った瞬間、快哉を上げたおれだったけど、先生の呪文はただマントを焼き払っただけで、今度は魔王が同じ呪文を先生に放ってきた。先生はそれを斬撃で両断したんだろう、魔王の呪文の一部が着弾して身体を引っ込め自分を庇ったおれには最後まで見えてなかったけど、剣を振るった先生が口にしたのは、ドラゴンになった先生の炎をダイが真っ二つにしたのと同じ技の名だったからだ。

「ベギラマ」

 応酬された呪文の名を昨日だったらおれは聞いただけで苦い顔をしただろう。おれにはまだ使えねぇ呪文。にもかかわらず、弟弟子のメラ公は先生との模擬戦で放って見せた。

◇◆◇

「モンスター?! けどこの距離なら――」

 あいつとの出会いは夜の森の中。無防備に近寄ってくるのを呪文で倒そうとした俺を先生が制し、あいつが先生に弟子入りを求め、それが受け入れられた。そのちょっと前にたき火に化けていたって先生には教えられたけど、その時のおれは気づかなかったから、出会いがいつかって聞かれたらどうしてもそっちになる。

(ともあれ、そうしてあいつは先生の弟子に、おれの弟弟子になった)

 その時おれは納得がいかなかった。あいつはモンスターで、しかもあんなにあっさり先生の弟子になるなんて。先生の弟子が誰にでもなれるような簡単なモンになっちまった気がして、だからあいつのことは気にいらなかった。

(その気持ちが長く続かなかったのは、あいつがことあるごとにへまをして凹んでたからだろうな)

 ああも何度も落ち込む様子を見せられると追い打ちをかけるようなことはしづらかったし、ばつが悪くなってフォローするように声をかけてやれば、あいつは感謝して頭を下げてくる。

(いつの間にかそそっかしい弟弟子って印象に変わってったんだっけな)

 見てるこっちの方がハラハラするような奴のくせに変なところで努力家で、特別ハードコースへの修行コース変更をあいつが申し出た時は、我がことではないのにおれの顔が引きつった。今まで誰もやりとおしたことが無いので有名なコースだったからだ。止めるべきかとも一瞬思った。

(けど、おっちょこちょいなあいつのことだし、何か失敗やらかして自分からコース変更取り下げてくださいって先生に頭を下げてくるか)

 あいつはあいつだ、それは変わんねぇ。おれはそう思って口を挟むのをやめ。あいつが特別ハードコースの成果としておれでもまだ使えないベギラマの呪文を使って見せた時、おれは思い知らされた。自分の見込みの甘さってやつを。実際はそれでも甘かったんだろうが、先生は解かってた。

◇◆◇

「そ……それは……?!」

 先生がおれたちをアストロンの呪文で鋼鉄の固まりに変え、再び魔王に挑もうとする前に懐から出したモノを俺は知っていた。

「アバンのしるし」

 卒業の証であるペンダントが、三つ。先生はまずダイの首にしるしをかけ、次におれの元に歩いてきた。ダイにかけた言葉を聞いていた俺は、いらないと、縁起でもないことはやめてくださいと拒絶した。勝てない相手に挑むなんてムチャを何故するのかとも言った。だが、先生は勝てない相手だからこそ命をかける必要があると言い。

「それにね、ポップ……やっぱり修行で得た力と言うのは他者の為に使うものだと私は思います」

 先生は語った自分の力はおれたちを守るために授かったのでしょう、と。

「いつかあなたにも必ずわかる日が来ます。だから。その時の為に」

 これを預けておきましょうとおれの首にもしるしをかけ。

「それから、ポップにはこれも。メラゴースト君はここに居ませんし、後で渡しておいてください」

 更にもう一つしるしをかけ。

「メラ公に?! けど、あいつこんな状況だって言うのに姿すら見せないんですよ?!」

 自分が逃げ出そうとしたことも忘れておれはあいつのことを憤ったが、先生は彼はおっちょこちょいですからねと笑うと。

「ポップ、あなたの方が兄弟子なのですから……メラゴースト君のこと、よろしく頼みますよ」

 ひょっとしたら、先生はこの先のことすら見越していたんだろうか。

◇◆◇

「は?」

 理解が、追い付かなかった。メラ公の言葉はおれにゃわからない。それでもダイの様子からただ事じゃないのは解かってたはずだった。

「なんだ、それ……」

 なんで、先生の自己犠牲呪文も耐えた魔王のわき腹が大きくえぐれて、何でメラ公の身体が半分近くなくなってるんだ。

「ぐがあああっ」

 丸くえぐり取られたようなわき腹を押さえて絶叫を上げる魔王と地面でのたうつメラ公。

「馬鹿な、アバンならまだわかる。百歩譲って弟子のガキでも、まだわかる。だが、オレの身体に雑魚モンスター如きがこれほどの傷を」
「雑魚モンスターじゃない!」

 苦痛の表情に信じられないモノを見た表情を混ぜる魔王にダイが、否定の言葉を発す。

「なに?」
「メラゴースト君は、おれの兄弟子! 先生の弟子のひとりだ!」
「ちょ」

 メラ公のことを雑魚モンスター扱いされたのが気に障ったんだろうが、おれには解かった、それは拙いと。先生の弟子であるおれたちも、こいつは根絶やしにしようとしたんだから。

「アバンがモンスターを弟子にだと?! いや、そうでもなければこの傷は説明がつかん」

 やはり先生がモンスターを弟子にしたというのは魔王から見ても驚きではあったらしい、ただ。

「ならば、もはやくたばりかけとはいえ放ってはおけん。こやつから」

 かたづけてやろうぞと予想通り魔王はメラ公にとどめを刺そうとし。

「ぬうううううっ!!」
「は?」

 力む声に思わず視線を動かしたおれが見たのは、鋼鉄の固まりであるはずのダイの表面にヒビが走ってゆく光景。

「あああっ?!」

 次の瞬間、雄たけびと共に先生のアストロンをダイが自力で破り。

「なッ、なんだと?! おのれっ!! メラゾーマ!!」

 驚きつつも今だ地面でのたうつだけのメラ公よりダイを脅威と見たのか、魔王はダイ目掛けて呪文を放ち。

「ヒャダインッ!!」

 駄目だと思ったおれの目に映ったのは、おれの呪文よりすごい呪文で魔王の呪文を相殺したダイの姿だった。
 
 

 
後書き
場面切り替え多くてごめんなさい。

こうでもしないと4~5話かかりそうだったんだ。

尚、お判りでしょうが主人公は魔法力の調整をミスって居た模様。(今回のやらかし)

結果としてダイとハドラーとの戦闘はハドラーがわき腹の傷で戦闘力を大幅にダウンし、この後ダイにほぼ一方的にやられて逃げ帰ります。 
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